■30年越しに続編を作るには、知らない人の視点で、物語の構造を1から見直す必要があるように思いました


■オススメ度

 

ティム・バートンの世界が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.9.30(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:Beetlejuice Beetlejuice

情報:2024年、アメリカ、105分、PG12

ジャンル:幽霊と結婚させられそうになる霊能力者とその家族を描いたホラーコメディ

 

監督:ティム・バートン

脚本:アルフレッド・ゴフ&マイルズ・ミラー

前作『ビートルジュース(1988年)』

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キャスト:

マイケル・キートン/Michael Keaton(ベテルギウス/ビートルジュース/Beetlejuice:死後の世界から来た幽霊)

 

ウィノナ・ライダー/Winona Ryder(リディア・ディーツ/Lydia Deetz:「ゴーストハウス」の司会者、霊能力者)

サンディアゴ・カブレラ/Santiago Cabrera(リチャード/Richard:リディアの元夫)

 

キャサリン・オハラ/Catherine O’Hara(デリア・ディーツ/Delia Deetz:リディアの継母)

 

Mark Heenehan(デリアの夫の肉体)

Charlie Hopkinson(デリアの夫の声)

 

ジェナ・オルテガ/Jenna Ortega(アストリッド・ディーツ/Astrid Deetz:リディアの娘、高校生)

 

ジャスティン・セロー/Justin Theroux(ローリー/Rory:リディアの恋人、TVプロデューサー)

Walles Hamonde(グレン/Glen:番組のディレクター)

 

ウィレム・デフォー/Willem Dafoe(ウルフ・ジャクソン/Wolf Jackson:元俳優の幽霊刑事)

Georgina Beedle(ジャネット:ジャクソンの秘書)

 

モニカ・ベルッチ/Monica Bellucci(ドロレス/Delores:ビートルジュースの元妻)

 

アーサー・コンティ/Arthur Conti(ジェレミー・フレイザー/Jeremy:ウィンターリバーのツリーハウスの青年)

Jane Leaney(ジェレミーの母)

David Ayres(ジェレミーの父)

 

バーン・ゴーマン/Burn Gorman(ダミアン神父/Father Damien)

 

Amy Nuttall(ジェーン・バターフィールド/Jane Butterfield:ゴーストハウスを管理する不動産屋)

Skylar Park(ジェーンの孫)

 

Rebecca O’Mara(ジョディ・ウェルチ/Jody Welch:リディアの番組の出演者)

Adam Speers(エメット・ウェルチ/Emmet Welch:リディアの番組の出演者)

 

【冥界の管理人たち】

ニック・ケリントン/Nick Kellington(ボブ・シュリンカー/Bob-Shrinker:ビートルジュースの手下のゾンビ)

Matthew Lyons(デイブ・シュリンカー/Dave-Shrinker:ビートルジュースの手下のゾンビ)

Paul Warren(トム・シュリンカー/Tom-Shrinker:ビートルジュースの手下のゾンビ)

 

ダニー・デヴィート/Danny DeVito(死後の世界の管理人、清掃人)

Liv Spencer(オルガ/Olga:ウルフの部下、槍が刺さった職員)

Daryl Kwan(エディ/Eddy:冥界のクリーニング屋)

Juliana Yazbeck(マミー:入国審査官)

 

【死んだ人関連】

Sami Slimane(タイガー/Le Tigre:ダリアの舞台のグラフィティ・アーティスト)

Sophie Holland(ホットドックが頭に刺さったトイレの女)

Max Pemberton(死んでいるサーファー男)

Caroline Lawrie(死んでいる猫好きの女)

Philip Philmar(フードを被った異教徒)

Gianni Calchetti(死んでいる金ぴかスーツの男)

Ben Ubergs(幽霊の警官)

Sean Kitosi-Isanga(ソウルトレインの車掌)

Chloe Driver(フェリーニ/Fellini:ソウルトレインのダンサー)

James Fisher(冥界の探偵)

 

Filipe Cates(ヴラド/Vlad:リディアの夢に登場する吸血鬼)

 

Alex Michael Stoll(TVのインタビュアー)

Rupi Lal(アストリッドの担当医師)

