■告白のタイミングは、あなたの心が教えてくれている
Contents
■オススメ度
ほんわかするラブストーリーが好きな人(★★★)
笑顔で新年を迎えたい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.12.10(MOVIX京都)
■映画情報
原題:해피 뉴 이어(あけましておめでとう)、英題:A Year-End Medley(新年のメドレー:ごった返し)
情報:2021年、韓国、138分、G
ジャンル:高級ホテルで巻き起こる様々な恋愛群像劇を描いたラブコメ映画
監督:クァク・ジョヨン
脚本:ユ・スンヒ
キャスト:
ハン・ジミン/한지민(ソジン:ホテル「エムロス」の支配人、15年間告白するのをためらっていた仕事人、元バンドのボーカリスト)
イ・ドンウク/이동욱(ヨンジン:ホテル「エムロス」のCEO、イヨンに一目惚れする)
カンシン・ソンイ/강신성일(ヨンジンの父)
イ・ジュンオク/이중옥(ホテル「エムロス」の専務)
ナム・ミョンリュル/남명렬(ジョ:ホテル「エムロス」の理事)
クォン・サンウ/권상우(本人役:ヨンジンに間違えられる有名俳優)
ウォン・ジナ/원진아(イヨン:ミュージカル女優志望のホテルルームメイド)
チェ・スミン/최수민(イヨンの母、認知症で施設で療養中)
ペク・ウネ/백은혜(イヨンに嫉妬するホテル「エムロス」のメイドマネージャー)
カン・ハヌル/강하늘(ジェヨン:自殺願望のある就活生)
イム・ユナ/윤아(スヨン:モーニングコール担当、ジェヨンの相談役)
カン・ヨンジョ/강영주(ヘソン:ジェヨンの元恋人)
パク・ジョンチャン/박종찬(ヘソンの先輩)
キム・スンフン/김승훈(ホテル「エムロス」の広報部長、ジェヨンの見張り役)
カン・ソクヒョン/강석현(ジェヨンを止める薬剤師)
パク・ジュンギュ/박준규(ジョヨンを止めるガーデンショップのおっちゃん)
キム・ヨングァン/김영광(スンヒョ:ソジンの想い人、元バンドメンバー)
コ・ソンヒ/고성희(ヨンジュ:ジャズ・ピアニスト、スンヒョが連れてくる婚約者)
パク・ソンイル/박성일(ヨーホ:ソジンとスンヒョの元バンド仲間)
イム・ソンジェ/임성재(ジュンゴ:ソジンとスンヒョの元バンド仲間)
ソ・ガンジュン/서강준(イ・ガン:シンガーソングライター&DJ、ホテルでコンサートを行う歌手)
イ・グァンス/이광수(サンフン:イ・ガンをメジャーに押し上げたマネージャー)
イ・ジフン/이지훈(キム理事:イ・ガンの引き抜きを図るライバル会社「ミスト」の責任者)
イ・ジヌク/이진욱(ジンホ:毎週土曜日にホテルに来て、将来の結婚相手を探す整形外科医)
チョ・ジュニョン/조준영(パク・セジク:イム・アヨンに恋をする高校の水泳選手、ソジンの弟)
ウォン・ジアン/원지안(イム・アヨン:フィギュアスケーター、セジクの想い人)
キム・スギョム/김수겸(チョルミン:セジクの友人)
キム・スンチャン/김승찬(ジョンヒョン:セジクの友人)
パク・ジョンヒョク/박종혁(スンギ:セジクの友人)
イ・ヘヨン/이혜영(キャサリン・リー/イ・ボンヨプ:娘の結婚式に出席するために帰国した実業家)
(若年期:チョン・ユジン/정유진)
チョン・ジニョン/정진영(カン・サンギュ:かつてキャサリンと恋仲だった「エムロス」のドアマン)
(若年期:チャ・ドンハ/차동하)
オ・ミナエ/오민애(サンギュの亡き妻)
■映画の舞台
韓国:ソウル
ホテル「エムロス」
ロケ地:
韓国:慶州
ラハン・セレクト・ギョンジュ/Lahan Select Gyeongju(ホテル内)
https://maps.app.goo.gl/M9bruUT9Pv4cW2Li7?g_st=ic
韓国:江原南
ハイワン・グランドホテル(ホテル内)
https://maps.app.goo.gl/VJtatBPFJpxPvvgSA?g_st=ic
緑莎坪陸橋(イヨンが踊る歩道橋)
https://maps.app.goo.gl/bEcmn2XhH9Cq64d67?g_st=ic
サムチョンドン
https://maps.app.goo.gl/JSQwZYZUadGEfZit5?g_st=ic
蚕室・ソウルオリンピック主競技場内スケートリンク
https://maps.app.goo.gl/PrZY6EAgBhFNwgg29?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ソウルの高級ホテルの統括マネージャーをしているソジンは、仕事一筋だったがそれは意図したものではなかった
