アムステルダムに何が起こるかを知っているぐらいの歴史的知識は必要な映画でしたね


■オススメ度

 

実話ベースのクライム・ミステリーが好きな人(★★★)

マーゴット・ロビーさんのファンの人(★★★)

テイラー・スウィフトさんのファンの人(★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.10.28(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

原題:Amsterdam

情報:2022年、アメリカ、134分、G

ジャンル:世話になった将軍の死を巡り、事件の容疑者として追われる医師、看護師、弁護士の三人を描くクライム・ミステリー

 

監督&脚本:デヴィッド・O・ラッセル

 

キャスト:

クリスチャン・ベール/Christian Bale(バート・ベレンセン:第一次世界大戦に参加した医師)

マーゴット・ロビー/Margot Robbie(ヴァレリー・ヴォーズ:第一次世界大戦に従軍した看護師)

ジョン・デビッド・ワシントン/John David Washington(ハロルド・ウッズマン:第一次世界大戦に従軍した弁護士)

 

クリス・ロック/Chris Rock(ミルトン・キング:バートとハロルドの相棒)

Boonie Hellman(シャーリー:バートの病院の助手)

Max Parlich(モーティ:バートの病院の職員)

 

アーニャ・テイラー=ジョイ/Anya Taylor-Joy(リビー・ヴォーズ:ヴァレリーの義理の妹)

ラミ・マレク/Rami Malek(トム・ヴァーズ:ヴァレリーの兄、リビーの夫)

 

ゾーイ・サルダナ/Zoe Saldaña(Irma St. Clair, a medical examiner、解剖を行う看護師)

Collen Camp(エヴァ・オット:遺体安置所の担当者)

 

マイク・マイヤーズ/Mike Myers(ポール・カンタベリー: MI6のスパイ、バートに義眼を提供する眼鏡屋、ヴァレリーの友人)

マイケル・シャノン/Michael Shannon(ヘンリー・ノークロス:米国海軍情報員、ポールの相棒

 

ティモシー・オリファント/Timothy Olyphant(タリム・ミルファックス:殺し屋)

 

アンドレア・ライズボロー/Andrea Riseborough(ベアトリス・ヴァンデンヒューヴェル:バートの妻)

Casey Biggs(オーガストス・ヴァンデンヒューゲル:ベアトリスの父、医師協会の重役)

Dey Young(アルヴェリア・ヴァンデンヒューゲル:ベアトリスの母)

 

テイラー・スウィフト/Taylor Swift(エリザベス・ミーキンス:バートたちに父の司法解剖を依頼する女性)

エド・ベグリー・Jr/Ed Begley Jr.(ビル・ミーキンス:エリザベスの父、上院議員、元将軍)

 

ロバート・デ・ニーロ/Robert De Niro(ギル・ディレンベック:陸軍の退役軍人、モデルはスメドレー・バトラー/Smedley Butler

Beth Grant(ディレンベック夫人)

 

Matthias Schoenaerts(レム・ゲトワイラー刑事)

Alessandro Nivola(ヒルツ刑事)

 

Leland Orser(ネヴィンズ氏:戦友会に参加する実業家)

Tom Irwin(ベルポート氏:戦友会に参加する実業家)

Mike Azevedo(戦友会の司会)

 

Steven Hack(マリン医師:ヴァレリーの主治医)

 


■映画の舞台

 

1918年:アメリカ&フランス

1933年:アメリカ、ニューヨーク

1933年:オランダ、アムステルダム

 

ロケ地:

アメリカ:ロサンゼルス

Kellam Ave

https://maps.app.goo.gl/HW8tJJFpNBezF17H9?g_st=ic

 

Douglas St

https://maps.app.goo.gl/UeH9grWXQvApRFJW8?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

第一次世界大戦に従軍した医師のバートは、現地で黒人兵士のハロルドと絆を結び、看護師のヴァレリーの献身的な看護を受けて帰国した

バートには医師会の有力者オーガスタスの娘ベアトリスを妻に持っていたが、彼女と関係を持つことは許されなかった

 

1933年のある日、ニューヨークで医院を開業していたバートの元にハロルドから急な呼び出しが舞い込む

それは大戦時に世話になったビル・ミーキンス将軍が不審死を遂げていて、その娘エリザベスから解剖をしてほしいという依頼だった

 

そこでバートは解剖専門の看護師イルマと共にビルを解剖すると、胃の中から水銀が見つかり、何かしらの毒物が検出される

死の真相に近づいていた彼らだったが、いきなりエリザベスが不慮の死を遂げてしまう

彼女を殺した容疑がバートとハロルドにかかり、逃亡しながら真犯人を探すことになったのである

 

テーマ:恩義

裏テーマ:大義

 


■ひとこと感想

 

ポスタービジュアルだけで鑑賞を決めたので、どんな話かほとんど知らずに観戦

ともかく有名な俳優が豪華に登場していて、マーゴット・ロビーさんの美しさが際立つ内容になっていました

 

