■愛を叫び合うことで、過去の清算が行われるのかもしれません


■オススメ度

 

父娘の物語に興味がある人(★★★)

ロードムービーが好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.7.11(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:Bleeding Love(溢れる愛)

情報:2023年、アメリカ、102分、PG12

ジャンル:アルコール依存症の娘を施設に連れていく父を描いたヒューマンドラマ

 

監督:エマ・ウェステンバーグ

脚本:リビー・キャスター

 

キャスト:

クララ・マクレガー/Clara McGregor(娘:急性アルコール中毒で病院送りになった女性)

   (幼少期:Devyn McDowell

ユアン・マクレガー/Ewan McGregor(父:娘の父)

 

ベラ・バルダー/Vera Bulder(トミー:ブロードウェイを目指す売春婦)

 

キム・ジマー/Kim Zimmer(エルシー:レッカー車の女性)

ジェイク・ウィアリー/Jake Weary(キップ:娘と絡むエルシーの親族)

Willard Runsabove(エイモス:車を修理するエルシーの兄)

 

Travis Hammer(エリ:娘を自宅に招く男)

Eve Kozikowski(ケンタッキー:エリの同居人)

 

Kristin K. Berg(アビゲイル:娘が世話になる家族)

Erica Bitton(ヴァレリー:娘が世話になる家族)

 

Sasha Alexander(ミシェル:娘の母、父の元妻?)

Helen Trencher(シェリー:父の今の妻?)

 

Jacob Browne(シャイロ:禁酒会の参加男性)

Rachael Edlow(禁酒セラピーのメンバー)

 

Ilasiea Gray(パール:リハビリ施設の受付?)

 

Fischer Knapp(態度の悪い雑貨店のレジ係)

Joann Kline(飲酒を咎めるウェイトレス)

Mat Mahboub(プールに来るモーテルの従業員)

J. Nathan Simmons(モーテルの客)

Sale Taylor(バーテンダー)

Esther McGregor(回想に出てくる10代の少女)

Farooq A. Qureshi(看護師)

Clint Obenchain(看護師)

Stephonik(クラブの歌手)

 


■映画の舞台

 

アメリカ:ニューメキシコ州

 

ロケ地:

アメリカ:ニューメキシコ州

アルバカーキ

 


■簡単なあらすじ

 

アルコール依存症の娘を連れて、その父はトラックを走らせていた

娘は行き先を知らされておらず、友人の家かどこかで連れて行かれると感じていた

トラックの旅は、ひたすら一本道を辿るモノで、娘は隙あらば逃げようと思ったり、過去を回想して何かに苦しんでいく

父はその苦しみの理由を知っているものの、娘は父が完全に理解しているとは思っていなかった

 

道すがら、エンジントラブルに見舞われた2人は、やむを得ずにレッカー車を呼んだ

彼らのもとにきたエルシーと言う女性は、彼女が住んでいる集落に連れていき、そこで車を直してくれた

 

その後も、旅は順調に進まず、ところどころで休憩を挟みながら、いろんな人々と交流していくことになるのである

 

テーマ:普遍的な愛

裏テーマ:悩み事は他人事

 


■ひとこと感想

 

原題でググるとアーティストの楽曲が検索に引っかかるのですが、Filmと追加するとちゃんと映画の情報は得られるようになっています

問題のある父と娘を実の親子であるユアン・マクレガーとクララ・マクレガーが演じているところに意味があるように思えます

 

映画は、娘の幼少期の回想が入り乱れる感じになっていて、どちらがその回想をしているのかが重要であるように思います

娘はアルコールで死にかけた過去があり、危険から遠ざけると言う名目で旅を続けることになりました

禁酒の会に参加する場面では、間接的に娘に自分の人生を聴かせたりするのですが、直接的な会話ができない関係になりかけていたのだと思います

 

この旅は娘を安全な場所に連れていく目的がありましたが、実際には空いた溝を埋めるためのものだったのでしょう

母(元妻)との関係が歪なものにしているのだと思いますが、双方が仲が良かった頃に戻りたいと考えているのだと感じました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

実の父娘が共演していて、しかも双方が抱えていた問題というものが乗っかっている作品になっていました

その全ては当人同士しかわかり得ないもので、家族と言えどもわからない部分があるのだと思います

 

映画では、疎遠からの埋め合わせになっていますが、その根本は両親の離婚と再婚にあるのだと思います

年頃の娘にとっては、両親の離婚も大概なことではありますが、さらに別の家庭を築いていることは絶望のようにも思えてしまいます

 

2人が思い出すのがほとんどが良い思い出ばかりになっていて、素直に言えない感情を抱えているように思えます

それが実体験とリンクしているのかはわかりませんが、何かを媒介しないと素直な気持ちは言えないものなのかもしれません

 


想起する内容が示すもの

 

映画では、効果的に過去の映像が挿入されていて、父が思い出すもの、娘が思い出すものが交差していたように思います

通常は回想直前のシーンにて物思いに耽る人の回想ということになりますが、本作の場合は父娘ともに同じ時期を思い返していました

ほぼ同じ頃の思い出話になっていて、その印象が強いのか、それぐらいしか思い出が持てなかったのか、どちらかわからない感じになっていました

 

それぞれが抱える思い出には違いがあるもので、どちらかは強烈に覚えているけど、相手はそうではないということが多々あります

また、今回と同じように思い出を抱え合っても、その視点が違うということは多いものだと思います

今回は、娘の幼少期の一幕が何度も何度も想起されるのですが、それはとても残酷なことだと思うのですね

なぜなら、幼少期の思い出がピークで、その後、大した思い出を構築することもなく、かと言って今よりも最低の思い出もないということになります

 

現状では、娘のアルコール依存症によって死ぬ寸前まで行ったという経緯が仄めかされるのですが、その死との境目よりも今の方がとても居心地が悪いのだと思います

それは、父の方には新しい相手がいて、娘としては家庭をおざなりにされていると感じているからでしょう

娘の今の問題に対しても、自分は蚊帳の外で、その相手とは今後の話を展開している

これが娘の心を抉ることに繋がっていると感じました

 


依存症を支えるもの

 

娘はアルコール依存症で、それを改善するための施設に向かうというのが今回のお話の核になっています

でも、施設に向かうことを娘には告げておらず、父の新しいパートナーから聞かされることになりました

娘は施設に行くということよりも、その話を自分の知らないところで、自分の知らない人としていることの方が許せず、このようなことが積み重なってきたことが予測できます

 

依存症との向き合い方は様々ですが、個人的には「依存先を別のものに変える」ということが効果的であると考えています

また、その依存がどのような種類のものかを理解する必要があって、娘の場合だと「逃避行動」としてのアルコール依存症であるように思えました

詳細が語られていないのでなんとも言えない部分はありますが、彼女自身は誰かから確かに愛されていると感じている部分が少ないように思います

自分のことも嫌いだし、父は母を捨てて別の女のところに行くし、最後の砦だった母親も死んでいない

彼女を肯定するものが身近になく、父との思い出も遠いものしかない状況でした

 

娘が依存症から脱却するには、自分が愛されているということを感じることであり、施設に入ったから改善するとは思えません

施設は現実と隔離する上では役に立ちますが、それはあくまでも対処療法のようなものなのですね

なので、まずはアルコールとの距離を取って、医学的なアプローチをした後に、現実から逃げ出したくなる時に何に縋るかを見つけていくことになります

また、逃避に至る行動パターンが自己嫌悪であるならば、ありのままの自分を受け入れるためのプロセスが必要になってくるし、自己嫌悪に陥るトリガーを見つけて排除しなければなりません

映画の中だけではわからないことが多いのですが、ある程度見えている部分で言えば、父との家族的な関係が変わっても、そこにはちゃんと愛情があるということを理解することでしょう

ある意味、精神的な親離れができていない状況でもあるので、父には父の人生があるということを理解するところから始まるように思えました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作のタイトルは『Bleeding Love』で、直訳すると「溢れる愛」ということになります

映画は、実の父と娘が共演している内容で、インタビューなどによれば「父の再婚が娘に大きな影響を与えた」ということが書かれていました

ユアン・マクレガーの実生活を引き出すのはどうかと思いますが、彼は2017年の段階で「和解しがたい不和」という理由で妻のマヴラキスとの離婚を申請し、2020年に成立しています

娘が24歳の時の話で、申請に関しては20歳ぐらいのことかと思います

 

この和解しがたい不和(Irreconciable Differences)」というのは、アメリカやオーストラリアなどで「無過失離婚の正当化」として使われる表現とされています

1969年のカリフォルニア州にて、アメリカ初の純粋な無過失離婚が制定され、同州では「永久的な法的決定能力の欠如」というもう一つの理由を併記するに至っています

この場合の相違とは、性格、人格、信念、またはその他の人格特性の相違などを言い、修復不能な破綻、回復不能な破綻、または不適合という用語を用いています

これらには相互同意の要件が含まれ、法定定義に待機期間が含まれる場合もあります

 

両親が何らかの理由で離婚するとして、このような「和解しがたい不和」に依るものだと意味がわからないと思います

どちらかが不貞をしたわけでもなく、暴力や経済的に致命傷になるような依存症もない

この状況で離婚に踏み切る両親を理解するのは非常に難しいと思います

実際にどのようなことが両者間で起こったかは誰にもわかりませんが、その要因が『ファーゴ』の共演者メアリー・エリザベス・ウィンステッドだった方がわかりやすかったのでしょう

 

映画は2023年に公開されていますが、当初は『You Sing Loud, I Sing Louder(あなたが大声で歌えば、私はもっと大声で歌う)』というタイトルでした

このタイトルから今のタイトルに変わった経緯はわかりませんが、元のタイトルよりはしっくり来る感じがしますね

Singは歌うと言う意味がありますが、この映画のイメージだと叫ぶと言う感じに思えますね

また、愛すると言う言葉もしっくり来る感じになっていて、あなたが思う以上に、私はあなたを愛すると言う感じになるのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101683/review/04025878/

 

公式HP:

https://longride.jp/bleedinglove/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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