■この映画が「なかったこと」にならないか、ちょっとだけ心配しているぞ
Contents
■オススメ度
MCUをとりあえず観ている人(★★★)
ブラック・パンサーのファンの人(★★★)
チャドウィック・ボーズマンの追悼の意を表したい人(★★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/bpyPGojW2MM
鑑賞日:2022.11.11(MOVIX京都 ドルビーシネマ)
■映画情報
原題:Black Panther:Wakanda Forever
情報:2022年、アメリカ、161分、G
ジャンル:絶対的君主亡き後の王国を描いたファンタジーアクション
監督:ライアン・クーグラー
脚本:ライアン・クーグラー&ジョー・ロバート・コール
原作:スタン・リー&ジャック・カービー(『ブラックパンサー』)
前作:『ブラックパンサー』↓
キャスト:
レティーシャ・ライト/Letitia Wright(シュリ:ティ・チャラ/ブラックパンサーの妹、ワカンダ王国の王女)
アンジェラ・バセット/Angela Bassett(ラモンダ:ティ・チャカ国王の妻、ティ・チャラとシュリの母)
ルピタ・ニョンゴ/Lupita Nyong‘o(ナキア:ワカンダのウォードックの一員、ティ・チャラの元恋人、ハイチ在住)
ダナイ・グリラ/Danai Gurira(オコエ:ワカンダ国王親衛隊「ドーラ・ミラージュ」の隊長)
フローレンス・カサンバ/Florence Kasumba(アヨ:「ドーラ・ミラージュ」の一員、No2)
ミカエラ・コール/Micheal Coel(アネカ:「ドーラ・ミラージュ」の一員、エナジータガーを好む戦士)
ウィンストン・デューク/Winston Duke(エムバク:ワカンダの山奥に住むジャバリ族のリーダー)
ドミニク・ソーン/Dominique Thorne(リリ・ウィリアムズ/アイアンハート:アーマードスーツを開発する天才少女、アメリカ在住)
テノッチ・ウエルタ/Teonoch Huerta(ネイモア/ククルカン:海の王国「タロカン」の王)
(幼少期:Manuel Chavez)
メイベル・カデナ/Mabel Cadena(ナモーラ:ネイモアの従兄妹)
(幼少期:Maneol Chavez)
マリア・メルセデス・コロイ/Maria Mercedes Coroy(フェン王女:ネイモアの母)
(若年期:Irma-Estel Laguerre)
アレックス・リヴィナリ/Alex Livinali(アットゥマ:タロカンの武将)
マーティン・フリーマン/Martin Freeman(エヴェレット・ロス:ワカンダに恩があるCIA)
Julia Louis Dryfes(ヴァレンティーナ:エヴェレットの元妻、CIA長官)
レイク・ベル/Lake Bell(CIAの研究員)
リチャード・シフ/Richard Schiff(アメリカ国務長官)
Gigi Bermingham(フランスの国務長官)
Divine Love Konadu-shu(トゥーサン:ハイチの少年)
■映画の舞台
ワカンダ王国
タロカン王国
ロケ地:
アメリカ:マサチューセッツ州
ウースター/Worcester
https://maps.app.goo.gl/VeGJUd8pfALdoke17?g_st=ic
アメリカ:ジョージア州
ブランズウィック、メアリーロスウォーターフロントパーク
https://maps.app.goo.gl/bQRZgXnZG2Sk1vGR9?g_st=ic
プエルトリコ
■簡単なあらすじ
病魔に伏した国王ティ・チャラを救うため、妹のシュリは「ハート型ハーブ」の生成に着手していた
だが、その成果は得られぬまま、ティ・チャラは死んでしまう
彼の死後、王国の主人となったのは母ラモンダで、国際社会は一向にヴィブラニウムの情報提供をしない王国に苛立ちを見せていた
だが、ラモンダは水面下で暗躍するエージェントを会議に連行し、「あなたたちの思想の方が危険である」と突きつけるのである
その頃、アメリカのMITの学生であるリリ・ウィリアムズは、ヴィブラニウムを感知できる機械を発明していて、それを利用してワカンダ以外の海域でそれを発掘しようと試みていた
その機械は南太平洋のある地点を示し、アメリカはその場所を掘削しようと試みる
だが、その動きを察した謎の集団は、その施設を占拠してしまう
その集団は海底に住むタロカン王国の戦士たちで、その海底の奥底には王国が保管するヴィブラニウムがあったのである
一連の事件はワカンダ王国の仕業であると国際世論は協調し、ラモンダは苛立ちを隠せない
そんな折、タロカンの王ネイモアは探知機を開発した研究者を殺そうと企む
それを感知したシュリはオコエとともにMITに侵入し、リリを保護することになった
だが、そこにタロカンの部隊が襲撃し、リリとシュリは拿捕されてしまうのであった
テーマ:王国とは何か
裏テーマ:映画的追悼
■ひとこと感想
前作の内容をすっかり忘れていて、どんな話だったかを英語版Wikiで下調べをして鑑賞
ほとんど前作と関係ないような印象を持ってしまいましたが、一応それっぽい設定やらキャラなどは出てきていましたね
関係ないと感じたのは、やはりティ・チャラの危篤から始まるという無理矢理感が拭えなかったからだと思います
映画はフィクションなのですが、本作は半分リアルになっていて、映画内で追悼式を行ったという感じになっています
ファンの人としては良いと思うのですが、映画単体で観た時に、この映画は『ブラックパンサー』の続編なのかという微妙なポジションに収まってしまうような感じがしました
映画は「国王不在後の内乱」と隣国との関係、ひいては国際社会のあり方というものを描いています
ワカンダ目線なので、ワカンダの保有する技術を奪おうとする欧米諸国という構図になっていましたね
CIA長官がグウの根も出ないほどの悪人設定になっていたのは笑うところなのか悩んでしまいますね
ともかく、このシリーズを次につなげるためのステップとしては及第点かなと思いますし、これ以上のものを作るのも難しいのかなと感じてしまいましたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
エンドクレジット後にも映像あります字幕があったので、最後まで観ていたのですが、ポストクレジットの後のワンシーンで終了していましたね
そのシーンは次作への布石となっていますが、国外にいる継承者というややこしそうな問題に発展しそうな予感がしないでもありません
ワカンダ側からすれば国王の隠し子みたいなことになっているので、王位継承しているシュリのメンタルが崩壊しないかと不安になってしまいます
もっとも、「ラッキー!」みたいなノリで譲りそうですが、長老たちは黙ってられないでしょうねえ
なので、次回作は隠し子が国に帰ってきて総スカンを喰らう中で奮闘するという物語になってしまうのでしょうか
映画は綺麗な映像とアクションを楽しむものですが、やはり全編に漂う「葬式で流される故人のビデオ感」というものが拭えません
さらにキルモンガーまで出てきて説教しちゃうので、本作の立ち位置というものが微妙に思えてしまいましたねえ
単体で観ると評価できないスピンオフみたいになっているところが微妙かなと思いました
■続編を作る難しさ
本作は『ブラックパンサー』の続編で、主演のチャドウィック・ボーズマンの死去に伴って、方向転換を余儀なくされてしまいました
前作では、「ヴィブラニウム」による科学力にてワカンダ王国自体を外部から守るために見えなくしていました
それが見えるようになってしまい、諸外国との連携をどうするかという難題が示されていきます
ティ・チャラの父であるティ・チャカ国王(ややこしい)の死去に伴って、ティ・チャラが王位につき、王国の方向性を指し示していました
それが、中の人の死去によって、「さあ、どうする」という問題が浮上します
制作班が思いついたのは、「チャドウィック・ボーズマン」を生かしながら、次へのステップを踏むというものでした
なので、暫定王政として、母親が政権を握ることになり、妹シュリを自由に動かせるようにします
ここで「兄の意志を受けて戦う」とならないのは、ぶっちゃけると『ブラックパンサー3』で「男性王位に戻すから」という前提条件があったからだと推測できます
案の定、ティ・チャラとの元恋人の間には「子どもがいた」という流れを呼び起こし、それによって「彼が成人したら、妹の王政も暫定的だよね」ということが仄めかされていきます
映画ではラモンダが女王となるものの、政権運営能力がないことで隙をつかれまくり、王国存亡の危機へと向かっていきます
無能がトップになると廃れるの典型にようになっていて、有事に対する危機管理がない割には偉そうというのがラモンダだったように見えました
その後、ラモンダの死去により、シュリが暫定王政に君臨することになりました
ここでも「感情論が優先される王国運営」によって、更なる窮地を引き起こし、こともあろうに「死んだキルモンガーが夢に出てきて説教をする」という愚策へと突き進んでいきます
これらの流れによって、物語は「女性が政権を握ると感情が優先されて国民を巻き添えにしてしまう」みたいな感じにまとめられているのがどうなのかなと思ってしまいました
■これからどこへ向かうのだろうか問題について
映画のポストクレジット後には、ハイチに住むナキアの元に「お忍びで女王が来訪」し、そこで「実は隠し子がいるの」という展開になっています
ハイチでの戦いによって、あの時の少年が危険に晒されていて、それを助けるというくだりがあったように思っていましたが(すまん、寝落ちしていたかもしれん)、そこで彼にふれたラモンダがノーリアクションだったように思えました(別の少年だったかもしれない)
因果を絡めるうまさというものがあまりないのですが、それは「ラストシークエンスで驚かせてやろう」と考えたからと邪推しています
映画はトゥーサンの登場によって、次の王様問題が勃発します
王国内で歓迎されるのかはわかりませんが、そのための代償というのはそこそこ必要のように思えてしまいます
『ブラックパンサー3』がどのようなテイストで描かれるかはわかりませんが、イメージとしては成人したトゥーサンが王国に足を踏み入れるものの、異邦人としての認識を受けて、オコエあたりと戦うことになるのかな思ってしまいます
そこで、止めに入るシュリ王女の告白に愕然とするオコエ(それでお前はいいんかい)との間で対立が起こるとか、ナキアがしゃしゃり出て長老たちと揉めるなどの諍いが起きるのは間違いないでしょう
そこから、シュリが権力にしがみつくかどうかという問題に発展するでしょうし、そこで「女流権力」の是非を問うという流れになっていくのかもしれません
制作サイドが女流権力をどう捉えていくかということで方向性が決まると思いますが、今回のテイストを踏襲すると一部の団体から反発が起こるのは必至なのかなと思ってしまいますね
それでも突き進むのかはわかりませんが、次作はどう考えても「隠し子をどう受け入れるか」という話にしかなり得ないと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
次作の話をするのもアレですが、その話になってしまうのは、本作が『ブラックパンサー2』ではなく『ブラックパンサー1.5』みたいなポジションになっているからでしょう
どうしても「男系につなげたい」という思惑があるけど、王国には女性しかいないのですね
エムバクが政権を担うとなると『ブラックパンサー』から逸れてしまうし、今回の映画で「次のブラックパンサーを用意するのは無茶」という事情があるといえるでしょう
本作は「チャドウィック・ボーズマンの追悼」と「次作に向けての布石を敷く」という命題から避けて通れなかったので、このような形になったのかなと「勝手に」思っています
最適解かどうかはわかりませんが、次作で隠し子とシュリ政権が衝突するのであるならば、シュリ政権の有能さというもので締めても良かったと思います
なので、キルモンガーの幻影に説教されるというのはどうかと思いますし、自分自身で切り開いていくとか、あるいは戦いの中で「トゥーサン少年との邂逅があって自分の運命を自覚する(彼が成長するまでは自分ががんばる的な)」というのが自然な流れであったと思います
シリーズ化された作品というものは、ある主体的なメッセージというものに対して、時の権力者がどう行動するかというものがメインになっていきます
前作では「国交正常化」を行うティ・チャラがいたので、その流れを踏襲するか方針転換するか、というのが本作の権力者の行動基準になってきます
それを考えると、ラモンダもシュリも方向性のないまま流されてしまっていて、次政権で起こるであろう「国交正常化」に対して何の布石も打てなかったのではないかと思います
ラモンダが死んだ段階でシュリが感情的になって「国交断絶」の方向へ舵を切り、その過程において「現状を生み出したタロカンを制圧する」というのがスムーズなシナリオなのかなと思いました
次作がどうなるかで本作の制作意義が問われますので、「なかったことにならないことを祈りながら」、次回作を楽しみに待ちたいと思います
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/383977/review/94100498-2ae0-4d4c-b2df-c3b1730d7948/
公式HP:
https://marvel.disney.co.jp/movie/blackpanther-wf