■突発的なお休みを「公休」と呼ぶのには意味があるのですね
Contents
■オススメ度
恩人に恩返しをする物語に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.9.26(京都シネマ)
■映画情報
原題:本日公休、英題:Day Off(休日)
情報:2023年、台湾、106分、G
ジャンル:恩人の髪を切るために遠方に向かう理容師を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本:フー・ティエンユー
キャスト:
ルー・シャオフェン/陸小芬(アールイ/阿蕊:家族経営の美容師)
(若年期:スー・リーティン/許莉廷)
アニー・チェン/陳庭妮(シン/周佳欣:アルーイの長女、スタイリスト)
ファン・ジーヨウ/方志友(リン/周佳玲:アルーイの次女、美容師)
シン・ミンシュアイ/施名帥(ナン/周佳男:アルーイの長男、無職)
フー・モンボー/傅孟柏(チェン・リーチュアン/陳立川:アルー イの義理の息子、リンの元夫、自動車整備士)
リャオ・ジェユー/廖哲宇(アンアン/安安:リンとチュアンの息子)
シャオフー/小虎(店の猫)
【交友関係】
リン・ボーホン/林柏宏(アンディ/安迪:リンの同僚の美容師)
シャオ・ドンイー/蕭東意(シャオ・ドンフェン/蕭東鋒:チュアンの事故った幼馴染)
リー・カーイー/李家儀(ドンフェンの妻)
チェン・ジュンユー/陳俊宇(ドンフェンの友人)
ヤン・シンロン/楊欣融(ドンフェンの友人)
シェンシェン/千千(シャオティン/小婷:ドンフェンが連れてくる女の子)
ユアン・ヤス/元康(シンの彼氏)
チェン・ジーユアン/陳芷沅(シンの彼氏の後輩)
チェン・ウォンティン/陳婉婷(コ先生の長女)
シュー・ウェイジェ/舒偉傑(コ先生の息子)
ジェン・ゾンフー/簡宗福(コ先生/許先生:アールイの恩人、歯科医師)
リー・ユアンリン/李源林(リウ・ミンジ/劉明吉:アールイの師匠)
ワン・ユーピン/王渝屏(アールイの見習い仲間)
アニカ・スー/許築婷(アールイの見習い仲間)
グー・ユーチェン/辜俞甄(アールイの見習い仲間)
ファンリン/黃玲(アールイの友人)
ヂン・メイチン/丁梅卿(アールイの友人)
ファン・ジンフォン/黃金鳳(アールイの友人)
フー・シャオロイ/傅蕭蕊(アールイの友人)
【アールイのお店関連】
チェン・ジュンジア/陳俊嘉(耳が敏感な若者客)
ウー・ライワン/吳來旺(妻に言われて髪を染める白髪の老人客)
チェン・インギ/陳銀貴(息子の卒業式に出る男性客)
リン・ジンリー/林景立(漫画を読んでる隣人)
チェン・ヨンフィ/陳永輝(皮肉屋の隣人)
ジャン・ユンイー/江昀毅(髭剃り中に喋る男性客)
ファン・ジャンミン/黃建銘(郵便配達人)
フー・ジーチャン/胡智強(前髪にこだわる高校生のお客さん)
リウ・イーハオ/劉以豪(高校生が見せるヘアモデル、写真)
ホン・ユヤン/洪瑜彣(高校生が好きな女の子、写真)
カオ・イリン/高伊玲(高校生の母)
ワン・チーチェン/王誌成(店の前で声をかける隣人)
ツァイ・ユーシン/蔡瑜芹(自転車で通り過ぎる女の子)
ワン・シェンチュン/王憲政(頭を洗うお客さん)
シー・シェンロン/石聖龍(頭を洗うお客さん)
ワン・チンシン/王振興(違反切符のことを言い去る隣人)
【リンの美容院関連】
タン・ジリアン/唐滋蓮(前髪にこだわる女性、元リンの顧客)
ファン・ユーチェン/黃雲歆(リンの同僚)
ツァイ・イージェン/蔡宜真(カールに不満を言うお客さん)
【道中関連】
チュン・ボーリン/陳柏霖(若き農家)
クー・ジアヒー/柯家逸(チュアンの中学の同級生、不良)
チュー・チェン/周銓(人懐っこい不良)
イェ・シャオウェイ/葉紹威(人懐っこい不良)
リン・フーピン/林壑憑(人懐っこい不良)
【その他】
ファン・チェンチャン/黃建彰(ウー:チュアンに助けを求める物流ドライバー)
ワン・エンヨン/王恩詠(不動産屋)
クー・シュンシン/柯順馨(アールイのリハビリの先生)
チャン・シャオユー/張劭宇(修理代をツケにするチュアンの客)
チュアン・ジンソン/莊錦松(シンの自動車教室の先生)
ア・ハン/阿翰(CM俳優)
ルー・バイシュン/呂柏勳(広告のディレクター)
ヂン・シャオフェイ/丁肇輝(広告のディレクター)
リン・ソンユエン/林宗元(広告のカメラマン)
■映画の舞台
台湾:台中
台湾:彰化
https://maps.app.goo.gl/y3tWnB4cGrZY3HTy7?g_st=ic
ロケ地:
台湾:台中&彰化
■簡単なあらすじ
台中にて理髪店を営んでいるアールイは、常連客を中心に店作りをしていて、顔を見ないと思ったら「髪を切りませんか?」と電話を掛けていた
ある日、電話帳の中から、かつて世話になったコ先生の名前を見つけて電話をしてみると、先生ではなく長女が出て、今は病に伏していると言われた
長女は父の散髪をアールイに依頼し、彼女は彰化へと向かうことになった
そんなこともつゆ知らず、長女のシンは台中から帰省するものの、そこには母の姿はなかった
近くに住んでいる弟のナンも行方を知らず、次女のリンに聞いてもわからなかった
携帯電話も店に置いたままで、その手がかりすら掴めなかった
その頃、アールイは目的の場所を目指して車を走らせていたが、田園地帯で迷子になってしまう
そこで出会った農家の青年と交流をもち、再び出発するものの、さらに迷い込んでしまい、不良グループに絡まれて、田んぼに脱輪してしまうのである
テーマ:人生で優先すべきもの
裏テーマ:人が散髪をする理由
■ひとこと感想
予告編から気になっていた作品で、理髪店の日常を切り取る内容になっていました
個人的には、叔父二人が床屋さんで、月に1回はそこに通って髪の毛を切ってもらったという経験があり、とても懐かしいものを感じました
物語は、アールイがかつての恩人の元に出張散髪に行くというもので、携帯電話を忘れていったために、子どもたちが連絡を取れずにヤキモキするとものになっていました
それぞれには人生があって、母親とは親密というわけではありませんが、かと言って不仲でもない、という微妙な距離になっていました
恩人のもとで語りかける言葉が映画のテーマにもなっていて、その言葉は本来は子どもたちに聞かせたいものだったと思います
親は子どもを心配しますが、そのひとつとして、経済的に困らずに暮らせるか、というものがあるのですね
好きなことをして生きてほしいと思う一方で、生活に困らないだろうかとも思う
そのような価値観が合っている相手が見つかることが大事で、それが次女の元夫婦の回想で描かれていたように思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作は、いわゆるロードムービー的な部分があるのですが、それ以上に子どもたちの回想が物語を支えていたように思います
長女はスタイリストとしてCM撮影に入っているけど、あまり充実していない
次女は子どもがいるのに離婚して、自由気ままに生きているように思える
長男も楽して生きようとしていて、それに母親を巻き込もうとしていたりしました
そんな中で、次女の物語がメインになっていて、新しい生活を始めていく様子が描かれています
アールイは経済的に困らないかを心配していて、それが原因で離婚したのが次女夫婦でした
次女はお金にこだわりを見せていますが、夫のチュアンはそれよりも優先するものがある
この価値観が最後まで埋まらないというのはリアルだったと思います
最終的に次女はQB HOUSEという安売りがメインの散髪屋を始めることになっていて、母親とは真逆の散髪屋になって行きました
ビジネスパートナーとして一緒に働いているアンディとの間に関係があるのかはわかりませんが、女性の扱いだけはとてもうまそうな青年でしたね
カール女性客に対して「顔以外は」には笑ってしまいました
また、長女の彼氏事件もエッジが効いていましたね
■散髪屋の向かう先
本作では、昔ながらの理髪店が舞台となっていて、次女は美容院で働きながら、最終的にはQBハウスという安価な散髪専門店を経営するようになっていました
日本でも、イオンの中とかに安価なカット専門店があり、切るだけならリーズナブルに思えます
個人的には、この手のカットオンリーは利用したことがないのですが、利便性は良いのかなと思いました
日本の場合では、理容店は理容師法、美容室は美容師法という明確な違いがあります
理容とは「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること(理容師法 第1条2項)」という規定があり、美容とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等により、容姿を美しくすること(美容師法 第2条1項)」という規定があります
なので、美容室では髭剃りができず、理髪店では化粧をしたりすることはできないのですね
散髪に関してのスペシャリストは理髪師ということになり、国家資格があって、どれだけ正確にまっすぐ切れるかなどの審査を受けることになります
美容師に関しては、散髪に対しては悩みや好みに合わせて自由に仕上げていくイメーっじとなり、スタイル重視で散髪以外の技能に優れていると言えます
理容室は店の前に「赤・青・白」の縞模様の回転灯があり、これをサインポールと呼びます
店によっては、このサインポールを出していないところもあるので、一概に無いから理容室ではないとは限らないとされています
理容業界はかなり細分化され、時代の流行を追っていく技術が必要になってきます
自宅でできることも増えてきていて、ますます技術力が問われる時代にもなりました
今後は、顧客の提案に応えられるだけの技術と、最先端を捉える情報取得能力が試されますが、一番大切なのは「顧客の要望をどれだけ正確に捉えられるか」だと思います
私の行きつけの美容院にはカルテというものがあって、これまでのカット歴などがあります
そこに何が書いてあるのかは分かりませんが、初見の美容師さんでも映画が趣味ということは知っているので、会話の糸口になる情報は得ているのでしょう
でも、その映画が趣味という情報を「カルテを読んで知る」ことよりも、自然な会話の中で「映画が趣味」にたどり着くトーク力というものが試されます
情報を知りつつも、そこに行き着くプロセスの方が重要なので、そのようなトーク力を身につけていくと、顧客の要望に最短で辿り着けるのではないでしょうか
■人はなぜ散髪をするのか
人が散髪をする理由には大きく分けて二つあると思います
一つ目は「邪魔だから」というもので、こだわりはありませんが奇抜な髪型は好まず、定期的に切るという人になります
二つ目は「こだわりの髪型がある」というもので、その目的に向かってある程度伸ばしたりしながら、その理想型に近づこうとする人になります
髪はほっといても勝手に伸びるもので、長ければ長いほど日々のルーティンに時間がかかります
そういった時間的なコストを考えて、定期的に短く切るという人がほとんどのように思います
私自身もかつてはかなりの短髪で、2ヶ月に1回は出向くというタイプでしたが、これには「叔父が理容師だったから」というものがありました
親が兄弟と会うために連れていくというもので、その時に髪を切るという習慣がありました
この習慣が叔父が亡くなった後も続いていて、それが友人の紹介の理容師さんに行き着くことになります
定期的に髪を切りながら交流を深めるというものですが、今の住所地からはかなり遠いので、定期的に通うことができなくなりました
その後、比較的利便性の良いところで散髪を繰り返しましたが、ある時に「大学時代に大黒摩季を目指していた黒歴史を思い出すこと」になり、髪の毛のあるうちにやってみようということになりました
私の家計は父も弟も毛髪量がヤバく、3歳下の弟は剃った方が早いレベルに達しつつあります
そんな中でも、私だけは全員の毛髪量をいただいたかのように維持できていて、今では背中に到達するぐらいまで長くなっています
また、伸ばしているのはある職場の同僚の言葉があって、それは「31cm以上になると髪の毛を提供できる」というものがあったのですね
いわゆる医療用ウェッグなどに使われる髪の毛を提供できるというもので、その同僚は腰ぐらいまでの長さになってからバッサリと切って、それを提供しているのだと聞きました
それで私もある程度伸ばして提供しようかなと思ったりもしたのですが、それよりは自分用に取っておくのもありなのかなと考えています
実際に使えるのかは分かりませんが、気休め程度の保険のように捉えています
このように、散髪に関しても色んな考え方があるので、定期的な習慣と捉えるだけではないということは念頭に置いておいても良いと思います
ちなみに、毛髪の提供には色々と条件がありますが「ヘアドネーション」でググるとたくさんの情報があります
多くのNPO法人が参加しているので、それぞれの団体のHPを確認しても良いと思います
下記のHPでは、ヘアドネーションに関するまとめがありますので、参考にされても良いのでは無いでしょうか
@Living「髪の毛で貢献できる! 「ヘアドネーション」で困っている誰かを支援するには?」URL
→ https://at-living.press/sustainable/21365/
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作の骨子は、恩人に恩返しをするというもので、そのために店を閉めて出張散髪に行くアールイが描かれていました
そのことを家族に告げなかったことでトラブルに発展するのですが、それによって子どもたちが再会し、それぞれの親に対する思いをぶつけ合うことになります
偶然の出来事によって、母親の知らない部分というものを知るのですが、同時に母親の今現在と過去を知っていく過程になっていました
常連さんたちが訪ねてきて、長女の秘密が暴露されたりするのですが、そういったユーモラスな展開はとても面白かったと思います
店を閉めてまで会いにいく恩人とはどのような人なのか、というミステリーもありましたが、アールイの場合は、疎遠になって、ようやく音信が再会した時には「自分を認知できていない」という状況になっていました
それを踏まえた上でも、アールイは恩人の髪を切ることを選び、遠方へと出向くことになります
病院などにも散髪屋さんが来て髪を整えたりするのですが、動けなくなった人でも身だしなみに気を使いたいというのが人の性であると思います
さらにアールイの場合は、恩人がこれから旅立ちを迎えていることもあって、より一層恩人らしさを失わないために散髪を施すことになりました
本人がそのことを認知しているかどうかよりも、残された家族の想いがそこには詰まっていて、送る側の敬意というものがそこに滲み出ています
どうか天国でも変わらぬお姿でという想いがあり、その門出を恩人らしく迎えるためにも必要なことでしょう
人生には、日常を放り出しても向かわねばならない時があります
子どもたちの年代だと死別というものはリアルではありませんが、アールイの世代だと恩人、恩師、親世代の他界というものが増えてきます
そう言った現実を踏まえて、どうして母親は店を閉めてまで向かったのだろうかということに思いを馳せることは重要だと思います
この時に母親の行動を自分なりに咀嚼することで、自分にその時がきたときの判断材料にもなります
実際にこのような体験をすることはなかなかできないので、映画を通じて考えておくことは良いことではないのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101970/review/04298450/
公式HP:
https://www.zaziefilms.com/dayoff/