■目的に盲目になってしまうと、俯瞰する傲慢に取り込まれてしまうのかもしれません


■オススメ度

 

恋愛の上辺と深層について考えたい人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.9.27(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報:2024年、日本、119分、G

ジャンル:婚活アプリで知り合った相手の失踪に惑う青年を描いたミステリー&ラブロマンス映画

 

監督:萩原健太郎

脚本:清水友佳子

原作:辻村深月『傲慢と善良(朝日新聞出版)』

Amazon Link(原作:Kindle版)→ https://amzn.to/3XVobUr

 

キャスト:(わかった分だけ)

藤ヶ谷太輔(西澤架:婚活アプリで出会った婚約者に逃げられる男、ビール製造会社の社長)

奈緒(坂庭真実:架と婚約するマッチングアプリの相手、英会話教室の事務員)

 

倉悠貴(高橋耕太郎:災害ボランティアのリーダー)

西田尚美(仁科よしの:地元の居酒屋のママ)

 

桜庭ななみ(美奈子:架の友人)

小池樹里香(梓:架の友人)

 

阿南健治(坂庭正治:真実の父)

宮崎美子(坂庭陽子:真実の母)

 

菊池亜希子(岩間希実:真実の姉)

房野晃士(希実の息子)

 

前田美波里(小野里:結婚相談所の所長)

 

小林リュージュ(大原:架の友人)

篠崎彩奈(大原の妻?)

秋山加奈(大原の娘)

 

嶺豪一(金居智之:真実のお見合いの相手)

中﨑絵梨奈(金居の妻)

高橋好史(金居の息子)

高橋和正(金居の息子)

 

吉岡陸雄(花垣学:真実のお見合いの相手、歯科医)

 

里々佳(いずみ:真実の同級生)

前田瑞貴(いずみの彼氏)

 

森カンナ(アヤ:架の元カノ)

 

馬場奈々瀬(架の婚活相手)

植松愛(宮本:架の婚活相手)

西山真央(架の婚活相手)

倉田奈純(架の婚活相手)

 

土居健蔵(高城:架の大学時代のゼミ友)

藤牧優花(高城の妻?)

 

加藤美智子(カフェの老女)

田島潤(小堀洋一:町役場の職員)

柑野菜摘(ボランティアの女子高生)

 

塩留優梨愛(?)

岩本陸(?)

保坂直希(?)

有馬和博(?)

八隅六(?)

佐藤龍輝(?)

吉川美玖(?)

知念結奈(?)

菖蒲千明(?)

木屋碧美(?)

長谷川大(アヤの夫?)

 


■映画の舞台

 

東京都心

群馬県:前橋市

佐賀県:七山町

 

ロケ地:

佐賀県:唐津市

 

佐賀県:藤津郡

はりも果樹園

https://maps.app.goo.gl/QvuHb8UFhPpcSZmC9?g_st=ic

 

佐賀県:唐津市

森のハンバーグ工房ゆみさんち

https://maps.app.goo.gl/3JWJiNs59kwzCn9r9?g_st=ic

 

群馬県:前橋市

KEYAK WALK

https://maps.app.goo.gl/Kkb13Zgk9App2SW66?g_st=ic

 

群馬県:伊勢崎市

Auto Mirai 華蔵寺遊園地

https://maps.app.goo.gl/cjonTEnUpLbMdY9R7?g_st=ic

 

東京都:渋谷区

Maison Du Musse

https://maps.app.goo.gl/oZUKTZukQxtZx25E6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

ちいさなビール製造工場を営んでいる架は、元カノと別れて以降、婚活をするようになっていた

だが、どんな相手と会っても心を揺らすものもなく、いつしかルーティンのように感じられていた

親友の大原、美奈子、梓たちとバカな話をしながらも、元カノと結婚しなかったのは何故かと問い詰めれてしまう

 

ある日、婚活アプリを通じて真実という女性と出会った架は、今までにない何かを感じていく

意気投合し、デートを重ねるうちに、お互いの部屋で過ごす日々も増えてくる

だが、真実には秘密があって、それはストーカー被害に遭っているというものだった

 

架は真実を守りたいと思い、一緒に住まないかと結婚に向けた気持ちを伝える

そして、二人はようやく結婚への道を歩み始める

だが、真実の送迎会の翌日、彼女の姿はどこにもなかった

架は真実が誘拐されたのではないかと思い、警察に相談し、真実の両親や姉にも会いにいくことになった

 

テーマ:生きる上で大切にするもの

裏テーマ:表層と深層

 


■ひとこと感想

 

原作未読、どんな話かほとんど知らない状態で鑑賞することになりました

婚約者が突然失踪するというぐらいしか知らず、彼女を探していく中で「知らない面を知っていく」という感じになっていましたね

あまりにも知らなさすぎてびっくりしますが、知りたくなかったのか興味がなかったのかは何とも言えない感じでした

でも、なぜ知らないのか、というのも後半で明かされる構成になっていました

 

傲慢と善良については、前半の結婚相談所の所長の言葉として登場し、現在の若者の恋愛観であるとか、結婚観みたいなものが凝縮しているものになっていました

また、後半にはある人物によって、「今の若者の恋愛観」について語られるシーンがあって、なかなか興味深いものがありました

 

失踪した理由を探していくうちにわかっていくことがたくさんあるのですが、意図せずに伝わってしまう本音というものは怖いものがあります

架の友人たちの洞察力も鋭いと言えますが、架があまりにも鈍感だったことの方が問題のようにも思えます

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

劇中でサラッとふれられるジェーン・オースティンの『傲慢と偏見』という本があるのですが、この作品も女性の結婚事情を描いた恋愛小説の古典でした

読んでいなくても問題ないと思いますが、この話題を振られてすぐにわかるのに、女心がわからないというのは面白かったですね

 

架が好きになる女性の名前が「真実」というのは狙っているのだと思いますが、それを知るために何が必要なのかという内容になっていました

傲慢と善良は対になる言葉のように思えますが、実際には「=」で括られるようなもので、映画で描かれる印象だと「善良と傲慢」という順番のように思えます

 

相手を見て自分の価値を知るというのは言い得て妙ではありますが、そう言ったものを超えた先にあるのが恋愛というものなのでしょう

ピンとくるという言葉はいろんな意味があると思いますが、理性よりも先に行くものという意味合いが強いように思えました

 


ジェーン・オースティン「高慢と偏見」について

 

劇中にて、結婚相談所の小野里のセリフに登場する『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』ですが、これはジェイン・オースティンが1813年に書いた恋愛小説のことを言います

本作のタイトルも引用めいた印象がありますが、『高慢と偏見』も18世紀頃のイギリスの田舎町の結婚事情というものを描いていました

誤解と偏見によって、恋愛がすれ違う様子が描かれていて、本作の恋愛のすれ違いとは少々趣が違います

 

18世紀のイギリスでは、女性が自立できる職業がほとんどなく、良い結婚相手を探すことが女性の幸せである、という時代でもありました

田舎町のロンボーンに住むベネット家の5人姉妹は、父が亡くなってしまえば家も土地も従兄弟のところに行ってしまうという背景がありました

父は深く考えていませんが、母は娘たちに金持ちの婿を取ってもらおうと必死になっていました

そんな彼女らの元に、青年資産家のビングリーがやってきます

ベネット夫人は娘たちを引き合わせようと舞踏会の約束を取り付けました

 

長女ジェーンのビングリーの印象は最悪で、次女のエリザベスもビングリーの友人ダーシーの態度に苛立ちを見せていました

彼らは格下のベネット家に対するプライドの高さが災いし、関係は良くはなっていきません

その頃、町に駐留していた軍隊の青年士官ウィカムは、下の妹たちと親しくなっていて、エリザベスも彼に魅了されていきます

ウィカムとダーシーには遺恨があり、それを聞いたエリザベスはますますダージーに対する反発心を強めていくことになります

ちなみに、本作の中心となるカップルはエリザベスとダーシーで、その後ビングリーたちが黙って帰って行ったことなどでさらに関係が悪化していく様子が描かれていきます

 

恋愛に対して、お互いの背景とか相手の上辺だけを見てしまうことで起きるすれ違いを描いていて、本作と共通する部分もあるように思います

自分をどう見せようとか、どう見られているかという部分よりも、相手をどう見ているかというものが重視されていて、これは時代性というものもあるように思います

これに対する本作は、自分をどう見られたいかを偽装する部分があって、それが暴露されたことで逃亡することになっていました

この時に優先されたのが自分の心であり、恋愛というものの枷が自分の心であるということがよくわかる対比になっていたように思えました

 


婚活の先にあるもの

 

本作では、今どきの結婚スタイルである「婚活」を主軸に描いていました

主人公の架は、スペックもビジュアルも問題ないと思いますが、結婚に向かうために恋愛には否定的な立場を取っていました

彼の友人たちは既婚者のようで、特に女友だち二人は謎の上から目線でズバズバという感じになっていましたね

おそらく大学ぐらいからの友人で、恋愛感情などが芽生えなかった関係で、女友だちたちはあっさりと玉の輿をゲットしているように思えます

彼女たちが恋愛結婚をしたのかは分かりませんが、架の行動に否定的ではないので、目的が明確であれば手段は問わないという割り切りがあるのかな、と思いました

 

