■マルチバースの概念を破壊できる、唯一のチャンスを逃してしまったように思えました
Contents
■オススメ度
シリーズをくまなく観ている人(★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/cvrapoiSLI8?si=clevB9EJ4Hq_wAsT
鑑賞日:2024.7.24(イオンシネマ四條畷:I MAX Laser)
■映画情報
原題:Deadpool & Wolverine
情報:2024年、アメリカ、128分、R15+
ジャンル:元カノに振り向いて欲しいヒーローが世界平和のためにやぐされヒーローと共闘する様子を描いたアクション映画
監督:ショーン・レビ
脚本:ライアン・レイノルズ&レット・リース&ポール・ワーニック&ゼブ・ウェルズ&ショーン・レビ
原作:マーベルコミック『デッドプール』
キャスト:
ライアン・レイノルズ/Ryan Reynolds(ウェイド・ウィルソン/Wade Wilson=デッドプール/Deadpool:元特殊部隊の傭兵、人体実験により不死身の体を手に入れた男)
ヒュー・ジャックマン/Hugh Jackman(ローガン/Logan=ウルヴァリン/Wolverine:「X-MEN」のメンバーでアダマンチウムを注入されたミュータント)
エマ・コリン/Emma Corrin(カサンドラ・ノヴァ/Cassandra Nova:テレパシーとテレキネシスを持つミュータント、チャールズ・エグゼビアの双子の妹)
マシュー・マクファディン/Matthew Macfadyen(ミスター・パラドックス/Mr. Paradox:TVAの幹部)
Jon Favreau(ハッピー・ホーガン/Happy Hogan:ウェイドを面接するアベンジャーズの一員)
【ウェイドの交友関係】
モリーナ・バッカリン/Morena Baccarin(ヴァネッサ/Vanessa:元ダンサー、ウェイドの元カノ)
ロブ・ディレイニー/Rob Delaney(ピーター/Peter:ウェイドの親友、車のセールスマン)
カラン・ソーニ/Karan Soni(ドーピンダー/Dopinder:タクシー運転手、ウェイドの協力者)
Randal Reeder(バック/Buck:ウェイドの友人、長いヒゲの男)
【ミュータント関連】
レスリー・アガムズ/Leslie Uggams(ブラインド・アル/Blind Al:ウェイドのルームメイトの老婆)
ブリアナ・ヒルデブライド/Brianna Hildebrand(ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド/Negasonic Teenage Warhead:「X-MEN」のメンバーの女性ミュータント)
忽那汐里(ユキオ/Yukio:「X-MEN」のメンバーの帯電能力を持つミュータント、ネガソニックの恋人)
Ray Park(トッド/Toad=モーティマー・トインビー/Mortimer Toynbee:両生類の能力を持つミュータント)
ステファン・カピチッチ/Stefan Kapicic(コロッサス/Colossus:「X-MEN」の優等生タイプのミュータント)
ルイス・タン/Lewis Tan(シャッタースター/Shatterstar:Xフォースに参加していた能力不明のミュータント)
Aaron W. Reed(ジャガーノート/Juggernaut:超人的な耐久力を持つミュータント)
Jason Flemyng(アザゼル/Azazel:悪魔のような外見のミュータント)
Dania Ramirez(カリスト/Callisto:五感が強化されたミュータント)
Billy Clement(ロシアン/Russian:巨漢のサイボーグ人間)
Mike Waters(ブロブ/Blob:巨漢のミュータント)
James Reynolds(Screaming Mutant:?)
