■ソウルの春がもう少し早く来ていれば、何か変わったのだろうか?
Contents
■オススメ度
韓国の黒歴史を知りたい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.8.27(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:서울의 봄(ソウルの春)、英題:12.12: The Day(12月12日、その日)
情報:2023年、韓国、142分、G
ジャンル:韓国の粛軍クーデターを描いた史実ベースの社会派ヒューマンドラマ
監督:キム・ソンス
脚本:ホン・ウォンチャン&イ・ヨンジュン&キム・ソンス
キャスト:(Wikiリンクは日本語Wikiのみ)
ファン・ジョンミン/황정민(チョン・ドゥグァン:国軍保安部司令官、戒厳司令部合同捜査本部長、少将、モデルはチョン・ドゥファン)
チョン・ウソン/정우성(イ・テシン:陸軍本部教育参謀部次官、首都守備司令部、少将、モデルはチャン・テワン)
イ・ソンミン/이성민(チョン・サンホ:陸軍参謀総長、戒厳司令官、モデルはチョン・スンファ)
パク・ヘジュン/박해준(ノ・テゴン:第9師団長。モデルはノ・テウ)
キム・ソンギュン/김성균(キム・ジュンヨプ:憲兵監、モデルはキム・ジンギ)
【内閣】
チョン・ドンファン/정동환(第12代国務総理、大統領権限代行、第10代大統領、モデルはチェ・ギュハ)
キム・ウィソン/김의성(オ・グクサン:国防大臣、モデルはノ・ジョンヒョン)
ソ・グァンジェ/서광재(首相兼経済企画院長官、第13代国務総理、モデルはシン・ヒョン)
チャン・ジヨン/장지용(国防長官)
ペ・キボム/배기범(ヤン:内務省副大臣)
【鎮圧部隊】
ユ・ソンジュ/유성주(ミン・ソンベ:第3師団長、陸軍参謀次官、戒厳司令部副司令官、モデルはユン・ソンミン)
チョン・マンシク/정만식(コン・スヒョク:陸軍特殊戦司令官、モデルはチョン・ビョンジュ)
【首都駐屯軍司令部】
ナム・ユンホ/남윤호(カン・ドンチャン:作戦参謀、イ・テシンの部下、モデルはパク・ドンウォン)
ソン・ヨングン/송영근(砲兵団長)
チェ・ジホ/최지호(人事参謀、モデルはイ・ジンベク)
イ・ギフン/이기훈(参謀長、モデルはキム・ギテク)
チョン・テソン/정태성(軍参謀長、モデルはキム・ヨンホ)
キム・スンファン/김승환(情報参謀、モデルはパク・ウン)
チョン・ウヨン/정우영(状況担当官、モデルはキム・ジンソン)
ユ・ジェドン/유재동(ウン:少佐)
クォン・ダハム/권다함(ピョン:中尉)
イ・ガギョン/이가경(副行政官)
ギ・ダユン/기다윤(司令官)
カン・ミンジェ/강민재(大佐)
クォン・ソンヒョク/권성혁(砲兵隊長)
チョ・ヒョンス/조현수(防空部長)
ミン・ヒョンウ/민현우(調理兵)
ヤン・ヨンムン/양영문(行政兵士)
ハム・ウンサン/함은상(行政兵士)
【陸軍特殊戦司令部】
チョン・ヒョンソク/정형석(パク・キホン:第8空挺旅団長)
ソン・ドヒョン/송도현(陸軍特殊戦司令部人事参謀、モデルはカン・リガン)
チョン・ヘイン/정해인(オ・ジノ:特殊戦司令官秘書室長、モデルはキム・オラン)
【陸軍本部:B2バンカー】
ファン・ヒョングク/황병국(ファン・ビョングン:将軍、B2バンカー所長)
キム・ジョンパル/김정팔(ソ・ジョンビル:将軍)
チェ・ミン/최민(オ・グミン:陸軍本部管理参謀部長、モデルはキム・シボン)
イ・ギウ/이귀우(イ・ギオ:将軍)
オ・ヒョンソク/오현석(アン・ジョンファン:将軍、モデルはアン・ジョンフン)
イ・スンブン/이순풍(マ・ソクテ:将軍)
キム・テファン/김태환(陸軍本部、情報部長、准将、モデルはイ・ギュシク)
ヤン・ドンヒョク/양동혁(パク・ジョンヒョク:准将)
シン・ドンホ/신동호(将軍)
イ・ジョンチョル/이정철(将軍)
イ・チョンヒ/이천희(将軍)
イ・ヒョンソク/이형석(将軍)
ユ・ドンギュン/유동균(将軍)
チン・ヒョングァン/진현광(参謀長)
チョン・ヒョンギュ/정현규(憲兵)
【憲兵隊】
クァク・ジンソク/곽진석(国務総理公館憲兵特別警備隊長)
ハン・ギュウォン/한규원(ソン・キュウォン:国務総理公館憲兵特別警備隊、大尉)
キム・ボムス/김범수(チョ・ミンボム:軍曹、B2バンカー勤務憲兵)
【漢南洞・陸軍参謀総長公館】
イ・ジュンヒョク/이준혁(クォン・ヒョンジン:陸軍参謀総長警護将校、モデルはキム・インソン)
アン・ソンボン/안성봉(コ・ウンテ:陸軍参謀総長副官、モデルはイ・ジェチョン)
ヒョン・オボン/현오봉(アン・ソンウク:海兵隊公館警備隊長、少佐、モデルはファン・インジュ)
【韓米連合軍司令部】
ホン・イングク/홍인국(韓米連合軍司令部副司令官、モデルはリュ・ビョンヒョン
【第3野戦軍司令部&第30歩兵師団】
パク・ウォンサン/박원상(コ・ジェヨン:第3司令官、モデルはイ・グニョン)
パク・ジョンハク/박정학(モ・サンドン:第30師団司令官、モデルはパク・ヒモ)
パク・ジョンピョ/박정표(パク・ジョンピョ:劉州大橋の所長、大尉)
【反乱軍】
アン・ネサン/안내상(ハン・ヨング:第一軍司令官、モデルはファン・ヨンシ)
ヨン・ドンフン/염동헌(ユ:国務次官、国防部軍収差官報)
チョン・ジンギ/전진기(首都軍団長、モデルはチャ・ギュホン)
チェ・ビョンモ/최병모(ト・ヒチョル:第2空挺旅団長、モデルはパク・ヒド)
キム・ソンオ/김성오(キム・チャンセ:第4空挺旅団長、モデルはチャ・セチャン)
アン・セホ/안세호(チャン・ミンギ:首都守備司令部第30親衛隊長、モデルはチャン・セドン)
ホン・ソジュン/홍서준(ハ・チャンス:保安庁人事担当官、モデルはホ・サムス)
パク・フン/박훈(ムン・イルピョン:国防司令官秘書室長大佐、モデルはホ・ファピョン)
パク・ミン/박민이(ジ・ニョンド:首都守備司令部第33衛兵隊長、モデルはキム・ジンヨン)
イ・ジェユン/이재윤(イム・ハクジュ:国軍保安司令部対空捜査課長、保安庁捜査部長、モデルはイ・ハクブン)
【ハナ会加担者】
クォン・ヒョク/권혁(ジョ・ウテク:第71防衛師団長、モデルはペク・ウンテク)
コン・ジェミン/공재민(キム・ビョンジュン:第20防衛師団長、モデルはパク・ジュンビョン)
ハン・チャンヒャン/한창현(タク・ジェオ:第6空挺旅団長、モデルはチャン・ギオ)
イム・チョル/임철형(大統領警護室長代理、モデルはチョン・ドンホ)
ウォン・チュンギュ/원춘규(キム・ジュンジャン:第9師団、副師団長、モデルはグ・チャンヘ)
チェ・ウォンギョン/최원경(ウォン・キョン:首都駐屯軍憲兵隊長、足止め係、モデルはチョ・ホン)
キム・ギム/김기무(ユン・ウミョン:陸軍本部犯罪捜査団長、大佐、確保チーム、モデルはウ・ギュンユン)
ムン・ソンボク/문성복(ヨン・ギルロク:首都警備司令部第33憲兵隊長、確保チームの隊員、モデルはソン・ファンオク&チェ・ソクリプ)
クァク・ジャヒョン/곽자형(イ:第2空挺旅団参謀長、大佐、モデルはイ・ギリョン)
チョン・ウンジョン/전운종(ビョン:第2空挺旅団先頭車運転兵、少佐)
イ・スンヒ/이승희(パク・スジュン:第4空挺旅団第15大隊長、中佐、モデルはパク・ジョンギュ)
チャ・レヒョン/차래형(ホ・ドンユン:首都警備司令部、憲兵副部長、中佐、モデルはシン・ユンヒ)
クォン・ヒョクボム/권혁범(ホン:第2空挺旅団大隊長、中佐)
ユン・デヨル/윤대열(ヤン:国軍保安司令部捜査官、確保チームの隊員、准尉、モデルはシン・シンギ)
ペク・スンイク/백승익(国軍保安司令部捜査官、確保チームの隊員)
チャン・ナムス/장남수(国軍保安司令部捜査官、確保チームの隊員)
カン・ギルウ/강길우(スル・サンフ:少佐、漢江正面敬礼官)
イ・ソンファン/이성환(ミン・ソンファン:少佐、漢江正面敬礼官)
ヒョン・ポンシク/현봉식(波乱軍に加わる将軍)
チェ・ミンヒョク/최민혁(確保チームの隊員、運転手)
【在韓米軍】
ブラッド・カーティン(ベッカム:韓米連合軍、司令官、モデルはジョン・ウィコム)
ポール・バトル(駐韓アメリカ大使、モデルはウィリアム・グライスティン・ジュニア)
モーリス・ターナー・ジュニア(アメリカ軍の中佐)
アデミール・セディロス(米軍少佐)
【その他】
チャ・ゴヌ/차건우(キム・ドンギュ:拷問される元中央情報局長、モデルはキム・ジェギュ)
チョン・ユナ/정윤하(パク:高級会食店のマダム)
キム・オクジュ/김옥주(チョン・ドゥグァンの妻、モデルはイ・スンジャ)
チョン・スジン/전수지(イ・テシンの妻、モデルはイ・ビョンホ)
ウ・ミファ/우미화(国防大臣の妻)
キム・ミンジュ/김민주(国防長官の娘)
ソン・ソンハン/송성한(国防長官の息子)
チョン・チュンヨル/전충열(パク:海兵隊、伍長)
キム・ナムホ/김남호(政府報道官)
イ・ミラ/이미라(宴会主催者)
ウ・アルム/우아름(宴会場の踊り子)
ソヒョン/소현(宴会場の踊り子)
チョ・ウォンウク/조원욱(宴会場の楽団)
チャン・ヨンジュン/장용준(宴会場の楽団)
キム・ドゥヒョン/김두현(宴会場の楽団)
イ・ヨンギュ/이용규(イ・テシンの運転手)
ユン・チャン/윤찬(チョン・ドゥグァンの運転手)
ノ・ギュンソプ/노경섭(チョン・ドゥグァンの運転手)
ユ・サンジェ/유상재(第26師団司令官)
イ・ガンウ/이강우(第26師団運転手)
ナム・ギヒョン/남기형(第8空挺旅団、副旅団長)
チョ・ミンギョ/조민교(第4空挺軍曹)
キル・ウンソン/길은성(第30師団参謀)
イ・ソンミン/이성민(第2空挺下士官)
ソン・ドヒョン/성도현(特殊部隊の隊員)
ウン・ジョンゴン/은종건(特殊部隊情報部スタッフ)
チョン・ジュンス/전준수(特殊部隊の兵士)
キム・ビョンヒ/김병희(大統領警護局長)
クァク・ギフン/곽기훈(大統領のボディーガード)
イ・インギュ/이인규(首都機械化歩兵師団の指揮官)
カン・ヒョンジュン/강형준(首都機械化歩兵師団の戦車運転手)
シン・ギョンシク/신경식(大統領特使団長)
キム・テギョン/김태경(宮内庁の武官)
ホン・イングク/홍인국(韓米連合軍司令官)
チャン・テフン/장태훈(陸軍参謀、副総長)
チュ・ヨヌ/주연우(保安官局長)
ペク・ジヌク/백진욱(保安検査官)
キム・ナムジョ/김남조(セキュリティエージェント)
イ・ドンチャン/이동찬(セキュリティエージェント)
キム・ミンス/김민수(武橋洞の眼鏡をかけた男性)
ホン・ソンオ/홍성오(私服警官)
リ・ミン/리민(漢南洞のタクシー運転手)
キム・サフン/김사훈(国防省のジャーナリスト)
カン・ソンウク/강성욱(国防省のジャーナリスト)
■映画の舞台
1979年12月12日、
韓国:ソウル
ロケ地:
韓国:ソウル
■簡単なあらすじ
1979年10月26日の夜、国務大臣、政府高官たちは陸軍本部に召集され、大統領の暗殺に関する報告が為された
動揺が広がる中、暗殺事件の合同捜査本部長にチョン・ドゥグァンが任命され、中央情報局のキム・ドンギュを拷問にかけた
ドゥグァンは「ハナ会」の将校たちを集め、12月12日にある計画を遂行しようと企んでいた
ソウルは戒厳令が敷かれ、首都警備司令部の司令官にイ・テシンが抜擢された
その動きを経て、ドゥグァンはノ・テゴンを押すものの、参謀総長はその進言を跳ね除けた
その後、ドゥグァンは邪魔者のテシンをソウルから隔離するために、嘘の会合を催し、そこにテシンたちを呼び寄せる
ドゥグァンはその機会を利用して参謀総長を拉致し、大統領に直談判をすることになるが、大統領は国防長官と同行するように命じた
国防大臣は参謀総長拉致の件で米国大使館を訪れていて、音信不通のまま、ドゥグァンの計画は強行されることになったのである
テーマ:軍人としての誇り
裏テーマ:負の歴史を正視する意味
■ひとこと感想
いわゆる『KCIA 南山の部長たち』で描かれた「朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺事件」の続きとなる韓国の歴史を描く「フィクション」で、「粛軍クーデター」とよばれる「12.12軍事反乱」を描く内容となっていました
後の韓国大統領(第11・12代)となる、当時国軍保安司令官だった全斗煥(チョン・ドゥファン)陸軍少将と、同じく後の韓国大統領(第13代)で当時第9歩兵師団長だった盧泰愚(ノ・テウ)陸軍少将などを中心とした秘密結社「ハナ会」主導のクーデターのことを言います
この騒動によって、全斗煥やハナ会グループと対立していた陸軍参謀総長兼戒厳司令官の鄭昇和(チョン・スンファ)陸軍大将を逮捕するに至っています
史実を知っている人なら「クーデターが成功すること」を知っている状態で観ることになりますが、知らない人は驚いてしまうかもしれません
この出来事は韓国の黒歴史のようなもので、これをそのまま映画化しているというのは凄いことだと思います
映画の主人公はテシンになりますが、悪役となるドゥグァンの方が強烈な光を放っていましたね
彼がいかにして国の中枢に入り込んで行くかを描いていて、ある意味クーデターの指南書みたいな感じになっています
自分自身の立場を重んじて命令に従ったと言えばそれまでですが、この統制というものが諸刃の剣になるのだな、と考えさせられますね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
史実ベースなのでネタバレもあったものではありませんが、クーデター(革命)が成功する映画というのは珍しいと思います
映画の冒頭でフィクションと描かれていたので、もしかしたら「クーデターが失敗した世界線なのかな?」とか思っていましたが、その文言が映画に緊張感を与えていましたね
逆転してほしいと思わせてくれる内容ですが、現実はそう甘くはない、という感じになっています
ほぼ夜中に起こった出来事で、国民の多くはそこで何が起こったのかは知らず、一夜明けたら軍事政権に変わっていたというのは驚きのことだったでしょう
でも、表向きは軍の要職が変わっただけに見えて、実際に何が起こったのかを知るのは、この軍事政権が倒れてからだと思います
歴史を知っていると物悲しさが募りますが、知らないとかなり緊張感を保った政治スリラーのように感じるかもしれません
140分ぐらいあるのですが、展開がかなり早く、登場人物がものすごく多い割には非常にわかりやすい進行になっていたと思います
