■「ちゃんとフラれる」というマインドの先にあるのは、マルチタスクができる人には到達できない頂のように思います
Contents
■オススメ度
三角関係ラブコメが好きな人(★★★)
主演のファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.11.14(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
情報:2024年、日本、102分、G
ジャンル:親友同士が同じ人を好きになってしまう系の恋愛コメディ
監督:横堀光範
脚本:おかざきさとこ
原作:幸田もも子『あたしの!(集英社)』
Amazon Link(原作コミック:Kindle版)→ https://amzn.to/3YPihUm
キャスト:
渡邉美穂(関川あこ子:嘘がつけない高校2年生)
(幼少期:宮地美然)
木村柾哉(御共直己:学校イチの人気者、帰国子女)
(幼少期:平野絢規)
斉藤なぎさ(谷口充希:あこ子の幼馴染)
(幼少期:山田詩子)
山中柔太朗(成田葵央:直己の親友、あこ子の恋愛の相談相手)
(幼少期:青木鳳)
小田惟真(田中:クラスメイト)
笠井悠聖(鈴木:クラスメイト)
藤田ニコル(劇中のホラー映画『ひとりぼっち』の主人公)
木村伊吹(ナンパ男)
太田湧大(ナンパ男)
小高サラ(化粧しているあこ子の友人)
アンナ(化粧しているあこ子の友人)
赤木燿(充希の友人、男子生徒)
知念英和(充希の友人、男子生徒)
原愛音(フラれるミスコン?)
小鳥遊夏渚(屋上の告白女子?)
熊井戸花(直己の中学時代の元カノ)
阿久津菜々(シーパラの母親)
原沢侑高(シーパラの父親)
吉本凪沙(シーパラの迷子の少年)
前田織音(いじめっ子)
湯本柚子(いじめっ子の連れ)
山本紗々菜(直己の小学校時代のクラスメイト)
小井圡菫玲(直己の小学校時代のクラスメイト)
小見美幸(劇中映画で襲う女?)
枝村明子(?)
■映画の舞台
おそらく都心のどこか
光和学園高等学校
ロケ地:
東京都:大田区
東京高等学校
https://maps.app.goo.gl/x9GGZhBExK8S8Rko7?g_st=ic
中華麺舗 虎
https://maps.app.goo.gl/yST4N4feyHe83WMt9?g_st=ic
神奈川県:横浜市
SEA PRADISE
https://maps.app.goo.gl/XoZvJVGbw2TREjDV6?g_st=ic
群馬県:高崎市
Gメッセ群馬
https://maps.app.goo.gl/wtfZ4beNitk9Yfq77?g_st=ic
千葉県:浦安市
廻鮮寿司 吉恒
https://maps.app.goo.gl/xU5cCF9xLLZXWFXD7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
高校2年生になったあこ子と充希は、小学3年生の時からの仲良しで、別のクラスになっても、その友情はずっと続くと思っていた
だが、あこ子のクラスに学年イチの人気者の直己が留年生として入ってきた
クラスの女子は色めき立つものの、男子生徒は冷ややかな陰口を叩き、あこ子はそれに我慢ならずに言い返していた
そんな様子を見ていた直己はあこ子に興味を持ち、それから一緒にいることが多くなった
あこ子は直己に一目惚れし、充希に断りを入れた上で告白を敢行する
直己は過去の恋愛経験から人を傷つけることを極端に恐れていたが、あこ子の熱意に押されて付き合うことになった
充希は口では応援すると言いながらも、心は別のところにあって、それがある日露呈してしまう
そして、直己は再び人を傷つけてしまったことに心を痛め、さらに母親から「あること」を告げられてしまうのである
テーマ:友情と恋愛
裏テーマ:人を癒せる存在
■ひとこと感想
少女漫画とアイドルの組み合わせといういつもの作品で、イベントごとに距離が縮まるという王道の作品になっていました
個人的には斉藤なぎさが気になっていたので鑑賞しましたが、王子役が属しているグループなどはまったく知りませんでしたね
彼のファンがたくさん来るのかなと思いましたが、行きつけのTOHOシネマズ二条の入っているビルが改装中のためか、ほとんど貸切の状態になっていました
映画は、手垢のついた三角関係もので、親友同士が同じ人を好きになるという内容でしたね
本質的には女子同士の友情の話なのですが、主演にアイドルを起用したことによって、そこら辺を無理やり捻じ曲げる展開になっていたように思います
物語としては、親友の成り立ちが男女共に同じで、そう言ったところまで踏み込んでいくのかと思いましたが、見事にスルーしていましたね
親友をヒーロー視している直己と充希は価値観が同じで、それが男女逆転して恋愛になるのかは微妙に思えました
原作準拠なので恋愛の結末は変えていないと思うのですが、あそこまで双方の過去話をきちんと描くのなら、そことそこじゃねえだろうと思ってしまいました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
親友同士が同じ人を好きになるという展開で、それが学園の人気者という設定になっていて、いつもの少女漫画あるあるだなあと思いました
かつて、いじめられていた子を助けたことのあるあこ子と、いじめられていた側の直己が付き合うのですが、この関係性で恋愛に発展するのは何だかなあと思ってしまいました
単純に顔が良いから女子は色めき立っているのですが、あこ子が直己の過去を知ると「母性的な部分」が強く出てしまうと思うのですね
なので、知れば知るほど、恋愛よりも守りたい欲求が強く出てしまうのかなと思ったりもしました
とは言え、男子を守るというマインドに行くかどうかは何とも言えないので、深く考えてはいけないのかなと思います
充希が直己を好きになるには理由があって、どことなく自分に近いものを感じていたのでしょう
そこから、この人なら自分の悩みや感性をわかってくれるのではと思うことで、より執着を持つのだと思います
映画は、二人の恋愛の論理まで踏み込まないのですが、せっかく幼少期の出会いまで描いているので、そこら辺を深掘りしても良かったのではないか、と感じました
■憧憬と恋愛
本作は、親友同士が同じ人を好きになるというラブコメで、親友の意思を確認して突入するという流れがありました
自分を抑えられず、親友との関係を壊してでも欲しがるという場合もありますが、本作ではきちんと義理を通すという内容になっていました
それでも、自分の気持ちを押し殺したことで執着が生まれるし、それを感じている故の罪悪感というものがあります
この二人が普通の親友関係ならば、これで壊れるかもしれませんが、彼女たちの関係は少しだけ強固なものだったと思います
あこ子はかつて充希を助けたヒーローであり、ここには友情の他にも憧憬というものが混じっています
充希があこ子を越えて行動するというところに縛りがあって、それゆえに手順が生まれていました
この手順によって、これまでに築かれてきた見えない上下関係のようなものがはっきりと見えるようになり、それ自体が心をそば立たせてしまいます
なので、通常の友情関係よりはいびつな感情が入り混じっていることになって、それが現在進行形の恋愛よりも強いという状況になっていました
この関係性は直己と親友・葵央にもあって、それが女子二人の関係性の理解へとつながっていました
特に、三角関係に入っていない葵央が俯瞰的に見ていることで、この構造に気づいていると思います
そうした先にある、充希のけじめというものは清々しく、それによって、より強固な友情と恋愛が生まれる方向に向かったのではないでしょうか
■友情と恋愛
恋愛とは、その人のことを四六時中考えている状態を差し、その渇望が行動を狂わせていくという部分があります
居ても立っても居られないので、胸の高鳴りを押さえるためにどうしたら良いかと右往左往します
その終わりは意外と単純で、失恋と獲得という両極端な結果によって落ち着きを見せることになります
失恋に関しては、自分自身の納得性というものが区切りになりますが、獲得の場合は別の欲求が顔を出し、さらに別次元の渇望というものが生まれてしまいます
友情に関しては、男女差はあると思いますが、一度形になるとその関係性の維持に尽力するということはあまりありません
この維持努力が必要な場合は関係性がイーブンではなく、維持したい側がぶら下がっている状態になっています
なので、超久しぶりに会ってもその時の関係に戻ることもあるし、そもそも絶対的継続を必要としないもののように思います
大人になるにつれて、それぞれには生き方が付随し、家庭や新しい交友関係が生まれることも理解しているので、相手の意思や選択を尊重するようになります
でも、ここまで到達するのにはいくつかのステップがあり、若年層の間でそこまで達観することはあまり無いように思います
映画では、高校生という限定的な友情を取り扱っていて、それは恋愛と同じぐらい脆くて長続きしないという強迫観念があったりします
それが恋愛を取るか、友情を取るかという選択に繋がっていて、大人同士になると競合したり、利益相反がなければ相手の行動や選択には深入りしません
あまりにも、その相手はダメだよという時に介入することはありますが、その行為自体が障壁となって、火種になることを知っているので、分別がついている大人だと「致命傷にならない大怪我をするまでは」見守るしかできないように思います
あこ子と充希の関係はそこまで到達していませんが、直己と葵央の関係は徐々に達観にシフトしつつあるところがあるので、この男女の友情の質の違いというところに着目すると、違った見え方になるかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、よくある青春群像劇なのですが、タイトルにインパクトがあって、さらにキャラの名前が個性的なものになっていました
この「あたしの」という言葉には所有欲のようなものがあって、今の時代にはそぐわないところがあると思います
これが男女逆転だと炎上騒動になると思うのですが、そう言ったものが逆転しつつあるほどに、振り子がいたずらをしているようにも思えます
かつての少女漫画は、イケメンの隣の空間を占有するという場所取りゲームのようなところがあり、そこには選ばれる女性になれるかという感覚がありました
そう言ったものが徐々に消えているように思えたのですが、本作ではそれを逆に振り切った感じになっていて、それをキャッチーさに繋げていたように思います
映画は、記号的なキャラが登場し、その深みを持たせるために過去譚があるのですが、深掘りしたのは女性陣の方だけでしたね
少女漫画なので、男性陣の過去譚を深掘りしないのはわかりますが、本作のテーマだともう少し描いたほうが良かったように思います
特に、あこ子と充希、直己と葵央の関係性は「守るもの、守られるもの」という重なりがあったので、その絆の種類を強調するためにも必要だったように思いました
物語は、充希が「ちゃんとフラれる」というシークエンスがあって、恋愛脳を切り替えるには必要な儀式だったように思います
次の恋愛に向かうためには終わらせる必要があるのですが、世の中にはマルチタスクをできる人もいたりするのですね
でも、マルチタスクのひとつであることは満足度を下げるし、本気で向き合っていく中で、自然と消えていくもののように思えます
それでも、次に気になる人を作らずに、きちんと終わらせるというところには色んな意味があって、今回の場合は「あこ子と直己に対する敬意」というものがあったのだと思います
そう言った意味でも、充希は真っ直ぐな人だと思うので、この性質のまま幸せな人生を歩んで欲しいなと思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101868/review/04469525/
公式HP: