■この映画を観て、マリオメーカーで再現するところまでがデフォなのかも知れない
Contents
■オススメ度
スーパーマリオで遊んだことのある大人(★★★)
冒険ファンタジーが好きな子ども(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.4.28(MOVIX京都 ドルビーシネマ)
■映画情報
原題:The Super Mario Bros. Movie
情報:2023年、アメリカ&日本、94分、G
ジャンル:ブルックリンのしがない配管工の兄弟が、キノコ王国の救世主として活躍する様子を描いたアクション・ファンタジー
監督:アーロン・ホーバス&マイケル・ジェレニック
脚本:マシュー・フォーゲル
原作:任天堂『ドンキー・コング』『マリオ・ブラザーズ』シリーズ
キャスト:(吹替はわかっている分だけ)
宮野真守/クリス・プラット/Chris Pratt(マリオ/Mario:ブルックリンで配管工を営む兄)
畠中祐/チャーリー・ディ/Charlie Day(ルイージ/Luigi:マリオの弟)
間宮康弘/セバスティアン・マニスカルコ/Sebastian Maniscalco(スパイク/Spike:マリオを蔑むブルックリンの男)
チャールズ・マーティネ/Charles Martinet(ジュゼッペ/Giuseppe:マリオの父)
ジェシカ・ディ・シコ/Jessica Di Cicco(マリオの母)
リノ・ロマノ/Rino Romano(トニー:マリオの叔父)
ジョン・ディマジオ/John DiMaggio(アーサー:マリオの叔父)
三宅健太/ジャック・ブラック/Jack Black(クッパ大王/Bowser: ピーチ姫をこよなく愛する大王)
浦山迅/ケヴィン・マイケル・キチャードソン/Kevin Michael Richardson(カメック/Kmec:クッパ大王の手下)
Scott Menville(ノコノコ将軍:クッパ大王の手下)
カリー・ペイトン/Khary Payton(ペンギン王/Penguin King:ペンギン国の王様)
志田有彩/アーニャ・テイラー=ジョイ/Anya Taylor-Joy(ピーチ姫/Princess Peach:キノコ王国のお姫様)
関智一/キーガン=マイケル・キー/Keegan-Michael Key(キノピオ/Toad:キノコ王国でマリオの手助けをするキノコ)
エリック・バウザ/Eric Bauza(キノピオ将軍/Toad General:キノコ王国の将軍、ピーチ姫の参謀)
楠見尚己/フレッド・アーミセン/Fred Armisen(フランキー・コング/Cranky Kong:ジャングル王国の王様)
武田幸史/セス・ローゲン/Seth Rogen(ドンキー・コング/Donkey Kong:フランキーの息子)
山根あん/ジュリエット・ジェレニック/Juliet Jelenic(よろずやチコ/Lumalee:可愛い顔して絶望的なことをいう星の姿をした囚われのキャラ)
木村昴(冒頭のラップ)
【その他の声優:役名は不明】
Carlos Alazraqui
Jason Broad
Ashly Burch
Rachel Butera
Cathy Cavadini
Will Collyer
Django Craig
Willow Geer
Aaron Hendry
Andy Hirsch
Barbara Harris
Phil LaMarr
Jeremy Maxwell
Daniel Mora
Eric E. Osmond
Noreen Reardon
Lee Shorten
Cree Summer
Nisa Ward
Nora Wyman
■映画の舞台
アメリカ:ニューヨーク
ブルックリン
キノコ王国
ペンギン王国
■簡単なあらすじ
ブルックリンで配管工をしているマリオとルイージは、自分たちのCMを作って大喜びをしていた
これで仕事がたくさん入れば、バカにしている家族を見返せると思っていた
そんな折、高級マンションの水漏れ修理の依頼が舞い込む
順調に仕事をしていたが、その家の愛犬の骨を踏み潰してしまったことで恨みを買ってしまい、それによってドタバタ騒動が起こってしまう
水栓も何もかも破壊してしまった2人は、成果のないまま家路に向かうことになった
そんな時、ブルックリンのある地域で大規模な水害が起こっていることが判明する
汚名返上のチャンスとばかりに現地に赴いた2人は、その地下にて、巨大なバルブと配管の群れを見つける
その中には大きな土管もあり、ルイージがそこに足を踏み入れると一瞬にして消えてしまう
マリオもルイージを追って土管に入るものの、そこは不可思議なトンネルになっていて、2人は別々の出口に行ってしまった
マリオが行き着いたのはキノコだらけのキノコ王国で、そこに住むキノピオにルイージの居場所を尋ねる
するとキノピオは、「そこはダークランドだから、ピーチ姫の助けが必要だ」という
そこでマリオはキノピオと一緒に、キノコ王国の城に向かい、ピーチ姫に会うことになったのである
テーマ:兄弟愛
裏テーマ:諦めない心
■ひとこと感想
「スーパーマリオ」の3Dアニメーションということで、どんなクオリティになるのか楽しみで初日に参戦しました
縁があって、ドルシネの3D字幕を観ることになりましたが、字幕の出る位置が独特なので、あまり前じゃない方が良いと思います
また、3Dメガネのフレームの大きさを考えると、真ん中からやや後ろ目の方が3D版の場合は良さそうですね
物語は、ポリコレっぽい改変が加わって、「マリオとピーチ姫がルイージを助ける」というものになっています
槍を持って、バイクに跨って戦うピーチ姫はかっこよくて、原作のような「助けられるのを待っている」という雰囲気は微塵もありません
映画は映像を楽しむもので、アクションシーンが結構激しいので、4DXとかでも面白いかもしれません
吹替も変な起用がないので抵抗がないですし、世界観を味わうには吹替版の方が良いかもしれません
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作にネタバレがあるのかは分かりませんが、個人的には「クッパかわいそうだなあ」と思って、ちょっとばかし同情心が芽生えてしまいましたね
世界征服をしたいのか、ピーチ姫と結婚したいのかよくわからない目的がありますが、強いお姫様よりも強くありたいという願望があるのかもしれません
物語は、いわゆる異世界転生もので、土管の先にあったキノコ王国の問題を解決するというものになっています
そして、クッパ大王たちがニューヨークに街に現れて大暴れ!という感じになっているので、ワクワク感が止まらない感じに仕上がっていますね
映画には、原作のイースターエッグが至る所に散りばめられていて、マリオのゲーム性が意外なシーンで再現されていたのは面白かった
親子で安心して観られる映画だと思うので、ゴールデンウィークに観る作品としては、ハズレのない選択であると思います
■ゲームを再現することの意味
本作は好意的なレビューが多い反面、「誰かのゲームプレイを見ているだけでつまらない」というものも良く目にします
この「ゲームプレイを再現」という映画はさほど多くなく、それをつまらなく感じるのは、「キャラクターの行動や結果も定められたもの」という視点があるからだと思います
この逆のマインドで、「誰かのプレイを見て楽しむ」という文化もあって、これが昨今ではYouTubeをはじめとしたSNSプラットフォームで行われる「ゲーム実況」というジャンルになります
このゲーム実況の面白さは、自分がプレイをしているとより面白く、そうでないとデモンストレーションを見せられている気分になります
ネット上に限らず、街角のゲームセンターでも「音ゲー」のプレイを眺めたりすることがありますが、個人的には「音ゲー」をしたことがないので、すごいプレイがあっても良くわからないのですね
なので、「へぇ〜」みたいな感じで距離感があるので、この映画でもそのマインドになる人がいても不思議ではありません
ゲーム再現だと全てが予定調和に見えて、結局はマリオが勝つんでしょという見方になります
このマインドの観客にサプライズをもたらせるには「どうやってマリオが勝つか」というところになるのですが、映画は「マリオの勝利までもゲームプレイの一環のように見せる」という演出がなされています
アイテムの力でマリオがクッパ大王を倒すという結末は、「マリオの力で勝ち取った」と言えるか微妙なところで、最後は「ゲームでは見られない倒し方」を期待した層は少なくないのかもしれません
私個人も「ああ、スターでやっちゃうのね」と思ってしまった方で、マリオとルイージで工夫して倒して欲しかったというのが本音でした
それよりも、スターで優位に立つけど、スターの時間切れによって再度ピンチになる、というシナリオがあった方が良かったと思ったのですね
敵の軍団をスターでやっつけたけど、クッパ大王を倒しそうになった時に「スターの効力が切れる(ゲームだと8秒〜10秒)」という流れですね
ゲームとしても10秒程度の無敵状態なので、それに準じても良かったのではないかと思いました
本作は、ゲームを映画内で再現し、そのクオリティの高さは「ゲームでは味わえないもの」だったと思います
このCGクオリティでゲームを作ったら開発費だけで凄いことになってしまって、おそらく採算を取るのは難しいと思います
実際にこのCGでゲームを作ることができるのかは分かりませんが、ゲームの場合は「映画で描かれていないステージ(選択しないシナリオ)」というものが複数存在するので、それを全部作り込むとしたら「ヤバい」以外の言葉が見当たりません
映画だからできたという側面もありますが、たった一つのストーリーだからできたという意味合いの方が大きいように思えました
■ゲームのPR映画としての役割
本作は「ゲームのPR映画」になっていて、原作ファンを対象としたイースターエッグ(細部に散りばめられたオマージュや小ネタのこと)を探す映画になっていたと思います
個人的には「ドンキーコング」と「マリオブラザーズ」「スーパーマリオブラザーズ」までしかプレイしたことのない世代で、「マリオカート」「マリオメイカー」に関しては名前は知ってるけどというレベルでした
なので、イースターエッグに関する記事を描くのは難しく、それを探している人は別のサイトを当たってもらったほうが良いと思います
映画でゲームのPRをする効果は、これまでの既存のゲームへの回帰と同時に、新作提供の場にもなると思います
でも、本作では「既存への回帰」だけに留まっていて、新作ゲームを同時に売り出して、その機能を映画には組み込んでいませんでした
実際にこれをしてしまうと、観ている側の理解できないゲームシステムが登場するために困惑をもたらします
また、映画が新作のコマーシャルだったということは反発を招くので、あまり良い作戦ではないでしょう
広告というものが巧妙な時代において、映画がステルスマーケティングになると色々とヤバいのですね
過去の作品を取り扱うのは良いのですが、新作や現在進行形を取り組むと、途端に商業度が上がってしまいます
そうすると、純粋に映画を楽しめずに、「広告だったのか」と落胆を生んでしまいます
広告というのは「広告主がお金を払って見てもらう」というスタンスがあって、映画鑑賞料金を払った側はそれを見たいとは思っていません
なので、この顧客側の心理を見誤ると、バズるどころか反感を買うだけの炎上商法になってしまう可能性がありました
本作は、その危険性を察知したのかわかりませんが、そう言った見え透いたタイアップを行なっていないのが好感を持てる要因になっているのだと感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作のテーマは「兄弟愛」になっていて、兄弟が協力して難敵を倒すというシナリオになっていました
その目的が「ピーチ姫を助けるため」という、「本来のゲームの目的と違うところ」に面白さを感じます
原作のゲーム設定がどんなものかは詳しくありませんが、元々同じ世界にいて、キノコ王国に連れ去られたピーチ姫を助けに来たというものでなければ、いきなり異世界にいるお姫様を救おうというマインドにはなりません
映画では、迷い込んだ先にピーチ姫がいて、彼女の目的はクッパ大王を止めることですが、マリオの目的は「クッパ側にいるかもしれないルイージを助ける」というものになっていました
このあたりのシナリオのすれ違いが映画の質に関係していましたね
もし、クッパ大王が「ルイージを目的のための交渉材料に使う」という流れになると、話がややこしくなり過ぎます
元々、マリオにはクッパ大王を止める目的がなかったのですが、彼らがブルックリンに来たことで、彼を止める目的が生まれたのですね
それまでは、ルイージオンリーだったマリオに街を守るという使命感が生まれていました
マリオとルイージは「街の人の困りごとを助ける」というポジションの人物で、「人の不幸が生活の糧になる」というタイプの職業になります
冒頭の高級マンションでも「仕事受注の際に本音が漏れる」というシーンがあって、このあたりに「人から感謝される存在だけど手放しで喜べない」という複雑な設定が見え隠れしていました
クッパ大王から街を守るという構図も「街の人の不幸」が根底にあるので、本来ならば手放しでは喜べない事情があったりします
でも、クッパ大王は水道管ワープで現れた異世界の住人で、ブルックリン民の生活に組み込まれた存在ではありません
クッパ大王による危機はマリオたちにも同等のものであり、街全体で迎撃するべきものを代表して戦っていることになります
なので、マリオの勝利は「配管を治す」という日頃の不幸とは違った質のものになっていました
ラストでは、キノコ王国で過ごすマリオが描かれるのですが、ブルックリンを捨てたのか、自由に行き来できるようになったのかはわかりません
おそらく後者であると思うのですが、マリオたちがより居心地の良い場所に行った可能性もありますね
なので、少しだけビターなテイストになっていたように思えました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385163/review/bbda6020-499b-4bda-b27b-fec15f759276/
公式HP:
https://www.universalpictures.jp/micro/super-mario-bros