パンフレットには、主要キャラクターの相関図のみならず、当時の役職のどこにハナ会がいたのかもわかるような組織図もあるので、とても参考になるのではないでしょうか
■実際の事件について
映画では、実際に起きた「1979年12月12日の軍事クーデター(粛軍クーデター)」を描いています
この軍事クーデターは、同年の10月26日に起きた「パク・チョンヒ暗殺事件」における政権の不安定さというものが背景にありました
パク・チョンヒの後任には、チェ・ギュハが大統領に就任しましたが、事件を受けて警護室は影響力を失ってしまいます
そこで、国軍保安司令部の司令官で戒厳司令部合同捜査本部長に任命されたチョン・ドゥファンと参謀総長兼戒厳司令官のチョン・スンファが実権を掌握することになります
韓国内では「ソウルの春」と呼ばれる民主化ムードが到来していましたが、チョン・ドゥファンはその動きを止めようと暗躍し始めます
チョン・ドゥファンは「ハナ会」という秘密結社を支配していて、そのシンパが軍の主要役職を独占していくようになります
チョン・スンファはその動きを問題視していて、チョン・ドゥファンと対立するようになりました
そして、その動きを察知したチョン・ドゥファンは先手を打つことになります
これが、粛軍クーデターと呼ばれるものへと発展していきます
ハナ会のメンバーは首都警備司令部第30警備団司令部に集結し、軍事反乱を開始します
その後の流れは映画内で綿密に描かれてるので割愛しますが、北朝鮮の動きを気にしていたために軍の派遣が躊躇されたというところはリアルで、何度も行ったり来たりというもどかしい動きが展開されていきました
さらにクーデター成功後に大統領が「事後承認」をしたのも史実で、それが唯一の抵抗となってしまいました
■その後の韓国史について
ハナ会を中心とした軍事政権が「新軍部」を作ることになり、ほぼ口出しをできない状況が続いていきます
それでも、1980年1月末には、30名余りの韓国陸軍将官が新軍部に対する逆クーデターを実行しようと画策していました
これまでの出来事は軍内部の反乱となっていて、軍事政権を樹立させたとは意味合いが違うと言われています
実際にこの政権が軍事政権化したのは、1980年の5月に起きた「光州事件」によって、チェ・ギュハが失脚した時点であるとされています
この「光州事件」は、1980年の5月18日から27日にかけて光州市で起きた事件であり、軍事政権に対する民主化要求の蜂起を鎮圧したものでした
粛軍クーデター後も全国各地で反軍部の民主化要求デモが起こっていて、1980年5月17日に戒厳令が布告されます
その後、キム・デジュンの公民権回復後の即逮捕という事件が起き、これが引き金となって光州事件が勃発してしまいます
キム・デジュンは全羅南道の出身で光州では非常に人気のある人物でした
5月18日には空挺部隊が導入され、大学の封鎖を始めます
その後、抗議した大学生と衝突が起き、それはさらにエスカレートしていきます
射殺された市民が増え、デモ参加者は20万人にも拡大し、全羅南道一帯に拡大するに至ります
翌19日には戒厳軍が光州市を封鎖し、韓国政府は光州市民に対し「スパイに先導された暴徒である」と言い、それが報道されていきます
そして、5月27日に鎮圧作戦が実行され、終了するに至りました
死者170人(民間人144名、軍人22名、警察官4名)、投入された総兵力は2万5千人とも言われています
また、1980年9月17日にキム・デジュンに「内乱陰謀」の罪で死刑判決が出ましたが、2004年に無罪となっています
これらの軍事政権が終わりを告げるのは、1987年に起きた大統領直接選挙制を求めた民主化運動「六月抗争」まで続きました
チョン・ドゥファンは直接選挙制を拒否し続け、「4.13護憲措置(現行憲法に規定された次期大統領の選出と政権移譲を主旨とするもの)」を発表します
これに対して野党勢力は一斉に反発し、「民主憲法争取国民運動本部」というものが結集されることになりました
そして、6月10日に全国19都市でデモが発生し、それは24万人の参加者へと拡大していき、さらに20日は光州で20万人以上が参加する事態へと拡大していきます
この動きを受けて、ノ・テウ民正党代表最高委員による時局収集宣言として「6.29宣言」を発表することになりました
これが大統領直接選挙制を軸とした民主化へのスタートとなっています
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、クーデターが成功した史実を再現する作品ですが、一応フィクション扱いになっています
韓国版Wikiなどを見るとわかるのですが、主要人物のほとんどにモデルがいて、さらに名前を少しもじっただけという感じに仕上がっています
クーデターを成功させたチョン・ドゥファンは劇中ではチョン・ドゥグァン、参謀長だったチョン・スンファはチョン・サンホとなっていて、国を守ろうとして負けたチャン・テワンだけがイ・テシンという全く違う名前になっていました
さらに、エンドロール直前には「クーデター後に撮った記念写真」が登場し、その並びと同じように並んで写真を撮る、というシーンもありました
負けた方の名前を伏せているのは、国民にとって正義側が負けたからであり、この映画自体が「この事実のような惨劇を繰り返してはいけない」というスタンスで描かれているからのように思います
映画のタイトルは「ソウルの春」で、これは韓国の民主化運動のことを指すのですが、それを阻止した出来事であり、悪しき韓国の黒歴史ということになります
現在の韓国がどのような状況なのかは分かりませんが、懸念せざるを得ない事態が近づきつつあるのかな、と勘繰りたくもなってしまいます
史実系の映画を数多く観てきましたが、ここまで歴史をなぞらえているのに全員の名前が違うというのは前代未聞のように思います
フィクション部分を加えるにしても、主人公となる中心人物だけは名前がそのままということも多く、また本人もしくは遺族などの了承を得るのに苦労するという話も聞きます
また、遺族などが制作に入った場合にはかなりの脚色が入ることが多く、これほどの規模の事件の関係者遺族全員の許可を取るというのも困難のように思えます
このような史実系の映画は基本的に史実に寄り添うことになり、もしもの世界はほとんど描かれません
でも、本作のキャラが当人を彷彿させつつも「フィクション」と銘打って始まり、さらに「ソウルの春」というタイトルがついたのは、「もしも」の方向へと誘導したかったのかな、と感じました
フィクションとして、ソウルの春がもう少し早く実現できていたら、という世界線になるのかと思えば、実はそうではなかった
そこには、歴史には綺麗事はなく、誤ったことも真っ直ぐに受け止めるべきであるという姿勢があるのかもしれません
このあたりの制作サイドの思惑は個人的な感想になりますが、自国の歴史を歪めることの無意味さを描こうとしていたのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101014/review/04185679/
公式HP:
https://klockworx-asia.com/seoul/