■何を観察するかで理解は変わるけれど、日常を知るには日常を視るしかないように思えます


■オススメ度

 

奇妙なホラー映画が好きな人(★★★)

ナイト・シャマランの世界観が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.6.22(イオンシネマ久御山)


■映画情報

 

原題:The Watchers(観察者たち)

情報:2024年、アメリカ、102分、G

ジャンル:ある森の奥にある小屋に囚われる人々と、彼らを「視る」存在を描いたホラー&スリラー映画

 

監督&脚本:イシャナ・ナイト・シャマラン

原作:A・M・シャイン『The Watchers』

Amazon Link(原作小説:英語版)→ https://amzn.to/4cA6A9h

 

キャスト:

ダコタ・ファニング/Dakota Fanning(ミナ:ペットショップで働くアメリカからの移民)

   (少女期:Hannah Dargan

 

オルウェン・フエレ/Olwen Fouéré(マデリン:森でミナを助ける老女)

ジョージナ・キャンベル/Georgina Campbell(キアラ:謎の建物の住人)

オリバー・フィネガン/Oliver Finnegan(ダニエル:謎の建物の住人)

 

アリスター・ブラマー/Alistair Brammer(ジョン:助けを求めて外に逃げたキアラの夫)

 

John Lynch(キルマーティン:森を研究している教授)

 

Siobhan Hewlett(ミナの母)

ダコタ・ファニング/Dakota Fanning(ルーシー:疎遠になっているミナの双子の姉)

   (幼少期:Emily Dargan

Morgan Bailey-Rocks(ルーシーの息子、弟)

Christian Bailey-Rocks(ルーシーの息子、兄)

 

Joel Figueroa(ダーウィン:インコの声)

 

Thabile Michelle Hlongwane(ニュースキャスター)

 

Anthony Morris(バーク:ペットショップの店主)

Shane O’Regan(コリン:ミナのゆきずりの相手、バーの客)

 

Jim Tighe(バスの運転手)

Zarima McDermott(大学生)

Eabha Connolly(赤毛の少女)

 

Hannah Howland(クロエ:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Kya Brame(ジョージア:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Ffion Haf(ダリア:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Shannon Antonia(ターニャ:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Kofi De Graft Jordan(ボビー:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Charles Camrose(コナー:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Charlie Mann(ロミオ:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Jacob Greenway(ヨルダン:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Andrea Bechis(ドム:「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

Cara Steele(ミリー「愛の隠れ家 シーズン3」の出演者)

 

Seán T. Ó Meallaigh(「Watcher」の声)

 


■映画の舞台

 

アイルランド:ゴールウェイ

ベルファスト郊外のバンカー「The Cope」

 

ロケ地:

アイルランド

 


■簡単なあらすじ

 

アイルランド西部にて、ペットショップで働いているミナは、幼い頃に事故で母を亡くし、それ以来、双子の姉ルーシーとも疎遠になっていた

ある日、店長から客にインコを届けるように頼まれたミナは、車にて郊外の森を突っ切ることになった

 

だが、森の中で車が故障し、ラジオもGPSも使えなくなってしまった

さらに、助けを求めて森を彷徨っていると、今度は乗ってきた車もどこかに消えてしまう

 

日が落ちてきた頃、ミナは森の中で動く影を見つける

その人物は、「生き残りたければ走れ」と言って、どこかへ言ってしまう

そして、たどり着いた先には、コテージのような場所があり、その一面は内側が鏡で、外側から中が見える作りになっていた

 

助けてくれたのは老女のマデリンで、その小屋にはキアラとダニエルという若者がいた

そして、キアラの夫は外に助けを探しに行って戻ってこないという

さらに、夜になるとこの子屋の中身を見るために「あるもの」がやってくるという

そして、その「あるもの」を彼らは「ウォッチャーズ」と呼んでいたのである

 

テーマ:観察の先にある真意

裏テーマ:完全なる模倣の正体

 


■ひとこと感想

 

ナイト・シャマランの娘の長編デビュー作ということですが、制作にガッツリと親父さんが入っているので、映画的な雰囲気はよく似ている感じになっていました

いわゆる閉鎖空間ホラーなのですが、意外なほどに出られるのですが、「回帰不能点」という謎の凝った看板までは行けるという感じになっています

 

冒頭では、ある人物が何から逃げていて、回帰不能点に何度も戻ってきてしまう中で時間切れになるという定番の演出がなされます

この人物が、のちに小屋の住人キアラの夫ジョンであることがわかりますが、待っている方の精神状態はかなり落ち着いていたものになっていました

 

映画では、この小屋がマジックミラーみたいな感じになっていて、外からは見えるみたいで、それを見ているのが何者かなのかは意外と早い段階でわかるようになっていました

これに関しては賛否両論のような感じになっていますが、想定内のように思えましたねえ

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

おそらくはアイルランドの民間伝承の類のような元ネタで、妖精と称される人外的な存在と共存していた過去があった、という感じになっています

そして、妖精と人間のハーフという存在が生まれ、それによって関係性が悪化した、という流れになっていました

妖精は何にでも擬態できるので、人間社会の中に溶け込んでいるかも、という流れになっていて、最近の某アニメの侵略者を思い出してしまいました

 

映画は、その小屋にたどり着いて「ルールに従って生きている人」もいて、そこはシェルターか研究所のような場所であることがわかります

その研究がある大学に保管されていて全貌がわかるのですが、妖精と教授のハーフがマデリンということになるのでしょうか

そのあたりはうろ覚えの部分になっていて、とにかく説明が早すぎる印象がありました

 

ラストには赤毛の少女が登場するのですが、それがマデリンが擬態した存在であると思われます

そして、その少女はおそらくは教授とマデリンの娘とそっくりなのでしょう

バスの中にももしかしたらという感じで、ラストで相対することになるルーシーもどこか不穏な感じを思わせました

 


元ネタについて

 

アイルランドと言えば「妖精の国」と呼ばれるように、多くの逸話が存在しています

1888年にはアイルランドの民話集なるものが出版されますが、作者のウィリアム・バトラー・イエイツWiliam Butler Yeats)はそのあとがきの中で「妖精はいまだに存在している」と明記していました

アイルランドの妖精のルーツとしては、彼らの祖先であるケルト民族の時代から存在するもので、それが脈々と受け継がれてきたという歴史があります

ケルト民族は文字を持たず、語りの文化を伝統にしていて、ローマ帝国に支配されるまで、その習慣というものが崩れずにきました

 

アイルランドの神話には「チェンジリング」という伝説があって、これは妖精の赤ちゃんが人間の幼児と入れ替わるというものになります

妖精が子どもを拐って、それを自分の子どもと入れ替えるというもので、チェンジリングされた子どもを育てる親が苦しむとう物語が多くあったりします

民間伝承でも、妖精はイタズラをしたり、家庭に不幸を引き起こすなどの存在として描かれてきました

また、妖精は大人を連れ去ることもあって、その場合は人間と結婚するために、その人間の配偶者になりすますというものがあります

 

このチェンジリングは実際に事件を起こしていて、有名なところだとブリジット・グリアリーというアイルランド人女性が「取り替えられた妖精」だと信じられ、夫に殺されたという事件がありました

本編とはそこまで関わりがないので割愛しますが、大人がそれを信じるほどに浸透している概念であると言えるのかもしれません

本作も妖精は人になりすまし、人と結婚してハーフを作るという現実的な段階まで起こっています

マデリンは人と妖精のハーフでしたが、彼女はそれを知らなかったようですね

あの部屋を作ったキルマーティン博士が捕まえたハーフのようですが、それ以上の細かなところまではわかりませんでした

マデリンがその事実を知り、自分と同じ種族を増やそうと考えていたのかもしれませんが、それにしてはまどろっこしいやり方になっているなあと思いました

 


擬態することの意味

 

本作における妖精と呼ばれる存在は、人間になりすまして近づき、人間を観察することで、その内面まで成り切ろうと努力する存在だったように思います

その目的までははっきりわからないものの、映画内で登場するマデリン、キアラは姿を変えられる存在でした

かつて人間と妖精は共に暮らしていた存在でしたが、いつしかその力が恐れられ、戦いに発展し、翼を奪って森に閉じ込めたことが仄めかされていました

その歴史の中で生き残ったものがあの地に生息し、それを教授が見つけた、という歴史になっています

 

教授は妖精を研究し、観察する目的であの研究所を作り、その中にはマデリンの他にもキアラ、ジョン、ダニエルの4人がいて、ジョンは外に救いを求めたのちに死んでいます

ダニエルもジョンになりすました妖精に殺されていました

どうやら妖精は成り変わる元の個体を殺す必要がありますが、その個体に成り切るために観察をする必要があるのだと思います

 

妖精が人間に成り替わるのは、人間との戦いの歴史があるからだと思います

攻撃を受けずに繁栄するためには、より高度な擬態が必要であり、それは人間の本質を理解する必要もあるのでしょう

あの小屋では特別な何かを観察しているのではなく、人間が見せる何気ない行動を観察していたのですね

それぐらい、人間の素の部分の擬態というのは難しいのだと考えられます

 

人間は、歩く姿だけでも個人が特定できるほどに個々の動きが違う生き物なので、それ以外にも多くの個性的な日常動作というものがあります

長年一緒に暮らしていると、足音や気配だけでわかるようになりますが、それぐらいパーソナルなものというものは溢れかえっています

なので、その全てを理解せずに完全な擬態は難しいのですね

作中でも成り変わりが看過できるのは、人間にだけ備わっている特有の個体識別能力があるかなのかな、と感じました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、伝承をベースにした物語になっていて、その本筋となるのはミナと疎遠の妹ルーシーの物語でした

二人は双子で、瓜二つの存在に思えます

でも、双子は個体は別で、同じ居住空間で過ごしても、同じ人間にはなりません

外見と内面の成長は似て非なるものであり、やがて内面の成長の違いによって、外見にも差異が生まれてきます

 

内面すなわち価値観によって、外見を変える傾向があるのですが、人の表面は内面を可視化し、それを無意識のうちに外部に伝えるという特徴を持っています

喜怒哀楽の表現であったり、他人に見られたい自分というものを意識したりするようになります

そうしたものが全て一致するということはほとんどなく、何かの憧れを持って真似てみても、ある一部分しか成し得ないものだったりします

 

映画でも、ミナとルーシーの生き方はまるで違うし、疎遠になった原因から派生する生き方というものも違っていました

そうした積み重ねによってズレたものというものが冒頭にあったのですが、それが森での体験を越えて、修正がなされていくようにも思えます

その理由は様々だと思いますが、個人的な感想だとミナが擬態してまでも生きようとする生命体に遭遇したからだと思います

そこで、人間というものを改めて見ることによって、自分と似て非なるものの存在の意味というものを噛み締めたのでしょう

ある意味、ミナがこれから行うことは、自分と妹との違いを再確認することと、人間として生まれてきたことの意味を共有しあうことなのかな、と感じました

 

そして、そんなミナを見守る存在として、子どもの姿をしたマデリンというものがいました

マデリはミナの外の世界での行動を観察することによって、より人間に近い存在になりたいのだと思いますが、これは彼女がハーフであることに由来するのでしょう

その目的の差異こそが、妖精と人間の境界線にあるものなのかもしれません

彼女がミナとルーシーを見て何を学ぶのかはわかりませんが、その見識が戦いの歴史の連鎖にならないことを祈りたいものですね

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101335/review/03957119/

 

公式HP:

https://wwws.warnerbros.co.jp/thewatchers/index.html

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投稿者 Hiroshi_Takata

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