■量子世界の影響にリアリティを持ち込めないと、単なる異世界内のトラブルになってしまう
Contents
■オススメ度
シリーズのファンの人(★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/X9vU_7eJyKc
鑑賞日:2023.2.17(イオンシネマ久御山)
■映画情報
原題:Ant-Man and the Wasp: Quantumania
情報:2023年、アメリカ、125分、G
ジャンル:愛娘キャシーの発明によって、量子世界に戻ることになったアントマンたちが、その世界での異変に立ち向かうことになるファンタジー&アクション映画
監督:ペイトン・リード
脚本:ジェフ・ラブネス
原作:スタン・リー&ラシー・リーバー&ジャック・カービー『アントマン』
キャスト:
ポール・ラッド/Paul Rudd(スコット・ラング/アントマン:元泥棒の2代目アントマン、自伝本出版で調子に乗りかけている男)
エヴァンジェリン・リリー/Evangeline Lily(ホープ・ヴァン・ダイン/ワスプ:2代目ワスプ、スコットの恋人)
ミシェル・ファイファー/Michelle Pfeiffer(ジャネット・ヴァン・ダイン:ハンク・ピムの妻、ホープの母、量子世界に因縁を持つ女性)
マイケル・ダグラス/Michael Douglas(ハンク・ピム:元S.H.I.E.L.D.のエージェント、昆虫学者&物理学者、初代アントマン)
キャスリン・ニュートン/Kathryn Newton(キャシー・ラング:スコットの最愛の娘)
ジョナサン・メジャース/Jonathan Majors(征服者カーン:量子世界の制服を目論む男、ジャネットと因縁をもつトラベラー)
デヴィッド・ダストマルチャン/David Dastmalchian(ヴェブ:量子世界の住民、スライムのような生物)
ウィリアム・ジャクソン・ハーパー/William Jackson Harper(クアズ:量子世界の住人、テレパスで心が読める生物)
ケイティ・M・オブライエン/Katy M O’Brian(ジェントーラ:量子世界の反逆者、カーンと対抗するレジスタンスのリーダー)
ビル・マーレイ/Bill Murray(クライラー卿:量子世界のコミュニティ「アクシア」の統治者、かつてジャネットの仲間だった男)
Liran Nathan(量子世界のレストランのウェイター)
Corey Stoll(ダレン・クロス/M.O.D.O.K.:元ピム・テック社の科学者&CEO、カーンによって顔だけ大きくなって蘇った)
Randall Park(ジミー/ジェームズ・E・ウー:FBI捜査官)
Gregg Tarkington(デイル:サーティーワン・アイスクリームの店舗マネージャー、スコットの元雇い主)
Melanie Garcia(ドーナツショップの店員)
Ruben Rabasa(ドーナツショップのオーナー)
■映画の舞台
アメリカ:サンフランシスコ
量子世界
ロケ地:
トルコ:
カッパドキア/Cappadocia
https://maps.app.goo.gl/YGdEJDHdDB3YocRi7?g_st=ic
アメリカ:サンフランシスコ
ノース・ビーチ/North Beach
https://maps.app.goo.gl/6pBWPUQbERj3C4Hp7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
量子世界での戦い、アベンジャーズとの活躍を自伝本として出版したスコットは、サンフランシスコで有名人になっていたが、いつもスパイダーマンなどの他のキャラに間違われていた
恋人ホープ、愛娘キャシーと暮らし、ホープの父ハンク、母ジャネットとも仲睦まじい生活をしている
そんな折、キャシーが独自で研究した量子世界へ信号を送る装置が原因で、彼らはその世界へと連れ込まれてしまう
そこはかつてジャネットが囚われていた世界だったが、時代を経て様変わりをしていた
ジャネットは量子世界での出来事を家族に隠していて、それは脅威的なもので、早くここから抜け出したいと思っていた
そこで、かつての友・クライラーを訪ねるものの、彼は量子世界の征服を目論むカーンの手先に成り下がっていた
その世界ではカーンの支配に抵抗する人々もいたが、彼の絶対的な能力に太刀打ちできずにいる
スコットは「彼らの戦いだ」と言うものの、キャシーは「助けるべきだ」と言って譲らない
そして、彼らは量子世界の戦争に巻き込まれていくのである
テーマ:小さき者の存在証明
裏テーマ:本能の暴走
■ひとこと感想
過去2作をちゃんと観ているはずですが、ほとんど記憶から消えている状態で参戦
おさらいをする時間もなく、なんとなくうろ覚えのまま突入してしまいましたね
それで困るかと言えばそれほどでもなく、単体作品としても理解できないことはありません
物語は「量子世界の中で起こっている他人の戦争」に関わるかどうかを描いていて、虐げられる側に共感する娘キャシーに巻き込まれるかたちになっていました
その過程において、ジャネットの過去が暴かれていくと言う流れなのですが、奥歯にモノが挟まったままのような関係性の暴露になっていたのは微妙でしたね
サイズを変えて戦うと言う面白さはそこまでなく、風変わりなキャラクターの造形に全力を傾けた作品と言う印象が強いかったように思います
シナリオも基本的にはコメディに寄せているのですが、このあたりのユーモアはシリーズのファン向けのものになっていましたねえ
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ネタバレと言うほどのものはほとんどないのですが、冒頭でジャネットがある男と関わりを持って、それがどこまでの関係だったのかはぼやかされていると言う感じになっています
また、ジャネットが量子世界から逃げ出したために大変なことになっていると言う感じで話は進むのですが、ジャネットは単に困っている人を助けただけで、その誤解を解かぬまま姿を消したことが関係性を悪くしているように思えました
基本、アクション映画なのですが、戦闘シーンにさほど目新しいものはなく、とにかく画面が暗すぎて、通常スクリーンでは何が起こっているかわからないシーンも多かったですね
とにかく目が疲れる映画で、量子世界の住人たちのビジュアルを楽しむと言う意味では「実写版ストレンジワールド」みたいなことになっていました
物語のテーマも古めかしい感じがして、いわゆる虐げられる側の人間の蜂起を描いているのですが、カーンの目指す世界がどこまで悪なのかはよくわからない感じになっていました
また、カーンとジャネットの関係性の深度がわからないのですが、「大人の男女だから」と言う仄めかしすぎて曖昧すぎるのはどうなのかなと思ってしまいますね
そのうち、実は量子世界で出産していたとか言い出しそうで怖いものがありました
■前作までのおさらい
【アントマン(Ant−Man)】
2015年の映画で、監督はペイトン・リード
ソゴヴィアでの戦い(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』)から数ヶ月後のこと、3年前に窃盗で服役していたスコット・ラングが刑期を終えて出所してくるところから始まります
再出発は容易ではなく、愛娘のキャシーだけが唯一の心の清涼になっていました
でも、養育費の未払いを理由に会えなくなり、スコットは悪友たちと犯罪への道に戻ってしまいます
ある日、富豪の家に泥棒に入ったスコットは、そこで金属のヘルメットと奇妙なスーツを見つけます
そして、それを試しに着てみたところ、アリのようなサイズに縮小してしまいます
なんとか元のサイズに戻り、それを返しに行こうとしますが、あっさりと逮捕されてしまいました
彼の身元引受人として登場したのは、屋敷の主であるハンク・ピムで、彼はスコットの潜入技術を高く評価していました
そして、スコットにアントマンになって欲しいと進言します
かつてハンク・ピムはアントマンとして活躍していましたが、彼の弟子であるダレン・クロスがその技術を悪用しようと目論んでいることを知ります
そこで、アントマンになって彼のアジトに潜入してもらい、その計画を阻止してもらおうと考えることになりました
【アントマン&ワスプ(Ant−Man and the Wasp)】
2018年の映画で、監督は同じくペイトン・リード
時は遡り、ワスプことジャネット・ヴァン・ダインは、ソ連の核ミサイルを停止させる任務のために、限界まで縮小し、この世界から姿を消していました
ジャネットの夫こと初代アントマンのハンク・ピムと娘のホープは、彼女が死んだと思っていました
しかし、それから28年後、スコットが量子世界から帰還することに成功し、ジャネットを取り戻す研究を再開します
「アベンジャーズ」に加担したスコットは、ソコヴィア協定違反のために逮捕され、自宅で軟禁状態になっていました
その際に量子世界の奇妙な夢をみたことで、ハンクに連絡を取ります
それは、量子世界にいるジェネットのメッセージでした
スコットとハンクはジャネット救出のために研究を重ね、必要な部品を調達します
でも、「ゴースト」と呼ばれる謎の存在に妨害され、ハンクは元相棒のビル・フォスターの元を訪ねることになりました
そして、彼らはジェネットのいる量子世界へと向かうことになりました
本作は、この2つの物語の続編なので、冒頭から『ワスプ』のネタバレになっています
そして、本編では「量子世界にいた時のジャネットの秘密」が一部暴露される形になっていましたね
ハンクには衝撃の事実ですが、そこで起こった「大人の出来事の副産物はどうだったのか」は謎に包まれていました
■量子世界のわかっていること
アントマンたちが吸い込まれた量子世界ですが、これらは量子力学に基づく概念のようなもので、分子、原子やそれらを構成する電子などを対象とした学問のことを言います
ガチで勉強しようとすると、脳みそがパーン!!となってしまう領域で、ざっくりとするならば「めっちゃ小さい世界」みたな感じになっています
物理学の発展によって、量子力学が生まれ、それによって目に見えない細かな世界の研究がなされることになりました
物質は原子で構成され、原子は原子核の周りに電子が存在しているものとされています
原子核は陽子と中性子で構成され、陽子の中にクォークと呼ばれる「素粒子グループ」によって構成されています
物資の元になっている素粒子「物質粒子」は、クォークとレプトンに分けられています
クォークは「3世代*アップ&ダウン、チャーム&ストレンジ、トップ&ボトム」という6種類で構成され、レプトンは「電子、ミュー粒子、ダウ粒子、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、ダウニュートリノ」の6種類で構成されています
これらは「電子内の電気の量」みたいなもので、「−1」を基準として、「+2/3」が「アップ、チャーム、クォーク」で、「-1/3」が「ダウン、ストレンジ、ボトム」と3世代に分けられています
この6種類のクォークがくっつくことで物質の元になるものが作られ、「アップクォーク1個&ダウンクォーク2個=陽子」「アップクォーク1個&ダウンクォーク2個=中性子」となります
クォークがくっついたものを「ハドロン」と言い、その中でも「3個のクォークがくっついた陽子や中性子のことをバリオン」と呼びます
書いている自分でもよくわかりませんが、ざっくりとした感覚だと、基礎となる6種類のクォークの組み合わせでできた陽子や中性子が集まったものが原子核、その周りを電子が回っているみたいな感じでしょうか
物理に詳しい人のツッコミ待ちですが、多分レスは返せない文系なのでご容赦くださいまし
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画にはここまでややこしい物理学は登場しませんが、詳しい人によると結構量子力学に付合するようにできているようです
それを説明しているブログはたくさんあるので、映画のタイトルと量子力学を組みわせるとたくさんの情報を見ることができます
個人的には、そこまで詳しいことを知る必要性は感じていなくて、ざっくりと「今回の異世界は量子世界なんだ」ぐらいのテイストで理解しています
そこで起こることは自分たちの生きている世界の物理法則から外れたものである、と理解しておけば野暮なツッコミも減ると思います
本作は公開初日に鑑賞しましたが、IMAXやドルシネが軒並みレイトや夕方回に充てられていて、タイミングが合いませんでした
なので、通常スクリーンで鑑賞したのですが、驚くぐらい映像が暗くて、冒頭のジャネットとカーンのやり取りでは「カーンの顔がほとんど認識できない」のですね
近場でドルシネで見られるなら、そちらでの鑑賞をオススメいたします
暗さも大概なのですが、本作は「アントマン」に戦う理由がなく、多次元の戦争に巻き込まれるという構図になっていました
「彼らの戦争だ」というスコットに対して、キャシーが「助けなきゃモードになる」のですが、単純に虐げられた人かわいそうレベルだったりするのですね
他国の間で行われている諍いは双方の言い分によって事実と乖離した状況になっています
なので、どちらかの意見だけを聞くことは危険であると思います
また、量子世界というものが目の前にある世界だとしても、自分たちの住む世界に影響がある戦いなのかはわかりません
そのあたりを踏まえると、本当に戦いに加担する意味がわからないのですね
近くで起こっている戦争ならば、自国に影響が出るかもと思えるのですが、量子世界をカーンが支配したとして、どんな影響が出るのかはざっくりとした危機感のように思えました
量子世界の世界観は悪くないと思うものの、アントマンは日常のスケールによって大小の面白さがあったと思います
なので、今回の世界の中で大きくなろうが小さく戦おうが、さほど面白みはないのですね
量子世界の世界観キービジュアルは良いとは思いますが、どことなく『ストレンジ・ワールド』を思い出してしまいます
奇妙な動物たちの出現も面白いのですが、これまでの異世界の世界観とは、さほど区別化されていないように思ってしまいました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385413/review/7ef3635c-7b25-4ac2-b840-677d4be15576/
公式HP:
https://marvel.disney.co.jp/movie/antman-wasp-qm