■四つ巴のままの方が、それぞれの恋愛衝動を持続させられる気がする


■オススメ度

 

四角関係の妙なラブコメに興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.2.1(アップリンク京都)


■映画情報

 

情報:2024年、日本、116分、G

ジャンル:拗れた四角関係を描いた日常系ラブコメ映画

 

監督&脚本:木村聡志

 

キャスト:

莉子(むっちゃん/玉山むつみ:空気の読めないおとぼけピュア女子、美容師)

筧美和子(グリコ/江崎:むっちゃんの先輩、ブレブレ女子)

 

中島歩(ベンジー/浅井:むっちゃんの想い人、罪作りでマイペース、レコード会社の営業)

綱啓永(モー/牛田:グリコの元カレ)

 

みらん(ナカヤマシューコ:ベンジーの恋人、アーティスト)

 

村田凪(柱谷:モーのボーリング友達)

金野美穂(井原:モーのボーリング友達)

 

坂ノ上茜(澤:喫茶店の変なお姉さん)

 

土井徳人(ナカヤマシューコのバンドのベース)

中島雄士(ナカヤマシューコのバンドのドラム)

久米雄介(ナカヤマシューコのバンドのギター)

 


■映画の舞台

 

都内某所

 

ロケ地:

東京都:江戸川区

air(むっちゃんとグリコの勤務先)

https://maps.app.goo.gl/3p3xqXKoa89YEgvj7?g_st=ic

 

東京都:世田谷区

CLUB251

https://maps.app.goo.gl/sxYCS2X1H5W7BKKk7?g_st=ic

 

東京都:千代田区

CAFE&BAR BLESS

https://maps.app.goo.gl/K19PJDtLNrYaYSXFA?g_st=ic

 

東京都:渋谷区

Dining&Bar KITSUNE

https://maps.app.goo.gl/dtSL4fwNFHffK3Zw8?g_st=ic

 

神奈川県:湯河原市

湯河原パッキーボウル

https://maps.app.goo.gl/Ciujfth9xog8xAhy5?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

都内の美容室で働いているむっちゃんは、人見知りが強い面があって、人間関係はあまり得意ではなかった

ある日、仕事終わりの片付けの際に「同じシールをスマホに貼っていた」という偶然の一致によって、先輩のグリコと話が弾んだ

グリコは週末にシモキタにあるライブにむっちゃんを誘い、ナカヤマシューコのライブに参加することになった

 

ライブ後、グリコの知り合いであるレコード会社のベンジーと会ったむっちゃんは、ほのかな恋心を抱き始める

そんな折、グリコが元カレから電話を受けたことを知り、残った荷物を取りに一緒にいくことになった

元カレのモーはちょっと変な男で、人見知りのむっちゃんと二人きりになっても話が進むことはなかった

 

それから4人とナカヤマシューコは接点を持つ人々と接していき、その関係はいつの間には歪な交錯を経て、四角関係へと発展してしまうのである

 

テーマ:好きのベクトルの提示方法

裏テーマ:ベクトルを変える要因

 


■ひとこと感想

 

ほのぼのとして交わらない会話劇で、「え?」『え?」みたいな掛け合いがあるのかなと期待していました

実際にその通りで、アドリブに近いような普通の会話の噛み合わない感じが見事に再現されていましたね

なんか見えているものの角度が違うような会話になっていて、「こだわるとこ、そこ?」という会話が多かったように思います

 

グリコとモーが元恋人同士で、むっちゃんがベンジーに恋をするという導入から、四角関係に持っていくのはなかなか凝っていました

ナカヤマシューコをどう退場させるのかなと思っていましたが、かなり強引な展開で「俺たちって、付き合ってたっけ」で終わらせるところで、一連の戦犯はこいつなんだろうなあと思わせてくれますね

 

とにかくダラダラ続く感じにはなっていますが、飽きの来ない会話劇になっていましたね

四人の会話に飽きてきたら、脇役がピンポイントで余計なことを言う展開も、ハマる人にはハマる感じになっていました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

好きと言う思いが衝突事故を起こしていて、その方向を整理する後半の円卓は、サッカーそっちのけで行われる壮絶な鍔迫り合いになっていました

オウンゴールを決めたのが戦犯ベンジーというところが意味深ですが、誰にでも勘違いさせつつ「付き合ってないよね」で逃げるずる賢さがありました

これまでに何度も仕掛けたのだと思いますが、今回はがんじがらめになって逃げ場を失うハメになっていました

 

この試合の勝者が誰かと言えば、手口を封じることに成功したグリコで、しかもベンジーの好きを得ることができています

むっちゃんとの関係も同僚止まりですし、いずれはモーが押し切れるような感じもします

最終的にむっちゃんのベクトルは変わらなかったのですが、それはベンジーがグリコと言う身近な方向を向いていたからなのでしょう

 

この流れになっているのは、グリコが元カレのモーをむっちゃんとくっつけさせようと考えていることが起因で、それによって対ベンジーのライバルを減らそうと考えています

ある意味、ベンジーをむっちゃんに紹介するのも、私は高スペックに乗り換えるからね宣言みたいなものなので、それゆえに「いけず」をしているような気がしないでもないですね

あるいは「毒がある方がおいしい」と感じるグリコと同タイプなのかもしれません

 


四人が噛み合わない理由

 

本作は、実質4人による恋愛映画で、ナカヤマシューコはベンジーの恋愛観を指し示す存在となっていました

彼女だけが他のキャラクターと関わりを持たず、ベンジーとのベクトルになっていて、それをベンジーが断ち切るという格好になっています

その他のキャラクターは、それぞれにベクトルを持っていて、好き好かれが交錯する関係性を築いて行きます

男二人の距離感は知り合い程度のために距離感があり、女二人は職場の同僚ということで距離が近くなっていました

 

ライブハウスくくりだとベンジー、むっちゃん、グリコが交わっていて、美容室だとむっちゃん、グリコ、モーが交わっていきます

なので、ベンジーとモーは女性二人がいないと絡まないという関係性になっていて、彼ら二人が結託したり、反発したりすることがないのですね

これが女性が蚊帳の外という関係になると、阻害されている感じで火花が大きくなってしまうのですが、男二人を蚊帳の外にすることで、女性同士の結託を中心に話が進むことになりました

 

この構成の妙があって、常に男女ともどちらも秘密を持たないという構図になっています

むっちゃんはベンジーに一目惚れ(現在)

ベンジーはずっとグリコが好きだった(過去)

グリコはモーとの関係を修復したい(過去)

モーはむっちゃんに惚れている(現在)

このような関係性になっていて、過去から続くものを大事にしたい二人と、今の関係性を発展させたい二人ということになるのですね

過去にこだわる二人は現在を発展させたい二人の抵抗線になっていて、その逆も然りという流れになっています

それゆえに根本的な解決に至らないのですが、それは「ベンジーがずっとグリコを好きだった」というところが嘘っぽくなっているので、ここに突破口があります

この過去を嘘っぽくさせているのがベンジーとナカヤマシューコの関係性で、それを暴露せざるを得なくなるのが、後半の円卓の会議だったという構成になっていました

 


むっちゃんのベクトルが変わらない理由

 

最終的にベンジーの悪行が暴露されてもむっちゃんのベクトルが変わらないのですが、それには二つの理由があると思います

ひとつめは「恋愛と友情」という観点で、ベンジーには恋心を抱けても、モーとはすでに友達の感覚になっているから、というものです

恋愛でよく言われるのは、恋は電撃、友情は浸透というように、関係性の成り立ちが根本から違います

それゆえに、友情の関係になると恋人にはなれないというジレンマが発生し、これはベンジーとグリコの関係にも似ています

今さら好きだというなよ、ということで、それを言われても、その好きは愛しているにはならない、ということになります

 

もうひとつの理由は、女性同士のマウント合戦で、むっちゃんとグリコの間にある「女性同士のマウントの取り合い」ということになります

むっちゃんはグリコからベンジーを剥がすことに固執し、グリコはモーからむっちゃんを剥がすことに固執しているから、というものなのですね

一度宣言したものは引っ込めないプライドというものがあるのですが、むっちゃんは「自分は他の女の人が犯した過ちをしない」と思っているところがあるので、ベンジー相手でも自分なら何とかなると考えています

ベンジーを射止めて、彼の浮気性を正すことができれば、女性の魅力や能力というものが他の女性とは違ったということを示せるので、そういったことに関してむっちゃんは自信を持っているのだと思います

そうして変なプライドがむっちゃんを襲っているのですが、実際には「追いかける恋愛が好きという恋愛体質」がそうさせているのですね

 

恋愛には障壁があるほどに燃えるというものがあり、この4人の障壁はそれぞれ別の人物になっています

その中で、むっちゃんの恋愛の障壁が一番高いのですね

むっちゃんの障壁は「ベンジーがグリコを好きだから」だけではなく、「恋愛経験の豊富さ」「ベンジーの浮気性」「ベンジーとの歴史(時間の短さ)」というものがあります

他のキャラクターにもそれぞれあるのですが、ベンジーのベクトルの強さがブレているように見えるために、さらに強固に思えてしまうのですね

これは「ベンジーが自分の浮気性を治そうとしている」というものがあり、その行為がむっちゃんの障壁を押し上げているからだと言えます

そうした現在進行形の障壁の成長があるゆえに、それをクリアした先にある褒章というのは「浮気性を治せたのは私」という自負を生むことになると言えるのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

この恋愛バトルは、誰かが折れれば解決するというものではなく、最低でも半分がベクトルの向きを変えなければなりません

彼らは誰かがそれを変えれば解決すると考えますが、実際には全員が好きを諦めなければならない構造になっているのですね

むっちゃんの恋はベンジーがグリコを諦める

ベンジーの恋はグリコがモーを諦める

モーの恋はむっちゃんがベンジーを諦める

グリコの恋はモーがむっちゃんを諦める

といった具合になります

 

その中でベンジーへのむっちゃんの想いが変わるのでは?という期待のもと、ベンジーの悪行が暴かれるのですが、むっちゃんの中では「それも込みでベンジーが好き」というところがあって、ベンジーの悪行の暴露では方向性は変わらなかったりします

これは、恋愛対象になった時に「その人の背景を込みで好きになっている」というものがあって、その要素が排除されると魅力というものが変わってきます

モーがむっちゃんに執着しているからグリコが固執するというように、モーがむっちゃんのことを諦めてグリコの方を見ても、実際にはうまくいかなかったりするのですね

これは、恋人を所得する過程が重要視されていて、結果が得られた際に冷めてしまう現象に似ています

 

恋愛は一種のハンティングのようなもので、この映画でも「相手が違う方向を見ている」という前提を覆そうと誰もが思ってはいるものの、この状態を解消したくはないという思いも同時に存在したりするのですね

実際にそれぞれが好きな相手と付き合い始めても、このメンバーだとすべてのカップルはうまくいかないような気がします

それは、相手が心がわりをしても、それを証明するものがないという状況が生まれるからなのですね

モーがむっちゃんを諦めてグリコと付き合っても、モーがむっちゃんと一緒にいる様子を監視して、本来の楽しむべき二人の時間を楽しめなくなる、と言ったように、心がわりを担保するものが必要になってきます

この4人はそれぞれの距離がすごく近いので頻繁に会うことになりますし、その都度、その監視モードになってしまうというところがハードルになって、疲弊してくのではないでしょうか

 

2つのカップルができたら、それぞれが会わなくなるという状況になれば、その距離、頻度というものが担保になるように思えるのですが、実際の心の中というものは覗けません

でも、今では会わなくてもコンタクトは取れるので、そのすべてを監視するということは無理になっています

最終的には、自分が相手を信じられるかというところになるし、相手を信じさせることができるかというのが肝になります

これがこの4人が同時に担保できる可能性は限りなく低いので、そうなると関係性が壊れやすいのですね

 

ベンジーがグリコを諦めても、別の女との浮気性を発揮したら、それによって傷ついたむっちゃんをモーは心配してしまうでしょう

そうなると、グリコとしては面白いわけがなく、自分よりもむっちゃんの方が大事なのかという感じになってしまいます

なので、ベンジーとグリコが付き合って、むっちゃんとモーが友人関係になる、というのが関係性が変化しない落とし所になってしまうのかな、と思ってしまいますね

とは言え、これは恋愛に限った話なので、ベンジーとグリコがなし崩しになって妊娠とかしたら、一気に終わってしまう話だったりするのかもしれません

これは、むっちゃんがモーとなし崩しになってしまうパターンと同じ意味にはなってしまうと思うのですが、それぐらい二人の女性の欲望抵抗力は低いという印象が見えるということなのかもしれません

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/100283/review/03436933/

 

公式HP:

https://chigawaku.com/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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