■何に対するペナルティかを考えると、見方が変わってくるような気がしますね


■オススメ度

 

一風変わったループものに興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.3.25(アップリンク京都)


■映画情報

 

情報:2024年、日本、99分、PG12

ジャンル:恋人を殺された男が犯人へ復讐する日を繰り返すループ映画

 

監督&脚本:荒木伸二

 

キャスト:

若葉竜也(岩森淳:6月6日を繰り返す男)

伊勢谷友介(溝口登:唯を殺す男)

山下リオ(砂原唯:淳の恋人)

 

ジン・デヨン(謎の男)

松浦祐也(お茶をこぼす工場の同僚)

うらじぬの(休憩フロアにいる工場の同僚)

澁谷麻美(組織の人?)

川村紗也(清掃員)

 

夙川アトム(ラジオの声)

 

逢坂由委子(?)

柾賢志(刑事)

山中雄輔(刑事)

まらい果(食堂の作業員)

武田祐一(食堂の作業員)

西野光(ファミレスの店員)

小野塚渉悟(?)

加藤亮佑(刑事)

 


■映画の舞台

 

日本のどこか

 

ロケ地:

千葉県:茂原市

FUTABA

https://maps.app.goo.gl/zreuEeYx3XxkRbuy8?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

ある年の6月6日、朝に目覚めた岩森は、恋人・唯が出かけることに不安を抱いていた

「今日だけはここにいて」というものの、唯は彼の手を解いて出かけてしまった

 

夜になって、彼女の帰りを待っていると、不意に玄関のベルが鳴った

だが、それは唯の帰宅を知らせるものではなく、岩森は刑事に連れられて、とある河川敷に連れられてきてしまう

 

そこでは、女性の死体が川から発見されていて、その身元確認のために岩森は呼ばれていた

ほどなくして、彼女の遺体と対面した岩森は悲痛のまま、その夜を終える

 

そして、次に目覚めた時、岩森はいつものように職場に出向き、そこに訪れた電気技術者を殺してしまう

死体を川に投げしてて一日が終わると、その日も同じように男を殺すことになるのだが、前日とは少しばかり様子が違っていた

 

テーマ:復讐の代わりに募るもの

裏テーマ:ループの先にある空虚

 


■ひとこと感想

 

ちょっと変わったループをする、ということは聞いていましたが、なかなか凝った作りになっていて、回を重ねていくうちに視点が逆転するのは面白かったと思います

基本的に主演二人の会話劇で、時折回想に恋人が登場するという内容になっていました

 

6月6日を繰り返す中で、その男を殺さなければ終わらないし、殺すのを止めると「殺させられる」というのは新しいポイントだったように思います

恋人との馴れ初めと、恋愛関係の期間など不明瞭なところは多いですが、あまり関係性が深くないところも意味があるのかもしれません

 

主演3人以外にもセリフつきのキャラが数人出てきますが、ピンポイントすぎて一人わかりませんでしたね

モブの人たちに至っては、探せたら奇跡のような感じになっていて、「ちょこっと出てます」という「ちょこっと」が「ちょこっと」すぎて悶えてしまいました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

合計7回ぐらいループしたようで、最初から殺意ありきでサクッと殺していくのが、その内に殺すことに抵抗が出てくるというのは面白かったと思います

この感情の揺らぎが起きるのは「連続した記憶」があるからで、リセットされてしまえば毎日は全く同じ殺意の質と量になって、淡々とすぎて行ってしまうのでしょう

 

復讐を果たしたことでリセットされた感情があっても、記憶はリセットされないのですが、そもそも岩森には「相手が犯人である」ということはわからないままスタートするのですね

現実世界でどこまで犯人特定に至ったのかはわかりませんが、「機関」はそれらを全て知っているという存在ということになっています

 

言い換えると「この人が犯人なので殺してください」という命令に従っていて、それは「契約なので」というテイストになっています

それゆえに「業務的な復讐」になっていて、それが徐々に復讐心というものを削いでいくのかな、と感じました

そして、誰もが思う「無駄に思える時間」というものが、メタ的なメッセージになっているのかな、と思いました

 


機関は何のために存在するのか

 

本作は、恋人を殺された男が「ある機関」と契約を交わし、VRの世界で犯人に復讐を果たすという物語でした

頭の後ろに線を繋いで脳内で映像を見るというもので、目覚めてから死体を遺棄するまででワンセットになっています

契約によって「7日間」を指定したようで、それによって何があっても7回殺さなければならない、みたいな感じになっていました

契約時は興奮状態で冷静な判断ができず、とりあえずわかりやすい1週間を選んだのか、職員のおすすめコースだったのかはわかりません

 

被害者遺族などの救済措置のような機関になっていて、裁判の結果などと関連するのかはわかりません

民間団体なのか、NPOのようなものなのかはわかりませんが、特別な費用というものはかかっていないように思えました

岩森自身があのような工場に勤めていて、その延長線上にあるものか、復讐のための特別な設定なのかはわかりませんが、はじめに制服を見た時に驚いていたので、あの場所で働いているようには思えませんでした

おそらくは建築デザイナー関係であると推測されます

 

あの機関とのコンタクトの経緯などは不明ですが、岩森の格好を見ると、葬儀後に営業が入るような印象で、その時の感情のままに契約するという感じに思えました

復讐したいと思って、色々と調べた結果見つけたものというよりは、特定の被害者遺族に打診して契約を取るというイメージでしょう

一見、被害者遺族の気持ちが晴れるような制度に思えますが、実際には「ループはペナルティに感じる」ように作られていて、もし「無限」なんて選択肢があったら地獄なんだろうなあと思います

自殺もできないし、とりあえず開き直って作業的になるだけで、最終的には精神が病んで、寝室から出ないままずっと時間だけが経過して廃人になるか、自由意志を失われた操り人形のように殺しにいくだけ、のように思えます

 

これらの体験者の効果というものは実験によって織り込み済みなのか、絶賛実験中なのかはわかりません

イメージとしては後者の実験中で、何らかの思考実験の一環のような気がします

何を調べているかと言えば、「恨みと復讐に関する持続時間の研究」のようなものでしょう

被害者との関係性の深さと質、それに対する契約期間の相関性、復讐を許容する回数などから、人の恨みの濃度と経過時間を調べている、というイメージですね

本作の岩森の場合は、訳あり女と関わった男で、それほどの時間経過がない状態だったので、3日目ぐらいで飽きが来て、それ以降は「加害者に対する恨みもさほどない」ので、相手と1日が何気なく終わる方法を模索するようになったのだと推測されます

 


何に対するペナルティを受けているのか

 

本作を素直に見ると、復讐を果たす側がペナルティを受けているように見えます

契約時には溜まりに溜まった鬱憤を晴らすことを目的として、被害者遺族の契約と同時に、加害者もあの装置を付けられて、被害者遺族が納得できるまで殺され続けるということになると考えられます

加害者側からすれば、あと何回殺されるかわからないので、もっと強い動機を持っている人物なら、殺し方もエスカレートして、それが快楽殺人の気持ちを理解する方向に向かうという残酷なものになるように思えます

殺してみて、殺した側の気持ちを理解するという流れになり、これも契約者にペナルティを化しているように思えてきます

 

映画を俯瞰的に見ると、「復讐を考えることが罪」にも見えてくるのですが、本来の意味合いとしては「虚しいだけですよ」と訴えているように思えます

現実世界では復讐はできないのですが、VRだとそれが可能になり、契約者の溜飲を下げる効果があるように思えます

実際に契約する時点では「これで無念を晴らせる」と思えるのですが、実際に行ってみると嫌悪感しか生まないのですね

なので、契約機関の上限がどのように設定されているかはわかりませんが、VR体験を経て復讐の無意味さを知って、囚われから解放される可能性もあります

 

とは言え、VRで満足できない人が出るのも事実で、虚しさを通り越した後に「行為の正当化バイアス」がかかってしまい、現実で復讐することを躊躇わなくなるかもしれません

いわゆるフライトシュミレーターのようなもので、VRを通じて方法を学び、いざ実践するための精神的な負荷の軽減を行っているようにも見えます

実際にどのような効果が出るかは人それぞれだと思いますが、心の憶測にある殺人願望を叶えることができるシステムでもあるので、そういった気質の人を治験する場所になる可能性もあります

殺人衝動が強い人物を特定し、精神的治療名目であのシステムに投げ入れることで、その衝動を抑え込むということも可能なのかな、と感じました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、ループものの系譜で冒頭で同じシーンが何度か続きます

それ自体はお約束のものですが、本作の場合は2回目ですでに違う動きになっていて、展開としては早めになっています

通常のループものだと「初回」「2回目(あれ?)」「3回目(やっぱおかしい)」という感じになりますが、本作の場合だと「初回」「2回目(ああ、そうか)」という感じになっています

これは最後になるとわかる違和感で、そこまで含めてループものをうまく作っていると思いました

 

その世界に入っていることを理解していて、殺される側はわかっていないのですが、これは相手も同じプログラムに入っているのではなく、あの犯人はプログラムが作り出したものだから、ということになります

なので、実際の犯人なのかはわからない部分があり、岩森に強烈な殺意というものが湧いていないように見えます

あのプログラムに岩森が入った段階は、彼の格好を考えると葬式直後なので、おそらく相手は捕まっていないし、裁判も始まっていない頃だと推測されます

それゆえに、強烈な怒りと喪失感はあるけれど、犯人に対する明確な殺意というものがない状況のように思えました

 

このループに「どの段階で入るか」というのはとても重要で、「死んだ直後」「捕まった直後」「裁判の後」では、岩森が持つ感情というものは変わってしまいます

それは、犯人がどのような状況によるかで、被害者遺族(正確には恋人)の感情が変わってしまいます

死んだ直後だと喪失感と見知らぬ犯人への怒り、捕まった直後だと明確な相手への怒り、裁判の後だと判決への不服さと明確な相手への怒り、ということになります

映画の場合は、「おそらく」という感じで、「殺された直後」となっていて、彼女が死んだ背景とかはわからない感じになっていました

 

ラスト付近で、彼女と犯人への接点が仄めかされ、何らかの機密文書のようなものを持ち出して追われていることがわかります

これは犯人が語るものですが、正確には「プログラム内の犯人が語る言葉」になると思います

これが事件の全容が分かった裁判の後だとリアルな描写になってきますが、映画における恋人の背景は岩森の持つ印象を映像化したもののように思えました

実際にところは、あまり語られないので想像するしかないのですが、個人的な感覚では「何もわからない中で恋人が殺されて、相手もわからないけど喪失感と怒りはある」という感じに思えましたね

そこに例のプロジェクトから声が掛かることになり、岩森のわかる範囲の恋人のことがプログラムに反映され、このような物語になったのだと思いました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/99352/review/03645696/

 

公式HP:

https://penalty-loop.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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