■永遠に作れない「ZERO」よりは、「ONE」から始まる神話を楽しんだ方が良いのかもしれません


■オススメ度

 

トランスフォーマーの始まりの物語に興味がある人(★★★)

ぬるぬる動く3DCGに興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.9.24(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:Transformers ONE

情報:2024年、アメリカ、104分、G

ジャンル:オートボットとディセプコンが生まれる過程を描いたSFファンタジーアクション映画

 

監督:ジョシュ・クーリー

脚本:エリック・ピアソン&アンドリュー・バラー&ガブリエル・フェラーリ

原作:ハスブロ『Transformer』

 

キャスト:

クリス・ヘムズワース/Chris Hemsworth(オライオン・パックス/Orion Pax = オプティマス・プライム/Optimus Prime:採掘ロボット、のちのオートボットのリーダー)

ブライアン・タイリー・ヘンリー/Brian Tyree Henry(ディー/D-16 =メガトロン/ Megatron:オライオンの友人、鉱夫、のちのディセプコンのリーダー)

 

スカーレット・ヨハンソン/Scarlett Johansson(エリータ/Elita -1:鉱山長、オライオンたちのリーダーのオートボット)

キーガン=マイケル・キー/Keegan-Michael Key(バンブルビー/B-127:地下エリアで働く元鉱夫、のちのオートボットの偵察兵)

 

エヴァン・マイケル・リー/Evan Michael Lee(ジャズ/Jazz:サイバトロンの鉱夫)

Jinny Chung(アーシー/Arcee:サイバトロン星の鉱夫)

 

ローレンス・フィッシュバーン/Laurence Fishburne(アルファ・トリオン/Alpha Trion:救難信号を発する古代の賢者)

 

ジョン・ハム/Jon Hamm(センチネル・プライム/Sentinel Prime:サイバトロンの英雄的存在)

ヴァネッサ・リグオーリ/Vanessa Liguori(エアラクニッド/Airachnid:センチネルの右腕)

 

アイザック・C・シングルトン・Jr/Isaac C. Singleton Jr.(ダークウイング/Darkwing:アイアコンの採掘場の監視人)

 

スティーヴ・ブシュミ/Steve Buscemi(スタースクリーム/Starscream:サイバトロンの親衛隊のリーダー)

ジョン・ベイリー/Jon Bailey(サウンドウェーブ/Soundwave:サイバトロン親衛隊のメンバー)

ジェイソン・コノピソス=アルバレス/Jason Konopisos-Alvarez(ショックウェーブ:サイバトロンの親衛隊のメンバー)

 

James Remar(ゼータ・プライム/Zeta Prime:プライムの賢者)

 

Steve Blum(アナウンサーボット/Announcer Bot:アイアコン5000の実況)

Jinny Chung(クロミア/Chromia:アイアコン5000の出場者)

 

Josh Cooley(コントロールルームの職員)

Dillon Bryan(負傷したレーサー)

Misty Lee(?)

 

【日本語吹替】

中村悠一(オライオンパックス/オプティマスプライム)

木村昴(ディー/メガトロン)

吉岡里帆(エリータ)

木村良平(バンブルビー)

佐藤せつじ(スタースクリーム)

玄田哲章(アルファ・トリオン)

諏訪部順一(センチネル・プライム)

柚木凉香(エアラクニッド)

稲田徹(ダークウイング)

山本格(サウンドウェーブ)

星野貴紀(ショックウェーブ)

杉田智和(ジャズ)

 


■映画の舞台

 

惑星サイバトロン

アイアコン

 


■簡単なあらすじ

 

宇宙のはるかにあるサイバトロン星では、枯渇したエネルギーを得るために、地下の鉱脈を採掘していた

そこで働く鉱夫のオライオンは、失われたエネルギーの行方を追って資料室に忍び込むものの、そこで管理者のダークウィングに見つかってしまう

オライオンは必死で逃げるものの、他勢に無勢の中、親友の鉱夫ディーことD-16が彼を助けた

 

その後、採掘に戻った二人は、鉱夫長エリータの指示にて掘り進めるものの、そこで落盤事故が起きてしまう

エリータは責任を取らされて廃棄物管理者に降格させられてしまう

 

一方その頃、エリート戦士たちを束ねるセンチネル・プライムは、宿敵クインテッサと戦いを繰り広げるものの、目当てのマトリクスを見つけることはできずにいた

センチネルはアイアコンに戻り、そこで「アイアコン5000」というレースの開催を宣言する

そのレースは選ばれた戦士たちのためのレースだったが、オライオンはそれに参加しようとディーを巻き込むことになった

 

テーマ:友より優先すべき感情

裏テーマ:狡猾なる支配の終焉

 


■ひとこと感想

 

トランスフォーマーに関しては、初期のアニメから観ていて、その後派生したものは年齢的には観ていないという感じの付き合いになっています

実写化されると聞いた時はどうなるんだろうと思っていましたが、思ったよりもメカメカしくて、よくもこの映像を作ったなあと思いました

 

その後の実写化シリーズは全部観ていますが、本作は初めて人間が出てこない作品となっていましたね

彼らが地球に来るはるか昔、今では敵対しているオプティマス・プライムとメガトロンの若き頃となっていました

 

彼らが実は親友関係だったということ、それが壊れてしまった経緯を描いているのですが、悪役が見事なまでにクズなので、ちょっとディーの方を応援してしまいました

ラストはいつものしたり顔でオプティマスが腕組んで語るのですが、あの決めポーズは中の人の影響なのかなあと思ってしまいました

 

あと、エンドロールの後にも映像があって、そこでは「決起集会」が描かれていましたね

今後、この後の戦いがずっと描かれていくのかと思うと胸熱な部分があります

ちなみにドルビー3D字幕で観ましたが、3Dはすぐに慣れてしまいますね

4DXとかの方が動きがあってアトラクションしているかもしれないと思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

トランスフォーマーと言えば、コンボイとデストロンという年齢がバレる初期を知っている者ですが、ようやくオプティマス・プライムという名前に慣れてきましたね

昔の名前がオライオンなのにはびっくりしましたが、この由来もいずれは語られるのかもしれません

 

映画では、親友関係だったオライオンとディーの関係が壊れる様子が描かれるのですが、ずっと気になっていたのは「ディーの目だけ色が違う」のですね

そして、彼が信奉するプライムのコグをセンチネルが奪っていたことで、怒りが頂点に達して闇堕ちしてしまいました

憧れの人が、敬愛する人を殺したという事実に感情は抗えないのも仕方ありません

 

それでも、オライオンよりも復讐を選んだことで亀裂は絶望的なものになって、「永遠に戻らないもの」というものが生まれてしまったのは悲しくもあります

ともかく、前日譚としては満点のシナリオ構成で、この作品が「ONE」というからには、いずれ「ZERO」が描かれる布石なのかな、と感じました

 


感情を抑えるために必要なこと

 

本作は、のちにメガトロンとなるD-16のパラダイムシフトを描いていて、それが感情に支配されていく様子を描いています

D-16とオリオンは鉱夫として働いていて、その星には英雄となるセンチネルがいました

D-16はセンチネルにも憧れがありましたが、星のために戦っていたメガトロンのことを崇拝していました

センチネルが裏切り者で、メガトロンから奪っていたことを知ることで、二つの感情がミックスされて憎悪へと変わっています

 

実際にここまで負の感情を作り出す要因が重なると難しいと思いますが、D-16はオリオンを手放すという「判断」をしています

これは一時的な感情に踊られたというよりは、明確な判断でオリオンと袂を分つ覚悟を持ったと言えます

そして、センチネルを粉砕したD-16はメガトロンとなり、自分の理想とする集団を作る方向へと向かってしまいます

彼は引き返せる道を知っていたけど引き返さなかった

そこに、この物語のターニングポイントがあったように描かれています

 

センチネルが裏切り者であることは星の全員が周知することになりましたが、センチネル亡き後の星を取り戻す層と、新たな理想郷を追い求める層との間で分断が起こってます

どちらのリーダーについていくのかが迫られる中、D-16の強さを信奉する者と、自分も星の住人として関わるという民主的な層に分かれているのですね

星に残ったものはオリオンをリーダーとして認めますが、これは推薦&合議によるものとなっています

この構図はアメリカ社会の生き写しのようなものになっていて、常に強いリーダーが国を引っ張れば良いと思っているアメリカ・ファーストの層と、民主主義国家としてリーダーを選出しつつも自らも国の運営に関わる層という感じになっています

どちらが良いということは言えませんが、短期的な繁栄ということならば、リーダー性よりも絶対王政の方が有利のように見えてくるのは不思議だなあと感じました

 

映画では、一時の感情がD-16を間違った方向に向かわせたというように見えますが、実際には一番冷静だったのがD-16だと思います

大敵と戦わざるを得ないサイバトロン星の復活を考えるよりは、別の場所でその防衛を傍観しながら機会を伺う

サイバトロン星を守る戦いが終わった後で漁夫の利を得ると考えれば、これほどまでにしたたかなこともないでしょう

なので、「感情に踊らされているふりをする」というのが、感情をコントロールする最も有効的な方法なのかもしれません

 


「ZERO」を予想してみる

 

本作は、数多くある「トランスフォーマー」シリーズの新しい物語ですが、これまでのシリーズの「ONE」となる原点を描いていることになります

いわゆる、サイバトロン星におけるオプティマス・プライムとメガトロンの諍いが生まれた理由を描いていて、この物語の前には「センチネルの暗躍」とそれに付随するサイバトロン星の戦いというものがありました

なので、思いっきり「前日譚のあるONE」なのですが、この前日譚をあえて映画にする意味はないと思います

 

今後は、この路線のまま「新しいトランスフォーマーの世界」というものをフルCGで描いていくことになると思いますが、彼らが地球にたどり着くまでというのがセットになってきます

とは言え、今後その路線に直ぐにいくというよりは、サイバトロン星の誕生とか、先の戦いに向かった理由とか、サイバトロン星の資源の枯渇に至るまでを描くのが先だと思うのですね

なので、「トランスフォーマーZERO」というものを、いつの日か作り上げる必要が出てくると言えます

 

本当の「ZERO」が作られるとしたら、それは「生命体の誕生」であり、機械的な肉体の獲得に至る物語になると考えられます

生命の起源を考えると、有機体の出現から細胞分裂と進化をいう過程を踏みますが、無機体である彼らがどのようにして生まれたのかは興味があります

鉱物を外殻にする生物はいますが、彼らの場合は「それを繋ぎわせるものも全て無機物」になっていて、彼らを動かす動力としてのエネルギー体というものがあります

地球における生命の進化は学校で習ったようなものですが、その他の星や生命体に関しては、今ある知識で括れないものも多数存在します

なので、人類が精製して作り出すような無機物なども自然発生するかもしれないし、そのような個体にも実は遺伝子配列を含んだDNAのような「形を維持する命令系統」のようなものがあるかもしれません

 

人類のような生命体とは全く違う出自を描くことになるのですが、そこに到達するにはかなりの想像力を有すると言えます

それを科学的な論拠を必要とするレベルまで落とし込むのか、その世界だから起こり得ることだと突っ走るのかは難しいところがあります

人間の誕生ですら仮説の段階で、進化論自体も仮説のようなものなので、無機体の進化の歴史というのは未知の仮説に基づくと言えます

そう言った歴史を創作することができれば描くことも可能だと思いますが、現時点ではそこまで革新的なことは起きないのでしょう

なので、ZEROというのは永遠に作りようのない作品なのかもしれません

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、往年のファン向けの作品になっていて、オプティマスとメガトロンの因縁について描かれていました

彼らの歴史の先にはサイバトロンの歴史があり、それは人類にもある「神話」のようなものでしょう

それでも、神話のエピソードに関わった裏切り者が目の前にいるという現在進行形になっていて、後世に残るサイバトロンの神話の一環のようにも見えてきます

そして、そこで描かれている物語は等身大のものであり、エネルギー利権を争うものになっていました

 

SF作品において、地球外生命体が地球に来る理由の多くは、「母星の資源が枯渇したから」であり、これは人類が抱えている問題と類似しています

無から有を生み出せないという宇宙共通の概念のようなものがあって、そのエネルギーの誕生は「神からの贈り物」であることが多いのですね

そうしたエネルギーによって生命体となった者が歩む先というのは、どんな環境下であっても、同じ末路を辿ると言えるのかもしれません

 

人類に限らず、与えられたエネルギーをどのように維持するかという中で、母星におけるエネルギーというものは、いずれ枯渇するものだと言えます

星を全て掘削する技術というものはありませんが、その科学力が限界まで達した時、これ以上の革新を考えるよりは、未知なる場所に同じものを探すという方法に出てしまうのはデフォのように思えてきます

人類がそうしているように、宇宙人もきっとそうするだろうというのが念頭にあるのですが、そもそも宇宙人が核融合なりの新技術を持っていて、母星から出ることなくエネルギーの供給が行われれば物語は始まらなかったりします

 

エネルギー問題はわかりやすい例えではありますが、人類は「自分のために必要なもの」を楽して得たがるものだと思います

そうした隷属的な関係を構築する中でも、エネルギー問題は前面に出てくるもので、その支配は世界を巻き込んでいるというのが実情でしょう

そして、そういった者が利権と化すことによって、さまざまな衝突というものが生まれます

本作は、そう言ったもののわかりやすい構図とともに、人類の歴史の暗喩でもあると思うので、それゆえに一般にも受け入れられやすいSFなのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101640/review/04290494/

 

公式HP:

https://tf-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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