【虚無関連】
ダフネ・キーン/Dafne Keen(ローラ/X-23/Laura:鋭い爪を持つ少女のミュータント、ローガンの娘)
パトリック・スチュアート/Patrick Stewart(プロフェッサーX/Professor X:ローラの兄、アーカイブ)
ジェニファー・ガーナー/Jennifer Garner(エレクトラ・ナチオス/Elektra:デアデビルの恋人の女戦士)
クリス・エヴァンス/Chris Evans(ジョニー・ストーム/Johnny Storm=
ヒューマン・トーチ/Human Torch:ファンタステイック・フォーのメンバー)
【バトル関係】
タイラー・メイン/Tyler Mane(セイバートゥース/Sabretooth:「ブラザーフッド」のメンバー:動物のような身体能力を持つミュータント)
アーロン・スタンフォード/Aaron Stanford(ジョン・アライダス=パイロ/Pyro:火を操れるミュータント)
ウェスリー・スナイプス/Wesley Snipes(ブレイド/Blade:人間とヴァンパイアの混血の戦士)
チャニング・テイタム/Chaning Tatum(ガンビット/Gambit:エネルギーをチャージできる人間のミュータント)
Kelly Hu(レッド・レディストライク/Yuriko Oyama / Deathstrike:アダマンチウムと結合した女戦士)
【マルチバースのデッドプール】
Peggy the Dog(ドッグプール:ドッグプールに懐く犬のデッドプール)
Nick Pauley(ダンスプール/Dancepool:キレッキレに踊るデッドプール)
ブレイク・ライヴリー/Blake Lively(レディプール/Laypool=ワンダ・ウィルソン/Wanda Wilson:女性のデッドプール)
Inez Reymond(キッドプール/Kidpool:少年のデッドプール)
Matthew McConaughey(カウボーイプール/Cowboy Deadpool:カウボーイのデッドプール)
Mathan Fillion(ヘッドプール/Headpool:頭だけのデッドプール)
Gordon Reynolds(ナイスプール/Nicepool:心優しいデッドプール)
Olin Reynolds(ベイビープール/Babypool:赤ん坊のデッドプール)
Paul Mullin(ウェールズプール/Welshpool:ウェールズのデッドプール)
Alex Kyshkovych(カナダプール/Canadapool:カナダのデッドプール)
Henry Cavill(カヴィリン/The Cavillrine:亜種のデッドプール)
【TVA関連】
James Dryden(TVAのエンジニア)
Rob McElhenney(TVAの兵士)
Ed Kear(TVAのエンジニア)
Paul G. Raymond(TVAのオフィスエージェント)
Wunmi Mosaku(ハンターB-15/Hunter B-15:TVAの追跡者)
Leemore Marret Jr.(ミニットメンのリーダー/Minuteman Leader:TVAの追跡者)
【その他】
Sonita Henry(チップマン夫人/Mrs.Chipman:ウェイドの中古車店の顧客)
Ryan Mcken(チップマン氏/Mr.CHipman:夫)
Manak Pholra(エリオット・チップマン/Elliot Chipman:息子)
Aydin Ahrmed(ケヴィン・チップマン/Kevin Chipman:息子)
Ollie Palmer(バーの客)
Greg Hemphill(シーディ/Seedy Bartender:バーテンダー)
■映画の舞台
マルチバース616&10005
ロケ地:
イギリス:
ノーフォーク/Norfolk
https://maps.app.goo.gl/Tq6Moe7ztthV7mnj8?g_st=ic
ロンドン
カナダ:ブリティッシュ・コロンビア
バンクーバー/Vancouver
https://maps.app.goo.gl/FjqensCAkCzgdAJd6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
元恋人を再び振り向かせたいと考えるウェイドは、マルチバース616にてアベンジャーズの面接を受けるがやんわりと断られてしまう
やむを得ず、マルチバース10005に戻り、しがない中古車店の店員として働いていたが、ある日、TVAの追跡者に捕まってしまう
時間移動、改変などの容疑をかけられたウェイドだったが、TVAのミスター・パラドックスはウェイドの力を借りたいという
ウェイドはデッドプールとなり、世界の崩壊を防ぐためにウルヴァリンを探すことになった
だが、その世界線では彼は死んで骨になっていて、そこでウェイドはあらゆるマルチバースへと出向き、適したローガンを探し始めた
ようやく辿り着いた先にて、ローガンを見つけるものの、彼は世界を救えなかったローガンで、今では酒浸りの日々を繰り返していたのである
テーマ:世界を救うのは絆
裏テーマ:世界線が違っても仲間は仲間
■ひとこと感想
これまでのシリーズは映画館で観て来ましたが、さすがに全てを覚えていられるわけもなく、予習はほぼしない状態で鑑賞してまいりました
え~、無理やん
予習入りますやん
という内容でした
何の予習がいるかと言えば、話ではなくキャラクターと関係性ですね
死ぬほどキャラが登場するけど、キャラの説明はほぼ無し
団欒のメンバーが誰が誰なのかを瞬時に思い出せないとキツいと思います
その後の展開も、FOXいじりから始まって、さまざまなキャラクターがカメオ的な出演をしていきます
全てを把握できるのはマニアだけで、めっちゃ記憶が良い人か、事前に予習をした人ぐらいだと思います
キャスト欄作ってて、どこに誰が出て来たのかを完璧に覚えるのは無理だと感じました
てか、パンフレット小さいし、赤に黒は読みづらくて断念しちゃいます
本編のフラッシュの眩みよりも、パンフレットの方がタチが悪いと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作のネタバレはストーリーよりも誰が登場するかというところで、サプライズを感じられるのはそのキャラを知っている人だけ、ということになります
なので、登場してもポカーンとなるシーンが多く、観客席のどよめきで判断するしかなかったのですが、それも人少なめで叶いませんでした
物語はどちらかと言えばシンプルですが、不要なシーンがめっちゃ多いので、脱線しまくっている感じになっています
ヴァネッサの気を引きたいところから、世界のために犠牲になるというスケールの大きな話になり、同じように人類の役に立ちたいウルヴァリンと共闘することになります
そこに至るまでが結構長く、ヴィランのカサンドラも直接倒した訳ではない感じなのが微妙でしたね
ざっくざくと切り刻むのは無理としても、タイムリッパーの起動VS停止対決がかなり地味だったように思いました
■メタ構造は面白いけれど
『デッドプール』と言えば「第四の壁」突破系の演出で、しかもリアルタイムの時事ネタをぶっ込んでくることで有名な作品になっています
特に日米同時公開ともなると、時事ネタがほぼリアルタイムになっていて、本作は「FOX」のお葬式的な立ち位置になっていました
この「FOX」はいわゆる「21世紀フォックス(Twenty-First Century Fox, Inc)」というもので、これは2019年にウォルト・ディズニーが買収したことが元ネタとなっています
これによって「フォックスのロゴ」は消滅することになっていて、本作でもそのロゴが地に落ちているイメージショットがありました
ここまでわかりやすいメタ構造は良いのですが、やりすぎると虚構としての面白さというものが半減してしまいます
本作は、FOX時代(正確には20世紀フォックススタジオ製作映画)のヒーロー映画を引き継ぐという形になっていて、その継承をわかりやすく表現していました
『デッドプール』自体が20世紀フォックス製作の映画で、「X-MEN」シリーズの一環となっています
本シリーズは2000年の段階でマーベル・エンターテイメントとニュー・ライン・シネマの間で企画が立ち上がり、その後、20世紀フォックスが製作を前進させることになりました
その後、「X-MEN」のシリーズは順調に製作されていきますが、ディズニーによる買収によって、20世紀フォックスの歴史に幕を閉じることになります
ちなみに20世紀フォックスと21世紀フォックスがあってややこしいのですが、20世紀フォックスは映画スタジオで、21世紀フォックスはそれらを統括する多国籍マスメディア企業のことを言います
21世紀フォックスには、FX放送、ナショナルジオグラフィック・パートナーズなどのエンタメ部門、Sky plc(英国メディアグループ)、FSN地域ネットワーク、フォックス放送などがあります
ディズニーが21世紀フォックスを買収したことで、映画スタジオの20世紀フォックスはウィルト・ディズニー・スタジオの子会社となりました
このあたりの事情を知っていると楽しめる内容ですが、『デッドプール』を追いかけて来た人ならば周知のことで、復習必須だったのは「マーベル」ではなく「FOXヒーロー映画」だったということになっていました
■勝手にスクリプトドクター
本作は、デッドプールとウルヴァリンが手を合わせるという内容で、これまでに登場したウルヴァリンとは違うマルチバースのウルヴァリンが登場することになりました
マルチバースが登場して以来、これまでに観てきたものは何だったのかという感じになっていて、それゆえに過去作の感動とか繋がりというものが途切れてしまっています
映画では、マルチバースを揶揄するメタ展開を迎えますが、それで物語が面白くなるわけではありません
FOXのヒーロー映画を観てきた経験、MCUの世界観を好んでいるという前提がないと、本作の面白さというものは感じられないと言えます
本作の物語の骨子は、虚無の世界にいるカサンドラが全世界を壊すというもので、それを止めるためにデッドプールとウルヴァリンが手を組むという内容になっています
マルチバース設定は「どのウルヴァリンと共闘するか」という選択に関係していますが、選ばれたウルヴァリンは「世界を救えなかったウルヴァリン」ということになっていました
デッドプールのいる10005の世界のウルヴァリンはすでに死んでいるので、そこで別の世界線のウルヴァリンを連れてくるのですが、誰でも良いのか問題が出てくると思います
なので、救えなかったウルヴァリンよりも救うことができたウルヴァリンを連れてくる方が、VSカサンドラとの戦いにおいては有利に進むと思います
それを考えると、10005の世界のウルヴァリンが救えなかったウルヴァリンで、この男と手を組むしかないという流れにならないと意味をなさないと考えられます
この他にも、カサンドラを倒したというよりは、その目的というものを止めたというところで止まっているので、ぶっちゃけるとマルチバースそのものが崩壊して、行き来できなくなるという終わらせ方の方が良いと思います
その設定を残しておかないとMCUの今後が成り立たないので仕方ないのですが、この映画でそれを壊して、1からMCUを再建するという気概がないのは微妙でしたね
デッドプールにあれだけ揶揄させていたのに、結局はそのままという感じになっているので、それでは単なるギャグ要素でしかないというのはナンセンスのように思えました
ヒーロー映画には二つの軸があって、世界を守ることと敵を倒すことだと思います
本作にもそれがありますが、カサンドラの倒し方がしっくり来ず、装置を破壊して巻き込まれました、みたいな展開ではカタルシスもあったものではないと思います
なので、装置を止めることに成功した後に、きちんとカサンドラとの戦いを描いて、完膚なきまでに叩きのめすという展開が必要だったと思います
物語のピークが「デッドプールとウルヴァリンが手を繋いだ」では弱いと言えるので、明確なヒーロー映画の終わり方で、「俺ちゃん最強!」的なシーンが必要だったのではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
MCUのマルチバース問題は個人的にもどうかなあと思うところがあって、それがありなら何でもありになるし、キャラ映画が失敗しても、別の世界のヒーローで何度もやり直しができるというのはナンセンスだと思います
マルチバースの世界を完全にロジックとして構築させ、それによって物語がきちんと動いていくのなら理解はできるのですが、今のマルチバースというのは行き当たりばったりで、設定を後からどんどん追加しているように見えます
ユニバースの面白さというのは、実は同じ世界線で繋がっていたというワクワク感があるのですが、マルチバースではそれが起きないと思います
ヒーロー映画に必要なのは緊張感であって、その世界を自分の世界ごとだと捉えられるかだと思います
なので、マルチバースで今の自分の世界との距離を作ってしまうと、同じような風景をしている別のものという捉え方になってしまうので、そこで起きることも他人事のように感じてしまいます
実際の世界にはヒーローなんてものはいないのですが、かつてのヒーローは「自分のいる世界にもしもヒーローがいたら」という前提で作られていたので、今のマルチバースとの距離感が全く違います
どこかの世界線の、自分とは関係のない世界の物語に没入感があるとは思えず、その親近性を壊したのがマルチバースの世界観だったように思いました
今後は、広げてしまったものをどう閉じるかというところに行き着きますが、すでに概念として「完全なる虚構」路線を歩んでいるので、どんな世界が描かれても他人事になってしまうのは否めないと思います
そう言った環境において、どれだけキャラクターやその世界の人々に親しみを持たせるかはかなり難しい問題になっていて、それを修復させるには「マルチバース統合」映画を作るしかありません
今回のようなマルチバースを行き来できるガジェットのようなものの暴走によって、ある日枝分かれしてしまったものが一気に統合されてしまう
そんな中で、主軸となる世界線以外が一気に消滅してしまう、という流れを作るしかないでしょう
そのような映画を作るかどうかはわかりませんが、そうでもしない限り、MCUの世界線との距離感を取り戻すのは難しいように思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101242/review/04067990/
公式HP:
https://marvel.disney.co.jp/movie/deadpool-and-wolverine