■ドーピングを重ねた先にあった、レッド・ロケットの発射失敗


■オススメ度

 

はしゃめちゃなおっさんの映画が好きな人(★★★)

倫理観ゼロの映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.4.27(京都シネマ)


■映画情報

 

原題Red Rocket(犬やオオカミの大きくなったアレのこと)

情報2021年、アメリカ、130分、R18

ジャンル:落ちぶれたポルノスターが再起を賭けて未成年をたぶらかすヒューマンコメディ

 

監督ショーン・ベイカー

脚本ショーン・ベイカー&クリス・バーゴッチ

 

キャスト:

サイモン・レックス/Simon Rex(マイキー・セイバー:落ちぶれた元ポルノスター)

ブリー・エルロッド/Bree Elrod(レクシー:マイキーの別居中の妻)

ブレンダ・ダイス/Brenda Deiss(リル:レクシーの母)

Sophie(ソフィー:レクシーの愛犬)

 

スザンナ・サン/Suzanna Son(ストロベリー/レイリー:マイキーが一目惚れするドーナツショップの店員)

 

ジュディ・ヒル/Judy Hill(レオンドリア:マリファナのディーラー)

マーロン・ランバート/Marlon Lambert(アーネスト:レオンドリアの息子、マイキーの同級生)

Brittney Rodriguez(ジューン:レオンドリアの娘)

 

Melary Jones(レオンドリアの友人)

Leigh Ann Welch(レオンドリアの友人)

Seward B. Lott(ジューンの友人)

 

Ethan Darbone(ロニー:レキシーの隣人、マイキーの旧友)

David Maxwell(ロニーの父)

Nate Venz(ロニーと口論になる退役軍人)

Anthony Carvelli(ロニーと口論になる退役軍人)

Gary Fuller(ロニーの弁護士)

 

Shih-Ching Tsou(ファン店長:ストロベリーの雇用主)

 

Vickie Pearce(マイキーを面接するマネージャー)

Bashir Abboud(マイキーを面接するマネージャー)

Kevin Cavanaugh(マイキーを面接するマネージャー)

Caressa Garza(マイキーを面接するマネージャー)

 

Parker Bigham(ナッシュ:ストロベリーの彼氏)

Brandy Kirl(ナッシュの母)

Dustin Hart(ナッシュの父)

Allison Fuller(ストロベリーの家の大家)

 

Najeeb Hassan(ショップの店員)

Debra Johnson(灰皿を1ドルで売るおばちゃん)

Alex Michell(クラブのダンサー)

Curt Smith(Club DJ)

Dimitri Manetas(クラブのオーナー)

Roza Kastis(クラブの従業員)

Nirvana(ヌーディストダンサー)

Zara McDowell(ウェイトレス)

Mason Shortland(マーカス:クラブのオーナー)

 

Andrew Carter(ドーナツショップの客)

Stanley Buffington(ドーナツショップの客)

Daniel Gonzalez(ドーナツショップの客)

Robert Gonzales(ドーナツショップの客)

Zachary Kemp(ドーナツショップの客)

Efrain Avendaño(ドーナツショップの客)

Shawn Harper(ドーナツショップの客)

 

Karren Karagulian(ニュースキャスター)

Darinda Fuller(インタビュアー)

Lindsey Fuller(ニューススタジオのレポーター)

Elisa Silva(現地のレポーター)

 

ドナルド・トランプ/Donald Trump(本人役、アーカイブ)

 


■映画の舞台

 

2016年、

アメリカ:テキサス

 

ロケ地:

アメリカ:テキサス

Donut Hole(ストロベリーの働く店)

https://maps.app.goo.gl/QBoiiVtc7xQ3A2DW7?g_st=ic

 

レキシーとリルの家

https://maps.app.goo.gl/yHHnJyDAa2bP6Can6?g_st=ic

 

マイキーが買い物するショップ

https://maps.app.goo.gl/D1J1UASB67NB3Wpt5?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

かつてポルノスターとして一世を風靡したマイキーは、17年前に最後のビデオを撮って以来、鳴かず飛ばずだった

行く宛のないマイキーは、やむを得ずに別居中の妻レキシーの家を訪ねる

家に一歩も入れない彼女だったが、レキシーの母リルの承諾を得て、何とか転がり込むことに成功する

 

