■日記は自分と向き合うものですが、それを交換することで「本当の自分」が相手を通して見えてきたりもするのですね
Contents
■オススメ度
複雑に絡んだ高校生の恋愛劇を楽しみたい人(★★★)
高橋文哉さんのファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.7.7(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、110分、G
ジャンル:好きな人から間違ったラブレターを受け取った女子高生が、相手の好きな人になりすまして日記を続ける様子を描いたラブロマンス映画
監督:竹村謙太郎
脚本:吉川菜美
原作:櫻いいよ『交換ウソ日記(2013年、スターツ出版)』
キャスト:
高橋文哉(瀬戸山潤:間違ってラブレターを送ってしまう男子高校生、元サッカー部)
桜田ひより(黒田希美:瀬戸山のラブレターを受け取る女子高生、放送部)
茅島みずき(松本江里乃:瀬戸山の本命、希美のクラスメイト、生徒会長)
曽田陵介(米田晴人:優子を想う瀬戸山の親友)
齊藤なぎさ(林優子:米田を密かに想っている希美と江里乃の親友)
板垣瑞生(矢野大翔:希美の先輩、放送部の3年生)
木内舞留(沙耶:希美たちのクラスメイト、友人)
増井湖々(萌:希美たちのクラスメイト、友人)
木村風太(瀬戸山たちのクラスメイト)
髙橋大翔(瀬戸山たちのクラスメイト)
ダンディ板野(TVの出演者)
有香(瀬戸山美久:潤の妹、小学3年生)
三谷侑未(瀬戸山のおばあちゃん)
■映画の舞台
日本のどこかの地方都市
ロケ地:
茨城県:取手市
取手聖徳女子高等学校
https://maps.app.goo.gl/pYSfoG8w81Pp6U956?g_st=ic
東京都:あきる野市
古民家スタジオまきのした住宅
https://maps.app.goo.gl/Ehd5SuyqHzVVPPEA8?g_st=ic
山梨県:富士吉田市
富士急ハイランド
https://maps.app.goo.gl/cwuRAbNF1736Y4rc6?g_st=ic
東京都:町田市
南町田グランベリーパーク
https://maps.app.goo.gl/qa97tNxCMuH11eeu6?g_st=ic
東京都:千代田区
Day Nite
https://maps.app.goo.gl/sM2WC23yWsdjErep9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
高校の放送部に所属している2年生の黒田希美は、かつて先輩の矢野と付き合っていたが、「自分を見せない希美」はいつしかフラれてしまっていた
ある日、移動教室で落書きだらけの席に座った希美は、机の中からある物を見つけてします
それは「この席に座る君に」と書かれたメモで、そこには「好きだ 瀬戸山」とだけ書かれていた
驚きを隠せない希美は、それからも置かれてくるメモに反応しながら、回数を重ねていく
「よく知らない」と書けば、「知ってほしい」とノートが置かれていて、そこから奇妙な交換日記が始まろうとしていた
だが、その日記の最初のページには、「このノートが終わる時、松本に告白する」と書かれていて、一連のメモは希美の親友・松本江里乃に宛てていたことが判明する
別人であることを言い出そうとするもののタイミングが掴めず、希美は江里乃になりすますカタチで、瀬戸山と交換日記を始めることになってしまったのである
テーマ:本当の自分は隠せない
裏テーマ:積み重なった好きという感情
■ひとこと感想
ガッツリと少女漫画っぽい展開で、イケメン俳優だったので、ジャニ映画かなと思っていました
主演の高橋文哉さんは仮面ライダーの人で、この手のテレビを一切観ないのでまったく存じ上げませんでした
ファンっぽい人たちの黄色い声援が響くのかと思っていましたが、節度ある大人の女性に人気があるようで、内に秘めたLOVEが滲んでいたのかもしれません
映画は、勢いで始まってしまった交換日記を通じて片思いが増幅し、その一方で絶望的な溝ができていく様子を描いていきます
実際には、ある時点でどちらもが「ウソを続けていること」に気づいている感じになっていて、それが和解に至るのが今風な感じなのかもしれません
基本的に悪い人間は出てこない感じのピュアさがあるものの、一歩間違えばという危うさがありましたね
基本的にはファンムービーの部分が強いので、イケメンに限るというシーンがたくさんあるし、ファンに向けた目線(第四の壁突破)みたいなショットがたくさんあったように思えました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
この交換日記が実際にどこまで続けられるのかはわかりませんが、瀬戸山としては「割と早い段階で江里乃ではないことはわかる」と思います
元々、瀬戸山の勘違いで始まったもので、彼も「メッセージの主が江里乃だ」と勝手に思い込んでいました
キーシークエンスとなる公園のシーンにて瀬戸山は日記の向こう側にいるのが希美であることを知り、そこから行動をエスカレートさせていきます
瀬戸山自身のやりたいことを体現し、かつ江里乃に向けているように見せていくのですが、巻き込まれた江里乃は散々な体験になっていましたね
彼女が少しでも瀬戸山に心が寄っていたら、ドロドロの修羅場になっていたのかもしれません
相手のことを知りたいという欲求こそが恋、という感じで物語は進み、その中で弱さを曝け出していくのですが、彼は当初から周りが思う以上に弱い人間だったと思います
彼のハイスクールライフは不本意の連続ではありますが、そんな中でも前向きに生きていけるのは、希美の言葉があったからだったのでしょう
どのようにしてウソがバレるのかと思いましたが、意外な方法で、意外な相手がそれを見つけることになりました
感情的に嫌悪感はあったと思いますが、その日記を辿っていく内に、二人が本当に好きあっていることがわかったし、自分になりすましてまで瀬戸山と心を通わせたかった希美の気持ちを理解できたのだと思います
ラストページの瀬戸山の言葉が江里乃を動かすことになり、彼女の葛藤を乗り越えさせるだけの力を有していました
■交換日記の効能
本作では、かなり強引な展開で交換日記が始まり、続けたらダメなのに続けてしまう希美を描いています
学校イチのイケメンで、自分自身も瀬戸山のことが好きなので、その感情が先走ってしまったように思えます
彼を知りたいという欲求が、バレた時に起こることを打ち消してしまって、暴走してしまったのですね
このあたりは、机の落書きに返事を書いてしまう特性を想起させるものになっています
交換日記とは、文字通り「お互いの日常を記すもの」なのですが、自分の価値観を共有してほしいという欲求のもと、過度に装飾されがちかもしれません
よそゆきの行動や言葉によって自分を美化しながら、相手の言葉も美化していく傾向があります
見て感じてきたものの裏側(感情)を知ることになり、そこから過剰な期待を込めて膨らませていく
幸福感を装飾することによって、さらなる幸福感を募らせていくのですが、それが嘘であるがゆえに、本作では徐々に希美を苦しめていくものになっています
映画を観ていると、どうやって誰にバレるんだろうという緊張感が描かれていて、一番最悪な展開で、最悪な相手にバレることになりました
そこから血みどろの展開になっていくのかと思っていましたが、日記の最後のページを読んだ江里乃は「希美が最大のピンチに陥っていること」に気づいてしまいます
なりすましによる気持ち悪さもありますが、二人が思い合っていることも同時に感じてしまう
江里乃は自分の嫌悪感を抑えることで希美を救うことができると感じられるのですが、それはこれまでの二人の関係が本物だったことと、日記に書かれていた本物が彼女を動かすことになったからだと思います
それぐらい、あの日記からは二人の相思相愛が読み取れて、それは江里乃にとって嫉妬の対象だったのかもしれません
■言葉にすることの意味
映画のラストにおいて、ラジオのパーソナリティになった希美が描かれます
青春ラブコメでその後が描かれる珍しいパターンで、通常のラブコメだと「告白がゴール」だったりするのですね
でも、本作には「青春に生きる人たちへのメッセージ」というものが根底にあり、これらのエピローグが付け加えられています
このシーンでは、過去の自分に言い聞かせるような望みの言葉が綴られるのですが、それが成功体験になっているところに説得力が存在します
日記は内面の言語化なのですが、交換日記になったことで、相手の感情を動かす言葉というものがいくつも登場していきます
その一つが瀬戸山を孤独から救うことになり、青春の行き場のない感情を拾っていきます
希美がパーソナリティになっているのは、あの時彼を救ったのと同じように、言葉で誰かを救えると考えているからなのだと思いました
恋愛によって強くなった女の子が、自分と同じ悩みを持っている人を鼓舞していく
体験は言葉を強くしますが、希美は言葉が自分自身を鼓舞してきた過去を知っている
この強みが希美にはあり、また彼女の柔らかな声質が押し付けがましくないところがメッセージを聞き入れやすくなっています
同じ言葉を江里乃が言うと、おそらく上から目線になってしまって、素直に受け取れない人が多くなるのかなと思ってしまいます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、いわゆるイケメンを主役にしたキラキラ映画なのですが、それにまつわる演出が至るところにありました
第四の壁を突破するまでは行きませんが、デートをしている時に「希美目線」で瀬戸山を見ると言うショットがたくさんありました
擬似的にデートをしている感じになっていて、VRっぽさがそこにはありました
なので、男性だとちょっと気恥ずかしいシーンが多くあったように思います
でも、瀬戸山目線のデートシーンも少しばかり織り交ぜられていて、希美のほっぺたをぷにぷにしているシーンなどで、瀬戸山の視点に希美の反応が描かれたりもします
女の子を間近にみるとこんな感じと言わんばかりのショットがいくつもあって、そのバランスが心地よい感じになっていました
交換日記のシーンでも「それぞれによる読み上げ方式」になっていて、言葉に感情が乗っているところをうまく表現していたし、言葉をなくして表情で見せるシーンもあります
昨今の映画の「何でも喋らせる映画」とは少し趣が違っていて、「何でも系」だと江里乃が日記を見つけたシーンで「アホみたいな独白」が入ったりもします
でも、定まっていない感情や思考はうまく隠していて、それが整理された段階で言葉になっているシーンが多くありました
原作がどんな感じなのかはわからないのですが、日記によって感情が言語化されまくっているものの、そこまで過剰に思えないような仕掛けというものがなされています
米田と優子の告白のやり取りでも、全てを言語化していないところがあって、それがそれぞれの誤解を生んで、妙な間を作り上げていました
映画は、思った以上に緻密に作られていて、感情の言語化と言うテーマをどのシーンでも意識させるように作られています
そういった側面で観ると新しい一面が見えてくると思いますし、その辺のキラキラ映画とは一線を画す内容になっています
どこまで興収が伸びるかはわかりませんが、少しずつSNSで話題になって、ロングランになることを願いたくなる作品になっています
イケメン無罪の映画ではありますが、それだけではない奥深さと言うものが、本作にはあるのではないでしょうか
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/387288/review/30717753-619e-4aec-a82b-20cda791ecee/
公式HP:
https://movies.shochiku.co.jp/koukan-usonikki/