Stefano Marchetti(イタリア人ナレーター)

Callan Taverner(SPACTの警官)

Sofia Fernlöf(インフルエンサー)

Travis Campbell(葬式の弔問者)

Ian Hawkins(葬式の弔問者)

Christopher C. James(葬式の弔問者)

Tim Kavanagh(葬式の弔問者)

Nell Burton(アストリッドのクラスメイト)

Sean Verre(ジョシュ/Josh:トリックオアトリートの子ども)

Noah Mendes(イーサン/Ethan:トリックオアトリートの子ども)

Bea Svistunenko(ナディア/Nadia:トリックオアトリートの子ども)

 

Stephen K. Amos(オーケストラの指揮者)

Olivia Valentine(トランペット奏者)

Elsie Bridgwood(チェロ奏者)

Brian Maitland(ヴァイオリニスト)

Oliver Dracup-Nicholls(オルガン奏者)

 


■映画の舞台

 

2024年、

アメリカ:コネチカット州

ウィンターリバー

 

ロケ地:

イギリス:ロンドン

 


■簡単なあらすじ

 

前作から30年、リディアはビートルジュースから解放されたと思っていたものの、最近になって頻繁に幻覚を見るようになっていた

彼女は夫が他界して以来、娘のアストリッドと疎遠の関係になっていて、今では「ゴーストハウス」という霊能番組のホストで財を成していた

 

ある日、母デリアから父のチャールズが死んだと知らせを受ける

父はバードウォッチングのために外国に行っていたが、途上で飛行機事故が起き、サメに喰われてしまったと言う

リディアは母と共にアストリッドの元へ向かい、そして「ゴーストハウス」にて葬式を挙げることになった

 

通夜の最中、屋根裏に上がったアストリッドは、そこで奇妙な模型と謎のチラシを見つける

そこには「ビートルジュース」と書かれていて、アストリッドがそれを読み上げようとすると、リディアは力づくでそれをやめさせた

 

テーマ:執念と溺愛

裏テーマ:抗えない遺伝子

 


■ひとこと感想

 

続編と知らずに鑑賞

事前にチェックしていた段階で30年前の続編とわかって、躊躇していたのですが突撃

単体というよりは「続編っぽさ」が随所に残っている作品で、予習しないとわからない部分が多いように思えました

 

特に「ビートルジュース」を3回唱えたら現れるというものが、冥界では1回でOKだったり、もう1回3回唱えたらどうなるかなどの説明がほぼ皆無になっていました

なので、ラストの地上界での「ビートルジュース」のくだりが何でああなったのかはわからなかったですね

この辺りは、前作のオチと関係してそうなので、観ておいた方が良かったかな、と感じました

 

物語は、霊能力を信じていない娘と仲違いしているという設定から、リディアの父の死去をきっかけに修復できるかという内容で、アストリッド自身に「奇妙な出会い」というものが訪れます

この他にも、ビートルジュースの元妻のドロレスの復活とか、それを追う冥界の刑事ウルフなども登場し、キャラクターだけはやたら多かったように思います

さすがにきちんとまとまっているとは思えない感じで、かなりとっ散らかっていましたねえ

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

わかりやすい物語なのでネタバレどうこうはないのですが、アストリッドの命を取り返す流れとか、699条?に違反しているみたいな流れからのビートルジュース消滅など、まとめ方が結構雑だったように思いました

どうやらソウルトレインに乗って、完全に冥界に行くとアウトなようですが、その辺りを察するのはほぼ無理な感じに端折られていたように思います

 

物語の本筋は、アストリッドを助けたいためにビートルジュースと契約するというもので、それをどのように無効化するのかというものだったと思います

それが冥界のルール違反だったから、というのは結構強引で、ビートルジュースがそれを知らない理由がわかりません

彼は冥界でコールセンターみたいな仕事をしていたので、ある程度の知識はありそうに思えました

 

映画は、この世界観を受け入れられるかどうかで、アトラクションムービー的な面白さを感じられればOKでしょうか

さすがに気持ち悪い描写が多いので個人的にはキツかったですが、好きな人は好きなのかなと感じました

それにして、30年で幽霊が年取ってるのは不思議な感じがしましたねえ

 


前作はどんなお話?

 

前作は、1988年に公開された『ビートルジュース(Beetlejuice)』で、監督はティム・バートン、ビートルジュース(ベテルギウス)役も変わらずマイケル・キートンとなっています

前作にて登場したリディア、デリアもそのまま続投で、人間側はそのまま歳を取っていると言う流れになっていました

 

物語は、コネチカット州ウィンターリバーが舞台となっていて、アダムとバーバラが休暇を利用してやってきました

彼らの家族であるジェーン・バターフィールドは不動産業者(今作にも登場)で、夫妻に家を売るように言っていました

アダムの趣味は屋根裏で模型を作ることで、その材料を買うために家族で買い物に出かけます

でも、その帰りに事故を起こしてしまって、車ごと川に落ちてしまいました

 

その後、夫妻は家に無事に帰りましたが、どうやって帰ったのか思い出せなくなります

家の玄関を開けたアダムは、そこに砂漠が広がっていて、サンドワームが生息する別世界に入ってしまいます

彼はそこから戻りますが、バーバラは2時間も行方不明だったと言い、アダムの認識では数秒だけだったと感覚がおかしくなっていました

その後、二人はあるハンドブックを見つけ、自分たちが死んで幽霊になったのではと思うようになりました

 

その後、家はチャールズ・ディーツとデリアの夫婦が購入することになりました

彼らには10代の娘リディアがいて、彼らはその家をポストモダン風のデザインに改装していくことになりました

アダムとバーバラはなんとかしてこの家族を追い出したいと思い、そこでビートルジュースと言う「バイオエクソシズム」を取り扱っている男の広告を見つけます

二人はその広告に従ってビートルジュースを探しますが、その間にも改築は進んでしまいます

その後、一家を出て行かせるために、ビートルジュースがあれこれと行動を起こすと言う内容になっていました

 

これ以上はネタバレになるので控えますが、いわゆる「人間怖がらせ屋」と言うものをビートルジュースが行なっていて、それに巻き込まれたのが本作の主人公であるリディアと言う構図になっています

そして、前作にて「リディアはビートルジュースと約束を交わす」のですが、それが本作にも繋がっていますね

前作でもサンドワームが活躍しているので、それを知っていると懐かしい再現映像のように思えてしまいます

ちなみにビートルジュースの名前はベテルギウスなのですが、これはベテルギウスの英語読みの発音に「Beetle」「Juoce」を当てはめたものになっています

 


30年越しに続編を作る意味

 

本作は、前作が1988年なので、約30年の月日が経っていることになります

10代だったリディアも年頃の娘を持つ年代になり、彼女の母デリアはおばあちゃんみたいな感じになっていました

個人的にはリアルタイムで観たこともなく、予習もできなかったのですが、観ておかないと意味のわからないことが多すぎるように思います

 

本作は、30年後に続編を作ると言うプロジェクトになっていて、いわゆるリメイクではない正当な続編となっています

前作からも年月は30年近く過ぎていることになり、リディアの過ごした時間は現実世界と同じものになっていました

最近の流行りなのか、単なるネタ切れなのか、数字が読めるからなのかは分かりませんが、リメイクではなく「数十年越しの続編」と言うのは思った以上にあります

散々、リブートやリメイクをして来たのに、いきなりオリジナルの正当な続編!みたいな映画も最近公開されていましたが、これらは必要悪に近いような印象がありますね

 

これらの企画自体は悪くないと思いますが、そもそも30年後に続編を作ろうと言う企画を30年前には立てないので、今の時流を見ながら「作れば行けんじゃね?」的な感覚なのだと思います

ただし、続編となると、空白期間の分だけ俳優は歳を取っているので、それを考慮する必要が出てきます

『ビートルジュース』のその後を描くとしても、30年後に10年後の話を作るのは不可能に近く、キャストを総入れ替えすると続編感というものは失われています

脇役を変えるのはセーフでも、ビートルジュースとリディア、デリアを変えるわけには行きません

 

これらの制約があっても、なお作りたいという何かがあって、それ自体は否定しようがありません

30年も経てば、公開時の視聴システムそのものが違うので、前作を今の映画館で上映するのにはハードルが高くなってしまいます

日本の場合だと、金ローなどのテレビ番組でおさらいをすることは可能ですが、前作との関連度が高ければ高いほどに、前作鑑賞を何らかの形でアピールする必要があります

今は4Kリマスターが普及し始めていますが、続編公開のためにわざわざ4Kリマスター版を作って、映画館で上映するというのはハードルが高いので、なかなか従来のファン以外を取り込むことは難しいように思えます

 

これらのハードルを超えてようやく続編の鑑賞に至るのだと思いますが、「前作を観れなかった人」もしくは「続編と知らなかった人」向けのエクスキューズを今作内のどこかで描く必要性が出てきます

これをどれだけスムーズにこなせるかが鍵なのですが、本作はそれがうまくいっているとは思えない、というのが最大の弱点だったように思いました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作のような年月を経過した続編に限らず、続編と呼ばれる作品には「前提とする過去譚をいかに説明っぽくせずに混ぜるか」という難題があります

時代背景とか、時流の変化は冒頭の説明(字幕やモノローグ)でも良いのですが、ビートルジュースを3回言ってはダメな理由とか、彼を死後の世界に送還させた理由などの、コンテンツの一番重要な部分をどう引用するかはとても難しいと思います

本作の場合だと、予告編で「3回呼んだら出てくる」ということがわかりますが、その脅威がどんなものかまではわかりません

この視点はアストリッドの視点と同じで、リディアがビートルジュースを恐れる理由がわからない、というものになっているので、そこまでは良いのでしょう

 

これは、アストリッドの視点で物事を進め、それが初見の観客の目線と合わせているところから起こっていて、この流れはOKだと思います

理由はわからないけど、ビートルジュースは母にとっての恐怖の存在である、というものがあって、なぜ3回なのかは後々描いていくことになります

前作を見ていると、ビートルジュースとの契約の際に「3回呼ぶ」というものがあったのでわかりますが、本作だけではそこまでわかりません

これが前作を観ている前提で進んでいる物語となっていて、本来ならば「ビートルジュースと交わした契約書」というものを深掘りし、それをアストリッドが知ることによって、今回が初めての観客にも知れ渡ることになる、という流れを作る必要があったように思えました

 

映画では、このエピソードの後にもう一度「ビートルジュースと3回唱える」というシーンがあって、それによって彼は死後の世界に帰ることになります

ビートルジュースを現世に呼び、死後の世界に帰させるための呪文のようなものですが、今回の場合は「無効の契約書を持ってきたことに対する罰」のようなものなのですね

このビートルジュースの法律違反に気付いたのがアストリッドで、それを踏まえた上でリディアが唱えることになるのですが、そのあたりの呪文?の構造が良くわかりませんでした

契約書をきちんと読めばいろいろ書いているとか、死後の世界の法律と罰の執行に対して、罪人の名前を3回呼ぶみたいなものがあると思うのですが、本作では明示されていなかったように思えました

 

わかりやすいのは、「ビートルジュースの名前を3回呼びそうになる」という「未遂」を何度か描き、それをアストリッドが疑問に思うという展開を描くだけで良かったと思います

ビートルジュースは3回呼ばれたがっている(召喚のため)のに、それが為された後に3回呼ばれることをなぜ嫌うのか

普段は3回呼ばれても何ともないけど、法律違反を起こしたことでそれがトリガーになることをビートルジュースだけが知っていた

そして、ビートルジュースは自分の罪を認知していて、それがアストリッドによって白日の元に晒される、という展開になります

 

この一連の流れをどう組み込むかが課題なのですが、ビートルジュースに対して冷静でいられるキャラがそれを認知するという流れになるので、それはアストリッドで正解なのでしょう

映画は、このあたりの流れがかなり激流で、気がついたらビートルジュースが死後の世界にぶっ飛んでいたという感じだったので、もう少し丁寧に日常パートを描いていたら、もっとわかりやすくなったのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101874/review/04314481/

 

公式HP:

https://wwws.warnerbros.co.jp/beetlejuice/index.html

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投稿者 Hiroshi_Takata

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