■ソウルの街は、授業参観をするには狭すぎる
Contents
■オススメ度
コメディ色の強いアクション映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.1.31(T・JOY京都)
■映画情報
原題:보호자(保護者)、英題:A Man of Reason(理性のある男)
情報:2022年、韓国、103分、G
ジャンル:服役を終えた男が知らぬ間に生まれていた娘と出会い守ろうとするアクション映画
監督:チョン・ウソン
脚本:チョン・ウソン&チョン・ヘシン
キャスト:
チョン・ウソン/정우성(チェ・スヒョク:10年間服役していた男)
キム・ナムギル/김남길(ウジン:スヒョクを狙う殺し屋、洗濯機)
パク・ユナ/박유나(ジナ:ウジンの相棒、爆弾魔)
パク・ソンウン/박성웅(パク・ウングク:反社のボス、スヒョクの元兄貴分、カイザングループの社長)
キム・ジュンハン/김준한(カン・ソンジュン:ウングクの部下、理事)
イ・エリヤ/이엘리야(キム・ミンソ:スヒョクの元恋人)
リュ・ジアン/류지안(インビ:ミンソの娘)
パク・ソンジュン/박성준(ゲル:ウングクの部下)
ムン・ソンファン/문성환(あんま師:ウングクの部下)
キム・ムンハク/김문학(ウングクの護衛のリーダー)
キム・ジュフン/김주헌(ジュノ:足を洗ったスヒョクの元相棒)
イ・ウンギョン/이은경(ジュノの妻)
イ・ヒョビ/이효비(ジュノの娘)
パク・ヨン/박용(シン:ウジンに始末される牧師)
キム・ユンジュン/김윤정(ミンソの主治医)
チェ・スイム/최수임(インビのバレエの先生)
ソン・ジウ/송지우(インビの同級生)
シン・ユンジュ/신윤주(インビの同級生)
イ・ガヨン/이가연(インビの同級生)
ペヒャン/배향(カジノのダンサー)
■映画の舞台
韓国各地
ロケ地:
韓国:
ソウル、釜山、水原、仁川
春川、江陵、清州、牙山
■簡単なあらすじ
ある事件にて10年間服役してきたスヒョクは、出所後恋人のミンソを訪ねた
彼女はスヒョクをある場所に連れていき、収監後に妊娠していたことを告げる
子どもをどうするか悩んだ時期もあったが、産んで育てることに決め、ミンソは「平凡な男になれたら会いにきて」と告げた
そこでスヒョクは足を洗うために、元兄貴分のウングクのもとへ出向く
グループは大きくなり、巨大組織に変貌していたが、スヒョクの意思は固かった
だが、スヒョクに劣等感を持っていたカン理事はウングクの言葉を盾にスヒョク殺害を目論みる
カン理事はお抱えの殺し屋ウジンとその相棒ジナにスヒョクの殺害依頼をかけた
二人はスヒョクに近づき、それによってミンソと娘のインビが巻き込まれてしまう
スヒョクは誘拐さえたインビを救出するために、二人の殺し屋を相手に攻防を繰り広けることになったのである
テーマ:平凡を望む理由
裏テーマ:保護者としての生き方
■ひとこと感想
韓国の犯罪系アクション映画ということで、かなりの激しさを期待していましたが、アクションシーンはそれなりに凄かったように思えます
とは言え、ストーリーがかなりありきたりで、自分の過去に巻き込まれる家族というプロットは使い古されたもののように思えます
映画は少々退屈なところがあって、バイオレンスのようでいてコメディっぽいというところがありましたね
特にカン理事の暴走で迷惑を被っている人ばかり登場する感じになっていて、嫉妬に駆られた醜さだけが際立っていました
ラスボス的な存在のウングクは登場するだけで、実質的にはあんま師をどう倒すかという流れになっていたのも微妙でしたね
それであのオチになるのは、色々と不可解な部分が多かったなあと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
刑務所から出てきたら世界が変わっていて、服役したことを後悔しているという内容ですが、スヒョク自身が殺人事件を起こして服役しているヤクザに見えないところが一番の難点でしょうか
ウングクとその部下(カン理事は除く)にはそれぞれに暴力性と威厳を感じますが、カン理事がお笑い要因になっているのと、殺し屋二人の緊張感のなさというものが際立っていましたね
殺し屋側も釘鉄砲みたいなものしか使わないかと思えば、教会丸ごと吹っ飛ぶような爆弾を自作したりと、有能なのかどうなのかわからない感じになっていましたね
この二人が友達関係のようなのですが、この関係も含めて、色々とわからない部分が多かったように思えます
映画のラストでは、何とか娘を助け出すことに成功するというありがちなものですが、韓国の認知とかどうなっているのでしょうか
あの状態のままだと不審者に誘拐されている女の子という構図は変わらないので、DNA鑑定でもして親子を証明したのか、単に流れで育てることになったのかはわからない感じになっていましたね
とりあえずは丸く収まった感じになっていますが、ウングクを倒していないので、安堵とは程遠い着地点になっていると思いました
■韓国の子どもの認知について
韓国では、2007年末までは日本と同じ戸籍制度が運用されていました
その内容は「本籍地、家族に関する情報」などが記載されていましたが、2007年末に新しい身分関係制度が始まり、現在では「家族関係登録制度」というものが運用されています
そこに記載されるのは、「基本条項証明書(本人の生年月日、死亡、改名、国籍の喪失など)」「家族関係証明書(本人の両親、配偶者、子どもの名前や生年月日など)」「婚姻関係証明書(配偶者、婚姻、離婚に関すること)」「容姿関係証明書(養父母・養子の名前、養子縁組を組んだ日など)」「親養子関係証明書(日本における「特別養子(実親子の関係を解消し、養子と養親が新たな親子関係を結ぶこと)」に該当する関係)」となっています
映画の場合は、婚姻外で生まれた子どもを父が自分の子どもだと申告する「認知申告」というものが必要な状況になっています
この際に「認知申請書」のほかに「父の身分証、印鑑」「父、母の家族関係証明賞」「婚姻関係証明証」などが必要になってきます
母親であるミンソは死亡しているので、関係の証明をすることが非常に困難な状況にあると言えます
スヒョクはミンソの妊娠すら知らない状況(婚外子)だったので、母親による出生届が行われたのでしょう
実の父親が出生届を出す場合、婚姻状態なら出せますが、そうでない場合(別の男性と結婚している場合など)は親子鑑定を行なって、血縁関係を裁判で証明しないとダメなのですね
なので、スヒョクは「保護者がいない状態」でインビとの親子関係を証明することになるのですが、インビは未成年なので、ミンソの両親などを巻き込む形になるのだと思います
とは言え、アウトローの世界なので、正規ではないルートで血縁関係を証明すると思うので、問題は「ミンソの両親が彼女の死を知ったらどうなるか」ということになると思います
これに関しては映画では存命なのかすらわからない状況なので何とも言えませんが、ミンソの両親が健在かつ、スヒョクの今後に対して理解を示すことができるのであれば、ワンチャンあるのかな、という感じだと思います
結局のところ、ミンソの死因がスヒョク起因のトラブルに巻き込まれたという流れになっているので、そんな危険な男の元に孫を置いて置けないというのが普通の感覚でしょう
なので、ラストシーンは「親子関係を証明できないまま未成年を拉致している状態」に見えてしまうのは仕方ないのかなと思ってしまいました
■勝手にスクリプトドクター
本作は、社会から隔離された男が「劇的な変化を遂げた未来」に帰ってくるというもので、そこでは「恋人が知らない間に娘を出産し、育てていた」というものになります
ミンソは服役中に面会すらしていないようで、その間に「どうするか」を悩んでいて、「バカなことも考えた」と綴っていました
二人の関係がどんなものかはわかりませんが、スヒョクはヤクザでもミンソは一般人のようで、その距離を取っていたように思えます
この関係性がどんなものかは想像するしかありませんが、「親になる条件に普通の父になること」とあったので、スヒョクはその道に迷い込んで抜け出せなくなった存在であると推測できます
本作の難点は、爽快感の有無とラストのオチに集約されています
爽快感を感じないのは「本当の敵を倒さずに終わっていること」「ラスボスにあたるあんま師を自分で倒していないこと」になっていて、単なるソンジュンの暴走で終わっている点でしょう
彼がグループのナンバー2なのは単なる古株というだけで、実力などはほとんどありません
彼はスヒョクが戻ってきたことで自分の地位が脅かされると思っていましたが、スヒョクが去ることで一難が去っていました
でも、ウングクはこれが機会とばかりに、グループ内で存在感を示すためにソンジュンにチャンスを与えることになりました
ラストバトルでは、ソンジュンは武力で役に立たないので右往左往しているだけで、実質の敵はあんま師に設定されています
彼のフィジカルは相当なもので、圧倒的な武力差というものがありました
どうやって倒すのかなと思っていたら、まさかのソンジュンが乱入でそのまま倒してしまうという呆気ない展開になっています
結局のところ、自分よりも弱いソンジュンの不意打ちを喰らって死ぬラスボスという、どう解釈したら良いのか悩む展開になり、そこからウングクがさらに部隊を派兵するということもありません
ウングクが仕掛けたものは明白で、彼との決着がついていない以上、スヒョクには危険が残ったままになっています
これが次作以降への布石とするならば、親子団欒に忍び寄る影というラストになりますが、それすらもありませんでした
一応は、スヒョクとインビを見ている誰かの目線という構図にはなっていますが、それに気づいて振り返るスヒョクぐらいの演出はあった方が良かったと思います
続編のあるなしに関わらず、部下をボッコボコにされたウングクのその後の動きが途絶えているというのはナンセンスで、その方向性を指し示さないと、モヤっとしたまま終わってしまうと言えるのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、かつての仲間に襲われるという展開で、その際に恋人と見知らぬ娘が足枷になるという構成がありました
ミンソは早々に死亡して退場し、これはスヒョクの怒りというものと今後の生き方を変える起点として機能しています
一方のインビは、父親がいないと教えられているので、スヒョクが登場しても「誰? このおじさん」状態のまま、とりあえず信じてついていくしかありません
でも、こちらも早々にジナに捕まったあとは、観覧車のカーゴみたいなところで大人しくしているだけで、この際もスヒョクに枷になるような行動は起こせません
結局のところ、スヒョクは自由に戦える立場にあり、ミンソもスヒョクも人質としての足枷にすらなっていなかったりします
映画は、設定としての恋人と娘の存在を活かしきれておらず、アクションはそこそこでも、物語の完結性というものにも疑問が残っている内容になっていました
これで、主人公無双でカッコいいからOKだったら良いのですが、敵に完全に押し負けているし、爽快感はないし、と何をどう褒めれば良いのかわからない作品になっていました
とは言え、この映画をアクション映画ではなく、コメディ映画として見るとそこまで悪くなく、敵キャラはお笑い要員としてはきちんと機能していたように思います
それが狙いかはわかりませんが、ソンジュンの一人ボケツッコミ、ウジンのコミカルな狂人演技、ジナとインビのいけないゴッコなどは狙っていると思います
真剣勝負の緩衝材のようなものではありましたが、どちらかと言えば、そっち方面に振り切った方が良かったのではないかな、とさえ思ってしまいますね
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100830/review/03433755/
公式HP:
https://klockworx-asia.com/gardian/