■考え方次第で人生はやり直せるけど、酒で失ったものを取り返すのは意外と難しいものだと思います
Contents
■オススメ度
四肢麻痺の日常を体感したい人(★★★)
実話系のヒューマンドラマが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.3.9(アップリンク京都)
■映画情報
原題:Adam/Quad
情報:2020年、アメリカ、100分、R15+
ジャンル:不注意で四肢麻痺になった若者を描いたヒューマンドラマ
監督:マイケル・アッペンダール
脚本:マイク・ヤング&マイケル・バーク&ロビン・ファイト&ブレット・ジョンソン
キャスト:
アーロン・ポール/Aaron Paul(アダム・ニスカー/Adam Niskar:不注意で四肢麻痺になるやり手のビジネスマン)
(幼少期:Brandon Muzzey)
ジェフ・ダニエルズ/Jeff Daniels(ミッキー:アダムの上司)
Yuri Sardarov(ニック・カーン:アダムの同僚)
ポール・ウォーター・サウザー/Paul Walter Hauser(トレント:アダムの同僚)
トム・ベレンジャー/Tom Berenger(ジェリー・ニスカー:アダムの父)
(若年期:Barton Bund)
セリア・ウェストン/Celia Weston(アーリーン・ニスカー:アダムの母)
(若年期:Valentina Arnold)
マイケル・ウェストン/Michael Weston(ロス・ニスカー:アダムの兄)
(幼少期:Gabriel Anderson)
Toula(アレックス:アダムの愛犬)
レナ・オリン/Lena Olin(エフゲニア/Yevgenia:アダムを担当するロシア人介護士)
Wayne David Parker(サーシャ:エフゲニアの夫)
Inga R. Wilson(スージー/スーザン:一瞬でクビにする介護士)
トム・サイズモア/Tom Sizemore(ラッキー:四肢麻痺の患者、車の運転を教える)
シャノン・ルシオ/Shannon Lucio(クリスティーン:アダムと恋仲になるバーで働く女)
Sumeet Dang(ロニー:バーのバリスタ)
Jan Radcliff(パーカー・コービン:アダムの主治医)
Micheal Ellison(ジョン:理学療法士)
Billy Field(モーリー:駐車場の老人)
Madge Levinson(モーリーの妻)
■映画の舞台
アメリカ:
デトロイト
ロケ地:
アメリカ:ミシガン州
■簡単なあらすじ
保険会社の営業として手腕を発揮しているアダムは、充実した毎日を送っていて、自身にみなぎる人生を満喫していた
ある夜、バーに入ったアダムは、そこで働いているクリスティーンに積極的にアプローチをかけた
「負けた」クリスティーンはやがてアダムと恋仲になっていき、順調に愛を育んでいた
ある日、昇進が決まったアダムは湖畔のコテージでハメを外し、池へとダイブしてしまう
だが、そこは浅瀬になっていて、彼はそこに頭を強く打ち付けてしまうのである
それによって頚椎は粉砕され、彼が目覚めた時には四肢麻痺が残る状態になってしまっていたのである
クリスティーンも彼の元を去り、リハビリに明け暮れる日々を過ごすことになった
順調に回復を見せ、半年後には自宅での療養に移ることになる
だが、わがままで横柄な生活が介護士と合わず、次々にクビにしてしまう
そして、彼の元にロシア人の介護士エフゲニアがやってきた
彼女はそんな彼の言動に動じることなく、できる限りのことを自分でさせていく
アダムはようやく人として接してくれる介護士と出会い、回復に向けての生活を取り戻していくのであった
テーマ:再生のための活力
裏テーマ:必要な人はやがて現れる
■ひとこと感想
パンフレットもなく、どんな内容なのかの情報もあまりない中、意外と評価高めに見えたために参戦
自業自得すぎる事故に唖然としてしまいますが、そこから先もわがまま放題なので、どのスタンスで見れば良いのか悩んでしまいます
物語は、ロシア人介護士エフゲニアが登場するところが本編になっていて、それらは実話をベースに紡がれた再生の日々でした
周囲が気を遣って接していく中、彼女だけはアダムに厳しめに接していき、彼の反骨心を刺激していきます
そんな荒療治が功を奏したのか、少しずつ動けるようになっていくスピードにリアルさを感じてしまいます
物語はやや美化された印象がありますが、自分で転んで立ち上がるというものなので、応援というよりは傍観に近い印象があります
アダムはどちらかといえば傍若ではありますが、人を惹きつける要素はあったように思えました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
前半の充実した生活をガッツリと映していくので、事故が起きた時の絶望感は半端ない感じになっていましたね
いつ、どのような感じで半身麻痺になるのかと身構えていたところで、そんな理由なのかと逆に驚いてしまいました
不運な事故とかではなく、思いっきり過失というところが恐ろしくもあり、少しのことで人生が一変するのだなと思い知らされます
アダムの自信過剰にも思える性格が災いしたとも言えますが、あの程度のハメ外しって、結構な頻度で誰もがやってしまうことのように思えます
改めて酒は怖いなあと思うものの、それだけが彼の人生を変えたわけでもないのかなと感じてしまいました
映画の原題は『Adam』なのですが、ググると「Quad」と表記されていましたね
この改変がどのような経緯で変わって、それが残っているのかはわかりませんが、「Quad」には「友人との間で交わされる下手くそ(ヘマをした人)」みたいな意味があったりします
まさしく文字通りではあるものの、それがタイトルだと少しばかりキツいように思ってしまいます
■人間万事塞翁が馬
日本の諺に「人間万事塞翁が馬」というものがあります
意味は「一見、不運に思えたことが幸運に繋がったり、その逆だったりすることのたとえ」で、「幸運がどうかは容易には判断し難い」というものです
映画だと、アダムの自業自得は不運には間違いありませんが、人生トータルでどうだったかというのはわかりません
これは幸福論の世界に入っていくのですが、幸福論自体がそれぞれの考え方に依るものなので、一概には言えないところがあるからです
アダムのような事故を幸運であると捉えるのは難しいのですが、生きている間に起こる出来事には意味があると考えれば、「もしもの世界」よりも有意義に生きることができます
彼が四肢麻痺になったことで起きた出来事は「クリスティーンとの離別」「エフゲニアとの出会い」「家族関係の露見」という三つに集約されます
クリスティーンとの離別というのは、彼女がどうしたら良いかわからないという中で、一番辛いところから逃げたということになります
裏を返せば、一番辛い時にアダムの周りには誰がいたかを知ることになるのですね
家族の中でもその温度差はあって、これが「家族関係の露見」ということになります
過剰に反応し、同情心と親心を混同させる母
行動と結果において、自分自身の力で立ち直らせようとする父
この後に及んで、甘さから弟に依存する兄
これらが、アダムの事故によって暴露された家族の真実ということになります
そして、エフゲニアとの出会いの中で、要介護者はどう生活すべきかという哲学に出会い、上司ミッキーは生きていく上での社会的自立の場所を提供します
特筆すべきは、関わりを断てるはずだったミッキーが、再度彼と一緒に仕事をしようと持ちかけたことでしょう
彼が離職している間に、同僚たちは独立して怪しい事業を展開し、彼を誘っていました
アダムは彼らの職場に行き、そこで違和感を感じ、最終的にはミッキーの元で働くことになっています
これらの流れからすると、怪我の前に自分を持ち上げていたものの正体が見えた、とも言えます
とは言え、奪われた日常の大きさから比べれば些細なことにも見え、こればかりは当人の価値観や感覚に依るところが大きいように思えました
アダムの選択は、ある意味において、この状況下で起こったことを前向きに捉えようとしていて、それはエフゲニアの尽力があったからだと言えるのではないでしょうか
■再生に必要な日常性
エフゲニアの荒療治は「できることは自分でさせる」というもので、そこに容赦はありません
リハビリや介護が必要な人に対しての向き合い方は色々あると思いますが、日常に回帰する必要がある人ほど、できそうにないことをやっていくという方法に行くべきだと思います
私個人だと、小学生の時に事故に遭って、骨が露出するほどの大怪我だったのですが、術後の翌日には立っていました
この時に何を考えていたのかは覚えていませんが、術後の足で立った時の微妙な感覚は覚えています
それからのリハビリのことはあまり覚えていないのですが、軽トラックに荷物が乗っていなかったことが幸いしたようで、骨折などがなかったので早々に退院した記憶があります
あの時立っていなかったらという「もしも」はわからないのですが、自分の中で「傷の程度」というものを測ろうとしたのかもしれません
この体験があるためか、多少痛みがあっても病院には行かなくて、「歩けているうちは問題ない」みたいなマインドになっています
それが良いのかはわかりませんが、最大の痛みがあるはずの時期に感じたもの、というのは人生において大きな意味があったように思えます
日常への回帰は、いかにそれまでと同じことを行うかにかかっています
