■仮面というよりはフルフェイスのヘルメットなんだよね、というツッコミをしてはいけない世界線のファンタジーでしたね


■オススメ度

 

庵野監督作品をこよなく愛する人(★★★)

初期の仮面ライダーが好きな大人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.3.18(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報:2023年、日本、121分、PG12

ジャンル:人外と掛け合わされて超人になった青年を描いたアクションドラマ

 

監督&脚本:庵野秀明

原作:石ノ森章太郎

 

キャスト:

池松壮亮(本郷猛/仮面ライダー:ショッカーにバッタとオーグメントされてしまう青年)

柄本佑(一文字隼人/仮面ライダー2号:バッタとオーグメントされた青年)

 

浜辺美波(緑川ルリ子:元ショッカーの所属員)

塚本晋也(緑川弘:ショッカーに所属していた研究者、本郷をオーグメントした男)

森山未來(緑川イチロー:ルリ子の兄)

市川実日子(イチローの母)

 

仲村トオル(本郷の父)

安田顕(本郷の父を殺した犯人)

 

西野七瀬(ハチオーグ/ヒロミ)

上杉柊平(ハチオーグの部下の男)

手塚とおる(コウモリオーグ)

大森南朋(クモオーグの声)

長澤まさみ(サソリオーグ)

本郷奏多(カマキリ・カメレオンオーグ)

 

松尾スズキ(ショッカーの創始者)

 

竹野内豊(政府の男)

斎藤工(情報機関の男)

 


■映画の舞台

 

日本のどこか

 

ロケ地:

山梨県:甲府市

荒川ダム

https://maps.app.goo.gl/Ye78BfW2HvxSopda7?g_st=ic

 

山梨県:南都留郡

河口湖ステラシアター

https://maps.app.goo.gl/bq45yUGGw1bwz9na8?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

ショッカーによってバッタと人間のオーグメントにされた青年・本郷猛は、組織の研究者の娘・ルリ子とともにバイクで逃走を続けていた

追うのはショッカーの構成員のクモオーグとその部下たちで、彼らは山奥のダムに追い込まれてしまう

 

ルリ子が拉致されそうになったその時、本郷は妙な仮面とボディスーツを身に纏い、暴力をコントロールできない体になっていた

ショッカーを撃退した本郷は、ルリ子とともに隠れ家を訪れる

そこにはルリ子の父・緑川弘博士もいて、本郷の体は彼の研究の成果だと聞かされる

本郷はバッタと人間をオーグメントした体になり、プラーナと呼ばれる生体エネルギーを圧縮するエナジー・コンバーターによって、超人的な力を発揮することができるというのである

 

そんな折、彼らを追ってきたクモオーグに博士は殺され、ルリ子も拉致されそうになる

本郷はクモオーグを追い、その力を解放して倒して見せる

だが、そんな二人に「政府の男」と「情報機関の男」と名乗る妙なスーツが近づいてきた

彼らは「ショッカーを撲滅するために協力しろ」と言い、ひとまずは共闘することになったのである

 

テーマ:人類のためにすべきこと

裏テーマ:理想論の果てにある無常

 


■ひとこと感想

 

いつの間にか「懐古作品をリメイクするのを『シン』と読んでいるようですが、それが「真」なのか「新」なのかはよくわかりません

これまでの作品を新しい角度で撮るのかなと思っていましたが、本作に限っては「旧作にリアリティを足した」みたいな感じになっています

いわゆる似非科学にて、それらしい感じにはなっていますが、実現性はゼロっぽいでしょう

 

物語は、自分の意思とは別に「オーグメントされた本郷」が、ほぼ博士の言いなりになってルリ子を守りながらショッカーと戦っていきます

苦悩っぽいものはありますが、それも瞬間的に忘れることができるくらい雑な感じになっていましたね

 

劇伴も好きな感じで、構図なども好みなのですが、なぜか全体的に「ワクワクするところがなくてつまらない」という感想が沸き起こりました

要素ひとつひとつは素晴らしいけど、全体の味付けがおかしいというか何というかという言語化するのが難しい「つまらなさ」というものがありました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

過去の出来事が生き方を決め、それを見ていた博士がチャンスとばかりに本郷を改造しちゃう

そんな説明があっても、どことなくスルーされていて、本郷自身の行動理念というものがまったく見えてきません

とにかく、人に与えられた命令を忠実にこなしているという感じで、彼がどう生きたいのかというのがほとんど見えてきませんでしたね

 

説明セリフがやたら多い作品で、心の声も独り言も全部喋っているので、「音声のみで構成されているオーディオブック」みたいなことになっています

アクションシーンも俯瞰とアップの遠近の切り替えが凄まじく速く、スクリーンに近い席だと何をやっているかわからんシーンもありましたね

特に後半は暗い場面になっていて、何がどうなっているのかわからんというシーンが目立っていました

 

物語はあってないようなもので、120分でまとめるには内容が濃すぎるように思えました

120分でオーグ6体ですからね

20分ごとに出ては倒しの繰り返しになっていたのですが、印象的な戦闘シーンがあまりありませんでした

クモオーグも一瞬だし、コウモリはギャグだし、サソリ&ハチはセクシーさが足りません

 

瞬殺みたいなカメレオンもどうかと思いますが、ラスボスはさほど絶望感がないところがかなり微妙だったと思います

あとは、グロシーンが中途半端な質感で多すぎる印象がありました

私の観た回では、開始早々の血みどろバトルの最中に「パパ、怖いよ」という声が漏れ聞こえていましたね

助言ありで12歳OKというのはキツい感じがしました

 


不条理に得た力との向き合い方

 

映画では、緑川博士の独断と偏見によって、本郷が「バッタオーグ」にさせられてしまったと説明されています

その経緯はかなりざっくりしたもので、本郷が緑川博士を恨まないと言うよくわからない感じになっています

いくら力を欲していたとは言え、バッタとオーグメントされたわけですからね

人間としての日常が完全に奪われたのに、抵抗感がないのは不思議でなりませんでした

 

本郷の苦悩の多くは、力を手に入れたことによる葛藤で、ショッカーの構成員としての人間を殺めたことに特化しています

また、これまでの日常が奪われたために、隠れ家みたいなところを転々とするしかありません

この本郷のキャラ設定が「インキャ」と言うことになっていて、その時代よりも活力があってマシだと言う感じになっていますが、実際にインキャがこんなことになったら発狂して鬱にでもなってしまいそうに思います

でも、暴力の快感性を覚えたからかはわかりませんが、戦いに対して能動的になっていく流れがあって、その速さについていけませんでした

 

もし、このような能力を得たとしたら、倫理観に苛まれたり、罪の意識を感じたり、力を捨てる方法を考えたりすると思います

また、人によっては潜在的な暴力性が顔を覗かせて、力を乱用すると言うことが起きるかもしれません

映画では、そのような本郷の葛藤はほとんど描かれず、ルリ子に良いように使われた挙句、非業の死を遂げてしまい、さらに主役の座まで追われることになりました

この一連の流れを観ていて、監督は初代が嫌いなのか?とか、余計なことを考えてしまいましたね

 

このような力を得たとするならば、本質的には「なぜ自分が選ばれたのか」を内観することになると思います

その時に試される様々な価値観というのは、普段の生き方に属するものが登場することになります

本郷の場合はインキャで孤独と言うことで、その状況を打破する武器と考えるのかは、インキャ時代を肯定的に捉えていたのか、否定的だったのかに依ると思います

映画ではそのあたりは全くふれていないのでわかりませんが、そんなことを考える暇もなく(一瞬だけ立ち止まっていたけど)、次々と敵が登場すると言う内容になっていましたね

 


勝手にスクリプトドクター

 

この映画が好きな人も多いと思いますが、個人的には「観る映画を間違った」と言うぐらいに合わなかったので、その辺りをまとめていきたいと思います

なので、本作が「完璧だ!」「監督最高!」と言う人は読まない方が精神衛生上は良いと思います

 

本作は賛否の嵐ですが、その多くは「冒頭の残酷描写の中途半端さ」だと思います

血飛沫が飛ぶだけになっていて、「小学生では怖いと思うけど、大人からしたらそりゃそうだよね」と言うリアリティ路線になっているのですね

「PG12」は「12歳以下には助言が必要」と言うものなのですが、いきなり「血飛沫祭り」になっていて、「どのタイミングで助言をするんだい?」と思ってしまいました

私の鑑賞回では「10歳くらいの子どもの悲鳴」と「パパ、怖いよお」と言う無情な言葉が館内を包み込んでいました

 

これらの描写以外でも、「敵キャラが出過ぎ問題」があって、120分に6体のオーグメントが登場させていました

冒頭のクモオーグはそこそこ尺がありましたが、ハチオーグ、カメレオンオーグあたりはダイジェストみたいな感じで、登場時間10分ぐらいになっていて、ちょっとかわいそうだなあと思ってしまいました

クモオーグは能力の認知と発動、コウモリオーグは覚悟と言う感じで進みますが、その後のサソリ&ハチはシナリオ上では不要なシークエンスになっています

絵面がアレなので清涼みたいな感じになっていましたが、そのためだけに出すキャラに意味があるのかはわかりません

 

本郷が戦闘能力のレベルを上げると言う意味では必要ですが、この時点ですでに2号が登場し、さらにややこしいことになっていました

2号は1号を倒すためにイチロー(チョウオーグ)が作ったバッタオーグでしたが、秘密兵器の割には登場が早すぎて、ほぼ主役を喰っていたように思えました

1号よりもルリ子と2号が目立つのはどうなんだ?と思いましたが、この配分を見ても「やっぱり、監督は1号が嫌いなのかな」と思わなくもないと言う感じになっていましたね

 

