■結婚前夜の旅行の中で、未来を掴む友人たちはたくましい


■オススメ度

 

男の友情物語が好きな人(★★★)

ロードムービーが好きな人(★★★)

スペイン旅行に行った気分に浸りたい人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.11.10(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:Zindagi Na Milegi Dobara(「二度と命を得ることはない」と言う意味)

情報:2011年、インド、153分、G

ジャンル:幼馴染3人がスペインで自分を見つめ直すロードムービー

 

監督:ゾーヤー・アクタル

脚本:ゾーヤー・アクタル&リーマー・ガーグティ

 

キャスト:

リティク・ローシャン/Hrithik Roshan(アルジュン/アルジュン・サルージャ:ロンドンの金融ブローカー)

アバイ・デーオール/Abhay Deol(カビール・デワン:父の建設会社で働く青年)

ファルハーン・アクタル/Farhan Akhtar(イムラーン・クレシ:広告のコピーライター)

 

カルキ・ケクラン/Kalki Koechlin(ナターシャ・アローラ:カビールの婚約者)

 

カトリーナ・カイフ/Katrina Kaif(レイラ:アルジュンを指導する水泳のインストラクター)

アリアドナ・カブロル/Ariadna Cabrol(ヌリア:レイラの友人)

 

ナスィールッディーン・シャー/Naseeruddin Shah(サルマーン・はビール:イムラーンの生き別れた父、世界を旅する画家)

ディープティ・ナヴァル/Deepti Naval(ラヒラ・クレシ:イムラーンの実母)

Anupam Kher(アブ:イムラーンの義父、映画では登場シーンカットされている)

 

Suhel Seth(ハリ・アローラ:ナターシャの父、実業家)

Anuraha Chandan(ナターシャの母)

Anish(タニヤ・アローラ:ナターシャの姉)

Mayank Gupta(ナターシャの男友達)

 

Mandi Sidhu(ローヒニー:ロンドン在住のアルジュンの元カノ)

 

Nandini Sen(アンジェリー:誕生日を迎えるカビールの母)

Ravi Khemu(カビールの父、建設会社の社長)

 

Concha Montero(セニョリータ:フラメンコダンサー)

Barbar Holzer(女性のスカイドライバー)

Lolo Herrero(スカイダイビングのインストラクター)

 

Peter Wong(ヤマモト:日本人ビジネスマン)

Shilpa Singh(カリシュマ:フライトアテンダント)

 


■映画の舞台

 

スペイン:バルセロナ

https://maps.app.goo.gl/5FGHMTgMsQXHTrYn9?g_st=ic

 

コスタ・ブラバ(北東部)

https://maps.app.goo.gl/avcvCU5AV66HmfsA7?g_st=ic

 

ブニョール(東部、トマト祭り/La Tomatina)

https://maps.app.goo.gl/8AvzWFD5EmFUP83Z6?g_st=ic

 

セビリア(南部)

https://maps.app.goo.gl/nn4ZiMcKxLhLZSR99?g_st=ic

 

バルデナス・レアレス自然公園(北部)

https://maps.app.goo.gl/XwycrXsezvPN1E6U6?g_st=ic

 

パンプローナ(北部、牛追い祭り/Fiesta de San Fermin

https://maps.app.goo.gl/M4eNk2qapFf7F2uD8?g_st=ic

 

ロケ地:

イギリス

エジプト

ムンバイ

スペイン:バルセロナ

スペイン:ブニョール

スペイン:アンダルシア

スペイン:パンプローナ

 


■簡単なあらすじ

 

幼馴染のカビール、アルジュン、イムラーンは大学の卒業旅行が先延ばしになっていたが、カビールの独身最後にやうやく敢行することになった

カビールは資産家の娘のナターシャと婚約していて、これが最後の友人たちだけの旅行になっていた

 

イムラーンには隠された旅の目的があり、それは実父のサルマーンがスペインに住んでいた

旅の途中でそこに寄ろうと考えていたが、それはどうして自分を捨てたのかを知るためだった

 

ロンドンで金融ブローカーをしているアルジュンはそれどころではなく、40歳でFIREを考えている若者で、プライベートは二の次だった

恋人ローヒニーとも別れ、今では一日にいくら儲けたかに執着をしていた

 

アルジュンは旅行に消極的だったが、カビールの「お前が来ないなら中止だ」という強い言葉に、旅先で仕事をこなしながらついていくことに決めたのであった

 

テーマ:人生は一度きり

裏テーマ:今を生きた先に未来はある

 


■ひとこと感想

 

男三人のロードムービーの中で、旅先で美女と仲良くなり、それが浮気と誤解されて婚約者が嫉妬するという冒頭になっていました

10年前の作品で、おそらくはリティク・ローシャンさんの知名度が上がったことで公開できるようになったのかなと思います

 

数週間の限定公開なのにパンフレットも充実していて、彼らの行き先マップみたいなものもありましたね

劇中で語られるイムラーンの詩も完全掲載と、どう見ても「買い」の案件だと思います

 

映画は友情の中に隠されたそれぞれの秘密の暴露になっていて、旅の要所で「挑戦」があったりします

153分と長いことは長いですが、そこまで長さはあまり感じないかもしれません

 

とにかく、レイラがカッコ良過ぎて、惚れない男がいるのかと思ってしまいますね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

人生訓のたっぷり詰まった内容になっていて、後世に残りそうな名台詞が連発していましたね

「箱に入るのは死んでから」とか、「今を生きた後に40歳は来るの」など、「あなた何歳?」というようなセリフがレイラの口からバンバン飛んできます

彼女が言うから説得力があると言う感じになっていて、人生に迷っている若者なら惚れるのは無理もないでしょう

 

恋愛もそこそこですが、本作はカビールの婚約へのマインドとか、イムラーンの出自などへのこだわりなどがありました

イムラーンが過去、アルジュンが現在、カビールが未来と言ったように、時間軸の問題がバランスよく配置されていました

 

彼らの挑戦も、海、空、地上と命を賭けることで生命を感じると言う流れになっていて、シュノーケルで装備から、パラシュートひとつで、最後は己の体のみと言うふうに「自分を守るものがなくなっていく」と言う流れも痺れました

 


トマト祭りについて

 

映画で登場する「トマト祭り(La Tomatina)」は、スペイン王国バレンシア州の「ブニョールにて8月の最終水曜日に行われる収穫祭」のことを言います

お祭りにはブニョールの人口の約4倍もの人(2008年で4万人)が集まると言われています

 

トマト祭りは「前夜祭」「パロ・ハボン」「トマト投げ」の順に行われます

「前夜祭」では、街はイルミネーションで彩られ、大通りには屋台が立ち上ります

トマト投げによって壊れては困るものなどは、ビニールシートで覆って守ったりします

 

「パロ・ハボン」は、トマト祭りの最初に行われるもので、「パロ・ハボン」は「石鹸の棒」という意味があります

石鹸が塗られて滑りやすくなった棒が立てられ、棒の先には生ハムがくくりつけられています

それを取るために多くの人は棒によじ登り、取った人は英雄扱いになったりします

ちなみにこの間にトマトを投げるのは禁止となっています

 

そして、本格的なトマト祭が始まるのですが、会場にトマトが満載されたトラックがプエプロ広場を中心に走っていきます

その荷台から市の職員がトマトをトラックの外に投げ、それを拾って投げ合うというのがひたすら続きます

ルールとしては、「安全のためにトマトは潰して投げる」「ガラス瓶などの危険物は持ち込まない」「他人の服を破らない(特に女性)」などがありますね

服を破らないルールはあんまり守られていないようですが、女性の服を剥ぐという行為はさすがにされていないようでした

 

最初に号砲が鳴ってから約1時間後に「終了の号砲」が鳴り響きます

その後は、散水車での放水や、各家庭からのシャワーなどで水が浴びせられるのですね

もったいないと思うのですが、この手の食品を投げ合うという祭は全国の至るところで行われているとされています

 


牛追い祭りについて

 

映画で描かれる「牛追い祭り」は、「サン・フェルミン祭」と言って、スペインのナバーラ州パンプローナで行われているものでした

3月中旬に行われる「バレンシアの火祭り」、4月後半に行われる「セビリアの春祭り」と並んで、「スペインの3大祭」の一つに数えられています

毎年、約100万人もの人が観光客として訪れていると言われています

 

パンプローナの守護聖人である聖フェミニンを讃える宗教儀式が由来となっていて、聖フェミニンの記念日である7月7日をメインの人して、前後合わせて合計9日間行われています

前夜祭が7月6日の正午から始まり、そこで「開会宣言=チェピナソ)」が行われます

白いワイシャツに赤いネッカチーフが正装で、腰にはベルトを巻きつけた市民で溢れかえります

12時になると、「パンプローナ市民たちよ! サン・フェミニン万歳!」という掛け声が上がり、花火が打ち上げられます

この宣言はかつてパンプローナ市長の役割でしたが、今では各党の政治家が持ち回りで行っているとされています

 

7月6日には「リアウ=リアウ」というワルツ・パレードが行われ、オーストラリアン・ワルツを踊りながら、聖フェルミンを祀っている礼拝堂まで行進を続けていきます

7月7日になると、「聖フェルミンの行進」が始まり、何千人ものパンプローナ市民たちが聖フェルミンの銅像などと一緒に旧市街を行進していきます

「牛追い」は7日から14日の朝に行われ、黒色の闘牛6頭の前を何百人もの人が走ります

その6頭の後には白や茶色の雄牛が続き、道幅4、5mのパンプローナ市街地に設置された825mのルートを3分間ほど走ります

これを「エンシエロ」と言います

 

ちなみにこれまでにエンシエロによって、統計的には1925年から現在までで「15人が死亡」しています

1995年に参加した22歳のアメリカ人男性が亡くなり、それは15ぶりの事故だったと記録されています

その後、2003年に63歳男性、2009年には27歳の男性が亡くなっています

毎年300人程度はエンシエロで怪我をしていて、その多くは転倒による挫傷でした

エンシエロは「儀式としての牛追いの規則」があり、それを遵守するようにと市長声明が出されています

それによると「18歳未満は禁止」「30分前には所定の位置につく」「ふさわしい格好をする」などがあるのですね

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は3人の独身男性がバチェラー・トリップをする流れを描いていきます

バチェラーとは文字通り「新郎が独身最後の夜を友人たちと過ごす」という意味があり、ストリップを鑑賞するというのが定例になっているようですね

ちなみに新婦側は「バチェロレット」と呼ぶそうです

数人で何件もの飲み屋を飲み歩いたりするそうですが、これに参加する新婦の格好は決まっていて、誰が該当者なのかは一目でわかるようになっています

ウェディングベールをしていたり、新婦とわかるTシャツなどを着用することが多いとされています

 

映画では、その旅行に新婦が乱入するというナンセンスが勃発し、それによってカビールとナターシャの関係に暗雲が立ち込めます

その暗雲はその瞬間にできたものではない、というのが後半のネタバレになっていました

冒頭では場違いな感じの二組の家が出会うという場面になっていて、微妙な緊張感がありました

そして、そのパーティに至る展開が暴露され、「カビールよ、本当にそれで良いのか」と問い詰められる展開に移行します

 

アルジュン以外の二人には旅の目的があって、カビールは「結婚を思い留まらせてくれるかも」と思い、イムラーンは「実の父に会いにいく」というものがありました

この二人の悩みは「イムラーン=過去」「カビール=未来」となっていましたね

そして、その二人の思惑に巻き込まれるのが、「現在に問題を抱えているアルジュン」という図式になっていました

 

アルジュンの過去が今を作り、そして未来のために今を犠牲にしています

そうした現在を否定するのがレイラの役割で、彼女は「今を生きるために自由を選択している」のですね

その生き方は彼女自身を輝かせ、イムラーンを虜にし、アルジュンの心を奪っていきます

イムラーンはレイラがアルジュンの方を向いていることを悟って別の女性に行くように見せますが、初めからアルジュンのために一芝居打っていたところが憎くもありますね

これまでの関係性と、ロンドンの彼女と破綻したことを知っているので、彼のために必要だと感じていたのかもしれません

 

アルジュンは40歳でリタイア(今でいうFIRE)的思考を持っていました

それによって、目標のために今いくら稼いでいるかに執着を持っています

でも、それらを積み上げても、この旅行で得られる連帯感とか友情の深まりとか、出会いなどは得られないのですね

40歳になって、経済的に自由になった彼に魅力があるかどうかというのは正直わからないところでしょう

その時点でレイラと出会っても、彼女はときめかないし、アルジュンもスルーしてしまうかもしれません

 

アルジュンの旅は消極的なものでしたが、この時期にこの旅行があるというのは、所謂、神様のギフトと呼ばれるものなのですね

でも、それぞれにやりたいことがあって、アルジュンもレイラも後一歩を踏み出しませんでした

アルジュンはこの先の人生で、もっと良い出会いがあるかもと考えていても、心の中では「これ以上の出会いはない」と悟っています

レイラも同じように考えていて、「気持ちを伝える」ことだけはしようと動き出しました

 

この二人の行動は、やがて「二人を結びつけたい」という周囲の力によって引きつけ合いを強めます

それを行ったのがイムラーンと後に関係を持つヌリアというのが最高だったと思います

二人には言語の壁があるのですが、友人を想う気持ちはおんなじで、友人の幸せが自分の幸せであると感じている同種だったと言えます

想いの根幹が同じなので、二人の間にある壁というものはあってないようなものだったかもしれません

 

ヌリアからの母国語の手紙を前にして、イムラーンはその意味を紐解こうとしますが、これはサルマーンの絵を見て彼の人生を追いかけるのと似ているような感じがしました

映画ではイムラーンが詩を語りますが、その内容はサルマーンの心の中にも去来するものだったのかなと思いました

パンフレットでは彼の詩が全編紹介されているので、その深みをじっくりと味わえるのではないでしょうか

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/375542/review/0630b06e-159f-44a2-b397-5c6e09b2db41/

 

公式HP:

https://spaceboxjapan.jp/jinsei/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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