■アバター ウェイ・オブ・ウォーター
Contents
■オススメ度
映像体験をしたい人(★★★★)
メカが好きな人(★★★★)
ストーリー性重視する人(やめた方が無難)
■公式予告編
鑑賞日:2022.12.19(イオンシネマ四條畷 IMAX Laser HFR 3D字幕)
■映画情報
原題:Avatar:The Way of Water
情報:2022年、アメリカ、190分、G
ジャンル:惑星パンドラへの侵攻を図る人類と現地民の戦いを描いたSFアクションファンタジー
監督:ジェームズ・キャメロン
脚本:ジェームズ・キャメロン&リック・ジャッファ&アマンダ・シルバー
キャスト:
【オマティカヤ族(森の民)】
サム・ワーシントン/Sam Worthington(ジェイク・サリー/トルーク・マクト: アバター操作者からナヴィになった人類)
ゾーイ・サルダナ/Zoe Saldaña(ネイティリ:前氏族長の娘、ジェイクの妻)
シガニー・ウィーバー/Sigourney Weaver(キリ:ジェイクとネイティリの養女)
(幼少期:Scarlett Fernandez)
ジェイミー・フラッターズ/Jamie Flatters (ネテヤム:ジェイクとネイティリの息子、優秀な長男)
(幼少期:Jeremy Irwin)
ブリテン・ダルトン/Britain Dalton(ロアク:ジェイクとネイティリの息子、コンプレックスを持つ次男)
(幼少期:Chloe Coleman)
トリニティ・ジョリー・ブリス/Trinity Jo-Li Bliss(トゥク:ジェイクとネイティリの8歳の子ども)
CCH Pounder(モアト:オマティカヤ族のメンター、ネイティリの母)
ジャック・チャンピオン/Jack Champion(スパイダー/マイルズ・ソコロ:ヘルズゲートで生まれた若者)
(幼少期:Cruz Moir)
Keston John(タルセム:オマティカヤの次期リーダーに指名されるナヴィの戦士)
Dileep Rao(マックス・パテル:ジェイクとともにパンドラに残った科学者)
Joel David Moore(ノーム・スペルマン:ジェイクにアバター責任者を任される博士、ナヴィに転身済み)
【メトケイナ族(海の民)】
クリフ・カーティス/Cliff Curtis(トノワリ:メトケイナ族のリーダー)
ケイト・ウィンスレット/Kate Winslet(ロナル:トノワリの妻)
ベイリー・バス/Bailey Bass(ツィレヤ:トノワリとロナルの娘、キリたちのガイドを任される)
フィリップ・ジョルジョ/Filip Geljo(アナマング:メトカリナ族のトノワリとロナルの息子)
デュアン・エバンス・Jr/Duane Evans Jr.(ロトー:メトカイナ族のハンター、アナマングの友人)
Robert Okumu(オレクタン:クオリッチに拷問されるメトカイナ族のタウヌイ村の村長)
Jennifer Stafford(シャヒク:オレクタンの妻)
【RDA/スカイ・ピープル&組換体】
スティーブン・ラング/Stephen Lang(マイルズ・クオリッチ:RDA治安部隊のリーダー)
マット・ガーランド/Matt Gerald(ライル・ウェインフリート伍長:元RDAの傭兵、クオリッチの部下)
Giovanni Ribisi(パーカー・セルフリッジ:RDAの元管理者)
Edie Falco(フランシス・アードモア:RDAの現司令官)
Matt Gerald(ウェインフリート:リコン計画の組換体)
Kevin Dorman(マンスク:リコン計画の組換体)
Alicia Vela-Bailey(スディナースク:リコン計画の組換体)
Sean Anthony Moran(ファイク:リコン計画の組換体)
Andrew Arrabito(ブラーガー:リコン計画の組換体)
Johnny Alexander(ジャ:リコン計画の組換体)
Kim Do(チャン:リコン計画の組換体)
Victor Lopez(ロペス:リコン計画の組換体)
Maria Walker(ウォーカー:リコン計画の組換体)
Brendan Cowell(ミック・スコアスビー:惑星パンドラの民間海洋狩猟船の船長)
Jemaine Clement(イアン・ガーウィン:惑星パンドラを調査する海洋生物学者)
■映画の舞台
惑星パンドラ
ロケ地
アメリカ:カリフォルニア州
マンハッタンビーチ
https://maps.app.goo.gl/EBey7W8XYeZ4nUHx6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
前作にてエイワの力でナヴィと同体になったジェイクは、トルーク・マクトとして、オマティカヤ族を率いていた
恋仲だったネイティリと結婚し、三人の息子を授かり、キリを養女として育てていた
ある日、スカイ・ピープルが森に潜入し、ジェイクたちはハレルヤ・マウンテンから一時避難をせざるを得ない状況になってしまう
スカイ・ピープルの中にはナヴィと遺伝子配合されたレコヴィナントがいて、そこにはかつてジェイクと戦ったクオリッチ大佐がいた
クオリッチは執拗にジェイクを追い、子どもたちを捕獲しようとする
そこでジェイクはオマティカヤの安全を守るために身を隠すことにした
そして、その場所として、海の民メトケイヤ族を訪ねることになったのである
テーマ:家族を守ると言うこと
裏テーマ:人類の過剰欲求
■ひとこと感想
映像体験と言うことはわかっていたので、一応前作をサラッと見返して参戦
どうせなら、と言うことで「IMAX Laser」で観てまいりました
映像凄いっすねえ〜〜〜〜〜
他に何か?
と言う映画でしたね(わかっていたけど)
前作は「ナヴィに対抗するためにアバター作った」と言う設定があり、それを操縦すると言うものでしたが、数年の間に完全同体になって記憶情報を植え付けると言う荒技設定になっていました
う〜ん、アバターではありませんね
物語は怨恨から逃げるジェイクが他の種族を巻き込んでいくと言うもので、家族を守るために「逃げた」のが失敗だったと言う感じになっています
ラストのジェイクの選択はどうなの?と思ってしまいますが、「映像体験」のための物語なので、そこらへんは無視すべきなのか悩んでしまいますね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ジェイクが家族と共に逃げて、海の民に迷惑をかけるものの、敵を撤退させて絆が深まると言うわかりやすいシナリオでした
でも、家族を守るために砦を築く必要があるなら、ハレルヤ・マウンテンに帰らないのかと不思議に思ってしまいます
むしろ、スカイ・ピープルに壊滅させられて、命からがら逃げ出したとかの方がマシだったかもしれません
映画はハイフレームレートと言うことで繊細で素晴らしい映像体験ができるので、どうせ見るならIMAX一択だと思います
近場では通常IMAX、ドルビー、IMAX Lesarの選択肢があったのですが、まだ行ったことのなかったイオンシネマ四條畷のLaserを選択しました
最前列のリラックスシートで見上げるような感じで鑑賞しましたが、字幕が大きすぎるので、抵抗ないなら吹替の方が良いのかもしれません
物語はあってないようなもので、これだけの期間が空いたのにこの程度のシナリオしかできなかったのはどうなのかなと思ってしまいます
本当に映像に全振りになっているのですが、ナショナル・ジオグラフィックを観に行く気分で行かないと、とてもじゃないが180分強は耐えられないのではないでしょうか
■家族を守ると言うこと
ジェイクは種族を守るために森を出て、メトケイナ族に匿ってもらうことを考えます
ハレルヤ・マウンテンのその後は描かれないのですが、目的がジェイクだったので皆殺しとかにはなっていないと思われます
その後、ジェイクが海の方にいることがわかり、しらみ潰しに探していくという行動に出て、いくつかの島を襲うシーンが描かれていました
種族を守るためにハレルヤ・マウンテンを出るのに、いつの間にか「家族を守る」にすり替わっていたのはツッコミところなのかもしれません
家族を守るために「逃げるのか、戦うのか」という命題に行き着くジェイクですが、クオリッチの目的がわかっている割には、その行動の余波を読み取れていない無能さがありました
クオリッチの執念を考えれば、「目的のために手段は選ばない」ことはわかるので、自分が前に出ないという選択肢は「=周囲に無駄な犠牲を押し付ける」となるのは明白ですね
ともかく、海の映像を撮る必要があったからジェイクを外に出したのでしょうが、緊急避難に至るまでの過程が雑すぎて呆れてしまいます
家族を守るとなると、敵がはっきりしているならば、サシで戦う以外には無いでしょう
しかも、今回はジェイク本人以外には用はないという展開なので、家族も巻き添えを喰っているという印象は否めません
冒頭で前作を否定するかのような破壊行動で、あっさりと前作がなかったことになっていたのも驚きましたが、テーマもそれほど掘り下がっていません
種族を守るために森を出て、そこで他の部族の世話にならずに孤島に行くなら意味はわかるのですが、海の民もあっさりと受け入れてしまうのですね
なので、舞台設定のための展開になっていて、本来の「種族を守るため」という衝突が部族感でほとんどないところも微妙だと言えます
ジェイクが種族を守るのと同じように、トノワリにもその責任があります
ジェイクたちがスカイピープルとどんな闘いをしていたのかを知っていたのかはわかりませんが、「君たちの戦いに私たちを巻き込むな」と言っている以上、どんな敵が来るのかはわかっているはずなのですね
なので、トノワリの判断も情にほだされただけで、テーマとして描かれるほどの信念があるように思えません
この映画におけるリーダーは種族の滅亡に至るまでの責任を持っているので、その判断の軽さというのは物語を軽くしてしまいます
それを考えれば、ジェイクの行動の本気度を見る上でも、トノワリとのサシの決闘などがあっても良かったのではないかなと思います
この決闘によって、ジェイクの本気度とトノワリの本気度がわかりますので、それによって共闘に向かう流れというものは見えてきます
そういった障壁が「異世界の入り口にない」というところに、練り込んでいない感が滲み出ていました
■勝手にスクリプトドクター
映画は前作をどう捉えるかは別として、単体としておかしなところがたくさんあります
前述のように、「種族を守る」から「家族を守る」に変わっている部分もありますし、メトケイナとの衝突がないのも変ですし、そもそも「組換体になったら、アバター(肉体と意識の分離体)ですらない」のに、そのあたりがサラッと流されているだけでした
以下、気になった部分の修正案を素人考えで列挙していきたいと思います
まずは、前作から人類のパンドラへの執着が強くなったこと(サラッと移住を考えているというセリフだけ)を強調するために、現在の地球の状況を描く必要があります
これはスカイ・ピープルのパンドラへの攻撃の正当性を与えることによって、本気度(=パンドラの危機度)というものが生まれます
前作では資源のためにハレルヤ・マウンテンを襲っていましたが、今回は移住となるので「パンドラ全域」がターゲットになってきます
なので、ジェイクがどこに行こうと、スカイ・ピープルは彼らの存続のために全面戦争を仕掛けることになるはずでした
でも、映画では「資源強奪の延長線」のような感じにしか描かれず、被害に遭うのはハレルヤ・マウンテンだけというスケール感のしょぼさがありました
次に、ハレルヤ・マウンテンへのスカイ・ピープルの干渉によって、ジェイクは他の地域に身を隠すことを余儀なくされる流れです
ジェイクがいなくても、スカイ・ピープルの移住のために先住民をどうするかという問題は出てきます
スカイ・ピープルはいきなり森を燃やし、攻撃的な干渉を行っているので、対話で共生を考えているとは思われません
なので、ハレルヤ・マウンテンではオマティカヤ族の決死の攻撃を受ける訳で、武力によってスカイ・ピープルが鎮静を図るならば、ほぼ全滅して、生き残ったオマティカヤが故郷を捨てて方々に散ってしまう、という展開になると思います
この流れになると、スカイ・ピープルの残忍性などが惑星パンドラ中に知れ渡り、そこで生まれた難民に対してどうするかというフェーズに入ります
その中のひと家族として、ジェイクの家族がメトケイナに流れ着く
でも、巻き込まれたくないトノワリは受け入れを拒否するものの、スカイ・ピープルの計画と行動を探知し、また難民に対するも人道的な問題を鑑みた上で、受け入れを受諾するというステップを踏みます
本作のテイストならば、この受諾路線なのですが、単に家族を救いたいから訪れるというだけの理由だと難しいのですね
なので、ハレルヤ・マウンテンの被害をそこまで描かないのならば、トノワリとジェイクの家族を守るための責任の強さが描かれ、それは衝突へと向かうことになります
そこでジェイクの本気度をトノワリが感じてならOKですが、本作の場合だと夫婦で話し合って、妻が折れたので受け入れたという中途半端なものになっていました
アバター設定が完全に丸投げされた件は、ある程度の年月の経過でスカイ・ピープル側の科学力の進化という点で納得はできます
そのためにも、前作にてエイワの力によって精神の移植が行われた際のデータをスカイ・ピープルが入手もしくは研究していくというシークエンスは必要になります
いきなり組換体ができて、そこに記憶を移植したという科学の進歩が「秒で明示される」のは、前作において「アバターの適性問題の困難さ」というステップが描かれるのに対して、あまりにも軽すぎると言えます
また、海洋生物の捕獲&研究の技術力と目的も唐突になっていて、これらは「くじらの捕鯨問題を入れるために無理やり作ったシークエンス」のように思えます
彼らの船に「漢字の船名があった」ことで、プチ炎上案件になっていますが、主導しているのは白人で研究者も白人なので、これで日本批判をしていると見るのは無茶だと思います
この流れだと、批判すべき日本の捕鯨を白人社会が真似しているという感じになっていて、それはある意味捕鯨の肯定になっていないかと思ってしまいます
このシークエンスはRDAの研究の資金捻出という感じになっていましたが、となるとRDAはスカイ・ピープル(=人類)の総合的な判断で招かれた存在ではないということになります
ある企業が資源採掘のために惑星パンドラに目をつけたとしても、人類の移住先を探すとなれば話は別なのですね
なので、RDAが組織で行っていることの背景に矛盾が生じ、特にタルカン捕獲のシークエンスがその問題を浮き彫りにしていると言えます
これらの複合的な問題を解決するには、
「RDAの組織改変と権限委譲」
「人類を先住民を駆逐する鬼として描く」
「ハレルヤ・マウンテンの崩壊により、オマティカヤ族が離散」
「RDA(地球)の意思に背き、クオリッチはジェイクを単独で追う」
「エイワの損傷により、惑星じゅうに危機が周知」
「オマティカヤ難民問題と人道支援」
「惑星パンドラとしての世界政府樹立に向けた動き」
ぐらいのスケール感は必要でしょう
となると5時間くらいになりそうなのですが、実際には2時間ちょいでこれらを描き切ることは可能だったりします
本作では、自然描写シーンを重要視していて、その尺が恐ろしく長いので、ジェイク一家の様々なドラマをある程度減らせば問題無いでしょう
ジェイクの家族が多すぎて、そこに兄弟間の感情のもつれなどを描いていくのですが、ぶっちゃけネテヤムとトゥクの存在は不要で、ロアクが父と比較されて悩んでいる、という設定でも何ら問題のないことだと言えます
むしろ、ツィレヤとアオノンらにもう一人兄弟がいて、それを羨ましく思う、という方が尺が少なくて良かったように思えました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は家族(種族)を守るためにどうするかを描いていて、結論としては「戦うべし」みたいになるのに、故郷のハレルヤ・マウンテンには帰らないという意味不明の選択をしていました
この流れになるなら、「帰っても誰もいない」か「壊滅してる」か、「追い出されたから帰れない」のどれかでしょう
でも、主人の座を譲って正式に降りているし、ハレルヤ・マウンテンが制圧されたみたいな話にもなっていません
多くの人が「砦を築くなら森へ帰れよ」と思ったでしょうし、海の民として生きるというのは、言うなれば「故郷から逃げて亡命先で生きる」ということになります
今回の移民は戦禍から逃れた訳ではなく、戦禍を避けるために新天地に行ったということなので、別の種族と自分の種族の中で順列があることになります
なので、トノワリたちはもっと反発しても良さそうなもので、人が良すぎるからなのか、スカイ・ピープルの怖さを知らないのかわかりませんが、彼らが受け入れることの違和感は拭えません
映画は映像体験が売りなのはわかりますが、その体験を3時間させるためには「映像だけの没入感では無理」なのですね
30分に1回程度は「新しいモノを観た」という感覚が必要ですが、それは映像だけではなく、ストーリーとしても必要なのですね
本作のざっくりした流れは、「ハレルヤ・マウンテンの日常」「スカイ・ピープルの思惑と進化」「ハレルヤ・マウンテンの危機」「新天地での諍い」という王道の流れになっていますが、ほとんどのシーンに真新しさがありません
兄弟の諍いも「優秀な兄、コンプレックスの弟、自由な末っ子」ですし、そこに養子のキリがいて、人間のスパイダーまでいます
ぶっちゃけ、主人公サイドにこの数は多過ぎで、本作なら「養女キリが姉、長男だけど弟扱いがロアク」で、「ネテヤムの機能はキリでも、ジェイクでもOK」だったりします
ジェイクとネイティリが夫婦になって、なかなか子どもが授からない中でキリを養女に迎え、ロアクが生まれてしまうという流れだけで十分だったりします(メインテーマではないから)
移民問題に関しても、ジェイクファミリーが今後いろんなロケーションに回るということを念頭におく(次は地下に行くとか)のならば、ハレルヤ・マウンテンは壊滅的で「オマティカヤ族はユダヤの民のように散らばる」という暗喩に結びつけることができます
今回は受容としてメトケイナが受け入れましたが、次回は「拒絶の民」のシークエンスを描くこともありでしょう
5部作?が念頭に置かれていて、前回は森、今回は海なので、次回は地底か空になると思います
シリーズを通じて描いていく物語の核というものは「家族」になると思うので、もう少しシナリオを頑張ってもらって、伏線を散りばめる方が良いでしょう
今回はスパイダーの回収も微妙で、キリの謎も中途半端ですが、このあたりは伏線というよりは、物語内で完結させていない案件のイメージの方が強いでしょう
次作以降でキリの父の正体とか、スパイダーの母の存在とか色々と描かれるのでしょうが、今回のシナリオはあまりにもお粗末だったと思いました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/382617/review/92486a13-7e5a-43f0-9786-054a636d871e/
公式HP:
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar2