■アラタを引き寄せたことが、真珠を護る何かの力だったのかもしれません
Contents
■オススメ度
獄中結婚ミステリーに興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.9.6(イオンシネマ久御山)
■映画情報
情報:2024年、日本、120分、G
ジャンル:失われた被害者の首を探すために死刑囚と結婚する児相職員を描いたサイコミステリー
監督:堤幸彦
脚本:徳永友一
原作:乃木坂太郎『夏目アラタの結婚(小学館)』
Amazon Link(原作コミック)→ https://amzn.to/3AUEfwL
キャスト:(わかった分だけ)
柳楽優弥(夏目アラタ:死刑囚と結婚する児童相談所の職員)
黒島結菜(品川真珠:死刑判決を受けた殺人犯)
(幼少期:木村心)
中川大志(宮前光一:真珠の弁護士)
丸山礼(桃山香:アラタの先輩職員)
立川志らく(大高利郎:児童相談所の所長、アラタの上司)
福士誠治(桜井健:事件の担当検察官)
今野浩喜(井出茂雄:拘置所の刑務官)
市村正親(神波昌治:控訴審の裁判長)
藤間爽子(品川環:真珠の母)
平岡祐太(三島正吾:環の元恋人)
佐藤二朗(藤田信吾:死刑囚アイテムコレクター、裁判傍聴マニア)
越山敬達(山下卓斗:真珠の3人目の被害者の息子)
皆川暢二(山下良介:3番目の被害者、卓斗の父)
佐藤めぐみ(卓斗の母)
渡辺邦斗(相沢純也:殺される男)
緒方憲太郎(周防英介:殺される実業家)
松金よね子(児童施設「くらなみ園」の施設長)
山口森広(発見する警官)
中村斗哉(警官?)
管勇毅(?)
酒巻誉洋(?)
平莉枝(?)
乙黒史誠(書記官)
東龍美(検事補佐)
広山詞葉(藤田の面接相手の死刑囚?)
今村有希(?)
加藤四郎(藤田の面接相手の死刑囚)
寺田ムロラン(?)
川並淳一(拘置所の警察官?)
増田修一朗(小野達央:令状持ってくる刑事?)
谷田川さほ(河原田:真珠の担当患者)
田中啓三(やり直し裁判の裁判長?)
星野勇太(?)
岩田絵里奈(レポーター)
梅津廉(アナウンサー)
■映画の舞台
日本:東京
ロケ地:
静岡県:富士宮市
浅間神社
https://maps.app.goo.gl/1Pk4wGDJnEWBVR1XA?g_st=ic
東京都:杉並区
堀之内妙法寺
https://maps.app.goo.gl/frh7VyY1AJbzMTLd8?g_st=ic
東京都:葛飾区
ベニースーパー西亀有店
https://maps.app.goo.gl/oNNA4GUafmDpEc3LA?g_st=ic
埼玉県:さいたま市
HOTEL WIZ CHIC
https://maps.app.goo.gl/KMJyqRkfR2JLU1G59?g_st=ic
■簡単なあらすじ
児童相談所に勤めている夏目アラタは、ある日、連続殺人の被害者の息子・卓斗が自分の名前を使って、死刑囚・品川真珠に手紙を送っていたと知らされる
品川真珠は死体損壊の疑いで逮捕され、一審にて死刑を求刑されていた
彼女の弁護には国選から私選に変わった宮前光一がついていて、彼は真珠の無罪を主張していた
真珠から会いたいという手紙が来たためにアラタに相談することになり、彼は興味本位で真珠に会うことに決めた
東京拘置所に向かったアラタだったが、そこに登場したのは報道で見る「品川ピエロ」のような小太りの女ではなく、華奢で小柄な女性だった
真珠はアラタとの少ない会話の中から「手紙の主ではないこと」を見破る
そこでアラタは、駆け引き勝負と考えて「結婚しよう」と告げるのである
真珠と会えるのは1日1回20分だけ
そこで彼は、求婚の真意を宮前に伝え、二人は真珠から様々な情報を引き出そうと考えるのである
テーマ:優しさと憐れみ
裏テーマ:透過する心
■ひとこと感想
予告編だけの情報で鑑賞
今年の4月に最終12巻が発売されたとのことで、映画制作段階では未完状態で、綿密な打ち合わせをしてシナリオを構築するに至ったとされています
連続殺人犯と結婚をする男には狙いがある、というものなのですが、それは早々に看過されていて、心理ゲームの術中にハマっていくという流れになっていました
殺人犯には独特の知能がある、というのがミスリードになっていて、その路線を深追いするのが主人公の特性になっていましたね
この思考と同じように追いかけてしまう観客は、アラタが陥った罠にズッポリとハマってしまうのかな、と思います
最終的にどうするかは人それぞれだと思いますが、個人的にはアラタと同じことをするんじゃないかな、と感じました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作は、いわゆるサイコサスペンスになっていますが、アラタの感性や目的はわかるけど、真珠のことは何もわからないという流れになっていました
もしかしたら、女性ならば真珠の観点で見ることができるのかもしれませんが、同化してしまうと、それはそれで面倒なような気がします
映画はエピソードのブラッシュアップをしていて、12巻をよく120分にまとめたなあという印象がありました
ところどころ端折っている感があり、疑問符の残るところはありますが、概ねキレイにまとまっているように思います
ともかく、主演二人の演技力が必要な作品だったので、この配役はベストのように思います
物語は、ラストで明かされる「出会い」が全てで、そのことを覚えている真珠と覚えていないアラタとの間に底知れぬ溝があったことがわかります
さすがに幼少期から変わりすぎているので覚えていても結びつかないと思いますが、真珠の話を知っていくうちに思い出す可能性もあったように思いました
アラタが真珠があの時の少女だとわかったのかどうかはわかりませんが、彼としては目の前にいる真珠を愛しているので関係ないのでしょう
あの時も「憐れみ」だったと思いますが、それだけではない何かが育ったというのも本当のところなんだと思いました
■獄中結婚について
映画で描かれる「獄中結婚」とは、勾留中あるいは刑の執行中などの理由で刑務所・拘置所にいる相手と結婚することを言います
日本では、日本国憲法第24条にて婚姻に関する権利は保障されていて、形式的・実質的な要件を満たせば婚姻することができます
映画でも描かれたように、日本の場合では「死刑確定者は接見交通権(文通・面会など)が制限され、弁護士や家族以外のやり取りはできなくなります
そのために、支援者が死刑囚(または死刑判決に上訴している被告人)と結婚もしくは養子縁組をして、配偶者や親族として面会することがあります
有名なところだと、連続射殺事件を起こした永山則夫が控訴中に文通相手の女性と獄中結婚して、のちに離婚
オウム真理教事件の新実智光が教団信者と獄中結婚してします
また、付属池田小事件の宅間守も支援者の女性と獄中結婚し、首都圏連続不審し事件の木嶋早苗が獄中結婚ないし養子縁組をしているとされています
さらに、和歌山毒物カレー事件の林眞須美は社会運動家の稲垣浩と養子縁組をしていますね
それぞれの理由などはわかりませんが、アラタのように「死体の一部を探すため」というのはおそらく無いと思います
映画はフィクションなので色々とファンタジーな部分がありますが、真珠は自分を外に出してくれる存在を探していて、当初は手紙の主の卓斗から糸を紡ごうと考えていました
自分に好意もしくは何らかの感情を有し、かつコントロールができそうな人物
これらの計画は、勾留中にずっと考えていたことだと思いますが、アラタがそこに現れたのは偶然なのでしょう
でも、最後の手紙には何かしらの違和感を感じていて、それはアラタの匂いが付着していたのかな、と感じました
■田中ビネー知能検査について
劇中にて、真珠の知能指数を測るために「田中ビネー知能検査」が行われていました
この検査では、2歳から成人(13歳までは年齢ごと、14歳以上は一括して成人)までの一般知能を測定でき、知的発達のペースや水準を測定することができます
最新式は2003年の「田中ビネー知能検査V(ファイブ)」で、精神年齢と生活年齢の比で算出されます
平均的な知的能力のスコアは85〜115とされています
田中ビネー知能検査Vでは、知能発達の推移を測定することができ、それに準じて学習内容や支援内容をカスタマイズすることができます
設問は1〜13歳級が96問、成人級が17問、1歳級が解けない人ように「発達チェック」というものがあります
基本的には、子どもの年齢と同じところから始めて、全部解けなければひとつ下の年齢級の問題へと移行していきます
さらに全問解けた場合は「全問不正解」になる年齢まで進め、13歳級を1問でも正解できたら成人級に進むという手順を踏みます
生活年齢が14歳以上の場合は、成人級のみを実施し、基本的には下の年齢級には下がらないという方法を取ります
ちなみにオンラインなどでIQテストができますが、ほとんど「テストのみ無料」「結果はメールで有料」というところが多いですね
また、出版社などから販売されているものは検査用具とか記録用紙などを合わせると13万円ぐらいはしますね
知能検査を受けられる場所は、発達障害を診断できる医師がいる病院で、心療内科、精神科などが該当しますが、全ての機関で実施しているとは限りません
また、発達障害者支援センターなどでは「特性を理解する目的」で知能検査を実施しているところがあります
まずは「公的病院・公的機関」をググって、問い合わせするところから始めるのが良いと思います
大人の人でIQ知りたいという人は、有料サイトなどでやってみるのも手だと思いますが、ザッとググっても「どのサイトが正解かわからない」という印象がありますね
テスト自体は無料で受けられるところが多いので、暇つぶしにチャレンジしてみても良いのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、現在の死刑制度や裁判などの問題点を指摘しつつも、大枠はラブロマンス映画だった、という内容になっています
真珠の幼少期に手を差し伸べたのがアラタだけで、これまでの人生において、常に可哀想な子どもというところから脱することはできませんでした
そんな中で、アラタだけが「お前は殺人鬼だ」と言い、可哀想レッテルを貼ることはなかったのですね
でも、アラタ自身の中に「真珠に対する想いの大部分に同情的なもの」があったために、完全なる信頼を得るには戸惑いがあったことがわかります
真珠からすれば、この世にいない人物の代わりを生きてきて、その人生が壮絶だったために同情を買うことになる
そんな中で、自分を解放してくれるものを探していて、ひとつは殺人で、もうひとつはアラタということになっていました
人間関係が拗れた場合、それを解消する手立ては容易ではありません
特に親族は呪いの鎖のようなもので、それを断ち切るには相当な覚悟と準備が必要になってきます
生まれてくる家や場所は選べないもので、真珠のような荒んだ家庭に生まれる子どもはたくさんいます
かつては地域コミュニティが機能していて、それによって「補完」できる部分はありました
今では、家族主義、個人主義が突出していて、そこに地域コミュニティが入る余地がありません
公的機関でも人権意識の向上と弊害によって介入できない実情があり、本当に「自分で何とかするしかない」という状況が増えつつあります
そんな世界の中で、絶望して命を絶つ人もいれば、何とかして自由になろうと考える人がいます
でも、屈強な肉体があるとか、知能が秀でているなどの特性が無いと打開策を打つのも難しく、わかりやすい解決策に向かわざるを得ない場合があります
真珠の場合は、わかりやすい方法で脱出するものの、その後の展開で並外れた知能を見せていきます
後天的に培われた知能なのか、先天的に有していたものの開花なのかはわかりませんが、おそらくは「捕まる段階から計画は発動している」ので、わかりやすい打開策のその先を考え抜く知能は有していたのだと思われます
その打開策がリアルになるには色んな運的な要素が必要になりますが、そう言った突破口に結びついたのは「嗅覚の良さ」に他ならないのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101642/review/04217659/
公式HP:
https://wwws.warnerbros.co.jp/natsume-arata/index.php