結婚と恋愛の相関関係を考えると、正直なところケースバイケースのように思います

結婚と制度自体が今と昔では根底から違い、古くは家族を作るための基盤で、それを維持するために父親が稼ぎに出るというのが主流でした

今では、夫婦共働きで安い収入を組み合わせて生活を維持するのがやっとで、専業主婦ができるというのは、よほどの相手を見つけないと成立しません

このあたりは、結婚と家柄(家系)などが根付いているパターンで、そうではない人の方が多いように思います

 

結婚に関しても、若年者と高齢者では考え方が違い、親世代の高齢化によって、さらに価値観というものが変遷していきます

結婚が当たり前の時代だった時には「結婚できないのには理由があるのでは」と心配になってしまいますが、その心配もやがては「将来、一人で生きていくのは大変よ」というものに変わってしまいます

実際にも、FIREできるほど若年期で稼げる人ならば良いでしょうが、50歳にもなってくると「定年」がチラつくし、年金の破綻もリアルタイムに感じられるし、そもそも何か起きた時に致命傷まで行く、というリスクがあります

一人暮らしは楽で良いと思いがちですが、それは健康が担保されている時期の楽観のようなもので、40歳を超えたあたりから来る体の変化を感じると、親の言う言葉の意味が180度違って聞こえたりします

 

このようなリスクを踏まえると、目的を共有するための結婚と言うものはあった方が良いと思うのですね

子どもを産む、産まないと言う問題だけではなく、いざと言うときの支え合いができるかどうかと言う価値観の共有は必要で、その為に燃えるような恋愛が要るのかは何とも言えない部分があります

むしろ、そう言った燃え上がったものがベースだとしても、結婚と言う制度に踏み込む場合には、冷静な目的の共有が必要になってきます

それがこれまでの夫婦観とは違っても良くて、それを考えると同性婚というものの是非も変わってくるのですね

高齢になったときの相互扶助を考える意味でも、法的に認められている関係というものは必要で、それが公共サービスを受ける最低限の条件になっています

なので、そのような関係も含めた制度の議論というものが必要になってくるのではないかと感じています

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作では、傲慢と善良の関係を描いていて、謙虚に見える行動も裏を返せば傲慢な考えではないかという問題提起になっています

真実は架の友人が看過したようにアザト系女子だったのですが、それがバレそうになると姿を眩ましてしまいました

そして、その旅先で飲み屋のママから諭されるという流れになっていました

善良かどうかは判断基準が各々違うので何とも言えませんが、人は誰しも傲慢であると思います

 

傲慢というのは「人を見下す態度」のことを言いますが、常に謙虚で相手を持ち上げている人でも、自分のコントロール下に相手を置こうと考えていて、目的と手段の相関関係からは逃れられません

結婚生活に入っても、その関係性からは逃れられず、その期間に目を瞑れる期間というのが「愛は盲目」と呼ばれるキャンペーンなんだと思います

そして、ある程度の熱が冷めて、コミュニティの中でのポジション争いが静かに始まっていくのですね

でも、そう言った加熱すらもコントロールする人がいて、その思考を俯瞰すると傲慢に見えるのかもしれません

 

そもそも善良であろうとか、自分を装飾しようと考える部分には傲慢に繋がる道があって、誰もが避けられないもののように思います

人からよく見られたいとか、良い人間でいたいと思うのは普通のことで、その真逆を行くアウトローでもベクトルが違うだけの傲慢だったりします

とは言え、あからさまに相手を見下した傲慢な態度を取る人は少なくて、根底にある思考が滲み出て、結果として傲慢になっているケースの方が多いと思います

傲慢に見えることがマイナスに作用することは知っているので、装飾の部分で傲慢さを隠そうとするのですね

でも、行動を俯瞰して観察すると、ある部分は傲慢だったと気づくことがあります

 

これらの思考は共通言語ではないゆえに、気づく人だけが気づくのですが、それは同じ質の装飾をしてきた人にだけわかるものなのですね

真実の装飾に気づく架の友人二人は経験者のようなもので、しかもそれが悪いとは思っていません

でも、真実の装飾のレベルが低くて、それに騙されている架を嘲笑っている部分がありました

真実を揶揄することは、結果として架を見下すことになるのですが、その構図すら利用して、真実を見下しているところがタチが悪いように思います

こんな簡単な仕掛けに引っかかる男に仕掛けを施したんだよね

これが彼女たちの本音であり、その本音が通じているのが真実だけというところに恐ろしい構図がありますね

知らぬが仏とも思いますが、これを乗り越えた先にある架の未来というのは、思った以上に過酷なのかなのかもしれません

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101582/review/04299269/

 

公式HP:

https://gomantozenryo.asmik-ace.co.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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