■ホラー映画だと思わなければ、そこそこ楽しめるけど、完成度は抜群に低い


■オススメ度

 

「貞子」シリーズを観てきてしまった人(★★★)

コメディ映画が好きな人(★★★)

小芝風花さんのファンの人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.10.28(イオンシネマ久御山)


■映画情報

 

情報:2022年、日本、100分、G

ジャンル:呪いのビデオを見た妹を助けるためにIQ200の女子大生が奮闘するコメディ&ミステリー映画

 

監督:木村ひさし

脚本:高橋悠也

原作:鈴木光司(世界観監修)

 

キャスト:

小芝風花(一条文華:IQ200の大学院生)

西田尚美(一条智恵子:文華の母)

八木優希(一条双葉:呪いのビデオを見てしまった文華の妹)

 

川村壱馬(前田王司/王子様:自称占い師)

奥村佳代(大野莉奈:王司の元カノ)

円井わん(王子の相談者)

 

黒羽麻璃央(感電ロイド:文華に協力する謎の男、ハッカー)

とよた真帆(ロイドの母)

 

池内博之(Kenshin:人気の霊媒師)

渡辺裕之(天道琉真:Kenshinの父)

田中道子(高坂泉:Kenshinの霊感サロンの受付)

小曽根叶乃(間宮瑞江:Kenshinの助手、マネージャー)

 

吉田伶香(三浦祥子:双葉の親友)

友松栄(静岡のおじさん)

村上航(一条義行:文華の亡き父)

 

なだぎ武(霊感テレビショーの司会)

森麻里百(ふみたん:霊感テレビショーのゲスト)

綾田俊樹(文華のツイッターのフォロワー)

 


■映画の舞台

 

東京:新宿区

 

ロケ地:

二岡神社

https://maps.app.goo.gl/jXRvBrT2fqbKaDQr6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

IQ200が売りでクイズ番組で活躍している文華は、ある日霊感を扱うテレビショーのゲストに呼ばれる

そこで霊能力者Kenshinとともに「噂になっている呪いのビデオ」に関する討論が行われ、文華は「科学で解明できるはず」と断言した

 

収録が終わった文華はKenshinから呪いのビデオのコピーを渡され、「IQ200の頭脳で解明して見せろ」と凄んだ

 

自宅に帰った文華は妹の双葉や母・智恵子とテレビの話題で盛り上がる

だが、持ち帰ったビデオに興味津々の双葉は、深夜にこっそりと1人でそのビデオを見てしまうのである

 

井戸の中から何かが這い上がって来る映像で、外にでた何かは彼女らの家の前に現れていた

気になって外を伺う双葉だったが、そこにいたのは白い服を来た入院しているはずの静岡のおじさんだったのである

 

テーマ:呪いの拡散

裏テーマ:霊感ビジネス

 


■ひとこと感想

 

「貞子」シリーズはたぶん観ていない層ですが、IQ200で呪いを解明するというネタが面白そうだったので鑑賞

貞子に関しては「呪いのビデオ」と「井戸から出てくる女幽霊」ぐらいしか知りませんでしたが、それを知っているだけでOKなほどにキャラが立っていましたね

 

映画は一応ホラー映画のようですが、ぶっちゃけ一番怖いのがテレビ局ですれ違う謎のゆるキャラでしたね

それ以外は全く怖くなくて、むしろミステリーっぽさの方が強調されていました

 

基本的に「痛いキャラ」ばかり出てくるのでお腹いっぱいという感じで、王子の名言も去ることながら、耳のツボぐりぐりの文華も大概おかしな人間だと思います

まあ、何でしょうか、小芝風花さんのファンなら満足なのでしょうか

ツンデレっぽいキャラですが、デレの部分がほとんどなかったので、最後くらいは満面のスマイルで観客を魅了して欲しかったなあと思いました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

呪い=ウイルスの拡散というやっつけ仕事がすごかったですが、よくよく考えると何も解決していないという不思議な映画になっていました

ビデオを見続ければ助かるというのは「コロナに罹らないためにはワクチンを打ち続けなければならない」みたいなメッセージがあったのかなと感じてしまいます

 

結局のところ、延命処置の方法だけ見つかっていて、それが一家団欒なのよという謎の良い話風になっていたのは笑ってしまいます

引きこもりが「外も悪くない」はギャグにしか思えず、全体的には「コメディ映画だった」と言わざるを得ないとでしょう

 

妹がいきなり何の前触れもなくビデオを見たり、そのことを姉に報告するのがタイムリミットあと5時間とか、こちらもやっつけ仕事がすごかったですね

まともにツッコむのはアレですが、このネタで「ホラー映画をガチで作ろうとは思っていない」というのがよくわかる内容になっていました

 


呪いとは何か

 

「呪い」とは、人または霊が、物理的手段によらずに精神的あるいは霊的な力で、悪意を持って他の人や社会全般に対して災厄や不幸をもたらさしめんとする行為(By ウィキペディア)のことです

古来から「呪詛」「調伏」などという言葉がありました

ざっくり言うと「超能力で相手にダメージを与える」と言うことになりますが、何かしらの強い想い(怨念とは限らない)が発生しないと始まりません

呪われてることを認知することが難しく、霊感のない人が呪い殺されても、呪い殺されたと認知できるのかはわかりません

 

映画では「都市伝説からゆるキャラになりつつある貞子の呪い」が「ビデオテープ見たら拡散するよ」と言うオリジナルの世界観を踏襲して、それをSNS全盛期にアップデートしています

そして、呪いの拡散をウイルスと無理矢理関連づけて、それを科学的に解明しようと言う流れになっていました

その中で、文華が「呪いのビデオを見た人はサブリミナルを受ける」と言う仮説を立てて映画をスロー再生(コマ送り)で見たりするのですが、そう言った「暗示」ではないと結論づけられています

最終的には「呪いの存在を肯定する」ことになり、カラクリはわからないけど「もう一回見たらリセットされる」と言う意味不明な展開になっていました

 

要は、「呪われ続けたら死なない」と言う謎理論になっていて、「これのどこが科学的なのか」と言うコミカルな仕上がりになっています

ぶっちゃけると科学の敗北であり、「貞子は何回もリピしてくれたら殺さないから」と言う「再生数を増やして喜ぶYouTuber」みたいなキャラになっていました

そして、再生数が伸び悩んだら、また「犠牲者」を増やして、フォロワーに注意喚起をすると言う感じになっていました

 

呪いは「発する人の強烈な思想」であり、その多くは怨念のような負のエネルギーの集合体であると思います

呪いが恐怖を呼び起こして、それによる身体的な機能低下をもたらすホルモンなどが分泌されると言うのが科学的に見えるアプローチなのかなと想像してしまいます

 

例えば、呪いを発している人を直視することで恐怖感が芽生え、それによってストレスホルモンのようなものが過剰に分泌されると言うものでしょうか

ストレスホルモンには「副腎皮質ホルモン(ACTH)」や「コルチゾール」と呼ばれるものがあって、「コルチゾールの作用」は、「肝臓での糖の合成の促進→血糖値上昇→脂肪の分解→血圧上昇→免疫抑制や抗炎症作用」と言うステップを踏みます

 

これらを「科学っぽく関連づける」としたら、「貞子の姿を見て恐怖心が湧く」「ストレスホルモンの増加」「コルチゾールの過剰分泌」「身体的反応によって様々な急性疾患を引き起こす」と言う流れでしょうか

疾患的には「高血圧緊急症」「1型糖尿病の急性発症」「糖尿病による急性合併症」などが挙げられます

「糖尿病ケトアシドーシス」などの「糖尿病昏睡」を引き起こしたりもしますので、恐怖を抱え続けることで身体的な異変を起こすことは可能だと思われます

 

また、コルチゾールには「概日リズム」と言うものがあって、一日を通しての「コルチゾールの分泌量」には一定の周期があるとされています

なので、コルチゾールの分泌量が高い時間帯に高ストレス状態になると、異常分泌を引き起こす可能性があるかもしれません

さらに、コルチゾールが使われている薬剤などもあり、それを分泌量の高い時間帯に過剰投与すれば、身体的に危険な状況を生み出す可能性は否定できません

あまり詳しく書くとアレなので、ここから先は個人的な責任でググってくださいまし

こういったものをブッコむだけでそれっぽくはなるのになあと思ってしまいました

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は色々とヒドいところが多いのですが、その中でも「やべえなあ」と感じるのは、「文華の協力者たち」の存在感の異常さであると思います

感電ロイドとの関係はほとんどわからないまま、いつの間にか協力者になっているし、感電ロイドの目的もほぼ不明瞭で、引きこもり設定も意味がわかりません

王司に至っては単なるストーリーの進行を止めるだけのギャグ要因で、ホラー映画として最後まで生き残っているのが謎の存在でした

Kenshinとその父・琉真が行ってきた一連の宗教ビジネスは既存の貞子とほとんど関係なく、Kenshinが貞子に呪われた人を救えるのであれば、答えである「24時間以内にもう一度見る」を知っていることになります

でも、彼はそれを知らないままビデオを拡散して信者を増やしているので、彼の前にたどり着く前に死ぬ人もたくさんいるし、助ける方法も知らないので、お祓いをした人も全員死んでいて、悪い噂が拡散されていてもおかしくありません

単純に「オカルトブーム」を作り出して、恐怖心を煽り、安全圏からビジネスを拡大させていただけでした

 

Kenshinが貞子に呪い殺されるのは条理で、貞子目線だと「目的である再生回数増加」をSNSで発信する文華は良き理解者みたいなことになっています

貞子にどんな思惑があるのかはわかりませんが、呪い殺すことで「生命?」を維持できるのか、何かしら恩恵があって増やしたいと思うのかはわかりません

でも、映画を冷静に見てしまうと、貞子は拡散で認知度が上がって喜んでいるけど、呪い殺すのが増えるとキャパオーバーなので、「再生回数を増やして、呪い殺す人を減らそう」と言う目的があるのかなとか、しょうもないことを考えたりもします

 

本作は話の筋たてはそれほど悪くありませんが、王司はKenshinよりも先に殺しておくべきだったでしょうね

王司の物語上の機能は「Kenshinが偽物であることを知らせる」と言うキャラで、その要件が終わったら退場でよかったと思います

最終的には出しゃばりすぎのウザキャラで、文華の「デレ」しか引き出せないキャラになっていて、後半の存在意義は皆無です

 

映画として、文華の天才設定と同時に彼女の「ツンデレ感」が凄いのですが、彼女の「デレ」がほとんどないのは残念でした

なので、その役割を担うのは感電ロイドしかおらず、自称・王子様が登場するなら、真の王子様を投入しても良かったかもしれません

あるいは今風に作るなら「感電ロイドは実は女の子」で、感電ロイドから見た文華が王子様に見えると言うパターンでしょう

 

ちなみに個人的には妹は前半で死んだ方がインパクトはあったと思いますね

ホラー映画にありがちなアホキャラなのですが、最後の方は王司と同じようなウザキャラになっていて、単にウルサいだけの存在が重なるだけになっていました

 

まとめると、「感電ロイド=女性かイケメン」「文華のデレを前後半で出して野郎のハートを鷲掴み」「妹はさっさと殺して呪いの緊張感を演出」「王司は映画の転換を示すために中盤で殺し、絶望感と仮説の間違いの提示に使う」と言ったところでしょうか

ある程度「死んでほしいキャラにちゃんと死んでもらって、死にそうにないキャラが唐突に死ぬ」と言う基本は押さえて欲しかったと思います

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作はジャンルオーバーの作品になっていて、ほとんどの人が「ホラーを期待してコメディを見せられた」という感想を持っています

これが効果的にハマったのが『カラダ探し』で、ハマらなかったのが本作であると思います

「貞子」と言う概念から導き出される「どんなホラー映画だろう」と言う期待値は、「まったく怖くない」と言う感想を基本として、「これは果たしてホラー映画だったのか」と言う疑問に行き着きます

個人的に怖さを感じたのは「ゆるキャラが突然出てくるシーン」だけで、あとは「貞子の手がビデオに映り込むシーン」ぐらいでしょう

 

本作の怖さと言うのは「ビデオの結末が変わる」と言うところかのですが、それをわざわざ「キャラクターに言われる」と言う残念なシナリオになっていました

見ればわかるものをセリフにする意味はほとんどなく、妹が「えっ?」と言ってそのまま外を覗き込む、だけでOKのシーンでしょう

また王司が「僕達が見たビデオと違う」と叫んだり、「ここ(サロン)が映ってるんじゃね」と3回も繰り返すのは呆れてしまいますね

恐怖と言うのは「これが恐怖ですよ」と言語で説明したらアウトだと思います

あくまでも、視覚情報で違和感を感じ、その疑念が恐怖を育てると言うものが必要で、本作には「迫ってくる貞子感」と言うものはあまり感じません

 

映画のジャンルはまさにコメディなのですが、これがホラー映画を茶化している感じになっているのは残念かなと思います

キャラクターの行動のおかしさとか、ぶっ飛んだ貞子の怨念の強さとか、あり得ない死に方をするとかで、それが突き抜けて笑いになるのなら良いと思います

でも、本作では静岡のおじさんあたりから、完全にギャグ路線に走っていて、呪いのワンパターンだし、そもそも人がほとんど死なないので緊張感もほとんどありません

加えて、前述のウザキャラが画面狭しと圧をかけてきて、その度に緊張感を削いでいきます

 

エンドロール後には「メタ演出」があって、ビデオのラストが変わると言うことを効果的に使っていました

でも、そこに本当に貞子がいないと観客としては怖くなくて、いっそのこと映画館のスタッフにお願いして、清掃スタッフが貞子コスプレで入ってくるぐらいの企画を立てても良かったでしょう

全部の上映回でするのは無理だと思いますが、例えば4DXやMXDなどの特殊効果の上映回限定ならアリかもしれません

 

ホラー映画は「アホなキャラがアホなことをする」と言うのがメインで、それによってどんどん窮地に立たされているのを安全圏から眺めるタイプのものと、「真面目に最適解を進んでいるのに報われない不条理」と言うものと、「主人公などに共感力があって、あたかも実体験のように感じられるもの」などがあります

本作はそのどれにも当たらず、「うまい演出考えたでしょ感」が存分に発揮されていて、企画を楽しめた人勝ちのところはありますね

個人的には面白いこと考えるなあと思ったのですが、ガチで科学的に納得できるアプローチまでして見せて、IQ200VS貞子をやってくれたら、もっと満足できたのではないかと思いました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/381488/review/e5d0458b-5ec9-414c-bfd6-6be2a5f042b8/

 

公式HP:

https://movies.kadokawa.co.jp/sadako-movie/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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