彼女には15年間想い続けているものの、それを伝えられずにいる相手がいた
クリスマスを控えたある日、ホテルの常連の整形外科医のイ・ジンホから「今年、告白されますよ」と言われて浮かれ気分になる
ホテルは繁盛期を迎え、そんな最中に、CEOのヨンジンが自宅のボイラーが故障したとのことでスイートに泊まることになった
その部屋を任されたイヨンは先輩たちとともに気を引き締めてルームメイキングに励んでいく
だが、ミュージカル女優を目指していたイヨンは、こともあろうにヨンジンの部屋の中でダンスの練習をしてしまい、それは彼に見られてしまった
その頃、就活生のジェヨンは彼女に振られて絶望し、アパートを解約して人生の最期にホテルに泊まろうと考え、スジンの弟セジクはフィギュアスケーターのアヨンへの想いを拗らせていく
そんな中でスジンは、想い人のスンヒョから衝撃の告白を受けてしまう
スンヒョはヨンジュと言うジャズピアニストと婚約をしていて、その結婚式をソジンのホテルで挙げると言う
ソジンは複雑な想いを抱えたまま、クリスマスを迎えることになり、様々な想いを抱えた人々に尽くすことになったのである
テーマ:告白のタイミング
裏テーマ:人の幸せと自分の幸せの関係性
■ひとこと感想
クリスマスにたくさんの人が集まって、そこで様々な恋愛模様が繰り広げられると言うことはわかっていて、下調べをしないとしんどいかなと思っていました
でも、公式HPでもネタバレなしのキャラ説明はあるし、それほど混乱するほどでもありませんでしたね
ホテルを舞台に、月一で見合いを失敗する整形外科医とか、40年ぶりに初恋の相手を会う壮年とか、人生最期に贅沢しようとする孤独な男とか、様々な人々がいる中で、主人公にもロマンスがきちんと用意されていました
自分の幸せそっちのけでみんなを世話しないとダメだったりとタイヘンな中でいて、一番キツい展開が用意されていると言うのは結構ヘビーな導入になっていました
それでも、それぞれのカップルにそれぞれの窮地がきちんと用意されていて、それぞれにきちんと着地点があったのは良かったですね
大晦日のレイトショーで観て、映画が終わったら新年になっている、とかだったら最高かもしれません
どこかでそんなニクいスケジュール組んでないだろうか
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画の主題は「告白」で、その「告白」をどのように果たしたかと言うことがそれぞれの幸福へと直結していました
15年間告白できなかったソジンは「告白の機会を失う」と言う流れになり、弟のセジクは友人たちの後押しがあって「告白」へと向かいました
スンヒョがソジンに告白しなかったのは、おそらくは大切な友人の域を越えなかったからだと思うし、そもそもが彼女として接したいタイプではなかったかもしれません
でも、ソジンの手紙を読んで彼女の想いを知り、結婚式で披露した楽曲の中に彼女の想いがあったことを知ります
それでもソジンの元に行かないと言うところが男女の縁の難しさかもしれません
ラストはサプライズのように見えますが、冒頭で「今年、告白されますよ」と予言(自分がするから当たる予言)をしたジンホが登場するところはうまい構成でしたね
でも、お見合いはやはり失敗してしまうところがおかしくもあり、悲しくもありましたが、もし付き合えれば意外とこのカップルはうまくいくんじゃないかなと思いました
■告白のMedley
映画は「告白」が主題になっていて、そのタイミングを逃した女性が主人公になっていました
15年間思い続けているのに「相手からしてくれるかも」という謎の期待を抱いているのですが、スンヒョからすれば「女性として眼中になかった」ということになりますね
しかも、明らかに自分よりも年下のヨンジュと結婚することになっていて、ヨンジュが「ソジンがスンヒョに気があることを知っていて相談する」というパーフェクトマウントポジションには苦笑せざるを得ません
「サプライズプロポーズは失敗する」とネットでわざわざ調べて悪用するソジンに対して、それを大袈裟に喜んで見せるという狡猾さをヨンジュは持ち合わせていました
この分だとスンヒョは完全に尻に敷かれますが、その方が彼には合っているのかもしれません
映画はこの三角関係を筆頭に様々な「告白模様」を展開していきます
ソジンの弟セジクとアヨンの関係は「相思相愛」をお互いに感じていながら、「告白するのはどっちか」を探っている感じになっています
でも、アヨンは「セジクに言わせたい」と思っていて、それは女の子の年頃の願望を表していたのだと思います
キャサリンとサンギョの関係は、お互いが「告白済み」でその「告白の実行を本当にするのか」というところが描かれています
こちらは40年間の人生でお互いに伴侶を持ち、どちらもが配偶者を亡くしている状態になっていました
このサンギョの迷いは亡き妻への執着になっていて、謎の霊能力を持つ整形外科医ジンホによって「今は視えないので成仏されたのですね」という注釈がついていました
この後の人生をどうするかという迷いの中、キャサリンは「雪が降ったら」という提案をしました
それは「サンギョの執着を断ち切るには神様の配慮が必要」とキャサリンが考えたからなのだと思います
でも、どちらもが本心では「雪が降ること」以上にお互いを想っていて、この構図はセジクとアヨンの配置に似ていました
CEOのヨンジンとハウスキーパーのイヨンの関係は醜聞になってしまうのですが、どちらもが「夢」というものに対して躊躇している、もしくは失念しているという状態でした
二人はそれぞれの夢を「告白」し、その交流によって、お互いの夢との距離が近くなっていくことを示唆しています
これに呼応するのが、「同じ夢を見てきた」イ・ガンとサンフンの関係で、同じ夢を見ていたはずなのに、という現状が生まれています
イ・ガンのプロデュースをこの先も自分が行って良いのか、という迷いがサンフンにありますが、イ・ガンはどこまでもサンフンと行くと決めていました
イ・ガンはサンフンの弱さを理解していて演技をするのですが、彼は楽曲の中でサンフンへの想いを表現していました
このシーンの対になっているのは、結婚式でソジンがスンヒョとヨンジュに歌う「あの時、私はあなたが好きだった」という告白で、シンガーと元シンガーの二人は「歌にした方が素直に言える」という共通点がありました
就活生のジェヨンは恋人ヘソンに執着を持っていましたが、試験に失敗したことで見切りをつけられてしまいます
彼はアパートを引き払って、人生最後の住処としてエムロスを選ぶことになりました
そんな中、ハウスキーパーが遺書の書きかけを見つけてしまい、彼の行動が監視されていきます
そして、間違ってかけた電話にてモーニングコール担当のスヨンと繋がることになりました
この一連は現在のネットで繋がるという状況を描いていて、同じ悩みを持つ人物が遠隔で繋がっている様子を描いていきます
それでも、最終的には会うことによって、想像がリアルになっていき、さらに奥行きが出ていくことになりました
同じ悩みを持つ者同士だと分かり合えるという構図は、弱さの質のレベルによって引き合って、それが絆の原点になっていきました
■幸せの正体
これらの告白の後に起こるイベントが、整形外科医ジンホのソジンへの告白なのですが、この告白だけは色合いが違います
というのも、ソジンはジンホに全く男性としての思い入れがなく、いち顧客として見ているからですね
なので、ジンホが「お見合いをしたい」という遠回しの告白を冗談のように受け止めていて、そこで「失敗している原因がわかりました」と傍観者としての意見を言ってしまいます
映画ではこの告白だけが失敗に終わっていて、それは「想ってもいない人からの告白は意味をなさない」というテーマを内包しています
告白は想いがあればすると良いと言いますが、それは相手との関係性がベースになるのですね
なので、ジンホが「改めてイ・ジンホと申します」とよそゆきの自己紹介をしても、ソジンの中にある「顧客ジンホ」の枠組みからは逃れることができません
彼の失敗がなぜ起こったかを考えると、それは「ホテルの中で告白したから」という一点に尽きると思います
ホテルの中ではソジンは統括マネージャーとしての役割を全うしています
なので、そこで出会う従業員以外の人物(家族は除く)は、全て「お客さま」という捉え方になっています
そこでジンホがいくら改まっても無理なものは無理で、場所とシチュエーションを変えて、顧客と従業員という関係性から逸脱しなければなりません
この二人に呼応する関係がヨンジンとイヨンで、二人は「ホテルの外に出て新年を祝う」のですね
彼らはCEOとハウスキーパーという「雇用主と従業員の関係性」から抜け出すために「場所を変える」のですが、これができるのとできないのとでは、結果が大きく変わっていきます
ヨンジンは常にイヨンをホテルの外に誘導し、そこで関係性を深めていったので、ジンホに必要だったのは「告白前までにホテルの外でプライベートで会う時間を作ることだった」と言えるのではないでしょうか
告白は自分の想いを告げる行為ですが、相手が自分の方を見ていないと意味がありません
そうでないと、逆に迷惑になるだけなので、TPOは十分に練り込んでおく必要があるでしょう
また、ソジンがジンホの想いを受け取れないのは、ジンホの失敗だけではなく、ソジン自身が思い描く「理想の告白」から遠かったというものがあります
ソジンはロマンチストで、「自分が好きになった相手も自分のことが好きで、その状況で相手から告白されることを望んでいる」のですね
ある意味、プリンセス症候群にも似た気質があって、それがアラフォーまで引きずる原因になっています
告白は幸福に向かうための起点ではありますが、相手のことを理解していないとその起点は消失してしまいます
そう言った意味において、ソジンとジンホだけがビターエンドになっている構図というのは、奥深いのではないかと感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は14人の恋愛(一部友情ですが)が同時進行していく流れになっていて、その全ての進行状況がリンクしているという「鬼のようなシナリオ」になっています
さすがに人物が多すぎて120分を超える作品になっていますが、それほど体感時間が長くは感じない構成になっていました
それでも、「告白」というものがもたらすものを全部描こうとする気概が感じられて、なかなかの力作になっていると感じました
音楽の使い方も絶妙で、イ・ガンの音楽番組で状況をうまく説明していくし、効果的に音楽も挿入されています
ソジンの音楽バンドも効果的に使われていて、ソジンが新郎新婦に歌を贈るというサプライズ演出まで用意されていました
このシーンでスンヒョとヨンジュが感じていることがリンクしていましたね
ヨンジュは女の勘でソジンの気持ちに気づいていますが、スンヒョはソジンの手紙を読んでその気持ちを再確認していました
観客はこの三角関係のそれぞれの思惑を知っているので、ソジンの悲痛な叫びが物悲しくも思えます
そして、15年前に既にソジンが歌を通じてスンヒョに告白し続けていて、それが届くことがなかった(実際にはスンヒョのその気がなかったから)という悲哀が生まれています
もし、若い頃にソジンがスンヒョに告白していても、おそらく結果は同じだったでしょう
それが二人の間にあった「友達以上恋人未満」にもなれなかった微妙な距離感(おそらくはバンド活動の夢が埋没させたもの)だったのかなと感じました
映画は若いカップルから壮年の夫婦までカバーしていて、クリスマス映画として観るには十分なクオリティを有しています
告白前のカップルが見れば、それを促進してしまいそうですし、壮年の夫婦から見れば自分達の告白がどの種類のものかを想起することになるでしょう
暗いばかりで救いようのない映画が多い中で、久しぶりに笑顔で映画館を出られる作品になっているので、多くの人に見てほしいと思います
このブログを読んでいる人は鑑賞後の人が多いと思いますが、関係性を進めたい相手がいるのならば、クリスマスデートに誘ってみてはいかがでしょうか
結果は保証できませんが、いずれにせよ「一歩」は踏み出せるのだと思います
これから15年の精神的な縛りで苦悩するよりは、現在の関係性を整理する上でも有効であると言えるでしょう
告白というのは心を言語に置き換えるものですが、そのTPOなどは全て「導かれるべき答え」のためにあると思います
なので、TPOを考えまくるよりは、想いが固まった段階で形にすることで、その時点の「自分の全て」が露わになります
心がそう感じている時は、結果に関わらず、TPOを凌駕する神様のギフトが与えられる瞬間です
せっかくのヒントとチャンスを神様が教えてくれているのに実行しないのは損ですね
告白はその時の想いが表面化する時なので、それがグダグダであろうがなかろうが、相手に想いがあれば受け入れてもらえるものだと思っています
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/384714/review/5e27547f-b862-42d1-830d-d8ce7d0c71f0/
公式HP: