■18年目に訪れる前半生の答え合わせ
Contents
■オススメ度
ほろ苦い青春映画が好きな人(★★★)
岩井俊二監督の『Love Letter』で感動した人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.5.3(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
英題:18×2 Beyond Youthful Days、中国語題:青春18×2 通往有你的旅程
情報:2024年、日本&台湾、123分、G
ジャンル:トラブルを抱えた青年が、かつて交流のあった女性を探す旅に出る様子を描いた青春映画
監督&脚本:藤井道人
原作:賴吉米『青春18×2 日本慢車流浪記(2014年)』
キャスト:
シュー・グァンハン(ジミー/リン・ジアミン:カラオケ店でバイトする高校生)
清原果耶(アミ/佐久間亜美:日本からの旅行者)
ジョセフ・チャン/張孝全(リュウ:ジミーが旅先で出会う居酒屋の店長、長野県松本市)
道枝駿佑(幸次:ジミーが旅行中で出会う一人旅の学生、飯山線車内)
黒木華(由紀子:ジミーが訪ねるネットカフェの店員、新潟県長岡市)
松重豊(中里:亜美の知り合い、福島県只見市)
黒木瞳(佐久間裕子:亜美の母)
フィガロ・ツェン/曾少宗(アーロン:ゲームの共同開発者、ジミーの大学時代からの親友)
ホン・グンジュン/洪群釣(シャオ・ジャン:アーロンの通訳)
山中崇(アーロンの商談相手)
岡本孝(アーロンの商談相手)
樋渡三紗(アーロンの商談相手)
ク・ジョンヘン/屈中恒(ジミーの父)
ユー・ファン/郁芳(ジミーの母)
リウ・ズーピン/劉主平(ジミーの妹)
北村豊晴(島田:カラオケ神戸のオーナー、台南市)
リオ・フェジン/廖彗珍(スーイー:おばちゃん店員)
リー・クアンイー/李冠毅(ウェイ:ロンゲ店員)
バフィー・チェン/陳姸霏(シャオティン:不良娘)
■映画の舞台
台湾:台南市
日本:東京都心
日本:神奈川県鎌倉市
日本:長野県松本市
日本:新潟県長岡市
日本:福島県只見
ロケ地:
台湾:台南市
水仙宮市場
https://maps.app.goo.gl/Qh5GiJX5hwreFCQb8?g_st=ic
黄金海岸喜樹
https://maps.app.goo.gl/bBABMVyyrcLcHLDX8?g_st=ic
台湾主廟天壇
https://maps.app.goo.gl/Xb4rzrMPC5fSpsVA6?g_st=ic
台南東門城
https://maps.app.goo.gl/6ZAm4qz5m1cSQ7nW9?g_st=ic
台湾:高雄市
大崗山超峰寺
https://maps.app.goo.gl/3RtAdtG8aup9YZAEA?g_st=ic
カラオケ神戸(統領KTV)
https://maps.app.goo.gl/BRsf4Cir4uFmihp3A?g_st=ic
十分駅
https://maps.app.goo.gl/kwxw3aveN5YRvcjs5?g_st=ic
日本:
神奈川県:鎌倉市
鎌倉高校前踏切
https://maps.app.goo.gl/Zj1ceb7ywTKRJWFM9?g_st=ic
長野県:松本市
松本城
https://maps.app.goo.gl/eTmky7sXuxVwy8H9A?g_st=ic
信州なわて通り商店街
https://maps.app.goo.gl/AYtywouCADXVm3QZA?g_st=ic
新潟県:津南
ニュー・グリンピア津南(ランタン)
https://maps.app.goo.gl/KEXkywS8pon6XA4r9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
大学時代の友人アーロンとゲーム会社を立ち上げたジミーは、ある日の経営会議にて取締役を解任されてしまう
ジミーのやり方に反発した経営陣の反旗で、彼はそれを受け入れるしか無かった
荷物をまとめていたジミーは、そこでかつて台湾で交流を持ったアミからの手紙を目にする
そして彼は、その手紙を手にあてのない旅を始めようと思いついた
ジミーは高校時代に台南のカラオケ店で働いていて、その店を訪れたのがアミだった
彼女はバックパッカーの旅をしていて、財布をなくしたとのことで、働き口を探していた
カラオケ店のオーナー・島田は、アミを快く受け入れ、それからジミーは教育係として、彼女と接する機会が増えていった
アミは「自分にしか描けない絵」を描く旅に出ていて、最初に訪れたのが台湾の台南だった
ジミーは彼女に心を奪われ、愛おしい日々を過ごしていく
だが、ある時、アミは彼の前から姿を消す決断をしてしまうのである
テーマ:自分が歩んできた道
裏テーマ:彼女が見てきた景色
■ひとこと感想
『デイアンドナイト』から監督&主演を追いかけてきて、期待値マックスで初日に鑑賞
台湾で偶然に出会った二人の回想録で、ほろ苦い青春を想起する流れになっていました
予告編で色々とネタバレしている感じですが、映画を最後まで観て、2回目を見返すと違った感覚になる映画だと思います
映画は、ジミー目線で物事が進み、彼の行き先の見えない青春が描かれていきます
そんな中でアミと出会い、「夢を叶えたら」という約束をすることになります
察しの良い人は「どうなるか」が予測がつくのですが、でも最後にサプライズがあるという感じになっています
そのサプライズは「2回目に見ると印象が変わる」というもので、ジミーが旅に出る理由というものが180度変わって見える、という感じになっていました
旅の中で色んな人と出会い、その都度アミのことを思い出すのですが、その意味すらも変わってくるのですね
物語は平凡に見えるかもしれませんが、視点を変える後半によって、その物語(人生も含めて)が平凡だったかどうかはわからないものだと思います
映画では岩井俊二監督の『Lover Letter』と『スラムダンク』、ミスチルが登場しますが、ジミーが彼女に聞かせたのはなんだったのか気になってしまいますねえ
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
察しの良い人ならば、アミに何かがあったことがわかり、その顛末も予想できたと思います
でも、その事実をどこで知ったのかというのがわかる瞬間に、ジミーの旅の印象が180度変わってしまいます
当初は「会社を追い出されたのでアミに会いにいく」という感じで、到着したところでアミの顛末を知るという感じに描かれていますが、ジミーが「それ」を知った瞬間と「18年間」の意味がわかると、彼が「回り道をした理由」というものがわかってくるのですね
また、去り行く人は優しい嘘をつく、という前半があって、でも「何かを残していく」という流れになっていました
アミがジミーに残したものは何か
彼は旅の途中で色んな人に出会い、そこで「アミが残してきたもの」を再発見するに至ります
その過程が非常に丁寧に作られていて、心に刻みたい素敵な言葉がたくさん登場していました
ネタバレなしで鑑賞した方が良いとは思いますが、ジミーが知ったタイミングを知ってからの2回目はかなり違った印象を与えます
セルフや間などで細かな演出がされているので、それを含めて新しい発見が得られるのではないでしょうか
■旅の目的
本作は、会社をクビになったジミーが、思い出を整理している中で亜美の手紙を見つけることになり、意を決して旅に出る様子が描かれています
「意を決して」の本当の意味がわかるのは後半になってからで、映画の流れとしては「相棒のアーロンの東京出張の引き継ぎ」という名目を持って、そのまま日本のある土地を訪れるという流れになっていました
ジミーは実在の人物で、亜美に関しては原作にあたるブログ(記事)でも仮名となっていますが、おおよその流れは同じようになっていました
映画と原作の大きな違いは、旅に込められた想いであり、映画ではかなり劇的に描かれているように思えます
かつて恋心を抱いていた相手を探すというのは、よほどの執着はないとダメで、その関係性が思った以上に辛いものだったか、潔く解消され、友人のような関係になっている場合だけだと思います
本作の場合は、前者の強い執着を持たざるを得ない恋愛になっていて、でも物語としては「亜美の死をどの時点で知ったのか」は伏せられていました
この手の物語は、相手の生死に関して先に情報がある場合が多いように思います
でも、ジミーは「なんとなく」の旅に出て、かなり迂回するような行程にて、目的地の只見市に辿り着くように演出されていました
ジミーにとっての旅の目的は、前半期における恋愛の清算になっていて、彼女との約束の報告をする意味もありました
夢を叶えて会うはずが、夢を叶えた時にはもういない
その失望がジミーに18年間の束縛を与えることになっていて、今回の失脚騒動は「夢の終わり」を暗示するものになっています
でも実際には、亜美との執着によって叶えた夢でもあり、それは本来の夢とはかけ離れているものだったかもしれません
なので、今回の旅において、もう一度亜美に約束をする、という意味合いが強いのかな、と感じました
■人が人に遺すもの
人は二度死ぬと言われていて、一度目は生命の死で、二度目は記憶からの抹消であるとされています
人は死んでも何かを残す存在で、子孫、財産、知的財産などの他に「思い出」と呼ばれる無形のものがあります
この無形財産が途絶えたとき、人は最後の死を迎えるとされていて、要するに「その人の存在を知る人が世界で皆無になる時」であると言えます
誰かの記憶に残り、「そういえばいたよね」という会話が成立する段階では最終局面ではないのですね
今回の場合は、亜美は多くのものを残していて、有形である手紙はもとより、ジミーの中で無形のものがたくさん残っていました
彼の旅は無形となっているものを辿る旅になっていて、その多くは「亜美の人生哲学」のようなものになっていました
ジミーがこれまでに得た人生の教訓というものが別の人物で再現されるようになっていて、この流れを考えると、人というのはなかなか死なないものなのだなあと思わされます
自分自身もどこまで存続するのかはわかりませんが、生命的な死を迎えた段階で、それに想いを馳せることは意味がないのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、台湾に旅行に来た女性との出会いによって人生を変えた青年を描いていて、彼女にはある秘密があった、という内容になっています
それは不治の病を抱えていたことであり、生きているうちにやりたいことをやろうという決死の旅にもなっていました
彼女は多くの国を回る予定でしたが、最初に訪れた台南にてジミーと出会うことによって、その方針を転換させることになります
でも、彼女のその想いは生きている間にジミーに届くことはありませんでした
ジミーは彼女に恋焦がれ、それを原動力として夢へと邁進します
ようやくアーロンとゲームを完成された時には亜美はこの世にはいなくて、その失意から18年間亜美の死に向き合えなかったのですね
その18年でジミーは亜美の死から目を背けるかのように多忙に埋没し、気がつけば会社は大きくなっているけど、孤立しているという状況になっていました
18年目に強制的な休暇が訪れたのは偶然にも思えますが、実際には亜美の意志によるもののように思えます
彼はこれまでに何度も亜美のことを振り返り、彼女の墓前に報告することを考えていたと思いますが、彼によっての「夢の達成」というものがどんどん大きくなり、それが「会わないための言い訳」のようになっていました
これ以上突き進むと全てが終わるという段階になって、その道は一気に閉ざされることになるのですが、これはジミーの人生においても、転換するラストチャンスだったと思います
人生には多くの節目が存在し、それは周期的なものになっています
わかりやすい節目は3年で、何かをするにしても3年は頑張ろうという言われ方をします
この3年という最小期間を積み重ねていくと、6年、12年、15年と続いていくのですが、ジミーの振り返りが18年目だったこともこの3年周期の延長線にあるものなのでしょう
彼にとっての最初の18年は「亜美を知らない人生」で、次の18年は「亜美に捧げる人生」のように思えます
なので、次の18年は「自分のために生きる18年」であり、亜美以外の誰かと過ごす18年になると言えるのでしょう
ジミーはこの機会がなければ、生涯を亜美のために生きるような人物だったと思います
それは亜美の生が終わらないことを意味するのですが、その生き方は亜美にとっては過酷であるように思えます
そう言った意味において、18年目の転機というのは、ジミーの解放であると同時に亜美の解放でもあると思います
それを考えると、このタイミングで色んなことが起こるというのは、亜美の願いを神様が聞き入れてくれた、ということになるのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100426/review/03780092/
公式HP:
https://happinet-phantom.com/seishun18x2/