■タイトルの意味はよくわからんが、物語に組み込むアイデアをもっと練った方が良かったように思いました


■オススメ度

 

ムスリムの結婚騒動コメディに興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.8.29(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:Polite Society(礼儀正しい社会)

情報:2023年、イギリス、104分、G

ジャンル:姉の結婚に陰謀を感じて阻止しようとする妹を描いたアクション映画

 

監督&脚本:ニダ・マンスール

 

キャスト:

プリヤ・カンサラ/Priya Kansara(リア・カーン/Ria/フューリー:スタントウーマンを目指す高校生、パキスタン系イギリス人)

リトゥ・アリヤ/Ritu Arya(リーナ・カーン/Lena:リアの姉、芸術家志望)

 

セフィーナ・ベー/Seraphina Beh(クララ/Clara:リアの友人、ITマニア)

エラ・ブルッコレリ/Ella Bruccoleri(アルバ/Alba:リアの友人、ツインテール)

 

Shobu Kapoor(ファティマ・カーン/Fatima:リアとリーナの母)

Jeff Mirza(レイフ・カーン/Rafe:リアとリーナの父)

 

ニムラ・ブチャ/Nimra Bucha(ラヒーラ・シャー/Raheela:レーナに目をつけるサリムの母)

アクシャイ・カンナ/Akshay Khanna(サリム・シャー/Salim Shah:ラヒーラの息子、リーナの婚約者、遺伝子学者)

 

Renu Brindle(ナワズ夫人/Mrs Nawaz:ラヒーラのママ友)

Rekha John-Cheriyan(アッバス夫人/Mrs Abbas:ラヒーラのママ友)

Sophie Aisling(イクバル夫人/Mrs Iqbal:ラヒーラのママ友)

Su McLaughlin(アハメド夫人/Mrs Ahmed:ラヒーラのママ友)

 

ショナ・ババエミ/Shona Babayemi(コヴァックス/Kovacs:リアをいじめるクラスメイト)

Sally Ann(エディス/Edith:リアと喧嘩する同級生)

Tia Dutt(ジェザ/Jezah:パーティーに参加するクラスメイト)

Racheal Tse(いじめっ子のクラスメイト)

 

Jenny Funnell(スペンス/Ms Spence:リアの担任の先生)

 

Eunice Huthart(ユーニス・ハトワート/Eunice Huthart:リアのアイドル的存在のスタントウーマン)

 

Adam Rhys Williams(マグナス/Magnus:?)

 

Ryan Laccohee(空手の先生)

Rob Lock(空手の先生)

 

Ulli Ackermann(結婚式の警備員)

James McNicholas(ホテルのヘッドウェイター)

Joss J. MacDonald(ウェイター)

Arina Merzliakova(ウェイトレス)

Tom Bonington(ホテルの介添え人)

 

Sania Shireen Haq(ダンサー)

Hemali Patel(ダンサー)

Anjlee Bathia(ダンサー)

Aliya Meghjee(ダンサー)

 

Sue King-Spear(豪華なパーティーゲスト)

Hannah Nazareth(軽薄なパーティの女の子)

 

Pritom Ahmed(結婚式のゲスト)

Kishore Bhatt(結婚式のゲスト)

Rajesh Kalhan(結婚式のゲスト)

Parvinder Kaur(結婚式のゲスト)

Nina Kumar(結婚式のゲスト)

Kas Meghani(結婚式のゲスト)

Bharat Mistri(結婚式のゲスト)

Richa Prakash(結婚式のゲスト)

Vinita Satchit(結婚式のゲスト)

Madhu Singh(結婚式のゲスト)

 


■映画の舞台

 

イギリス:ロンドン

 

ロケ地:

イギリス:ロンドン

 


■簡単なあらすじ

 

ロンドン在住の高校生リアは、スタントウーマンを目指して、姉リーナと一緒にスタント動画を撮っては動画サイトにアップしていた

リーナは芸術家志望で美大に行っていたが、今はスタンプ状態にて休学していた

 

ある日、母ファティマのママ友であるラヒーラが主催する夜会に招かれたリアとリーナは、落ち着かない中で過ごすことになった

夜会の主役はラヒーラの息子サリムで、彼の妻になりたいと思う人は多数いて、姉もその一人だった

 

その後、レーナとサリムは頻繁にデートに行くようになったが、リアは心から二人を祝福できなかった

それは、この結婚には何か裏があると感じていた

そこでリアは、親友のアルバとクララを巻き込んで、二人の結婚を阻止しようと考えるであった

 

テーマ:花嫁の資質

裏テーマ:姉妹愛

 


■ひとこと感想

 

お姉さんの結婚式をぶち壊す妹ということぐらいしか知らずに鑑賞

インド映画なのかなと思っていたら、イギリス映画で、ロンドンが舞台になっていました

主人公はパキスタン系イギリス人で、ムスリムの宗派に属していました

 

姉は芸術家志望ですがスランプに陥っていて、人生の目標を失った状態になっていて、そこにつけ込まれたのかな、という展開を迎えます

とは言え、富豪が平民を結婚相手に選ぶには理由があって、という内容になっていて、そのネタバレが後半に暴かれるという感じになっています

 

勢いで鑑賞できる作品ではありますが、肝心の結婚させる理由が荒唐無稽で、それを許容できるかどうかという感じになっていますね

それ以外にも、富豪の余裕から隙がありすぎて、主人公補正のご都合主義的な展開になっていたのはどうかなあと思ってしまいました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画は、一応は「ムスリムの結婚制度に反対」みたいな感じが骨子にありますが、相思相愛状態に見えるので、妹の行動は共感性が低すぎるように思えます

彼女が見つけ出す証拠も証拠と呼べるようなものではなく、あれで周囲を説得しようとする方が無茶なように思います

 

母親の卵子と息子の精子を受胎させて、それをリーナの体を使って育てるというものになっていますが、かなり気持ち悪い世界になっていますね

この気持ち悪さというものが映画からはあまり伝わっておらず、周囲がドン引きするところまでは行っていませんでした

 

結婚式での騒動もほぼコント状態で、ここで回し蹴りが来るんだろうなあというところできちんと見せてくれます

でも、コヴァックスはまだしも、ラヒーラが強すぎるので、このあたりの説明がゼロというのも微妙な感じがしました

 

憧れのユーニスの登場もそれで終わり?という感じになっていますが、あの展開ならば、結婚式に登場してひと暴れしても良かったように思えました

 


タイトルの意味について

 

映画のタイトルは『ポライト・ソサエティ』で、直訳すると「上流社会」という意味になります

リアとリーナは一般家庭で、リーナに一目惚れをするラヒーラが一応は上級社会の住人ということになります

それでも、映画は「遺伝子組み換え」だの、「お母さんを復活?させる」だの、単なるマザコン男の戯れというものが描かれていました

 

問題提起としては、金持ちと平民の不相応なカップルには裏がある、みたいな感じになっていますが、実際にはこんな訳のわからない理由というものはないと思います

政略的な結婚に悩み、平民と結婚したがる金持ちみたいな映画はよくありますが、この映画で格差的な問題を取り扱っているようには見えません

このポライト・ソサエティには「上品ぶった」というニュアンスの意味もあるので、ある意味では富裕層にはロクな男はいないというのを揶揄しているのかもしれません

 

とは言うものの、この映画で語られる最大のテーマは「優秀な遺伝子を残す」と言うものではなく、「優秀な遺伝子を残せなかった母体を作り出してやり直しをする」というものなのですね

なので、ある意味において、金持ちの失敗を解決しようと言う映画になっていて、それはラヒーラの存在を否定しているようにも見えてきます

母親が生まれ変わって、今度はもっと優秀な遺伝子を残そうと考えているわけで、それは今ある遺伝子の結晶を物足りなく思っていることの裏返しだと言えます

そう考えると、ラヒーラはちょっとかわいそうな人なのかな、と思ってしまいますね

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、大枠では姉妹愛の物語で、姉が騙されているから何とかして結婚をやめさせようと考える妹が描かれていました

リナが結婚を破断させるためにあれこれ行う訳ですが、こう言った行動は裏目に出る可能性が高いのですね

それゆえに、リーナはリアの気持ちを汲めないまま、どうして私の幸せを祝ってくれないのか、と考えるようになっていました

 

この金持ちに騙されている姉を何とかしたい、と言う物語性は悪くないのですが、リアがラヒーラを疑う根拠が乏しすぎるのですね

後半になって、ヤバい実験室を見つけたみたいな感じになっていますが、前半の疑っている段階では、ラヒーラと母親がコソコソ話をしていた、ぐらいになっていました

なので、リアの行動に共感性が生まれずに、この子は何を暴走しているんだろうと言う感じに距離を置かれてしまっています

 

この感情の流れを早い段階で正常に戻すためには、初期の段階で「ラヒーラの研究をみせる」ことで、違和感の正体を探すためにリアが動いていく、と言う流れにする方が良いと思います

観客はラヒーラの異常さを知っているけど、リアはそれを知らないので、単に「感覚的にこの男はいけすかない」ぐらいになっていますが、導入はそれで良いでしょう

そこから、その違和感の正体が「自分の嫉妬だけだと思っていたけど違った」という展開に持っていき、リアがラヒーラの正体を知るシーンで、前半の謎が明かされると言う流れになると良いと思います

怪しい研究をしているけど何をしているかわからないとか、前の婚約者が犠牲になった状況を最初に描くことで、リーナに及んでいる危険に早く気づいて!という感じに描くことができます

 

ラスボスがラヒーラの母というのはOKで、あれぐらい巨悪である方が良いと思います

問題はラヒーラ自身が中途半端な感じに置き去りにされているところでしょう

この展開になるなら、母親の真の目的を知った時にラヒーラは利用されていたことを知る、という絶望を突きつけた方が良いと思います

そして、母親離れをするという展開になり、そこから協力して母親を打ち負かすというものでも良かったでしょう

その姿を見てリーナが再び惚れ込んでしまうとか、リアの方に魅力を感じて乗り換えようとするとか、いろんなパターンがありますが、ラヒーラを母親から分断させることで、彼自身の研究は悪いものではなかった、と結んだ方が良かったように感じました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、スタントウーマンになりたいリアを描いていますが、彼女がなぜその道を目指そうと思ったのか、というきっかけがあまり伝わって来なかったように思います

憧れのユーニスのポスターを貼っていたりしますが、映画の裏方である人物にフォーカスをして憧れるというのは、よほどの体験がないと難しいように思います

それを考えると、ユーニスを好きになるきっかけとして、映画の撮影現場の見学に行ったとか、幼少期に何らかの縁を持ったなどの、きっかけとなるエピソードが必要になってきます

また、彼女が実は有名な格闘家とかで、表舞台から姿を消していたとかでもOKで、その後、彼女がスタントウーマンをしていることを知って、そこから目標が決まったとかでも良かったと思います

 

本作におけるスタントウーマンになりたい願望は、単に「女の子がアクションができる」という説得力を持たせるためだけのようなもので、それならば普通に格闘技の選手とかの方がすんなりと物語が作れそうに思いました

また、リアは姉思いなのですが、姉のどの部分に魅力を感じているのかとかがわかりにくいように思います

彼女が体を使う仕事を考えるに至って、溺愛する姉の存在は抜きにできないでしょう

それを踏まえると、幼少期に姉に助けてもらったとか、姉も実は格闘の道を目指していたけど、怪我とか進学でその道は断念した、というものになると思います

 

そこから姉の代わりにという思いを募らせる中で、理想の姉(女性像)が思ったのと違う方向に向かっていく

そう言った感情の変化が描かれるならば、結婚を辞めさせたいという動機にも繋がります

この場合は、ありきたりな「女の幸せは結婚なのか問題」に落ち着きますが、タイトルを活かすのであるならば「金持ちと結婚することは幸せなのか?」というテーマに行き着く方が簡単でしょう

その生き方は納得できないという妹と、相手をお金の部分では見ていないという姉との衝突がある、という流れになります

 

その後はラヒーラの母親の思惑の露呈によって、ラヒーラへの見方というものが変わり、それは姉が正解でも、妹が正解でもどちらでも良いと思います

単なる母親の操り人形だとして切り捨てるという方向にも行けますし、ラヒーラが母親と絶縁して真実の愛を語るでも良いでしょう

上品なのは見かけだけということを伝えたいのであれば、母親の悪事は世間に知らされ、家柄は地に落ちるという展開が必要になります

母親は上流であることにアイデンティティを持っているので、それを崩壊させて、精神的に終わらせる方がスッキリしたんじゃないかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101915/review/04191801/

 

公式HP:

https://transformer.co.jp/m/politesociety/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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