でも、アダムの場合だと全く同じようにはできません
手段が異なっても、目的が同じなら良いと考えれば、「自分で食器を持って食事をする」「自分で移動して風呂に入る」「自分で運転して会社にいく」ということも「方法を考える方にシフト」していけます
これが「食事は介護人に食べさせてもらう」「風呂への移動もすべて全介助で行う」「誰かの運転で会社に連れて行ってもらう」という目的になると、行動自体が同じでも全く違う結果になると言えるのではないでしょうか
エフゲニアの荒療治は酷ではありますが、いかにして能動的にプログラムに向き合うかという骨子がありますので、手加減がない分、アダムが折れなければ大きな成果を得られる手法だと思えてきますね
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は不幸な難病もののように見えますが、軽率な行動の結果の自己責任になっているためか、あまり悲壮感を感じさせません
大変だなあと思う一方で、一番の教訓は「酒はヤバい」というもののように感じました
病院勤めなので、この手の「酒ですべてをフイにする」という患者をよく見かけます
飲酒後に転倒して、外傷性くも膜下出血なんてのはザラで、本当に前後不覚になるまで酔うというのは命懸けだと思います
これらの外傷性の危険はさる事ながら、1番の影響は「病院のブラックリストに載ること」だと言えます
シラフだと普通の人でも、酒が入ると態度が大きくなって、医師の指示が入らなかったり、看護師にセクハラしたり、あげくの果ては診療費を払わずに警察に連行されるというものもあります
怪我をしているとまだ救急搬入の必要性はわかるのですが、路上で座っていたのを通行人が発見し救急要請で、実は寝ていただけというものもあります
こう言った場合に、本人の意思とは別のところで搬送が行われて、それがトラブルになるケースがあります
酒の影響でトラブルになることは、日常生活での社会的な信頼を損なうというところに行き着きますので、自分が知らないところでクビを絞めているということはよくあります
お金を持っていないので払えないために誓約書対応をしても、本人が病院に来た記憶がなく、支払いを放置した挙句、渉外担当が自宅まで出向くとか、職場に電話が入るなんてこともあったりします
病院の記録にも残りますし、警察沙汰になるとさらにややこしい事態に発展します
今は、コロナ禍で外食ができない時期があって、それによって飲酒の許容量というものが微妙に変わっていたりします
そうした段階で以前と同じ量の酒を飲んでやらかす人が多くて、一日に最低一人は飲酒絡みで救急搬送されていますね
肌感覚だと五人に一人はアルコール関連で、週末は特に顕著だったりします
自宅で飲む分にはそこまでの大事にはなりませんが、外で飲む際は注意した方が良いでしょう
そのアルコールがもたらしたものは、自分の知らないところで自分の将来を狭めているのと同義なのですね
なので、どんなことが起こっても、考え方次第ではより良い人生に戻れるという美談があったとしても、酒で失ったものは取り戻せていません
リカバーが効いたとしても、それですべてが解決するわけはありませんので、心当たりのある人は「最低限、前後不覚にならない飲酒量を把握する」ということは肝要でしょう
個人的には、酒気帯びが認められたら診療報酬に「アルコール対応加算」というのがあっても良いと思います
ぶっちゃけると、酒気帯び発覚の段階で「専門病院に搬入して一晩入院させたのちに高額請求で良い」と思いますね
シラフになった段階で、搬入から治療の経過を録画したものを本人に見せれば、このようなバカなことも減るのかなと思わないでもありません
ちなみに、飲酒は診療拒否で認められている理由の一つです
飲酒患者は通常の患者よりも言うことを聞かずに自制が効かないことが多く、診療に対応する時間も長引くし、医療従事者の体力も削ります
一人の飲酒患者のために、数人の救急搬入を断らざるを得ないと言うことも起きますので、それを避けるために拒否されるケースもあります
そう言った事例もたくさん見てきましたので、その対象にならないように、外での酒は嗜む程度にされることをお勧めします
ちなみに私は外では酒を飲みません
理由は前述のようなこともありますが、単純にコスパが最悪だからですね
お酒を飲むタイミングにもこだわりがあるので、そう言った「道」を自分で持っていれば、迷うことはないと思います
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/386539/review/c9fbbe21-de27-4182-8a1c-52696764affa/
公式HP: