■恋が矢なら、愛はハート、いつしか刺さったものも一体となっていく
Contents
■オススメ度
切ない系ラブロマンス映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.3.22(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2024年、日本、108分、G
ジャンル:叶わなかった恋と消えた婚約者に想いを馳せる男を描いたラブロマンス映画
監督:山田智和
脚本:木戸雄一郎&山田智和&川村元気
原作:川村元気『四月になれば彼女は(文春文庫)』
Amazon Link(原作小説) → https://amzn.to/4cuVBPg
キャスト:
佐藤健(藤代俊:婚約者に逃げられた精神科医)
長澤まさみ(坂本弥生:俊の婚約者、獣医)
森七菜(伊予田春:俊の元カノ)
仲野太賀(タスク:俊の行きつけのバーのマスター)
中島歩(ペンタックス:俊の大学時代の写真サークルの部長)
河合優実(坂本純:弥生の妹、パチ屋の店員)
竹野内豊(伊予田衛:春の父)
ともさかりえ(小泉奈々:俊の先輩の医師)
水澤紳吾(桑原:俊の患者)
橋本じゅん(弥生の同僚の飼育員)
高田聖子(中河玲子:施設長)
島かおり(長谷川綾子:施設の利用者)
瀬奈じゅん(高野:結婚式場のプランナー)
■映画の舞台
日本:東京
ボリビア:ウユニ湖
チェコ:プラハ
アイルランド
ロケ地:
ボリビア:ウユニ湖
https://maps.app.goo.gl/MRJk67K6oPigssfq8?g_st=ic
チェコ:プラハ
プラハの天文時計/Prague Orloj
https://maps.app.goo.gl/jNQ7KFJKLdtSQfig8?g_st=ic
アイルランド
茨城県:日立市
うのしまヴィラ
https://maps.app.goo.gl/jfJYwHUk6UUNy9vr9?g_st=ic
千葉県:市原市
市原ゾウ園
https://maps.app.goo.gl/EQp1QEw9LFHBPKno9?g_st=ic
神奈川県:逗子市
亀甲館写真
https://maps.app.goo.gl/yjdYwBecyRzrPEPN6?g_st=ic
神奈川県:横浜市
横浜市立金沢動物園
https://maps.app.goo.gl/EXKjgASyVqTyFRVf6?g_st=ic
神奈川県:三浦市
喫茶トエム
https://maps.app.goo.gl/gYcKSX8uKF6aPGvM8?g_st=ic
東京都:新宿区
Cafe Masquerade
https://maps.app.goo.gl/j14Vfn9Se7jxHuJw8?g_st=ic
東京都:品川区
SOHOLM
https://maps.app.goo.gl/DePwN6budJAXqBC47?g_st=ic
静岡県:静岡市
静岡県立大学
https://maps.app.goo.gl/f7TiF6DAQJF9F4KT6?g_st=ic
Five Feet Café
https://maps.app.goo.gl/53DrCn9JCaFo5a9w8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
結婚を控えた精神科医の藤代俊は、かつて自分の患者だった坂本弥生と恋仲になっていた
ある日、俊の元に10年前に別れた学生時代の恋人・春から手紙が届く
そこには「あなたと行くはずだった場所を訪ねている」というもので、ボリビアのウユニ湖の写真や、各地の朝日などの写真が同封されていた
式場の下見も終え、いよいよ本番を迎えるという時期に差し掛かったが、ある朝目覚めると、弥生の姿はどこにもなく、書き置きすらも見つからなかった
それから彼女の知り得る限りの知人や家族を訪ねるものの、手掛かりは一切なく、友人でバーの店主・タスクから「まだ出て行った理由はわからないの?」と言われる始末だった
同僚の小西医師からも「この状態でどうして結婚しようと思ったの?」と心配されていたが、ある日、大学時代の写真部の部長・ペンタックスから「春に関すること」で連絡が入った
そして、彼は「行ってほしいところがある」と俊に伝えるのである
テーマ:愛の期限
裏テーマ:愛が示す忘れ物
■ひとこと感想
予告編の映像が美しく、好きな俳優、好きな歌手が楽曲を提供しているということで、期待値を上げて参戦
一抹の不安を抱えながら鑑賞することになりましたが、その不安は悪い方に傾いていきました
映画は、婚約者が謎の失踪を遂げ、それが元カノの手紙だと観客がわかるのですが、当の本人がまったく気づかないまま右往左往している時間が長かったですね
周囲の人間はほとんどわかっているのに、主人公だけわからないのですが、その時間が長すぎてモヤっとします
結婚を間近に控えた女性の元に元カノからの手紙が届くというシチュエーションで、その手紙を読ませてしまっているのですが、この流れを自分で作っておいて気づかないというのは、本当に意味がわからないキャラになっていました
隠し事をしないということを前提にしているのかもしれませんが、誠実そうに見える行為だとしても、弥生の過去を知っているはずなのに無頓着すぎるようにも思えてしまいます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
この人と結婚しても大丈夫なんだろうかと思うことは観念的なものと現実的なものか入り混じっています
経済的にどうなのかとか、愛が続くのだろうかという不安を抱えていく最中に手紙が届いていて、これは「春からのメッセージ」でもあり、弥生のために課された神様の試練のようなものだと言えます
弥生は自分の中にある孤独の正体を自分で探っていきますが、その答えを持っているのが春だったのですね
春が旅をする理由が「自分探し」で、それは手紙にも書かれていたことでした
それを読んだ弥生は、彼女なら答えを知っているのではないか、と会いにいく決断をします
弥生は発信元を知り、それが普通ではないことを知ります
これに無頓着なのが俊という人物で、それを考えないのか、気づかないのかわからないのですね
手紙の内容は旅行先から届いているように見えますが、旅を決意した最初の手紙は、ホスピスから出したものだったと思います
それゆえに弥生は彼女の元を訪ねることができていて、その宛先の妙に気づかなかったのが俊という人間だったように描かれていました
■愛の永続性
本作では、「愛はどうやったら続くのか」という問いかけがあり、その答えの一つが「手に入れないこと」となっていました
愛を一括りにしていることでわかりにくくなっていて、俊が弥生に感じているもの、春に感じているものも微妙に違うし、その逆も然りと言った感じだと言えます
俊と春の関係は学生時代で趣味が一緒というものですが、俊と弥生の関係は患者と主治医から変化しています
最初に感じていたものがそのまま継続している俊と春
接しているうちに関係性が変化して芽生えた俊と弥生
この二つの愛を同列に語ることはできません
愛は育むと言いますが、それは同じ時間を生きた上で生活と共に刻まれていくもので、俊と春の間にあるのは「愛というよりは恋」で、俊と春の間にあるのは「情から愛に変化したもの」であるといえます
それゆえに、弥生が春に会って何かを得られるのかは何ともいえないのですが、でも弥生は春の手紙からは俊への不変の愛というものを感じています
それは一方的な強い愛で、それが育ったのは「一緒に過ごさなかったから」というふうに結ばれていました
愛とは衝突し合いながら形を変えていくもので、それは包括的なものを意味すると考えられます
恋が一点集中で突破力があるのに対し、愛は相手を知っていく中で自分で受け入れるものがどんどん増えて包み込むというイメージでしょうか
俊が弥生に感じていたのはまさにそれで、彼女との時間の中で自分を包んでくれる存在だと感じていたのだと思います
でも、それに甘えていたのか、弥生を包み込んでいくことを忘れて、このまま結婚しても良いのか、というところまでおかしくなっていきました
愛が永続できるかどうかは、最終的にそれを信じられるかどうかにかかっていると思います
自分自身が永続的な愛情を持てる人間であると信じることができればできるし、自分を疑ってしまうのならば無理なのでしょう
愛は結局のところ、その存在を無条件で受け入れられるかどうかに行き着くと思います
そのために何でもできてしまうのか?
そして、そんなことが自分にできるのかを問いかけ続けた先に「できる」と確信できる人にだけ訪れるものであると思います
■自分探しの旅について
春は、父との生活を終えて、自分の病気のことを知って、それから旅に出ることになりました
それは「俊を愛していた時の自分を探す」というもので、彼女の隣にはいつも「あの時の俊」がいたのだと思います
彼女の旅は「失われた時間」を取り戻す旅とも言え、あの時父を捨てていればどうなっていたのか、という答えを探すものだったのでしょう
そんな中で、愛は手に入れないから続くと思っていたものが、一緒にいるからこそ続くのだと変化していくことになります
弥生が彼女を追いかけたのは、自分の中で揺らいでいるものの正体を見極めるためであり、その正体が何だったのかは気づけていないと思います
彼女が病んでしまった原因などは映画で描かれませんが、弥生は自分のことはわからなくても、俊のことはわかるのですね
それが「精神科医になった理由を聞いたシーン」になっていて、あの時に俊は「この人となら一緒に人生を歩いていけるかも」と考えたのだと思います
俊は自分のことも他人のこともわからない精神科医なのですが、それは彼の能力が低いとかではなく、はっきりとした答えに落とし込もうとしているからだと考えられます
人は瞬間的に人格が入れ替わるぐらい曖昧な存在で、それを何かの言葉に置き換えることはできません
「人間らしさ」とか、「自分らしさ」というものの答えを探そうとしても、その定義は瞬間によって変わってしまう
もし不変的なものが見つかるとしたら、それは自分が死んでしまう時で、最後まで大切にしていたものが何だったかを考えて、それを見つけられた時だと思います
それが死ぬ時になるまでわからないのは、これから先の人生で何が起きて、どんな影響が起きて、自分がどのように変化するのかわからないからなのですね
なので、人生の終わりから過去の自分を見返したときにだけわかるものだと言えます
そう言った意味において、春が答えにたどり着けて、弥生と俊には見えてこないのは必然のように思えてきます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、「勝手にスクリプトドクター」のコーナーを作ろうかと思ったぐらいにシナリオが最悪なのですが、その要因となっているのは「春が死ぬこと」だと思います
春が旅に出て答えを得る存在ということを考えれば、彼女に死期が迫っている理由はわかるのですが、誰にでも過去を振り返ることができるので、その後の人生で価値観が変わっても、現時点の答えというものは見つかると思います
厳密に言えば、春が本当の答えに辿り着くのは死んだ瞬間に過去を想起した時であり、旅をしている最中とかではないのですね
旅を終えて、そしてもうすぐお迎えが来るというところでようやく見つかるもので、それを手紙に書くことはできないと思います
映画を観ていて思ったのは、春は死ななくても同じ答えにたどり着けたのではないか、ということでした
病気で死んだ設定になっているけれども、人が死を感じるのは「自分の生命が尽きる時」とは限りません
愛する人の死、近しい人の死などにふれることで同じような感情が芽生え、そして答え探しを始めてしまう生き物のように思えます
春の場合だと、父が自暴自棄な生活の末に癌で亡くなって、人生の解放と同時に後悔が募ったという経緯があるように思えます
映画では、あの後に一切登場しないので、春の父がどうなったのかはわかりません
でも、あの性格だと、遅かれ早かれ自死していた可能性が高く、それは春から「父と生きてきたことを後悔している」と感じてしまったときに起こるものだと考えられます
父の死は彼女にとって転機となり、それが自殺でも病死でも変わりはありません
この映画と同じような答えに春がたどり着くとしたら、おそらくは父が不摂生から衰弱して病死という流れで、その最後をホスピスで看取るというシナリオになるでしょう
彼女はあの場所で「死」というものを学び、多くの利用者や職員の影響を受けていく
その中で利用者たちの写真を撮り、そして旅に出ることを考え始める
そこで得られるものは映画と同じものでも問題はなくて、彼女は答えに辿り着いたがゆえに、さらに遠くの世界へと行ってしまうことになると思います
弥生は手紙を頼りにあのホスピスに行くけれど、そこには春の姿はなく、彼女が撮ったたくさんの写真と遭遇する
そうした中で「弥生(もしくは俊)あての手紙」というものが見つかって、という流れでも良かったかもしれません
弥生は絶望的なまでに春の深い愛に打ちのめされ、答えを探そうとした愚かさを悔いるでしょう
そして、そんな彼女に追いついた俊は、弥生の喪失によって気づいたものを心に刻んで再会することになります
俊はあの手紙を読んで、彼女が自分のいない世界に行ったことを確信し、自分の中から「春への想いが消えたこと」を再確認する
それは同時に弥生を大切にしたいという感情を思い起こさせ、それによって弥生の誤解や思い込みを壊していけるのだと思います
誰しも、自分以外との問答を抜きにして、自分自身はわからないものだと思います
そのために「距離や時間が必要」なので、春からの手紙は「二人の関係を試すリトマス試験紙だった」と言えるのかもしれません
二人の旅はこれから始まりますが、春が死なないことが永遠の試練になっていく、という物語でも良かったように思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/99395/review/03633762/
公式HP:
https://4gatsu-movie.toho.co.jp/