これらのシナリオをどう改変するかは難しそうではありますが、本作は「本郷が仮面ライダーになる」と言うところから、「1号の役割を2号が受け継ぐ」までやってしまっているので、要は詰め込みすぎと言う一言で終わってしまう問題になります

この状況で改変をするならば、何を描きたかったのかをフォーカスする必要があり、それによって不要なものを引いていくと言うことになります

もし、本郷の自覚と成長を描くなら、「2号は登場させない」と言うことになり、継承をメインで描くなら「ラスボスで登場させる」と言うことになるでしょう

この2人の共闘への流れがかなり不自然なので、それをもう少し整理する必要があります

 

この場合、2号がオーグになった経緯と理由、2号はどのように変身を受け止めているのか、と言う詳細が必要になります

でも、「博士が1号を作ったから、僕も作ってみたレベル」なので、一文字が志願したのか、本郷のように選ばれたのかなどがまったくわかりませんでした

感覚的には「能動的に参加」ですが、そうなると「生みの親と戦う理由」と言うものを描く必要があったように思えます

チョウオーグのマインドが理解できないのか、そもそも変身させられた恨みがあるのかとかもわからないので、2号は何で戦ってるんだろうとか、余計なことを考える余白が生まれていたように思いました

 

原作がどうだったかは覚えていませんが、映画のノリで考えるなら「志願兵で戦いに能動的」か、元々チョウオーグを止めるために能力を得ようと偽ったかのどちらかになると思います

一文字は元記者と言う設定なので、ショッカーを調べるうちに「こいつらヤバいわ」からの、「倒すためにスパイしよう」からの、「倒すためには力がいる」からの、「作ろうとしているみたいだから志願しよう」みたいな「1ショッカーだった」みたいな感じになってしまいますね

それが良いかどうかはわかりませんが、1号のキャラと状況を考えると、共闘路線よりはラスボスとして倒すと言う流れの方がしっくり来たように思えまいした

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は庵野秀明監督作品ということで、「とにかくキャラが喋り倒す」というシナリオになっています

かなり早口な説明セリフは、ある意味において「お経」っぽさがあって、あまり起伏を感じさせない演出も相まって、睡魔を呼び起こす下地というものが出来上がっていました

それを打破するためかわかりませんが、後半は10分ごとに敵が来て、それをあっさりと倒すというシーンが多くなっていました

仮面ライダーの世界にリアリティを持たせるという考え方は面白かったですが、こだわっているところとこだわらないところの落差が激しくて、整理されていないまま投げ出されたシナリオを無理やり繋げたような出来栄えになっています

 

本作は「子ども向けのテレビ番組」を、それを見て育った世代に対して、「リアルだとこうなるよね」というところに訴求ポイントがあったように思います

でも、テレビ版のショッカーってのは「悪の結社で世界征服を目論んでいる」というものだったので、それを人類補完計画に組み込んだ意味がわかりません

魂をチョウオーグの能力で集めて、そこに人類の理想郷を作るというのは、ある意味メタバースの概念に近いところがあります

それを意識しているのかはわかりませんが、人類補完計画という宗教性は否定されていないので、ショッカーはどこかの宗教団体の隠れ蓑(暗喩)なのかとも思ってしまいます

 

個人的には「久々に」はよ終わらんかなあという感覚に襲われてしまったのですが、それの理由は過剰な説明セリフなのですね

個人的には、心情までも全てセリフで語り、状況説明までするというのは「映画としてどうなの?」と思っているところがあります

映像で描けるものがたくさんあるのに、それを放棄あるいは加重によって過剰という状況を生み出しているので、ナンセンスだと思うのですね

予告編はほとんどキャラの喋るシーンがなく、このテイストなのかなと期待していたら、まさかの「いつものヤツじゃないですか」とげんなりしてしまいましたよ(期待した私が悪かったのでしょうけど)

 

シンシリーズの世界観(リアリズム融合)は好きなのですが、過剰セリフは「専門用語だけにしてくれ」というのは本音ですね

ほぼギャグにしか思えない「私は用意周到なの」に始まり、ほとんどのキャラが自己紹介をして、弱点まで晒している感じになっているのは微妙だと思います

 

あと不思議に思ったのは「オーグメントが英語なのに、付随する人外は日本語なんだなあ」という点でしたね

いわゆる「スパイダー・オーグ」ではなく「クモオーグ」みたいなメーミングセンスがガチでやばかったと思います

キャラがなぜか英語を交えるという恥ずかしい感じになっているのに敵キャラ全てが「日本語の動物名+オーグ」だったのはダサすぎてどうにかなってしまいます

むしろ「クモ人間」とかの方が作品の質には合っている感じがしたので、そのあたりは何だかなあと思ってしまいました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/376601/review/b379c48c-1107-458f-9682-f9efae01258d/

 

公式HP:

https://shin-kamen-rider.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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