■次のステージに行く準備がまだできていなかったみたい
Contents
■オススメ度
タイムループ系コメディが好きな人(★★★★)
オフィスお仕事系映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.11.1(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
情報:2022年、日本、86分、G
ジャンル:同じ一週間を繰り返す会社員たちがループから抜け出そうと奮闘するコメディ映画
監督:竹林亮
脚本:夏生さえり
キャスト:
円井わん(吉川朱海:移籍を考えている女子社員)
マキタスポーツ(永久茂:朱海の上司、50歳になるのがイヤな部長)
長村航希(遠藤拓人:朱海の同僚、スペインに行きたい若手社員))
三河悠冴(村田賢:朱海の同僚、飲み込みの早い若手社員)
八木光太郎(森山宗太郎:朱海の同僚、アイドル好きの中堅社員)
髙野春樹(平一郎:朱海の同僚、頑固な中堅社員、No2)
島田桃依(神田川聖子:朱海の先輩、寡黙で定時に帰る女性社員)
池田良(崎野雄大:無理難題を吹っかける取引先の社員)
しゅはまはるみ(木本貴子:朱海が移籍を考えている事務所の代表)
田森就太(こうた:朱海の彼氏、声の出演)
■映画の舞台
都内某所
広告代理店「Zコミュニケーション」
ロケ地:
都内各所
■簡単なあらすじ
広告代理店に勤務している朱海は、憧れの木本貴子の事務所に移籍を考えていた
今は木本事務所からの仕事をこなしている最中で、この仕事の区切りがつけば具体的に動こうと考えていた
10月25日の月曜日、その日は週末から泊まり込みで仕事をしていた
寝袋で寝る社員もいる中、朱海は何かしらの夢を見ていたが、具体的には思い出せなかった
みんなが目覚めてくると、突然鳩がオフィスの窓ガラスに衝突する
同僚の遠藤と村田が窓際に行って、外を覗き込んでいると、部長の永久が出社してきた
その後、プレゼンの仕事が入っていた朱海は慌てて出かけるも、遠藤と村田は「タクシーには乗らないで」と忠告する
だが、その甲斐もなく、朱海が乗ったタクシーは事故を起こし、プレゼンには先輩の森山が代わりにいくことになったのである
それから仕事に追われる一週間が過ぎ、恋人のこうたとの仲も拗れた週明け、朱海は同じようにオフィスで目が覚める
遠藤と村田は妙なポーズをして見せて、そこに同じように鳩がオフィスの窓ガラスにぶつかるのであった
テーマ:人生と仕事
裏テーマ:団結と孤独
■ひとこと感想
ほぼ情報なし、ポスタービジュアルの謎のポーズとオフィス系タイムループと言う設定が気になって参戦
いやはや、隠れた名作があるものだ、と感心しています
タイムループ系のお約束である、ループしている事実の紹介、主人公が認知する1周目を終えた後、そこから退屈になりがちな2周目以降のループを効果的に見せていました
抜け出すためのステップが具体的で、上司を説得すると言う流れになっていたのは斬新でしたね
キャラクターによって、どうしたら人を信用するかと言う違いが明確なのも良かったですね
後半であるものが登場し、それがループの要因になっていましたが、このあるものも効果的に使われていましたね
パンフレットがないのが残念ですが、アプリ「NOTE」に映画の情報が詳しく乗っているので、鑑賞後に読んで見るのが良いかと思います
リンク先は↓note「映画『MONDAYS』のページ(ネタバレありのページもあります)
https://note.com/mondays_cinema/
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
タイムループ系は「主人公が繰り返していることを認知して始まること」が多いのですが、本作では「主人公がループを突きつけられて信用するかどうか」と言うエピソードがありました
その後も、仮説に基づいて次々と社員を引き込んでいき、ループの原因に辿り着きます
そこからはお約束の「偽の勝利」があって、これまでスルーされてきた社員の存在があって、再び原因を探究すると言う流れになっています
効果的にステップを踏んでいき、不要なところはきっちりとブラッシュアップしていきます
また、精神的に「ループするのなら、何もしなくてもいいんじゃね」とマインドが折れるところも面白かったですね
本作は部長をどう説得するかと言うところが重点になっていて、彼がかつて書いた漫画を完成させて成仏させる(失礼)ことによって、ループが終わると言うカラクリがありました
この漫画が社員たちの日常とリンクしていて、会社員をしている人なら泣いてしまうのではないかと思ってしまいます
■タイムループの面白さ
映画でよく使われる定番ネタのタイムループですが、その大半はホラー映画で、自分が死んでも巻き戻るという設定が多いように思います
近年の映画でも『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ハッピー・デス・デイ』などのヒット作から、同時公開中の『カラダ探し』なども同じジャンルになります
「タイムループ」は和製英語の「Time Loop」で、「同じ時間を繰り返す」という意味になります
よく似たジャンルで「タイムリープ」というものがありますが、こちらも和製英語の「Time Leap」で、「時間を超越する」という意味があり、精神や魂が時間を超えるパターンになると言えます
本作は部署ごと月曜日から始まる一週間が繰り返されるというもので、いわゆる肉体ごと移動しているのでタイムループというジャンルになりますね
本作の面白さは「繰り返すことの悲哀」よりも、抜け出すために「他人を説得する必要がある」という設定だと思います
映画の中ではベテラン神田川が最初に気付きますが、その存在感のなさから誰にも相手されず、数十回重ねた末に若手の村田と遠藤が自発的に気づいています
神田川は村田と遠藤が朱海にアプローチをしているところを目撃していますが、なぜかスルーしていて、本来ならそこで加担するというのが自然な流れかもしれません
そのエピソードはないまま、その後、朱海がループに気づき、そこで本格的に作戦が動き出します
この手のループものは異世界転生や閉鎖空間ホラーと同じように、その世界に閉じ込められている(あるいは招聘された)理由というものを主人公が認知するところから始まります
そして、その理由を分析して解明するというシークエンスが前半にあって、その目論見が外れるというところまでがテンプレートになっています
本作でもその基本は押さえていて、「部長の数珠」というミスリードがあって、その後、神田川の指摘によって「部長の夢」という本丸が登場するということになっています
ループものの面白さは「状況把握から起こる抵抗」が無駄になっていく過程で、それが重なってきた先にある主人公の焦燥というものが現れてきます
この流れにおいて、主人公が共感できる人物になることが重要で、本作の場合はキャリア志向のOLというところがポイントだったと言えるでしょう
他の社員にあたって「ドン引きされるという独りよがりのイタさ」まで突き抜いていきますが、本作のループの解除に必要だったのは、部長の夢と同様に「朱海の価値観の変化」も要因だったように思えました
■タイムループはどうして起こるか
タイプループが実際に起こるかは置いておいて、現象として現れる要素というのは定番になっています
超常的な力の作用は不明でも、主人公が置かれた状況から派生する「閉鎖」というのは、多くに分けて二つのパターンに分類されます
ひとつは「部長の夢」に代表される「マインドが起こす無意識下の閉鎖」であり、もう一つは「外的要因による閉鎖」ということになります
繰り返される日常は、そこから脱出することを心が拒んでいるのですが、それに対して無自覚であることの方が多いと言えます
本作でも「数珠の効能を部長は知らない」し、「部長の夢も忘却の彼方」になっていました
漫画の中でも「ループ」に関することが書かれていて、しかも実生活では「50歳になりたくない」という願望がありました
当初はその願いを数珠が叶えたと解釈されていましたが、実際には「過去に自分が書いた創作物を呼び起こした」となっていて、50歳を前に人生を振り返った部長の深層心理が「翌週が来ることを拒んだ」と言えるのではないでしょうか
ちなみに個人的にはもう一つのループの原因があると考えていて、それは「朱海の移籍」に関するものだと思います
今の職場では上昇志向が削がれるという上から目線と同様に、次の憧れの職場で自分が通用するかという不安があったのでしょう
それによって、行きたい自分と行きたくない自分が混在した
もしかしたら一連の出来事は、朱海による妄想である可能性も高く、この閉鎖空間からの脱却には「自分のマインドの変化」というものが必要になっていたとも言えます
それが起こるのは、自分がこの組織の中では絶対的に優秀であるという思い込みがあるからなのですね
でも、一丸となるべき目標ができて、それに向かうことを余儀なくされた時、それぞれの能力が開花していきます
この組織では、それぞれが本気になれるだけの業務がなくて、それがぬるま湯的な状況を生み出していました
そのぬるま湯はそれぞれを骨抜きにしますが、朱海だけは「ここにいてはいけない」と感じていて、このような世界を作り出したようにも思えました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
組織が腐り出すと、上司は保身に走り、中間は馴れ合いに走り、下層はルーティーンに走ります
それによって意欲の低下が起こり、血流が滞った低体温症のような状況に陥って、それによって気づいたら凍傷で後がないということになってしまいます
このぬるま湯に気付ける人はたくさんいますが、そこから抜け出そうと思う人と、そのままでいいやという人に分かれてしまうのですね
でも、往々にして、ある程度の年齢で自身のキャリアアップを断念する頃になると「そのままでいいや」になりがちだと言えます
「そのままでいいや」というのは、家計の逼迫が起こらない生活リズムを手に入れている頃でしょう
個人差は大いにありますが、もし若年期に結婚をしていたら、40歳前後には子どもの進路も定まってきます
その時期になると、ある程度の「組織内ポジションの固定化」というものは終わっていて、定年まで今のままでいられるかということに執着を置きます
そのために保身というものが置き、波風を立てる側には立たなくなっていきます
能力の限界値は「年齢で左右されるものではなく、マインドによって左右される」のですが、加齢によって体が動かないのは事実なのですね
その体力的な衰えを無視して思考が突っ走ることもないので、あまり疲れない選択になってしまうのは仕方のないことかもしれません
でも、ごく稀に「死ぬまで走りたい」という人がいて、その人が上司だと職場の雰囲気はガラッと変わったりもします
映画の部長はこのまま過ごしたいと思う反面、これでよかったのかという後悔がセットになっている時期だったように思えました
後悔を消す行動は意外と簡単で、ともかく何かしらの行動を起こすことです
それによって、行動から生まれてくる「もっと」という欲が動き出せば、そこからは加速度的に行動が伴っていきます
一度動き出してしまうと、そこから止まることの方が難しくなり、映画のように他人を巻き込んだ形で動いていくと、さらに止めることは難しくなります
部長にとっては、完成と投稿の間に大きな壁がありましたが、それは結果がわかっているからこその壁であったと思います
投稿するということは、答えが出るということで、答えが出ない限りは永遠に続けられたりするのですね
でも、結果というのは大きな動力になるのと同時にブレーキにもなり得ます
みんなで原稿を作り上げていく過程は楽しいけれど、その時間が終わるのは惜しい
次の原稿は部下の手を煩わして描くものではないとわかっているのでこの状況を手放したくない
そうしたマインドが朱海の移籍を止めたようにも思えました
そして、部長が楽しんでいた状況というのがこの組織の本来の風土であり、それを取り戻すことによって、朱海の中でも変化が生まれ、チームで働くことの楽しさを覚えます
移籍先はわかりやすい個人プレーの会社でしたが、あのシーンを挿入することで「憧れの場所は自分の思っていたのとは違う」ということがわかるし、「次のステージではクリアできていない課題を抱えたまま戦わなければならない」というものが待っていることもわかります
朱海が移籍するならば、チームプレイを極めた末に、やはりもっと上のレベルで戦いたいという欲求が生まれるまで成長を続けないとダメだと言えます
そう言った意味で、ループが起きたのは「まだ次のステージに行くべきではない」という神様のギフトのようだったのかもしれません
人は準備が整った段階で、ほっといても環境が変わるものなので、まずは今の瞬間を懸命に生きて、その扉が自然と開くのを待った方が良いのではないかと思います
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/383914/review/da1db4e1-88f6-41aa-9ca3-6010e10df2d1/
公式HP: