■男女逆転と恋愛要素の改変によって、ファンタジー要素が増したのは成功要因だと思います


■オススメ度

 

原作『1秒先の彼女』を知っている人(★★★)

キャストのファンの人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.7.7(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報:2023年、日本、119分、G

ジャンル:タイミングのズレた男女が失われた1日を巡って不思議な体験を共有する青春映画

 

監督:山下敦弘

脚本:宮藤官九郎

原案:チェン・ユーシェン『1秒先の彼女(2020年、台湾)

Amazon Prime Video リンク→https://amzn.to/44fhRrK

 

キャスト:

岡田将生(皇一/ハジメ/ワイルドスピード:いつもワンテンポ早い郵便局員)

   (幼少期:柊木陽太

清原果耶(長宗我部麗華/レイカ:いつもワンテンポ遅い大学7回生)

   (幼少期:加藤柚凪

 

福室莉音(桜子:ハジメが恋する路上ミュージシャン)

村角ダイチ(桜子の取り巻き)

野尻野哲汰(桜子の取り巻き)

満阪満(桜子の取り巻き)

本多力(桜子のファンのサラリーマン)

 

笑福亭笑瓶(ラジオDJ/写真屋の店主)

桑原良二(カメラマン)

 

伊勢志摩(小沢:ベテラン局員)

松本妃代(エミリ:新人局員)

朝井大智(小早川:エミリの彼氏)

や乃えいじ(中賀茂郵便局の局長)

蟷螂襲(大学教授)

 

山内圭哉(花火師)

賀家勇人(竹田:花火師の弟子)

 

荒川良々(秋迦牟尼仏憲/ミクルベ:バスの運転手)

 

羽野晶紀(皇清美:ハジメの母)

加藤雅也(皇平兵衛/勘解由小路:ハジメの父)

片山友希(皇舞:ハジメの妹)

   (幼少期:五藤希愛

しみけん(ミツル:舞の彼氏)

 

酒井善史(ハジメの担任)

 

入江毅(レイカの祖父)

齊藤由衣(レイカのおば)

有村春澄(ゴロウ:鍵を飲み込んだ子どもの14歳時)

 

多賀勝一(ボランティアの老人)

川本美由紀(天橋立郵便局を利用するおばあちゃん)

服部竜三郎(田端:天橋立郵便局の局員)

 

たらちね(漫才師)

高阪勝之(バスのスリ)

手島弘樹(バスにぶつかるチャリの高校生)

 


■映画の舞台

 

京都市:

中賀茂郵便局(架空)

平安神宮

 

京都府:伊根町

天橋立松林郵便局

 

ロケ地:

京都市:北区

立命館大学 学生会館

https://maps.app.goo.gl/YxwHDYc9X1Y2demaA?g_st=ic

 

ダイアテック 上賀茂

https://maps.app.goo.gl/JWrv63BrYxKCh8BdA?g_st=ic

 

京都市:左京区

平安神宮

https://maps.app.goo.gl/4zy9ZEYWtJyst3PJ6?g_st=ic

 

京都市・上京区

山中油店

https://maps.app.goo.gl/fchLTwGtP3obEJoG7?g_st=ic

 

京都市:中京区

吉川写真館

https://maps.app.goo.gl/NodtyUaSogXQk8k88?g_st=ic

 

鉄板居酒屋さかき二条

https://maps.app.goo.gl/J5eFTUwNtRoZvzAi8?g_st=ic

 

京都府:宮津市

天橋立公園

https://maps.app.goo.gl/xptGG8YaBUVP1WeQ8?g_st=ic

 

旧宮津小学校

https://maps.app.goo.gl/WYezw7Na2UQeeDPA8?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

京都の洛中の郵便局に勤めるハジメは、昔からワンテンポ早くて難のある青年だった

度重なる交通違反で配達員から窓口係に配属され、今では窓口業務を淡々とこなしていた

 

ある日、ハジメは鴨川の河川敷で弾き語りをしているミュージシャンの桜子に出会って恋をする

順調に過ごしていた二人だったが、ある日曜日がハジメの中から消えてしまっていた

 

一方その頃、いつもワンテンポ遅いレイカは、大学7回生のまま地元の写真館でアルバイトをしていた

彼女はいつもハジメの郵便局に来ては、ある私書箱に向けて手紙を送っていた

 

テーマ:ズレた二人のサプライズ

裏テーマ:想いの強さが奇跡を起こす

 


■ひとこと感想

 

台湾映画のリメイク作品になっていて、男女のポジションが真逆になっています

変態度が消失して、純愛度が増した感じになっていますが、それについては『1秒先の彼女』をご覧になった方が早いかもしれません

 

映画は、ハジメの恋愛が描かれる中で、ちょいちょい登場している女子大生がカギになっている設定で、喪失した1日を探しているうちに自分に起こった出来事と、レイカの気持ちに気づくという流れになっています

 

京都の街を舞台に繰り広げられる「洛中あるある」は魅力的で、平安神宮で撮られたあるシーンは見応えのあるものになっています

ハジメの出身地がツボですが、ベテラン局員の洛中っぽさがなかなか面白かったと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

『1秒先の彼女』の男女逆転リメイクをあまり宣伝では言わない不思議がありますが、それをアプローチした方が効果あったんじゃないかと思ってしまいますね

チラシを見た時には「何か既視感あるな」と思っていましたが、男女逆転してるのにすぐに気付きませんでした

ともかく「失われた1日を探す」というプロットは強烈だったので、時間が止まったシーンのことは今でもよく覚えています

 

物語は、悪い女に引っかかりそうになったハジメを、レイカが救うという流れがあって、テンポがズレたせいで起こる奇跡の1日を描いています

毒を吐くミュージシャンにはモデルがいそうで、微妙に攻めた内容になっていました

 

映画は、平安神宮の静止映像ほか、京都市内の観光ムービーになっていますが、そっちよりも天橋立の方に行きたくなってしまいますね

リメイク元との比較も楽しめると思うので、前後どっちでも良いので鑑賞することをオススメいたします

 


男女逆転で変わったこと

 

本作の原作にあたる『1秒先の彼女』は、主人公が男性でバス運転手、ヒロインが郵便局員になっていました

ヒロインはダンスのインストラクターと仲良くなっていて、主人公の横恋慕が描かれていきます

止まった時間で動けるのが主人公で、彼はヒロインを海辺へと連れ出して色んなポーズをさせたり、キスまでしちゃったりします

公開当時に鑑賞しましたが「炎上案件のキモい映画だなあ」と言う感想を持ったことを覚えています

 

本作では、男女のポジションを入れ替え、かつ年齢差をつけることによって「恋愛要素を少しだけ薄める」と言う感じになっています

幼少期の約束を覚えているレイカが、それを徐々に恋心に昇華させていて、ハジメ自身は「思われること」に気づいて、自分の心に彼女を刻んでいきます

事故で両親を亡くした時に支えてくれたヒーローがハジメで、幼少期のハジメも彼女に対する恋心を抱いていたのかもしれません

ギプスに二人の名前を書いたのはハジメですが、相合傘を書いたのがどっちなのかは描かれていませんでしたね

そのままハジメが書いたのだと思いますが、その意味を知っているのは年上の彼の方だけだったかもしれません

 

年上の頼れるお兄ちゃんは、会えない時間が想像を膨らませて、さらに特別な存在になっていきます

偶然の再会によって、レイカの中で初恋が蘇り、それに右往左往していく様子が描かれていきます

「憧れの人と写真を撮りたい」と言うスタンスになっているので、天橋立の一連のシーンがそこまで気持ち悪いものにはなっていません

それは、レイカの想いが純粋だからなのですが、男女逆転していることの方が、その特性を強調しているように思えます

もし、男女設定がそのままだとしたら、配役も難しいでしょうし、動けない女の子を勝手に連れ出してしまうなどのシーンの気持ち悪さは倍増してしまうでしょう

原作の方がそこまで気持ち悪くないのは配役の妙(と主人公の痛さ度合い)になっていて、コミカルで残念な感じが強調されていたから、なんとか観られるものになっていたと思います

 


1日が消えた理由

 

原作では「ワンテンポ遅い人」に神様が1日分を返してくれると言うものになっていて、1日の恩恵を受けるのが「ワンテンポ遅い主人公」になっていました

本作でも、動けるのは「ワンテンポ遅いレイカ」になっていましたが、その理由に「名前の画数が多いから」と言うオリジナル要素が付加されています

長い名前を書いている時間は損をしているので、それが1日分貯まったら神様が返してくれると言うことなのですね

そして、ハジメの父も遅い属性があって、時間を返してもらう側になっていました

 

名前というのは親から授けられたもので、本作に登場する名前が長い人はみんな「苗字が長い」と言う特徴がありました

対象的に「速い属性の人」は苗字が一文字で終わっていて、この違いは家系によるものだとわかります

また、ハジメの父が婿養子に入っても事態は変わらず、生まれ持った名前が人生を縛ると言う結果に結びついています

先祖代々「難しくて画数の多い名前」を書かされることになったハンデを神様は癒してくれるのですが、このあたりの設定の付加要素が上手い具合にできているなあと感心してしまいます

 

名前というのは、姓名判断などが発達しているように、意外と人生を縛るものだと思います

私自身も婿養子に入ったために今の苗字になっていますが、生まれ持った性質などは旧姓に由来するのかなと思ったりもします

ハジメの父は「名前の呪縛から逃れるために婿養子に入った」のだと思いますが、私個人もそれに近いものがありますね

改名によって何かが変わったのかは知るよしもありませんが、それだけでは人生が変わらないのも確かかなと感じています

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画はプチ京都観光映画になっていて、京都版リメイクのようなことになっています

舞台となる中賀茂と言う住所は記憶になく、おそらく架空のものだと思います

上賀茂は劇中で言う洛外にあたり、北山通りの北側の一帯の土地のことを言います

上賀茂神社があるあたりで、京都府立植物園の北西の方向にあたります

対する下賀茂は「下鴨」と言い、北山通りよりも南側になっていて、こちらも「今出川通りよりも北側」なので洛外ということになります

中賀茂と言うのは「上賀茂と下賀茂の間にあるはず」なのですが、北山通りを境に「北側は上賀茂、南側が下鴨」なので、実在しないと思います

 

ちなみにハジメが立ち寄った交番は「荒神口交番」で、この場所は京都御苑(京都御所)の東側になり、ここは洛中と呼ばれる場所になっていますね

また、レイカが通うのが立命館大学・衣笠キャンパスになると思いますが、そこの写真部の部室から平安神宮(バスのある場所)は結構遠かったりします

平安神宮は東山の方にあるので、立命館大学・衣笠キャンパスから車で17分、自転車だと30分くらいはかかる距離になっています

このあたりは土地勘のある京都人なら、「レイカちゃん、瞬間移動したで」みたいな感覚になると思います

もっとも、立命館大学・衣笠キャンパスはロケ地なので、ハジメの勤務地が荒神口近く、鴨川の河川敷が登場となると、レイカの通う大学は京都大学(平安神宮の北側、荒神口の東側)ということになるかなと思います

 

ちなみに、レイカの生家である天橋立は平安神宮からバスで3時間ほど北に行った日本海側になります

高速を使えば2時間弱で着きますが、時間が止まった高速は渋滞もそのままなので走れないでしょうね

そもそも京都の市街地から出るのも不可能だと思いますが、そこはファンタジーだと割り切る方が良いと思います

 

映画は、ファンタジー要素が満載の後半によって優しい映画になっていて、ストーカー気質も柔和な表現になっていました

当初は男女入れ替えではない企画があったそうですが、それでは書けなかったと宮藤官九郎さんがパンフで語っていましたね

それは原作を見れば一目瞭然で、どう転んでも変態映画にしかなりえないからです

男女そのままで変態度を感じさせない男性俳優は皆無に近く、実現可能性を模索するとジャニーズの若手になりますが、そうなるとヒロイン選びが結構大変なのですね

それを考えると、男女を逆転させることで、性別的な呪縛から解放され、炎上から距離を置けたのは正解だと思います

 

配役もストーカー役を清原果耶さんが演じることと、設定を「頼りになるお兄ちゃんが好き」というところにフォーカスしたのは最適解になっていますね

このバランス感覚が本作では優れているので、ちょっと不思議な映画だけどほっこりするね、という感想を得られるのではないでしょうか

主軸としては恋愛映画になりますが、感情を言葉にしまくるハジメと感情を表に出せないレイカとの対比も強調されていて、二人のやりとりがコントのようにも思えます

地味な作品ではありますが、鑑賞後感というものがとても良いので、SNSで口コミで広がってくのではないでしょうか

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/384808/review/9826e182-9c15-4f2b-86b1-139de8262b82/

 

公式HP:

https://bitters.co.jp/ichi-kare/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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