マイキーとレキシーはかつてポルノビデオを一緒に撮影した仲だったが、レキシーが別の道を行くことになってバディは解消していた

近くのショップやレストランで面接を受けるマイキーだったが、紹介元が必要だったりとどこも受け付けてくれない

そこで、リルの友人であるレオンドリアの元を訪ね、マリファナの売人になりたいと懇願する

 

その後、少しのお金を得たマイキーは、リルとレキシーを誘って近くにあるドーナツショップを訪れた

彼らに応対したのはもうすぐ18歳になるストロベリーと言う少女で、マイキーは「彼女のエロさ」に惚れ込んで、ポルノ俳優でトップを目指せるのではないかと思い出す

それから、ショップに通い詰めたマイキーは、少しずつ仲を深め、その店を訪れる製油所の作業員たちにマリファナを捌き始めた

 

テーマ:再起と現実

裏テーマ:改革と持続

 


■ひとこと感想

 

舞台が2016年のテキサスということで、いわゆるトランプ政権が誕生するかどうかという直前の物語になります

主人公はかつてポルノスターとして名を馳せたマイキーですが、彼が受賞していた賞にオーラル賞というものがあって、男性優位的な時代の名残を感じさせます

 

映画は、まさかの「未成年をポルノ女優にしようとするおっさん」を描いていて、よく企画が通ったなあと感心してしまいます

中の人は成人ですが、一応17歳との絡みがガッツリあるので、攻めているなあと感じました

また、ジューン、ロニー、リルは現地採用の演技未経験者ということで、このあたりも『フロリダ・プロジェクト』感があって凄かったですね

 

物語は、ラストシーンをどう捉えるかなのですが、ストロベリーの家が本当のあの家なのかもちょっと怪しい感じがしてしまいますね

真夏に観たマイキーの妄想説というのも否定できないほど、ストロベリーの存在は浮遊感があるものだったと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

テキサスの製油所の近くにある寂れた町を舞台にしていて、まともに職につけないために、マリファナの売人になるマイキーを描いています

彼がどうしてこの地に戻ったのかは描かれませんが、「追われている」というのは確かなようですね

最終的には20ドルが200ドルになりましたが、建設的なことは何もしていないので仕方がないのかもしれません

 

マイキーとレシキーが共にセックスワーカーで、彼女はいまだにネットで「売り」をやっていることが仄めかされています

おそらくは猥褻な動画を撮って送り付けているのだと思いますが、往年のスター女優でもあるので、一定の需要はあるのかもしれません

でも、本番は行っていないようで、それなりに溜まったものがあったのだと思います

 

2人は別居中の夫婦ということで、いまだに籍を抜いていないことに関係性の微妙さ(特にレキシー側)が描かれていました

マイキーがもう少しまともな人間ならと思いますが、結局は妻に内緒で17歳に入れ込んでいる変態でもあるので、身ぐるみを剥がされても仕方のないところでしょう

ちなみに「Red Rocket」とは「犬やオオカミなどの勃起したペニスのこと」を意味します

それをバイアグラを使って奮い立たせているところに中年の悲哀を感じてしまいますね

 


時代背景のおさらい

 

2016年と言えば、アメリカの大統領選挙のあった年で、共和党のドナルド・トランプが民主党のヒラリー・クリントンを破った年でもあります

マイキーたちが住んでいるテキサス州はトランプが勝利した州ですね

映画はトランプ大統領誕生前夜という感じになっていて、この年には色んなことが起こっています

 

2016年のアメリカでは、ミシガン州およびフロリダ州での無差別発砲銃撃事件、カリフォルニア州で凶悪犯の脱獄、アラスカのパブロフ火山の噴火、カリフォルニア&アリゾナで大寒波などがありました

政治的にはオバマ大統領の後任がヒラリー・クリントンで、その対抗馬としてドナルド・トランプが共和党から立候補をします

11月の一般有権者による大統領選でトランプが勝利、12月の選挙人による投票にて第45代アメリカ合衆国大統領に選出されています

 

映画の時期は服装を見ると夏場で、ちょうど大統領選に向けたPR活動が盛んな時期でした

マイキーが選挙に興味があるとは思えませんが、トランプの勝利目前を舞台設定にしているのには意味があると思います

トランプ支持派と反トランプ派で分断が起こったり、彼個人のゴシップなどもたくさんありますね

なので、色んな捉え方ができるのですが、当たり障りのないところだと「男性の傍若無人(失礼!)さ」というところなのかもしれません

 


ラストの解釈について

 

映画のラストに向かう流れは、マイキーが製油所の従業員に売っていたことがバレる→そこを管轄しているマフィアからレオンドリアに警告→レオンドリアがマイキーに詰め寄って金を奪う→200ドルだけを持ってストロベリーの元に向かう、というものでした

ストロベリーはポルノ女優にさせられるとは知らずに、ハリウッドへの夢を見ていた状態で、マイキーに誑かされるという流れになっています

彼女の家の前に着いたマイキーは、そこで「ストロベリーがビキニを着て誘惑する妄想」を抱きますが、彼女の姿は最後まで見えません

 

ラストショットはピンクの家で、その中に誰かがいる気配とか、そもそも人が住んでいる生活感というものはないのですね

なので、本当に彼女の家なのかわからない感じになっていました

この伏線として、マイキーが高級住宅街まで送ってもらうというシークエンスがあって、これと同じことをストロベリーが行なっている可能性があるのですね

 

ストロベリーをレイリーと呼ぶ元カレがいるので、年齢設定は17歳なのだと思います

彼女はマイキーにその名前を呼ばせず、ずっと「あだ名(感覚的には源氏名)」で呼ばせていて、マイキー自身も彼女をすでに芸名で呼んでいる印象があります

ストロベリーにも家族はいると思うのですが、あの戸建てにはいないとすると、あの場所はフェイクのように思えてきます

なので、マイキーはストロベリーの本当の家を知らないまま、あの場所に来たのかなあと思いました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、アラフォーが17歳をポルノ女優にしようと企む話なのですが、ストロベリー側もマイキーを業界人として見ていて、それを利用しようとしていたことがわかります

ストロベリーがマイキーの素性を知らなくても、狭い世界なので何かしらの噂話を聞いていた可能性もあります

最終的にストロベリーは店を辞めたので、あの家でストロベリーに会えなければ、一生会えないかもしれません

物語の流れを考えると、マイキーはすべてを失うキャラなので、ストロベリーとうまく行くという方向性はなさそうに思えます

 

物語の延長線上は「ご想像にお任せします」という感じですが、「妄想→現実」という流れを汲むシナリオの場合、基本的には「バッドエンドである」というのがお約束でしょう

なので、あの家に来たけどストロベリーはいないし、あの家は「すでに売りに出されたかモデルハウスだった」ということも考えられます

突き落とすエンドも因果応報的かつ倫理的な落とし所で面白いと思いますが、絶望すらさせない放置というのも効果的な手法のように思えます

 

マイキーはストロベリーと会ってひとときの夢を見ていて、その夢はとてつもなく危険なものだったかもしれません

よくよく考えれば、ストロベリーはうまいぐあいにマイキーを利用していて、つきまとっていた元カレとの別れる口実に使ったり、店を辞めるきっかけにしたりしていました

彼女が本気でハリウッド女優を目指していたのかはわかりませんが、若気のノリで大人を揶揄ったようにも思えますね

結局のところ、若い子に入れ込んですべてを失うのがマイキーなので、まさしく「真夏の夜の夢」だったのかもしれません

 

映画のタイトルは「レッド・ロケット」で、これは動物(主に犬やオオカミ)の勃起したペニスという意味があります

このレッド・ロケットを飛ばすためにバイアグラが必要なマイキーは、男性としてはピークを過ぎているのだと思います

ドーピングにドーピングを重ねてきましたが、何かを追いかけるには遅すぎたという印象がありますね

せっかく妻との生活も復調しそうになったのに自分から壊してしまうのですから、本当に救いようがありません

男性にとっては、妄想と現実の境界線が見える反面教師的な映画だったように思いました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/386864/review/d4d36352-14dd-4733-bbfa-2dc2a720d748/

 

公式HP:

https://www.transformer.co.jp/m/redrocket/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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