■Jホラーの音量に女性が多いのは、宗教観から来るものなのだろうか?
Contents
■オススメ度
怖くないホラー映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.7.23(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2024年、日本、107分、G
ジャンル:いないはずの生徒に翻弄される女教師とクラスメイトを描くホラー映画
監督:清水崇
脚本:角田ルミ&清水崇
キャスト:
渋谷凪咲(君島ほのか:生徒の自殺を目撃する臨時教師)
早瀬憩(三浦瞳:補習を受ける生徒)
山時聡真(前川タケル:補習を受ける生徒)
荒木飛羽(島田蓮人:瞳の同級生)
今森茉耶(小日向まり:瞳の同級生)
蒼井旬(阿部大樹:瞳の同級生)
穂紫朋子(高谷さな:ピアノを弾くクラスメイト)
山川真里果(高谷詩織:さなの母)
松木大輔(高谷洋一:さなの父)
白鳥廉(高谷俊雄:さなの弟)
川松良江(高谷トヨ:さなの祖母)
今井あずさ(川松良江:中学校の校長)
(若年期:堀桃子)
松尾諭(中村育英:ほのかの先輩教師)
小原正子(三浦唯:瞳の母)
(中学時代:田口音羽)
伊藤麻実子(前川妙子:タケルの母)
(中学時代:シダヒナノ)
南山莉來(糸井茂美:唯と妙子の中学時代のクラスメイト)
マキタスポーツ(権田継俊:元探偵、川松校長の教え子)
染谷将太(七尾悠馬:擁護施設の教諭、ほのかの彼氏)
たくませいこ(仁科恭子:施設長)
(若年期:大平萌笑、写真)
嶋田鉄太(尚哉:施設の子ども)
里元咲夏(美弥:施設の子ども)
松本孟徳(拓海:施設の子ども)
中務裕太(飲み屋の客)
まぁ(?)
上野由香(施設の子ども)
大内七莉(施設の子ども)
本宮未晴(施設の子ども)
小川美鈴(施設の子ども)
浪越小百合(施設の子ども)
蔵田麗未(施設の子ども)
泉花歩(施設の子ども)
山本藍(アオイ:居酒屋の店員)
森本千佳子(蓮人の母)
星野富一(?)
井上とし子(?)
小野アキヒロ(大樹の父)
木場明義(用務員?)
貴玖代(婦警?)
前橋佑樹(養護施設の先生?)
増田怜雄(さなのクラスメイト)
野島透也(さなのクラスメイト)
安達木乃(さなのクラスメイト)
杉本光洋(?)
秋山みり(?)
岡崎ゆう(精神病院の看護師、案内)
水草文香(精神病院の看護師、ぬいぐるみ)
篠原雄大(精神病院の看護師、制止)
小早川真由(悠の主治医)
千歳ゆう(悠の看護師?)
川松友花(写真?)
笹野鈴々音(声?)
■映画の舞台
日本のどこかの地方都市
ロケ地:
千葉県:銚子市
埼玉県:深谷市
ビデオゲームミュージアム ロボット深谷店
https://maps.app.goo.gl/ZcQo2TDMAerPx11a9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ある中学校の臨時教員として採用されたほのかは、ある日、恋人の悠馬と待ち合わせをしていた
「会わせたい人がいる」という意味深なメッセージを受け取ったほのかがバス停で待っていると、ようやく悠馬が姿を現した
だが、それも束の間、悠馬は車に撥ねられてしまい、意識不明に重体になってしまった
失意のまま、中学校での授業に参加することになったほのかは、あるクラスの補習授業を任される
そこには、事故現場で悠馬を助けることに尽力してくれた三浦瞳もいた
授業を始めるためにプリントを配り終えたほのかだったが、「もう一人いる」と言われて愕然とする
そこには、それまでいなかったはずの生徒・高谷さながいて、ほのかは不可思議に思いながらプリントを手渡した
その後、授業は普通に行われるものの、ふと窓の外を見ると見知らぬ生徒が地面に倒れていた
気になったほのかがそこに行くと、なぜか補習生徒の一人・まりが屋上に上がっていて、そこから頭身自殺を図ってしまう
ほのかは何が起こったのかわからないまま放心状態になっていたが、校長の川松は「32年前に起きた忌まわしい事故」について語り始めた
テーマ:呪の継承
裏テーマ:魂の音
■ひとこと感想
いつもの学園ホラーで、『ミンナのウタ』の続編にあたる作品になっていました
『ミンナのウタ』を観ているとより楽しめる内容で、謎の少女・さなの背景がわかる作品になっていました
とある中学校に赴任してきた臨時教員が不可解な出来事に巻き込まれるというもので、ピアノで奏でられる謎の旋律が物語を牽引していきます
お馴染みのフレーズで、その音を聞いてしまったら、「魂の音」を回収される、というテイストになっています
最近流行りの怖くないホラーで、どちらかと言えばコメディに近いノリでしたね
お約束のシーンがたくさんありますが、ゲーセンのシーンはどう捉えたら良いのか悩みますね
このシーンではある一家がゲーセンについて来ちゃうのですが、おかんがスト2か何かのゲームを必死でやっていたのは笑ってしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作のネタバレと言えばラストシーンで、これはかなり解釈が分かれる感じになっていました
そのオチ自体は良いのですが、「いつから?」というのがまとわりついていて、冒頭の事故で死んだのが主人公だったとか言い出すのかと困惑してしまいました
普通に考えれば、ラストシーンで助けられなかったということになるのですが、最後に挿入される「○月○日、君島ほのか」のところをちゃんと聞いていればわかったのかな、と思いました
パンフレットはかなり充実していて、さなの起こした事件年表みたいなものがありました
本シリーズの時系列もわかるので、気になる方は購入をオススメいたします
それにしても、廃校と廃屋って雰囲気抜群ですよね~
「あのコはだぁれ? ロケ地」でググると使用された民家が分かりますが、近くに住んでいる人は怖いだろうなあと思ってしまいます
それにしても、犯人?は容赦ないですね
嫉妬心が強すぎるのですが、弟と良い関係になってしまったが故に狙われるというのは可哀想すぎるなあと思ってしまいます
■魂の音あつめ
本作では、さなが「魂の音」を集めていますが、実際には「断末魔の叫び」だったように思います
意図しない死に直面する悲鳴のようなもので、他人の不幸は蜜の味というものに近いと思います
自分以外の人間の不幸を喜ぶ人もいれば、そう言ったものに無関心な人もいます
そんな中、さなは人一倍、他人の人生に囚われていた人物であるとも言えます
他人の人生の幸不幸を気にする人生をどう捉えるかですが、さなの場合はそれを自身のエンタメに昇華している部分があります
それ自体が人生の目的となっていて、自分自身を鼓舞するものになっているのでタチが悪いとしか言えません
さなほどでは無いにしても、人の人生を破滅させることに人生の生きがいを見出している人も一定数いるのが現実なのですね
なので、そう言った人からはなるべく距離を取りたいものだと思います
魂の音というのは、鼓動の音とも言え、力強く波打つものはそう言った邪念を寄せ付けないように思えます
逆に、弱々しくて、誰かの影響で変わってしまいそうな音というのはさなの大好物だったりします
彼女は、その落差を好んでいるようで、幸福の絶頂からの転落というものを演出するタチの悪い悪霊だったように思えます
それは、彼女の両親が原因で、特に同性の幸せを壊すことを第一義として、魂の音を集めて回っているように思えました
■Jホラーの行く末
本作は、悪霊に取り憑かれて人生を狂わされる人々を描いていて、Jホラーのほとんどはこのような系譜となっています
不幸の出自が家庭内問題であることが多く、そこで生まれたものが周囲に影響を及ぼし、それが拡大する様を描いています
外部から来る人間もルーツがそこにあるか、実は因縁があったという設定になっていて、本作でもさなの弟・俊雄がほのかの恋人・悠馬としての人生を歩んでいたことがわかります
映画的には、お腹をトントンした時に流産したのかと思っていたのですが、どうやらそこでは殺せなかったようですね
なので、その後、自分の影響から逃れた俊雄を執拗に追い求め、結果としてほのかが彼女のテリトリーに入ることになってしまいました
邦画のホラーの特徴として、「縁」をテーマにしているものが多く、それが呪縛になっているというものが多いと思います
家族の縁、村(コミュニティ)の縁というとても狭いサークルがテーマとなっていて、そこに足を踏み入れる者には容赦がありません
それに対して、海外のホラーは悪魔が登場することが多く、それはキリスト教をはじめとした宗教観に由来があります
日本の場合もこの宗教観の延長線上に「縁」の物語があるので、その土地の土壌を作ってきた伝統的なものというのは、神聖であると同時に怖さを孕んでいるように思えます
Jホラーの行く末は、この「縁」をどのように解釈して、新しい道を模索するかにかかっていると思います
その「縁」が起こす恐怖というものは、わかりやすさがある一方で、ほぼマンネリ化しつつあります
特に、全く無関係に思われていたものに縁をつけることによって、無差別殺人のような振って沸いたと思われるものにも関連を付けがちのように思います
それは、日本で起こる殺人事件のほとんどが「縁」が拗れたことによって起こるからで、サイコパスによる猟奇的なホラーでさえも、それを内包したがるのですね
それが整理されたシナリオの限界点のように思えるのですが、時には理不尽で残虐で、殺人者の意図も何もかもがわからないホラーというものがあっても良いのかな、と思いました
そう言ったものが増えていくことで、縁ホラーというものの新鮮味も生まれてくるのだと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、『ミンナのウタ』の続編になっていて、ある種の「さなユニバース」的な立ち位置になっていたと思います
さなの特徴は男(特にイケメン)をほとんど殺さないというもので、圧倒的に女性の被害者が多かったように思います
ある意味、女性の同性嫌悪を強調したような内容になっていますが、さな的なキャラを男性に変えてしまうと、リアリティを全く感じません
Jホラーで男性の怨霊が登場する作品もありますが、男性が他人を殺める場合のホラーは、どちらかと言えば「無差別サイコパス系」になっていて、縁とは程遠いホラーになりがちに思えます
それくらい、女性=縁という概念が強く、それがJホラーのベースのようになっていると思います
男性が縁ホラーに登場する時は、女性をコントロールしているという設定になりがちで、恨みというものを強く持続させるイメージを男性からは感じにくい部分があるように思えました
実際には、執念深い男性もいるし、縁ホラーに登場しそうな男性キャラも可能だと思うのですが、なぜか作られないのですね
もし貞子が男だったらとか、さなではなく俊雄が同じことをしたらと想像することは可能なのですが、やはり怖さを感じないというのが正直なところがあります
恐怖というものに性差があるとしたら、女性が感じる恐怖は暴力のような物理的なもので、男性が感じる恐怖は縁に代表されるような精神的なものになるのだと思います
それは圧倒的なフィジカルの差があって、それが根付いている歴史があるからだと思います
もし新しいJホラーが生まれるとしたら、この性差における恐怖の概念を逆転させることで、暴力的に太刀打ちできない女性に対する怖さとか、男なのに執着心が強くてまとわりつく粘着性というものになるのでしょう
そう言った作品もいくつかはありますが、バリエーションを増やすという意味でも、もっと作られても良いのかな、と思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101363/review/04065371/
公式HP:
https://movies.shochiku.co.jp/anokodare-movie/