■どこからどこまでが虚実かわからないが、彼にとっては全てが本物なんだと思います


■オススメ度

 

一風変わった映像体験に興味のある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.11.24(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題Bardo, falsa crónica de unas cuantas verdades、英題:Bardo, False Chronicle of a Handful of Truths(ともに「中陰、いくつかの真実と偽りの記録」と言う意味)

情報:2022年、メキシコ、159分、R18+

ジャンル:著名なジャーナリストの半生を想起する映像体験を描いたヒューマンドラマ

 

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

脚本:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ&ニコラス・ヒアコボーネ

 

キャスト:(わかった分だけ)

ダニエル・ヒメス・カチョ/Daniel Giménez Cacho(シルべリオ・ガマ:メキシコの著名なジャーナリスト)

 (11歳時:Diego Tello de Meneses

グリセルダ・シチリアニ/Griselda Siciliani(ルシア・ガマ:シルべリオの妻、生まれてすぐに亡くなったマテオに囚われている)

ヒメラ・ラマドリッド/Ximena Lamadrid(カミーラ・ガマ:シルべリオの娘、ボストン在住)

Iker Sanchez Solano(ロレンソ・ガマ:シルべリオの息子)

 (6歳時:Jerónimo Guerra

 

Rubén Zamora(シルべリオの弟)

María Cobar(ニース:シルベリオの姪)

Jorge Gidi(シルベリオの義理の兄)

Luis Couturier(ライサンダー:シルベリオの父)

Luz Jiménez(マリア:シルベリオの母)

 

Jay O. Sanders(ジョーンズ:授賞式のアンバサダー)

Andrés Almeida(マーティン:シルベリオの友人)

Rob Cavazos(シルベリオの医師)

 

Francisco Rubio(ルイス:シルベリオを敵視するテレビの司会者)

Fernanda Borches(プレゼンター)

Montserrat Marañon(TVのメイク係)

 

Fabiola Guajardo(タニア:ショーのダンサー)

Daniel Damuzi(アントニオ:シルベリオの友人?)

José Antonio Toledano(フアン・エスキューティア:電車の少年)

 

Mar Carrera(ルセロ:?)

Camila Flamenco(クロエ:?)

Clementina Guadarrama(ホーテンシア:先住民)

 

Noé Hernandez(アホロートルを売っている店の男)

Ivan Massagué(エルナン・コルテス:先住民を虐殺した男)

Luis Gnecco(メキシコの駐米大使)

Grantham Coleman(CNNのレポーター)

 

Omar Leyva(謝らないLAXの税関職員)

Grace Shen(LAXの税関の責任者)

 


■映画の舞台

 

アメリカ:ロサンゼルス

 

メキシコ:バハカリフォルニア

https://maps.app.goo.gl/b4GeFzHy8YkXNxCk6?g_st=ic

 

ロケ地:

メキシコ:メキシコシティ

Estudios Churubusco

https://maps.app.goo.gl/b1B7AFoiazHk4KPA9?g_st=ic

 

Isabel La Católica(人々が倒れる交差点)

https://maps.app.goo.gl/Hw1sHG8qbWVSHtRVA?g_st=ic

 

ボスケ・デ・チャプルテペック I セクシオン/Bosque de Chapultepec I Secc(兵隊が戦う宮殿)

https://maps.app.goo.gl/pfK8JvhxpdJuwRSeA?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

著名なジャーナリストであるシルベリオは、ドキュメンタリー番組で賞を獲り、その表彰式に向かっていた

息子ロレンゾが好きだったアホロートルを購入し、列車に乗って会場へと向かっていた

 

シルベリオはそこで不思議な夢を見始める

手のひらからこぼれ落ちたアホロートルは列車の車内を水槽に見立てて泳ぎ、そこは砂漠の中にあるセットのような一軒家へと変わっていく

 

そんなシルベリオは妻ルシア、ロレンゾとともにいろんな場所を周り、ボストンに住む娘カミーラと合流する

そして、彼らはさまざまな土地を行き、シルベリオを知る人々との交流を果たしながら、その夢を見ている理由へと向かっていくのである

 

テーマ:中陰が見せる幻想

裏テーマ:父としての存在感

 


■ひとこと感想

 

冒頭から何者かが空を飛んでいるショットになっていて、雄大なメキシコの荒野を飛んでいき、これは「そっち系」なのかなと思って見ていました

映画のタイトル『バルド』の意味を知っているとそんな余計なことを考える必要はなかったのですが、てっきり主人公の名前か何かだと思っていましたね

でも、実際にはシルベリオが死の際に見えていた映像が脳内で構築され、自分が作ったドキュメンタリーに様変わりしていきます

 

映像がとにかく凝っていますが、物語はあってないようなものでしたね

登場人物も多すぎて把握できないし、場面展開も何度も起こるので、物語の先は読めないような作りになっていました

 

最後まで観ると、冒頭とラストのつながりがわかるので一本の線になりますが、とにかく「長い夢」を共有したなあと言う感覚になりますね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

バルド(Bar do)が仏教における「中陰」であることを知っていると、映画全体が「生死の境にいるシルベリオが見ている世界(本来は死後ですが)」と言うことがわかります

チベット語が語源である中陰は、「有情が生死を繰り返し流転する過程」にある「死有(前世の死の瞬間)」と「生有(生を受ける刹那)」までの間の期間を意味しています

 

わかりやすく言えば、「死んでから転生するまでの間」と言うもので、映画内では「臨死状態のシルベリオの魂の旅」と言う意味合いになります

冒頭の空を飛んでいるかのようなショットがまさに幽体離脱している状態を表していました

 

その後の世界は「これまでにシルベリオが体験してきた過去(=走馬灯)」と、「願望」が混じっている世界で、虚実混じっていますが判断はつかないと思います

あくまでも、著名なジャーナリストがその人生を脳内構築して、その映像が絶賛されたと言う妄想を抱いている、みたいな感じになるのではないでしょうか

 


バルドについてもう少し詳しく

 

「バルド」とは「中陰」と呼ばれる仏教用語の一つで、「有情(一切の生きとし生けるもの)」が生と死を繰り返し流転しているという思想が根底にあります

この流転の中で「四有(4つの生存)」の中で「前世の死の瞬間(死有)」から、「次の生を受ける刹那(生有)」までの時期のおける「幽体」の状態を言います

なので、この映画のシルベリオは死んでいるので、冒頭の荒野を駆けて飛んでいくというイメージショットは、死んだのちに魂が浮遊して、次の生を探している段階であると言えます

 

「四有」には、

死んでから次の生を受けるまでの期間「中有(ちゅうう)」

生を受ける瞬間「生有(しょうう)」

生を受けてから死ぬまでの「本有(ほんぬ)」

死ぬ瞬間「死有(しう)」

の段階になります

バルドはこの「中有」の期間にあたり、「中陰」「中蘊」などとも呼ばれます

 

この中陰と呼ばれる期間はいわゆる「死後49日間」のこと言い、四十九日の供養を満中陰法要と言います

仏教では「49日間は来世が決まらない」とされていて、次の転生先に向かうまでの期間として「中陰」という呼び方をしています

亡くなった日を1日目としますが、関西では亡くなった前日を1日目と考えることもあります

死んだ人の霊は7日ごとに生前の罪を裁く裁判が行われるとされていて、それによって極楽浄土に行けるかどうかが決まります

そのために、7日ごとに法要を行う場合もあるのですね

 

この映画ではその中陰の期間を描いていますが、映画では「バスで倒れて病院で死亡確認がなされるまでの期間」になっていますが、それが49日間だったのかまではわかりません

映像体験としては瞬間的ではありますが、家族が集結しているとか、彼らの会話から想定すると、昏睡時間はそこそこあったのかなあと思ってしまいます

 


虚実の中に潜む父の後悔

 

映画の中にはたくさんの人が登場し、その全てがシルベリオと関係がある人物でした

知人、友人、過去の体験などが入り混じり、その中で妻ルシア、娘カミーラ、息子ロレンゾと一緒に旅をしているような感じになっています

冒頭では生まれてすぐに亡くなった長男マテオの出産の現場が描かれ、その後、ボストンにいる娘のところにいったりします

ジャーナリストとして著名なシルベリオなので、賞をもらったり、TVのトーク番組に出たりしますが、これらの時系列は結構無茶苦茶なのかなと思いました

 

最終的にはスペインの歴史(米墨戦争)にふれていて、このあたりは彼のジャーナリストとしての仕事だったのかなと思いました

また、エルナン・コステスあたりはスペインの歴史に詳しい人ならご存知のアステカ帝国を滅ぼした伝説の人ですが、この人物とどう関わりがあったのかはよくわかりませんでしたね

 

これらの映像体験に同行しているのが家族なのですが、彼らがこの旅に同行しているのは、シルベリオ自身が家族との関わりの中で残された後悔というものがあったのだと思います

妻との後悔の念はマテオの死であるし、カミーラとの和解、ロレンソとの交友などがわかりやすいものだったと思います

描かれている家族との関わりはシルベリオ自身の願望であると思うので、リアルな部分では問題は残ったままなのかもしれません

 

シルベリオの脳内で起こっていることを映像化しているので脈絡などはないのですが、このような走馬灯に時系列のような法則性はないでしょう

なので、矢継ぎ早に意味の繋がらない映像がありますが、この理解不能に思えるものこそが、最も真実に近いのかなと思えてきますね

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は理解するよりも感じるというもので、次々に脳内に溢れ出すシルベリオの人生を体感するというものでした

バルドの間に起こった彼の様々な葛藤と願望に付き合う映画なので、意味がわからないというのが最も正しい理解なのかもしれません

ネットフリックス作品の劇場先行作品なので、ほとんどレビューらしきものがないのですが、12月の配信が始まればこぞっていろんな情報が揃うと思います

残念ながらネトフリには未加入なので見返すことはないので、配信が始まれば、「間違って覚えている」というツッコミが方々から入るかもしれません

 

映画は「バルド」の意味を知っているとすんなりと混沌とした世界観に入っていけますが、そうでない場合は若干混乱するかもしれません

それでも映像体験として、様々な表現があるので楽しめますが、やはり長すぎるので中盤あたりで集中力が切れてしまいます

特に物語性がわかりにくいので、早々に脱落してしまう人にとっては苦痛でしょう

そう言った集中力が切れた人たちの所作が気になる人は配信で見た方が良いかもしれません

脱落して退場してくれればいいのですが、出ずに他のことをされる(スマホいじるとか)とちょっと厄介かなと思います

 

私は基本的にミニシアター系は最前列で観る人なので他人の所作が気になることはありませんが、座る位置によっては巻き添えを喰らう可能性もあります

でも、このブログを読んでしまう人の大半は配信された後だと思うので、これらの注意喚起は必要なかったかもしれません

私もかなりのシーンで記憶が飛びそうになって、数人のキャストがどこに出ていたか覚えてられませんでした

大まかのストーリーに関しては欠落していないと思うのですが、登場人物が多すぎて、その脈絡がないところとキャラクター同士の関連性のなさが混乱の要因かなと思います

もし、気が変わってネトフリに加入して再視聴したら、こっそりとキャスト欄の概要は訂正してしまうかもしれません

現時点では、それに時間を割いている余裕はないので、間違っていたら「ツイッターあたりで返信してくれたら」サラッと直しておきますね

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/385287/review/58a89d4d-8375-4a82-b527-1fb368e27e66/

 

公式HP:

https://www.bardo-jp.com/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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