■愚か者が愚かな行動をして、姉を巻き込んでけじめをつけた、でOKだったのだろうか


■オススメ度

 

クライムサスペンスが好きな人(★★★)

原作ファンの人(改変がどうか)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.9.28(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報2023年、日本、143分、G

ジャンル:特殊詐欺を舞台に裏社会で暗躍する姉弟を描いたクライムサスペンス

 

監督脚本原田眞人

原作黒川博行『勁草(徳間文庫)』

 

キャスト:

安藤サクラ(橋岡煉梨/ネリ:オレオレ詐欺の「受け子」指示役)

山田涼介(矢代穣/ジョー:出所したばかりのネリの弟)

 

生瀬勝久(高城政司:「名簿屋」、貧困ビジネスのNPO法人「大阪ふれあい事業推進協議会」の理事長)

 

大場泰正(宇佐美/教授:特殊詐欺グループの受け子)

 

淵上泰史(胡屋賢人:東京の財閥カンパニーの代表取締役)

縄田カノン(車田千春:胡屋の秘書)

(糸井:新しい秘書候補)

 

前田航基(残間均:半グレの強盗犯)

大沢直樹(残間徹:均の兄)

 

鴨鈴女(シワサラ:「BAD LANDS」のオーナー)

 

天童よしみ(新井登茂子:高城の仕事相手、道具屋)

 

宇崎竜童(曼荼羅/上松:ネリの友人、元ヤクザ)

 

サリngROCK(林田:賭場の帳付)

山田蟲男(卓也:林田の部下)

 

伊藤公一(徳山英吾:亥誠組の組員)

 

福重友(江川:ボクサー)

齋賀正和(コンボ:ホームレス?)

木野本啓(ガミ:ホームレス?)

旭屋光太郎(島袋:ホームレス?)

 

杉林健生(平岡/小沼英二:特殊詐欺グループの掛け子)

永島知洋(青木亮:掛け子グループのリーダー)

田中沙依(崎田ゆり:平岡の元恋人)

 

吉原光夫(佐竹正敏:特殊詐欺特別班の刑事)

山村憲之介(湯川優:佐竹の相棒刑事)

田原靖子(酒井:特殊詐欺特別班の新人刑事)

江口のりこ(日野:特殊詐欺特別班の班長)

静恵一(米村:刑事)

谷伸恵輔(日野の上司)

こんばやし元樹(日野の上司)

 

一本木貴子(井上幹子:特殊詐欺の被害者)

野田普市(椋樹:信託に興味がある男)

中道裕子(五十子:老老介護に悩む娘)

原田遊人(発砲する警官)

 

長島竜也(山ちゃん:?)

内藤裕敬(黒澤弘司:?)

 

土屋玲子(月曜日に走っている巫女)

岡田准一(ハッピ姿のヤクザ)

 


■映画の舞台

 

大阪:西成

 

ロケ地:

滋賀県:彦根市

とばや旅館

https://maps.app.goo.gl/MQrYm9XTuVGMKEdu8?g_st=ic

 

滋賀県:大津市

BOAT RACEびわこ

https://maps.app.goo.gl/2WHpDhV16wdNVTM96?g_st=ic

 

大阪市:浪速区

ジャンジャン横丁

https://maps.app.goo.gl/PCj5VX8bQQ9WgasF9?g_st=ic

 

串かつてんぐ

https://maps.app.goo.gl/ndadPJtxjSTzQVeU6?g_st=ic

 

大阪市:西成区

動物園前一番街商店街

https://maps.app.goo.gl/2FTekN9GJ19mE6So8?g_st=ic

 

飛田本通商店街

https://maps.app.goo.gl/bhA8snLPsWbRJt9j7?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

かつて東京で一悶着あったネリは、今は大阪で特殊詐欺グループの受け子の指南役をしていた

貧困ビジネスのNPO法人を運営する高城の指示でターゲットに接触してきたが、その日も受け子の「教授」を使って一仕事をすることになった

だが、ネリは府警の監視を感じ、ターゲットとの接触を断念した

 

そんな彼女の元に、義理の弟のジョーがやってきた

出所したばかりで行き場のない彼を、ネリは高城のヤマに参加させようと考えていた

ジョーはある仕事を始めるために賭場にいくものの、そこで仕事相手から借金を作ってしまう

 

その後、ジョーはカチコミを行うものの失敗し、その足で借金をチャラにするためにある計画を思いつく

それが金を溜め込んでいると思われた高城の殺害計画だったのである

 

テーマ:無計画の連鎖

裏テーマ:最期の選択肢

 


■ひとこと感想

 

特殊詐欺を取り扱った作品ということで、警察との巧妙な心理戦が繰り広げられるのかと思っていましたが、本編は行き当たりばったりの犯罪映画になっていて、イメージとは随分と違う印象になっていました

 

冒頭の特殊詐欺の受け子のシーンは見応えがあり、寸前で中止を決断するところも凄いですね

また、その様子の防犯カメラだけで「左耳が聞こえていない」と推理する警察も有能すぎて驚いてしまいます

 

大阪出身なので、西成のヤバさが周知のことですが、「随分と変わったんだなあ」と思いました

昔は、西成のある地域を歩くだけで危険というゾーンもあって、場所は言えませんが、盗難品などを売り捌いている裏通りなどもありました

 

南霞町の駅が燃えた頃を知っているので、このワードでわかる人にはわかると行った感じになりますねえ

それに比べたら、随分とキレイな街になったように錯覚してしまいます

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画のタイトルは、劇中に出てくるアンティークショップのような、ビリヤード場のような、バーのような変わった店の名前でした

タイトルの勁草に関してもさらっとふれていましたが、あれくらいでちょうど良い感じに思えます

 

映画は、クライムサスペンスではあるものの、前半の特殊詐欺の緻密さに比べると、後半の計画のグダグダさが際立っていました

あれでは成功するはずもないのですが、目的を達成できたことで、一応はまるく収まったように思えます

 

物語としては、かなり登場人物が多いので混乱してしまいますが、スピーディーに展開していくのと、そこまで細かなところを追いかける必要がないのは良かったと思います

でも、ある程度特殊詐欺に関する知識がないと、前半でついていけずに終わってしまうかもしれません

 


特殊詐欺について

 

特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)などで親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードを騙し取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させて、犯人の口座に送金させるなどの犯罪行為を言います

 

大阪府警のHPでは、特殊詐欺を以下の10項目に分類しています

「オレオレ詐欺」親族を名乗り、金銭的に切羽詰まった状況に巻き込む

「預貯金詐欺」警官、銀行員を名乗り、キャッシュカードの交換手続きを迫るもの

「架空料金請求詐欺」有料サイトの支払い義務が生じたなど、裁判をチラつかせる方法

「融資補償金詐欺」金融商品への融資に対し、保証金が必要として騙す方法

「還付金詐欺」医療費、税金、保険料などの還付をうたい、被害者にATMを操作させる手口

「金融商品詐欺」無価値な未公開株、高価な物品の嘘情報で購入代金を騙し取る方法

「ギャンブル詐欺」パチンコの打ち子募集などで会員登録をさせて、情報料を騙し取るもの

「交換あっせん詐欺」女性の紹介に乗じて、会員登録料や保証金を騙し取る方法

「キャッシュカード詐欺盗」警察官、銀行協会、大手百貨店などの職員を名乗り、不正使用されていると言って、キャッシュカードをすり替える方法

 

これらの10項目以外にも多岐にわたる詐欺がありますが、詳しくは下記のリンクから詳細をクリックしてくださいまし

↓大阪府警察HP「特殊詐欺とは」リンク

https://www.police.pref.osaka.lg.jp/seikatsu/tokusyusagi/8083.html#:~:text=%E7%89%B9%E6%AE%8A%E8%A9%90%E6%AC%BA%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E7%8A%AF%E4%BA%BA,%E3%82%92%E5%90%AB%E3%82%80%E3%80%82%EF%BC%89%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99

 

何かがおかしいと感じたら相談するのが一番ですが、犯罪の知識に関しては、常に最新にアップデートしておくほうが良いと思います

今だと、暗号資産に変換して持ち逃げとか、電子マネーで取引が主流になっているので、作らされた電子マネーの番号を写メするとか、暗号資産のIDとパスワードなどの情報を印字するなどして、捜査に協力できる体制を作っておくことも重要なのかなと思いました

とはいえ、「こういうことができない相手とか状況を作り出すプロ」みたいなところがあるので、実際に被害に遭った場合には難しいかもしれません

 


勁草とは何か

 

原作本のタイトルは『勁草』というもので、一応映画内でも言及されていました

「疾風に勁草を知る」という言葉があり、激しい風が吹いても耐える強い草という意味があります

これが転じて、「困難に直面した時に初めて、その人間の本当の強さがわかる」という意味になります

 

この「疾風勁草」の由来は、『後漢書』の「王覇伝』の故事に登場し、「潁川の我に従ひし者の皆逝く、而して子独り留まりて努力す、疾風に勁草を知る(光武謂覇曰、潁川従我者皆逝、而子独留努力、疾風知勁草)」となります

光武帝に仕えていたものはみんな逃げ出した、その中で1人留まったものがいた、という状況にあって、「その1人」を例えた言葉になっています

映画では、「私らは勁草にならんといかん。どんなに踏みつけられても、強く生きなあかんのや」みたいなセリフに登場していましたが、故事とは少し意味合いが違うようにも思えますね

 

ネリにとっての困難は、ジョーのやらかしだったわけですが、自分の近しい人の失敗に巻き込まれるということはよくあります

この時に「巻き込んだ近しい人がどのような行動を取ったか」によって、実際の人間関係というものが浮き彫りになってしまいます

迷惑をかけるだけかけて逃げる者もいれば、困難に一緒に立ち向かうとか、迷惑をかけないように落とし前をつけるなどがありますが、人を巻き込むほどの状況になるまでに相談をする必要があるのですね

この前段階がなく、いきなり話が舞い込んできたら疑うか、距離を置くのが得策だと思います

このような状況悪化を演出して嵌め込む詐欺的な行動をする人間もいるので、このあたりの見極めに「巻き込まれるに至る経緯」というものが活きてくるのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、前半は特殊詐欺のドキュメンタリーのようなタッチになっていますが、後半は愚かな行為をする姉弟の取り繕いみたいな感じになっていて、グダグダな感じになっていきました

最終的に、姉を逃すために弟が命を張るという展開になっていますが、それで良かったのかは微妙な感じになっています

一応、裁かれずに逃げた犯罪者がいるという結末になっていて、それが倫理的にどうなのかということなのですね

 

映画では、ネリとジョーよりも悪い奴らが登場していて、その世界から足を洗う系ではあるものの、切羽詰まって殺したという感じになっているのが後味が悪い感じになっています

せめて、2人が嵌められた、利用されるだけされて捨てられたというのならわかるのですが、事件の起点は単なる金銭欲求みたいなものなので、それで逃げ切ってしまうのはどうなのか、ということなのですね

ネリはジョーを主導していませんが、利用される弱者というには少しばかり犯罪に能動的すぎるので、すべてが解決した風になっているのは違和感があります

因果応報的な感じで、ネリに罰が下る方が、スッキリした物語になっていたかもしれません

 

ネリの境遇は無惨なもので、胡屋暗殺のシーンはスッキリすると言えばスッキリします

それでも、ジョーはこれまでのネリの過去を知りつつも何もして来なかった存在に描かれているので、本来なら虐待親を殺して刑務所に入っていたぐらいの設定があった方が良かったと感じました

ネリがジョーを命がけで守る理由が必要で、血の繋がっていない2人がどうしてそこまで強く結ばれているのか、という説得力が本作からはあまり感じられません

このあたりは原作からの改変の深掘りが弱いからだと思うので、血の繋がっていない男女としての姉弟というところだと、もっと踏み込んだものができたように思えました

最も、そこまで踏み込むと全く別の物語になってしまうので難しいと思いますが、ネリを命がけで守るジョーの理由ぐらいは欲しかったと思います

 

本作は、大阪が舞台なので、思いっきり関西弁が登場しますが、別の生活圏の人が聞き取れたのかとか、意味が通じたのかは心配になってしまいますね

西成の独特の雰囲気とか意味合いも、ある程度知っていないとネリたちの会話の意味もわからないと思うので、このあたりは地元の特権だったのかなと思いました

BAD LANDSの世界観とかは良かったと思いますが、事務所で発砲、でも誰も気づかない流れなども無茶な感じになっているので、細かなつくりも弱めかなと感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

Yahoo!検索の映画レビューはこちらをクリック

 

公式HP:

https://bad-lands-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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