■むしろ、ミニ・ライルだけで映画作った方がヒットするような気がします
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■オススメ度
ミュージカル映画が好きな人(★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.3.25(MOVIX京都)
■映画情報
原題:Lyle, Lyle, Crocodile
情報:2022年、アメリカ、106分、PG12
ジャンル:歌えるワニとぼっち少年の交流を描いたミュージカル映画
監督:ウィル・スペック&ジョシュ・ゴードン
脚本:ウィル・デイビス
原作:バーナード・ウェーバー『ワニのライル(The House Of East 88th Street)』シリーズ
キャスト:
石丸幹二/ハビエル・バルデム/Javier Bardem(ヘクター・P・ヴァレンティ:ライルを見つける売れないショーマン)
宮岸泰成/ウィンズロウ・フェグリー/Winslow Fegley(ジョシュ・プリム:ジョシュとトムの養子、ライルの親友)
大泉洋/ショーン・メンデス/Shawn Mendes(ライルの声)
Ben Palacios(ライルのモーションキャプチャー)
水樹奈々/コンスタンス・ウー/Constance Wu(ウェンディ・プリム:ジョシュの継母、料理研究家、トムの妻)
関智一/スクート・マクネイリー/Scoot McNairy(トム・プリム:ウェンディの夫、ジョシュの養父、数学教師)
吉野貴宏/ブレット・ゲルマン/Brett Gelman(アリステア・グランプス:ライルを嫌う下の階の住人)
Ego Nwodim(キャロル:プリムの学校の教員、住宅管理者)
Lyric Hurd(トルーディ:ガラガラへび・マルフォイの飼い主、ジョシュの学校の友人)
Marc Farley(動物ショップのオーナー)
Mary Neely(メアリー:セキュリティ技術者)
Don DiPetta(救急救命士)
Lindsey Moser(レスリングのコーチ)
Matthew Risch(警察官)
Clayton English(若い警備員)
Mac Wells(オーディションの警備員)
Jef Holbrook(オーディションのステージマネージャー)
Matthew Wilkas(夜の建設労働者)
Lauren Boyd(ライブショーのステージマネージャー)
Reif Howey(ダンサー)
Evangeline Miller(ダンサー)
Jene Moore(ダンサー)
Chance Mizell(ダンサー)
Christine Moon(飼育係)
Angela Davis(HOAのメンバー)
Kathryn Orlando(HOAのメンバー)
Serge Burack Jr.(HOAのメンバー)
Matt Rogers(ショーの司会者)
Sal Viscuso(裁判長)
Taylor James(裁判官)
■映画の舞台
アメリカ:ニューヨーク
ロケ地:
アメリカ:ジョージア州
Marietta/マリエッタ
https://maps.app.goo.gl/kT7YL8RXJarAQCXW8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ステージで大道芸を披露するヘクターは、時代遅れのショーしか出来ず、興業は失敗続きだった
ある日、街角のペットショップに入ったヘクターは、そこで歌うワニ・ライルを見つける
ヘクターは彼を興行に連れて行こうと考えていたが、ライルは人前では歌えず、資金難に陥ったヘクターは街を追われることになった
それから18年後、ヘクターの住んでいたアパートにプリム一家は引っ越ししてきた
父トムはアパートを管理する学校に赴任し、数学を教えることになり、養子のジョシュもそこに通うことになった
母ウェンディは著名な料理研究家で、食卓は決まった献立で管理され、トムとジョシュは食傷気味になっていた
ある日、屋根裏に行ったジョシュは、そこで成長したライルを見つけてしまう
自分より大きなワニに驚くものの、彼の特技を知って仲良くなっていく
家族に内緒にすることも出来ず、母にもバレてしまったが、彼女もライルに親近感を湧いて受け入れていく
だが、それらの騒音にブチ切れた下の階の住人アリステアは、彼らの行動を監視するために防犯カメラを無断でつけてしまう
また、彼の愛猫ロゼッタも、いつの間にかライルたちと行動を共にするようになったのである
テーマ:友情の体現
裏テーマ:役割を担う勇気
■ひとこと感想
映画館の予告編では「大泉洋さんの吹き替えばかり」で、公開館のほとんどが吹替一色になっていました
さすがにバランスが悪すぎる感じで、京都市内でもMOVIXしか字幕版がありません
なんとか都合をつけて字幕版を観に行ったのですが、吹替オンリーになったプロモーションの経緯がなんとなく想像できる感じがしましたね
というのも、物語が絶望的で、ミュージカル映画なのに曲数が少なく、子ども向けのおとぎ話としても微妙な感じだったのですね
なので、大泉洋さんを含めたキャストのファンを引き寄せるしかなく、それでも苦戦するんじゃないかなあと思ってしまいました
こだわりがあるので字幕版で観ましたが、あまりのストーリー性のなさに眠気が襲いますし、楽曲もあまり耳に残るものがありません
ライルの小さい頃は可愛いのですが、大きくなると怖いだけで、それがすんなりと受け入れられる世界観もよくわかりませんでしたね
ラストの裁判のシーンも必要だったのか分からず、判決も無茶苦茶な感じになっていて、下の階のグランプスさんは可哀想だなあと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、売れないショーマンがライルと出会う物語なのですが、人前で歌うことが出来ずにあっさりとコンビが解消されてしまいます
その後のプリム一家とのドタバタ騒ぎがメインなのですが、ライルを受け入れる行け入れないで揉めているだけで、大きく物語が進展しません
最終的には、無理やりオーディション会場に突入して、歌を披露したのでOkみたな無茶な流れになっていて、かなり強引な結びになっています
物語は、歌えないライルのためにジョシュが勇気を振り絞るというものですが、そこに至るまでの過程が結構スローで、ライルの歌声が本領発揮する場面も思った以上に少なかった印象があります
また、残飯探しの旅が絵面的にキツく、それをあっさり受け入れるジョシュと母というのも意味不明でしたね
家族内での軋轢も大したことなく、住人とのトラブルも物語に登場しない人物の影響という最低の結び方になっていました
■ショーマンとしての資質
映画は、ショーマンのヘクターがライルを見つけ、彼で一攫千金を狙って失敗してきた様子を描いています
そして、ライルを手放すことになってしまい、そこにプリム家がやってくるという展開を迎えました
家族がライルに対してほぼ無抵抗で招き入れているのですが、その理由が「歌うワニだから」で一貫しているところに「低年齢向け」というものが滲み出ています
ヘクターのショーマンとしての資質は皆無で、警備員からも「古い」と言われる始末
嗅覚は優れていましたが、ライルをうまく調教することもできません
彼が歌っているのを見て即座にショーに出すあたり、客に対する姿勢の低さというものが現れていました
映画では、歌えないライルのためにジョシュが奮闘する様子を描いていますが、ライルのステージが最初と最後にあるぐらいなんですね
歌唱シーンも合計8回ぐらいで、ミュージカル映画としては少ない印象がありました
また、吹替率が異常に高い割には、パンフレットの楽曲紹介には日本人キャストが併記されていないという意味のわからない仕様になっています
■勝手にスクリプトドクター
映画は、「ヘクターとライルの出会い」「ヘクターの没落」という前振りの後、「ジョシュとライルの出会い」「家族内でバレる」「隣人にバレる」「ライルの力を見せつけて認めさせよう」という流れになっています
予告編がそのまま冒頭のシーンになっていて、ヘクターの没落までが数十分、その後「いきなり18ヶ月後」になっているのは驚きました
ミニ・ライルが登場するのがわずかな時間で、可愛いライルをもっと見たかったですね
なので、ほぼ巨大ライルが人間世界に馴染むまでという感じになっています
ジョシュもライルも同じく人見知りの性格をしていて、この2人が共感していく流れは良かったと思います
この手の「家庭内異物系」は、「隠すパートがコメディ」になっていますが、巨大ライルはあっさりと見つかってしまいます
いっそのこと、ミニ・ライルの状態で、幼少期(4歳くらい)にジョシュが発見して、内緒で関わっていて、高校ぐらいになってようやく見つかるでも良かったぐらいですね
そこから、ジョシュにバレるシーンも母にバレるシーンも「ひたすら残飯祭り」という絵面的にも倫理的にも最悪の展開を迎えます
本作は、子供向けの絵本が原作で、原作の絵で残飯を漁るシーンがコミカルになっても、実写(と言ってもCG)になるとリアル感が増してしまい、あんまり長く見たいシーンではありません
ジョシュはライルの世界を知る入り口としては機能しても、母にバレた後は不要だと思うのですね
あの展開だと、ジョシュが体調を壊して、実は残飯を食べていたことがバレるという路線で、母が彼を監視してライルを見つけるという流れになりがちかなと思います
最終決戦も、隣人とのトラブル解決なのですが、映画に登場しない人物の遺言で決着というのはお粗末でしかありません
ここまでファンタジーならば、隣人も音楽が好きでこだわりがあって、ライルの歌声に感動する方が、いくらかマシだったのではないでしょうか
最後だけ、現実に戻して、でも決着はファンタジーになっているので、わざわざ隣人を公開処刑する意味はなかったように思えました
ともかく、ライルの歌でみんなが前向きになって、人間関係のトラブルを解消していくのがメインになっているので、隣人も一緒に輪の中に入る方が良かったと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
吹替版の占める割合が多く、それによって「大泉洋さんが広告塔になっている」のですが、それだけで客足が伸びるほど甘い世界ではありません
字幕版と吹替版を両方観たい人もいるし、私のような字幕オンリーという人もいるので、ここまで偏らせてしまうと、逆効果になっていると思います
京都市内だと、イオンシネマ、TOHOシネマズなどの多くの劇場で公開されていますが、字幕で観れるのが1日5回ぐらいしかないのですね
あまりの選択肢の少なさと、この流れだと翌週には0になるかもしれないという感覚がありました
ちなみに、翌週のスケジュールを確認すると、イオンシネマ京都桂川は字幕ゼロ、かろうじてMOVIX京都だけが2回やってくれています
映画は子ども向け作品なのに「PG12」という映倫区分がなされていて、映倫区分のHPによると「未成年が無免許運転するシーンがある」とのことでした
それ、必要?と思いましたが、それよりも「ゴミ箱漁って食べ物ゲット」の方に指導&助言が必要な気がしないでもないですね
ワニの生態(雑食)をモチーフにしたのかわかりませんが、映画内で「保護者が指導するシーン」があっても良かったように思えます
その流れで、母親の料理を知ったライルが「自分の親を思い出す」とか、感動ポイントはいくらでも作れそうに思いました
映画は家族と打ち解けていくライルが描かれていて、その流れは良かったと思います
でも、ほぼ自宅周辺(屋上はあったけど)だけだったので、もっとニューヨークを仰天させるような派手な展開があっても良かったかもしれません
最後の裁判のシーンがあるために後味が悪く、現実的に考えを変えない人がいたとしても、隣人が去るしかないという展開は最悪でしょう
いくら遺言が有効だとしても、グランプスがそこに住む権利を有しているので、「法的に問題ない」ことと「騒音問題」は別のことだと思います
それをうやむやにしたままでグランプスが退場しなければならない世界観というのは、やったもん勝ちみたいなことになっているので、この流れこそ指導&助言が必要なんじゃないかなあと思ってしまいました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385248/review/6713fb3c-c929-4cb6-87f1-237d9c6c4b5a/
公式HP:
https://www.sing-for-me-lyle.jp/