第一次世界大戦でマブダチになったバートとハロルドがそのままニューヨークでバディを組んでいて、その時に仲を深めたヴァレリーとは疎遠になっている

そんな三人が意外なところで再会することになり、濡れ衣を晴らそうとしていきます

 

そして、事件の裏側に不穏な影がちらつき、それは世界を揺るがすかもしれないというものだったとなっています

 

映画は思った以上に長く、後半はほぼ会話劇で、事の真相が徐々に判明する流れになりますが、物語としては退屈に感じます

「ほぼ実話」という事ですが、ラストの演説が本物以外はどこまでが実話なのかわからない感じになっていましたね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

とにかく登場人物が恐ろしく多い映画で、人物相関図を作るだけで何回か観ないとダメな感じに思えました

基本的には3人が中心になっていて、少しずつ人に会っていく流れになっています

 

物語はバートの夫婦関係とハロルドとヴァレリーの恋愛があって、真相を追う中で様々な大物が登場します

歴史的な背景を知っていれば、これからどう向かうのかわかりますので、ラストのインパクトはあまりありません

 

どこまでが真実かはわかりませんが、戦争で儲けようとしていた実業家の暗躍というわかりやすい構図でありましたね

でも、話の展開は恐ろしく遅く、特に後半はほとんど会話劇になっていて、映画を観ているのか朗読を聞いているのかわからなくなってしまいました

 


ラストの演説について

 

ラストシーンに引用される演説はスメドレー・バトラー(Smedley Butler)少将によるスピーチで、内容はフランクリン・ルーズベルト大統領を転覆させる計画があったことを暴露するものでした

この演説を行ったスメドレー・バトラーを劇中ではギル・ディレンベックと名前を変えて登場させています

スメドレー・バトラー少将は1881年にペンシルバニア州ウェストチェスターに生まれた男性で、父トーマス・バトラーは州議会下院議員でした

母方の祖父スメドリー・ダーリントンも共和党議員だったと言われています

 

スメドレーは第一次世界大戦をはじめとして、いくつかの戦争に参加しています

そこでの活躍が認められて、名誉勲章、陸軍功労勲章、海兵隊名誉勲章、海軍功労勲章など、さまざまな栄誉を手に入れていました

 

1933年にジェラルド・C・マクガイア(Gerald C MacGuire)とボブ・ドイル(Bob Doyle)から依頼を受けています

二人は最初にスメドラーと会った際に、シカゴの会にて講演するように依頼をしますが、2回目に会った際にはスメドラーは何かがおかしいと感じていたようです

それは、2回目の時点で10万アメリカドルもの大金(現在の 200万ドル)を超える銀行取引明細書を見せられたからでした

退役軍人の会と称されたその会議でしたが、その会が巨額の資金を集めたことに違和感を持っていて、また彼らが依頼した演説の内容は「ルーズベルト大統領の金本位制の政策に対して批判的なものだった」とされています

 

その後、スメドラーはマクガイアの上司と話し、それがシンガー・ソーイング(Singer Sewing)の財産相続人であるロバート・スターリング・クラーク(Robert Sterling Clark)であることがわかりました

クラークはルーズベルトが廃止しようとしていた金本位制の維持を目的としていたとされています

スメドラーはその演説を断り、ヨーロッパ旅行をしていた彼に対して、マクガイアは執拗に手紙を送っていました

帰国後、スメドラーはより透明性の高い演説を目指し、自分自身の考えを述べます

そして、その資金の出所が富裕層から出ていることを知りました

 

マクガイアたちは退役軍人のリーダーにスメドレーを担ぎあげ、経済界から多額の支援を受けてホワイトハウスからルーズベルトを追放する計画を語ります

彼の計画に驚いたスメドレーは、意図したクーデターを止めるために、スメドラー自身が知った情報を裏付ける必要があると考えます

そこでフィラデルフィア・レコードのポール・コムリー・フレンチ(Paul Comly French)とマクガイアを会わせます

マクガイアは「一晩で100万人の男性を組織できる理想的なリーダーであり、ファシスト国家こそがアメリカにとって必要なものである」と説きました

 

この証言を武器にして、スメドラーはマコーマック・ディックスタイン議会委員会に登場し、1934年の11月に実行することを明らかにします

これによって、委員会は陰謀を裏付けるための調査を始めます

最終報告書では、バトラーの主張の全てが事実として裏付けられるとなっていて、別のスピーチを行うことになります

これによって、演説は行われたのですが、最終報告書が公開されなかったためにウォール街はスメドラーの主張を否定します

その後もバトラーは退役軍人たちを支援し続け、自身の主張を詰め込んだ「War is a Racket」と言う短編を発表しました

ちなみに映画でも引用されたスピーチは以下のようなものでした

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は豪華俳優陣が集結していますが、映画の面白さと言うのはそれほど感じませんでした

ある程度歴史の背景を知っていても、ミステリーとしての構成があまりうまいとは言えません

かと言って、犯人がわかっているパターンとしても、そこに行き着く方法がそれほで劇的なものではなかったと思います

 

映画は「ミーキンスの死の真相」を追う物語で、そこに「エリザベス殺害の容疑がかかる」が付加します

逃亡中である方がよりスリリングに思えますが、警察の一人がバートの患者であるために、その設定がほとんど生かされていません

逃げているんだけど、その無実の証明の方に時間を割いていて、ミーキンスの死の真相を追うと言うくだりが、自身の潔白の証明の副産物として転がり込んできていました

トム・ヴォーズに会って、彼からディレンベックに会うことを提案されますが、このあたりの翻訳が悪いのか、演出が悪いのかわかりませんが、トムが犯行に関与していると言うのが読めてしまいます

このあたりの「潔白」と言うのは、エリザベスの死に関してで、それがミーキンスの友人に会えば容疑が晴れると言うロジックがしっくり来ません

 

このあたりはトムがディレンベックに会うための口実作りになっていて、それを考えるとエリザベスを殺す必要があったのかは謎なのですね

むしろ、ミーキンス毒殺に関しての当局の発表を覆すと言う行動で追われても同じことが起きてしまいます

ミーキンスが毒殺であることがバレたら困る連中が、それを知った二人を追い、彼らは彼らなりに「ヴォーズ」から推理を働かせてトムにたどり着く方が自然でしょう

そこでヴァレリーとの再会があって、彼女の現況から「彼女もキーキンスと同じように狙われている」と言うことが分かれば物語は動きます

 

ヴァレリーへの殺人未遂を追う中で、彼女の兄であるトムのおかしな行動が判明する

トムは一連の主犯なので、彼の行動を追うと、赤ら顔にたどり着く

そこから、赤ら顔を逆に尾行することによって、その団体がディレンベックとの接触を図ろうとしていたと言う流れを追っていくこともできます

ミーキンスの遺体に関与した(知ってはいけないことを知った)ために、自らの身に危険が及び、手を引いてもいいかなと思ったところにヴァレリーの変貌がある

バートが消極的であっても、彼女と恋仲だったハロルドには十分な動機があるので問題ないと思います

 

このルートでバートと会うことになったトムは、彼らの行なっている軍友会にたどり着きます

その状況を利用することを思いついたトムたちがディレンベックにアプローチをかけていく

そこからの動きは史実通りになっていくと思うので、もっと細かなところを描いても良かったように思いました(フィクションなので)

 

暗躍する資本主義と、再び戦禍に人々が送られることを知ったバートは、ディレンベックに一連のカラクリを告げることになります

史実とはアプローチが異なっていますが、人と金と女の流れを追うのが犯罪捜査の基本なので、敵に動かされていたと言うシナリオよりはマシのように思えてしまいます

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画で一番驚いたのは、スパイ二人が「アムステルダムには行くな」と彼らに忠告するところで、そこに「ゲシュタポがくる」と言うところまで言及していたことでした

アムステルダムはオランダの首都で、そこにナチスが攻め込むのは1940年のこと

映画の忠告は1935年ぐらいのことになります

この動きをMI6が読んでいたと言うことになるのですね

もともと時代背景を知っていたら、アムステルダムは危険だと言うことは我々の時代の人なら知っています

でも、当時の諜報機関がそこまで把握していたと言うのが驚きで、それをサラッとぶっ込んでいたところに「ある程度の歴史背景を知らないと楽しめない」と言うことがわかります

 

拾いきれないほどに映画では歴史の小ネタが炸裂していて、これらを含めてパンフレットを作成してほしかったなあと言うのが率直な感想ですね

どうやらディズニープラスでゆくゆく配信されるようですが、期間限定の劇場公開だとしても、そこそこ公開館も多い作品だったので、欲しかった人は多かったと思います

映画のパンフレットを作る・作らないの基準はわからないのですが、配信作品でも配信元がパンフレットなりを作成して、PDFでダウンロードする方式で販売してもソコソコ売れそうなんですよね

そのあたりがとても残念だなあと思いました

 

映画は「ほぼ事実」と言うことになっていますが、どこまでが実話なのかはよくわかりません

英語がわかる人なら「REALとMOVIE」を比較しているYouTuberがいるので、リスニングに自信のある人はトライしてみてはいかがでしょうか

YouTubeの表示機能などを駆使して観ようかと思いましたが、あまりにもトークが早すぎて断念しました

興味のある方、自信のある方は、パンフレット代わりに様々な動画で補足をすると言うのもアリかもしれませんね

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/384573/review/7abf5225-9440-4af5-ab10-d74a26686092/

 

公式HP:

https://www.20thcenturystudios.jp/movies/amsterdam

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投稿者 Hiroshi_Takata

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