■ビームライフル競技に目覚めた方が映画には合っていたかもしれない


■オススメ度

 

ワン・シチュエーション・スリラーが好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.8.30(T・JOY京都)


■映画情報

 

原題:Mira por mí(「私に気をつけて」という意味)、英題:See for Me(「私のために見て」という意味)

情報:2021年、カナダ、93分、G

ジャンル:猫シッターとして豪邸に入った盲目の女性が、強盗に襲われる様子を描いたワン・シチュエーション・スリラー

 

監督:ランドール・オキタ

脚本:アダム・ヨーク

 

キャスト:

スカイラー・ダペンポート/Skyler Davenport(ソフィ・スコット:網膜色素症を発症する元スキー選手、猫シッターのバイトを始める)

ナタリー・ブラウン/Natalie Brown(ソフィの母)

 

ジェシカ・パーカー・ケネディ/Jessica Parker Kennedy(ケリー:フロリダ在住のFPSゲーマー、元軍人、アプリ「See  for Me」のサポーター

Keaton Kaplan(カム:パラリンピックを薦めるソフィーの友人)

 

ローラ・ヴァンダーボード/Laura Vandervoort(デボラ:ソフィーに猫シッターを依頼する女性)

キム・コーツ/Kim Coates(リコ:デボラの夫)

 

ジョー・ピング/Joe Pingue(デイヴ:金庫破りをする強盗)

パスカル・ラングデール/Pascal Langdale(アーニー:強盗のリーダー格)

ジョージ・チョートフ/George Tchortov(オーティス:強盗の見張り番)

 

エミリー・ピッグフォード/Emily Piggford(ブルックス:通報を聞きつけて駆けつける地元の保安官)

 

Matthew Gouveia(キャビー:タクシーの運転手)

Stuart Clow(TVアナウンサー)

Nathalie Toriel(アプリ「See for Me」のデジタルアシスタント)

Drew Tyce(ガイドビデオの音声)

 

Bentley the Cat(アーチー:デボラの愛猫)

 


■映画の舞台

 

アメリカ:ニューヨーク北部郊外

シックス・ゴールデン・レーン

 

ロケ地:

カナダ:オンタリオ州

 


■簡単なあらすじ

 

スキーのダウンヒルのトップスキーヤーだったソフィは、網膜色素症を発症し、選手生命を絶たれてしまっていた

今ではシッター業で富豪の家に行き、そこで友人カムに目の代わりになってもらって窃盗などの悪事を重ねてきた

 

ある日、デボラというNY郊外の富豪の依頼を受けたソフィーは、タクシーに乗って山奥の邸宅へと向かった

あたりには民家もない僻地で、デボラは夫と離婚したばかりだと言う

 

彼女の猫アーチーの面倒を見るソフィーだったが、誰も訪れないはずの豪邸に侵入者が来たことを察知する

ソフィーは警察に連絡し、事前に登録しておいた視覚障害者用のアプリ「See  for Me」を起動させた

 

そこにはFPSゲーマーのケリーがいて、彼女の目を通じて豪邸の状況を探ることになった

男たちは誰かの命令でその家の金庫破りをする目的で侵入していて、彼らは家に誰もいないと思っていた

 

ほどなく地元の保安官ブルックスが訪れるものの、事前に口裏を合わせる約束をしてしまったソフィーは、家にブルックスを迎え入れて、気のすむまで捜索をさせた

 

そんな折、ブルックスの元に一つの報告が入る

それは、ケリーを通じて送られた情報を元にしてたどり着いた無線だったのである

 

テーマ:盲目と油断

裏テーマ:献身と残像

 


■ひとこと感想

 

ワン・シチュエーション・スリラーということで盲目の元スキーヤーが猫シッターで訪れた豪邸にて、強盗に襲われる顛末を描いていきます

主人公はどうしようもないクズ設定という珍しいもので、特に視覚障害者の性格と行動を最低にしたというのはこれまでになかったかもしれません

 

母の過剰な介入に嫌気を指すぐらいならわかりますが、豪邸でシッターをしながら盗みを働く常習犯というのは斬新な設定で、しかも「障害者は見過ごされる」という確信犯というのがヤバすぎます

おそらくは色んな団体からクレームが来そうな案件ですが、「平等に扱え」と常日頃言っている主張を持ち出せば何も言えなくなるかもしれません

 

とは言うものの、武力的に立場が弱い存在のエスケープと言うものは感情移入されやすくて、その感情を逆撫でするかの如く、犯人と協定を結んだりと無茶な行動が悪目立ちしています

生き残るためとは言いながらも、結局は金銭欲に負けてしまっているし、被害者なのか加害者なのかうやむやになっているところを観客がどんな感情で捉えれば良いのか悩んでしまいますね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

元スキーヤーと言う設定はほとんど関係なく、単純に盲目の女性をFPSゲーマーが助けるだけとなっていました

友人の存在も軽く、逃げる時にスキーで逃げるとかあるのかなと思っていましたが、全て室内で完結することになりました

 

逃避と戦闘のどちらかに偏ることもなく、その原因がソフィの金銭欲と言うところに同情の余地がありません

最終的には200万ドルくらいはポケットにないないしているので、それはダメでしょと思ってしまいます

 

そもそも、このバカな設定を「障害者は罪を見過ごされやすい」と言う一言で片付けるのがバカバカしくて、現場で警官に助けられたソフィの荷物が調べられないなんてことはありません

なので、いくらなんでも「人が四人も死んでいる現場(+警察官)」で障害者が見過ごされると言うのは理解の範疇を超えるでしょう

 

最終的に釈放されると思いますが、所持品検査は確実に行われるので、ソフィだけが現場から悠々と私物を持って帰られるとは思えません

 

それ以外にも、発砲への抵抗も恐ろしく低く、画面越しのケリーも楽しそうに「Fire!」とか言ってるのは微妙でした

彼女の過去も少しだけ浅掘りして、あとは放置だったので、かなり乱暴な脚本になっていると感じました

 


視覚障碍者のスポーツについて

 

パラリンピックをはじめとして、視覚障碍者のスポーツは色んなものがあります

ゴールボールと呼ばれる「鈴の入った音の出るボール」を使うものから、グランドソフトボール、フロアバレーボール、サウンドテーブルテニスなどの球技や、相撲、柔道、ブラインドボクシングなどの格闘技、映画でも登場するアルペンスキー、クロスカントリー、バイアスロンなどがあります

その他には将棋、麻雀、チェスなどもあって、特殊な盤を用いてゲームをします

基本的には「音」を頼りに競技を行うので、ゲーム中は静かにするというのがマナーとなっています

 

ソフィはダウンヒルの選手で、これはアルペンスキーの種目の一つで「滑降」と呼ばれるフラッグを軸に坂を降りていく競技です

アルペンスキーはダウンヒルの他にスーパー大回転、大回転、スラローム、スーパーコンビなどがあります

レースにはクラスというものがあり、それは障碍の状態によって区分されます

「LW」クラスは「立位」可能なクラスで、下肢、上肢、上下肢の重度から軽度などで区分され、「LW1」から「LW12−2」まで11段階あります

この中の「LW10」から「LW12」のクラスは「座位」のクラスになっています

ソフィは視覚障碍者なので、上記のクラスではなく「B1」「B2」「B3」のクラスになります

ちなみに立位をスタンディングと言い、座位はシッティング、視覚障碍はビジュアリーインペアードというカテゴリーとして紹介されるそうですね

 

厚生労働省による「生活のしづらさなどの関する調査(全国在宅障碍児・者等実態調査)」による日本における視覚障碍の数は約31万人(平成28年度)で、同時点での障碍者総数428万人に対して約7.3%となっています

世界でどれだけの視覚障碍者がいるのかを調べてみましたが、明確なデータはなく、WBU(世界盲人連合)のデータだと全盲が3900万人、弱視が2億4600万人というものくらいしかわかりませんでした

実際に全数把握するのは困難で、主要国の統計だけではわからないのが現状でしょう

 


視覚障害の原因

 

日本の失明原因の主な病気は「糖尿病性網膜症」「緑内障」「網膜色素変性症」「網膜剥離」「強度近視」「ベーチェット病」などがあります

映画のソフィは「網膜色素変性症」で、これは遺伝性素因で起こることが多いとされています

遺伝形式としての常染色体劣勢遺伝が多く、両親に血族結婚が見られることが多いとされています

夜になると見えにくいなどで眼科受診をして発覚することが多く、周辺視野異常、求心性視野狭窄(全体的に見えにくくなること)などが起こります

 

私個人も糖尿病があるので、年に1回は眼科受診を勧められます

日本では270万人の糖尿病患者がいて、予備軍も入れると成人の27%に相当します

毛細血管に負担がかかって、網膜出血が起きるとそれが失明に結びつくケースがあります

なので、定期的なチェックで、網膜内の血管の損傷(出血痕)などの有無を調べることで、予防をしようという考え方になっています

基礎疾患を治すことが前提で、それに取り組んでいますが、5年前にIga腎症を発症し、その際にステロイドパルス治療を行なった際は血糖値の上昇をコントロールすることに細心の注意を図って入院しましたね

今ではIga腎症自体は改善され、投薬によるコントロールでHbA1cは基準ちょっと上ぐらい、腎機能は大幅に改善されるところまできました

 

余談ではありますが、私がIga腎症になった原因はおそらくは5年前に引いた風邪でした

この年の健康診断で尿蛋白が急上昇し、翌年も高い値が続いて腎生検をして発覚しました

風邪による炎症で、それを倒すための免疫が異常につくられ、それが腎臓を攻撃したとされていて、下手すれば風邪を引いただけで透析を受けることになるというリスクを知りました

なので、定期的な健康診断は可能な限り受けて、要再検査などはきちんと受けるようにしましょう

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は視覚障碍者が犯罪に巻き込まれるという内容で、それを手助けするのがFPSゲーマーという設定になっていました

ケリーからすれば「自分の思い通りに動かないアバター」みたいになっていて、それが緊張感を生んでいるといえます

ソフィのスマホを通じて視覚情報を得るケリーが、ソフィに的確な指示を出せるかということなのですが、あの暗さでどこまで見えるのかは謎だと思います

そのあたりはスマホのライトで照らした範囲だけ見えるという感じになっていて、そのライトはこちらの場所を特定させるリスクは常にありました

 

その後、銃を手にしたソフィはケリーの指示のもとで発砲を繰り返しますが、ゲームとは違い実射をするソフィーにはこれまでに感じたことのない反動というものを感じます

なので、ゲームほど精度の高い銃撃を行うのは至難の技で、銃撃に対するソフィーの戸惑いなども生まれてきます

このあたりはソコソコ忠実に作られていて、ケリーがイライラする展開などがありますが、銃撃はそれほど簡単なものではないのは普通のことでしょう

でも、一発撃つとそのトリガーが外れるのでしょうか

その後は面白いように撃っていくのですが、これがほとんど的に当たるというファンタジーになっています

 

現実的なことを考えると、被弾した何人かは致命傷にならず、その後襲ってくるというのは十分考えられます

本作ではそのリスクがないままに進むので、明確に相手にとどめを刺すという残虐性(確実性)というものがあったも良かったのかなと思います

撃たれて死んでいる相手を撃つのは、動いている相手を撃つよりは簡単なので、それを冷酷に行うマインドがあれば可能なのかなと思ってしまいました

最初の敵が銃撃で死なずに襲ってくるというシークエンスがあれば、その後「トドメを刺さなければならない」モードに入るので、二人の間に必要性が生まれたかもしれません

 

これら一連の銃撃の正確率ならパラリンピックでクレー射撃とかやった方が凄そうですね

ソフィの場合だと、スキーと併用となる「バイアスロン」という競技があるので、ゆくゆくはそっちでも金メダル狙えるんじゃないかと思ってしまいます

バイアスロンは滑走→射撃→周回コース滑走を繰り返す競技で、射撃はソフィだと音で的の位置がわかるビームライフルを使用することになります

この映画の流れだと、カムと滑走にトライするよりは、ビームライフルに目覚めて彼が驚くという方がユーモアがあったかもしれませんね

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/383289/review/77071485-28ae-488a-91e2-3d2cfefbe84a/

 

公式HP:

https://klockworx-v.com/seeforme/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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