■済州島 四・三事件 ハラン
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■オススメ度
韓国の負の歴史に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.4.22(アップリンク京都)
■映画情報
原題:한란(寒蘭)、英題:Hallan(寒蘭)
情報:2025年、韓国、119分、G
ジャンル:済州島にて実際に起きた「4・3事件」を描いた伝記映画
監督&脚本:ハ・ミョンミ
キャスト:
キム・ヒャンギ/김향기(コ・アジン/고아진:夫を探す妻)
キム・ミンチェ/김민채(カン・ヘセン/강해생:アジンの6歳の娘)
ソ・ヨンジュ/서영주(カン・イチョル/이철:アジンの夫、教師)
カン・ミョンジュ/강명주(ゲオク/계옥:ヘセンの祖母)
ファン・ジョンナム/황정남(パク/박중사:討伐隊長、軍曹)
キム・ウォンジュン/김원준(ムン/문일병:討伐隊、一等兵)
チェ・スンジュン/최승준(キム/김하사:討伐隊、伍長)
キム・ダフィン/김다흰(ジョンナム/정남:武装隊のメンバー)
チャン・ジェウン/장제웅(ウンピョン/원평:ジョンナムの仲間)
カン・グハ/강구하(イルドゥ/일두:ジョンナムの仲間)
カン・チェヨン/강채영(ホンスン/봉순:巫堂、アジンの友人)
カン・ミンジュ/강명주(スクジャ/숙자:拷問で殺される村人)
チョン・インソ/정인서(スクジャの母)
ヤン・ソミン/양소민(ソンヨン/선영:洞窟の母親)
チェ・ヒョンジン/최현진(チュンソク/중석:洞窟の息子)
ヤン・ソミン/양소민(チュンサム/춘삼:山へ逃げる民衆のリーダー)
アン・ミンフェ/안민회(ピョン・ジョンス/변종수:一緒に逃げる村人)
ペク・ソナ/백선아(一緒に逃げる村人)
ジ・ブソン/집투선(一緒に逃げる村人)
ヒョン・イェラン/현예란(一緒に逃げる村人)
ジン・ジョンア/진정아(一緒に逃げる村人)
オ・ヒョンス/오현수(一緒に逃げる村人)
チェ・ヒョンジン/최현진(コ伍長/고하사:通行証を確認する軍人)
シン・ボンジェ/신봉재(ウォン・イルビョン/원일병:一等兵)
ソンジョン・ファンボ/황보성종(ファン/황:二等兵)
ムン・ソンヨン/문영선(二等兵)
シン・ソヌ/신성우(韓国軍の将校)
ユン・テヒ/윤태휘(韓国軍の将校)
Ergnole Thomas(アメリカ軍の将校)
Garcia Ruben(アメリカ軍の将校)
Romain Rivier(アメリカ軍の将校)
パク・サンフン/박상훈(韓国の警察官)
パクヒョン/박현(韓国の警察官)
チョン・ヨンテ/정연태(武装隊のメンバー)
ソヨン/소연(ムンの妻)
キム・ミンソ/김민서(ムンの娘)
【犠牲者】
チョ・ギョンジン/조경진
イ・ジンソン/이진성
チョン・ジュン/정의준
キョン・オジン/경어진
チョン・イヒョン/정이현
イ・スヨン/이수연
イ・ドンチョル/이동철
シン・ファジョン/신화정
チョ・オグヒョン/조옥형
チェ・ユナ/최윤아
カン・ジウ/강지우
キム・スミン/김수민
キム・ジュナプ/김중업
キム・ヒョンへ/김향례
パク・ジョンシム/박정심
パク・ジョンオク/박정옥
チャン・ソンウク/장성욱
ホ・ジョンエン/허정은
アン・ヨンスク/안영숙
ユ・スンギ/유순기
ユン・ヒョンスク/윤현숙
イ・ナヒョン/이나현
ジン・ムギル/진무길
ホン・ソヘ/홍서혜
ヒョンミョン/현명
【韓国軍兵士】
カン・ミンヒョク/강민혁
キム・ジヒョク/김지혁
パク・ムンス/박문수
オ・ヨンテ/오용택
イ・ジンソン/이진성
ヤン・ヨンソク/양용석
イ・ゴンニョン/이건용
ヒョン・ドングァン/현동관
ヒョンミョン/현명
■映画の舞台
1948年&2025年
韓国:済州島
ロケ地:
韓国:済州島
■簡単なあらすじ
1948年4月3日、アメリカ軍の統治下にあった韓国では、政府の方針に逆らう国民と「アカ」と呼び、大規模な討伐作戦が繰り広げられていた
アジンの住む村でも「山から降りてきたものは殺す」と宣言されていて、そんな中で夫を探すアジンは、娘へセンを義母のゲオクに預けて、村長たちと一緒に山を目指していた
だが、ヘセンはどうしても母から離れたがらず、それでもアジンは娘を義母に預けて、山に向かうことになった
ヘセンは祖母とともに自宅にいたが、討伐隊は老若男女を問わずに島民全員を「アカ」だと決めつけて、ロクに調べもせずに殺戮を繰り返していた
そんな討伐隊の若者ムン一等兵は、目の前で行われている惨劇に戸惑いながらも、パク軍曹とともに島を巡らなければならなかった
その隊には「殺した島民の数を自慢するキム伍長」などもいて、彼らは島民を殺した挙句、家をすべて焼き払って行った
ヘセンたちも討伐隊に見つかり、老人と言えども容赦無しに殺されてしまう
そんな中、職務に疑問を持つムン一等兵はヘセンを見逃し、彼女は祖母の屍の中で目を覚ましていた
そして、母のいる山へと、一人で向かい始めたのである
テーマ:歴史を記す意味
裏テーマ:理想と現実との乖離
■ひとこと感想
韓国の黒歴史の一つである「済州島 3月4日事件」を取り扱っていた作品で、第二次世界大戦後の「アメリカ軍統治時代」にて起きた実際の事件を扱っていました
当時の朝鮮半島は、北はソ連の統治、南はアメリカによる統治があって、いわゆる共産主義を排除する動きが南側で起きていました
そんな中、討伐隊というものが赤狩りのために結成され、もともとは耽羅という王国だった済州島は、本国とは別の自治区だった事もあり、それゆえに排斥に対する容赦のなさがあったと言います
1392年から朝鮮王朝の全羅道に組み込まれ、この時代には流刑地とされていました
1910年の韓国併合によって大日本帝国の領土となり、1945年までは朝鮮総督府によって統治されていました
映画でもその名残と影響が残っていて、セリフの中に「日本がいなくなったのに変わらない」という文言が何度も登場していました
さらに日本軍が置いて行った武器が武装隊の武器になっていました
このような時期において、済州島の島民の一人が主人公となり、そこで約3万人が殺された一部始終を紐解いています
かなり強烈な歴史であり、韓国人が韓国人を殺すシーンが多くあり、直接描写はないものの、老人も子どもも関係ないという世界になっています
討伐隊側にも疑問を呈する青年が登場しますが、当時は兵士になるつもりのない人間が討伐隊として派遣されたという歴史があり、彼もその一人のように思います
彼の最後の決断も強烈なものがありますが、まさしく神も仏もいない世界というものが、そこにはあったと言えます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画では、討伐隊の一小隊(5名)が中心となって動き、アジンとその家族、巫座のホンスンたちが身を潜めている様子が描かれます
ホンスンは巫座の見習いの状態で、村人10人たちを迎える山に潜伏して、安全な場所へと彼らを誘導していました
どこに敵がいるかわからない状況で、「老人や子どもは殺されないだろう」という憶測は、物の見事に破壊され尽くされていました
彼らをここまでさせたものの正体は映画では描かれず、想像の範囲だと、ようやく戦争が終わったのに、さらに別の抑圧が待っていたという状況がありました
それに乗じてアメリカ兵に取り入る将校がいたり、戦争で思うようなことができなかった兵士崩れのような討伐隊が戦時下の鬱憤を晴らすかのように攻撃的になっていました
ムン一等兵のような青年もいれば、キム伍長のような戦時だから肯定される行動を平気で起こすものなどもいました
このあたりはテンプレ的なところはありますが、こう言ったことが実際に行われていたのは嘘でも誇張でもないように思えました
ラストでは、2025年の済州島が描かれ、「済州4・3行方不明墓域(平和記念公園)」の空撮がなされました
どこまで続くのかという墓のおびただしい数は、映画内で描かれる惨劇よりも心象的に来るものがあって、整然と並んでいる名もなき墓標は胸に込み上げるものがあると言えます
映画内の討伐隊の行動がフィクションだとしても、実際にあの数の墓標があり、さらに行方不明となった人々が石に刻まれていました
この正視することも憚られるようなことが実際に起きていて、それが同じ民族の間で起こったというのは理解の範疇を超えているように思いました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、自国の黒歴史を風化されないために映像化しているという感じで、アジンが製作者の心情を代弁しているとも言えます
アジンとヘセンは海辺まで辿り着くことができましたが、その後、警察に捕まって、二人とも処刑されていました
直接描写はありませんが、銃声が二発鳴っていたので、そういう意図があるのだと思います
これだけ奇跡的に逃げてきた人々でも殺すところに闇が深いというだけではないものを感じます
討伐隊の動機がわからないように描かれていますが、それほどまでに共産主義を目の敵にしていたのか、アメリカ軍が鬼畜に見えたのかはなんとも言えない部分のように思います
戦勝国について行くしかないという歴史はあると思いますが、それが結局は自国のためになっていたとは思えない歴史があり、この映画を機に誰が何を思うのかは気になるところではあります
このような事態に見舞われたとしたら何ができるのか
ぶっちゃけると「何もできない」というのが本当のところだと思います
戦争が終わったのに、戦争よりも酷いことが起きると思う人のほうが少なく、憎き日本を追い出してくれたアメリカをどう捉えているのかはわかりません
そんな中で、思想が違うというだけで殺戮にまで及び、その中で生き延びれるかどうかというのは神様ですらわからないことのように思います
映画では、ムン一等兵が神に祈りを捧げていましたが、本当にこの世に神様がいるなら、ここまでのことは起こらないと思うのですね
なので、極限下では「信じられるのは自分だけ」ということを念頭に置いて行動するより他はないと思います
悪魔は人間のもう一つの顔であると言いますが、自分自身も含めて、どんな状況に置いても人間でいられるかはわかりません
ある意味、人間でいられないとわかって命を絶つムン二等兵のほうがまともに見えるようにも思えます
こう言ったことは起こしてはいけないと思いますが、それでも起きるのが人間社会なのですね
狂ったふりをしつつ、その種を刈り取るしか社会を変える術はないと思いますが、それよりも自分と近しい人をいかにして守るのかという命題に向けて、全てが終わるまで「自身の行動に疑問を持たないこと」というのが試されるのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/105547/review/06421158/
公式HP:
