■ONE LOVEがもたらした影響と、ラスタファリとの関係って何だったんだろう
Contents
■オススメ度
ボブ・マーリーに興味のある人(★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/RGDWGp18E7M?si=tzlyrDjs2YMV2X9Y
鑑賞日:2024.5.17(MOVIX京都)
■映画情報
原題:Bob Marley:One Love
情報:2024年、アメリカ、108分、PG12
ジャンル:ボブ・マーリーの絶頂期から終焉までを振り返す伝記映画
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
脚本:テレンス・ウィンター&フランク・E・フラワーズ&ザック・ベイリン&レイナルド・マーカス・グリーン
キャスト:
キングスリー・ベン=アディール/Kingsley Ben-Adir(ボブ・マーリー/Bob Marley:著名なレゲエ・アーティスト)
(10代:Quan-Dajai Henriques)
(幼少期:Nolan Collignon)
ラシャーナ・リンチ/Lashana Lynch(リタ・マーリー/Rita Marley:ボブの妻、バンドのバックコーラス「アイ・スリーパーズ」)
(10代:Nia Ashi)
【制作サイド関係者】
ジェームズ・ノートン/James Norton(クリス・ブラックウェル/Chris Blackwell:イギリス人の音楽プロデューサー)
アンソニー・ウェルシェ/Anthony Welsh(ドン・テイラー/Don Taylor:ボブのマネージャー)
マイケル・ガンドルフィーニ/Michael Gandolfini(ハワード・ブルーム/Howard Bloom:レコード会社の広報責任者、「エクソダス」制作)
シェルドン・シェパード/Sheldon Sheperd(ネビル・ギャリック/Neville Garrick:グラフィックアーティスト、「エクゾダス」のパッケージ制作)
ジェフ・クロスリー/Jeff Crossley(クレメント・ドッド/Clement “Coxsone” Dodd:ジャマイカの音楽プロデューサー)
Everaldo Creary(リー・スクラッチ・ペリー/Lee Scratch Perry:ジャマイカの音楽プロデューサー、コクソンの部下)
【ザ・ウェイラーズ】
トーシン・コーン/Tosin Cole(ティロン・ダウニー/Tyrone Downie:キーボード)
アストン・バレット・ジュニア/Aston Barrett Jr.(アストン・バレット/Aston “Family Man” Barrett:ベーシスト)
ヘクター・ブーツ・ルイス/Hector Boots Lewis(カールトン・カーリー・バレット/Carlton Carly Barrett:ベーシスト)
アレクサ・A・ゲーム/Alexxa A-Game(ピーター・トッシュ/Peter Tosh:ギタリスト、発足時からのメンバー)
(10代:Narado Williams)
アビジャ・リビングストン/Abijah “Naki Wailer” Livingston(バニー・ウェイラー/バニー・リビングストン/Bunny Livingston:パーカッション、発足時からのメンバー)
(10代:Courtney Edwards)
ステファン・AD・ウェイド/Stefan A.D Wade(シーコ・パターソン/Seeco Patterson:パーカッション)
(幼少期:Matthew Malcolm Blake)
セヴァナ/Sevana(ジュディ・モワット/Judy Mowatt:コーラス、「アイスリーパーズ」のメンバー)
ナオミ・コーワン/Naomi Cowan(マーシア・グリフィス/Marcia Griffiths:コーラス、「アイスリーパーズ」のメンバー)
デヴィッド・カー/David Kerr(ジュニア・マービン/Junior Marvin:ギタリスト)
アンドレ・シンプソン/Andrae Simpson(ドナルド・キンゼー/Donald Kinsey:ギタリスト)
Jason Wright(ジュニア・ブレイスウェイト/Junior Braithwaite:最年少のボーカリスト)
Njeri Osbourne(チェリー・スミス/Cherry Smith:バック・ボーカル)
Krystle Chong(ビバリー・ケルソー/Beverly Kelso:バック・ボーカル)
【親族・交友関係】
ナディーン・マーシャル/Nadine Marshall(セデラ・ブッカー/セデラ・マルコム/Cedella Malcolm:ボブの母)
Daniel Melville Jr.(ノーヴァル・マーリー/Norval Marley:ボブの父)
Calvin Mitchell(オメリア・マルコム/Omeriah Malcolm:セデラの父、ボブの祖父)
Jo-Anne Williams(ビーおばあちゃん/Auntie Vie:ボブの祖母)
Mekhai Newell(スティーヴン・マーリー/Stephen Marley:ボブの息子)
Xavier Woolry(ジギー/デヴィッド・マーリー/David ‘Ziggy’ Marley:ボブの息子
Kailey Titus(セデラ・マーリー/Cedella Marley:ボブの娘)
Rihanna Willoughby(シャロン・マーリー/Sharon Marley:ボブの養女、リタの実子)
ウミ・マイヤーズ/Umi Myers(シンディ・ブレイクスピア/Cindy Breakspeare:ボブの交際相手、ダミアンの母、モデル)
ガウェイン・キャンベル/Gawaine “J-Summa” Campbell(アントニオ・ギルバート/Antonio “Gillie” Gilbert:バンドの専属シェフ)
サンドラ・オークリー/Sundra Oakley(ダイアン・ジョブソン/Diane Jobson:ボブの法律顧問弁護士)
Wilfred Chambers(モーティマー・プランノ/Mortimer Planno:ラスタファリの長老、ボブの友人)
Mutabaruka(ルイス長老/Elder Lewis:ラスタファリの伝導者)
Abba Samuel Tadely(ハイレ・セラシエ/Haile Selassie:ボブのイメージに登場するエチオピアの皇帝)
【政治関連】
Brian Todd Boucher(クローディ・マソップ/Claudie Massop:ジャマイカのウェスト・キングストンのギャング「フェニックス」のリーダー)
Cornelius Grant(バッキー・マーシャル/Bucky Marshall:ジャマイカのギャング、クローディの天敵)
Yasmeen Scott(ビアンカ・ジャガー/Bianca Jagger:人権活動家)
Cosmo Wellings(ミック・ジャガー/Mick Jagger:イギリスのミュージシャン「ローリング・ストーンズ」、ビアンカの夫)
【音楽関連】
Stephen-Rhae Johnson(ジョー・ヒッグス/Joe Higgs:音楽家、ボブの師匠的存在)
Tanner Paul(ジェフ・ウォーカー/Jeff Walker:イギリスのベーシスト)
Sam Palladio(ジョー・ストラマー/Joe Strummer:イギリスのアーティスト「ザ・クラッシュ」)
Will Parsonson(ポール・シムノン/Paul Simonon:イギリスのベーシスト「ザ・クラッシュ」)
【その他】
Dónall Ó Héalai(ベンジャミン・エルスウィット/Benjamin Elswitt:?)
Christopher Jordan Bernard(クローディ・フッド/Claudie Hood:?)
Robbie Young(不良少年)
Daniel J. Hickson(マカロック巡査)
Obioma Ugoala(「University Hospital 1976」の医師)
Harry Burton(マルバージ:医師)
■映画の舞台
ジャマイカ:キングストン
イギリス:ロンドン
ロケ地:
イギリス:ロンドン
ジャマイカ:キングストン
■簡単なあらすじ
ジャマイカのレゲエ・シンガーのボブ・マーリーは、内戦状態の国内を鎮めるためのコンサート「スマイル・ジャマイカ」を行うことになっていた
だがその前日、楽屋に暴漢が侵入し、ボブたちは撃たれてしまう
それでもコンサートを強行するボブだったが、観客席に撃った犯人が見えてしまい、胸の傷を見せて、コンサートを中断させた
それからイギリスに活動拠点を移したボブは、妻子をアメリカに移住させることに決める
イギリスにて、映画「エグゾダス」にインスピレーションを受けたボブたちは、アルバム制作に取り掛かる
そんな折、ジャマイカを牛耳っているギャングか刑務所から出てきたことを知り、彼らはボブにコンサートを開いてほしいと懇願する
ボブは断るものの、ツアー先である指輪をもらったことをきっかけとして、ジャマイカに帰ることを決めたのである
テーマ:音楽は世界を救うか
裏テーマ:銃弾に込められた呪い
■ひとこと感想
ボブ・マーリーに関しては、名前と楽曲ぐらい知らない状態で鑑賞
なので、思いっきり政治寄りであるとか、スプリチュアルな側面というのは知りませんでした
レゲエ自体がそこまで聴くジャンルでもなく、ふれあう機会も少なかったからですが、さすがにここまで有名だと自然と楽曲は耳に残っています
映画は、「ONE LOVE」というからには「楽曲制作の過程」か、ラストのジャマイカのコンサートに至る経緯を描くのだと思っていましたが、どちらでもなかったですね
ほぼ「ジャマイカの情勢」と「エクゾダスができるまで」という感じで、タイトルの付け方間違っていないか?と思ったくらいでした
楽曲に関しては数曲知っている感じですが、いくつかは制作過程が登場したので安心しました
肝心の「ONE LOVE」がこの使われ方なのかあとは思いましたが、ファンの人は納得できたのでしょうか
そのあたりは生粋のファンの声を参考にしていただければ良いと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、楽曲に関する音楽映画なのか、ボブ・マーリーに関する伝記映画なのか、ジャマイカの情勢を切り抜いた社会派映画なのかは微妙なバランスになっていましたね
ボブ・マーリーを知っていることよりも、彼が傾倒したラスタファリについて知っていないと、宗教映画のようにも見えてきます
ある程度の説明はあるものの、その比重が大きくて驚きました
ザ・ウェイラーズの馴れ初めもすごくわかりにくく、幼少期のどのキャラがボブなのかわからないし、主要メンバーが入れ替わっている経緯とか、創設メンバーから残っているのは誰なのかを映画だけで紐解くのはほぼ無理だと思います
キャスト欄を作るのに苦労するタイプの映画ではありましたが、ある意味勉強にもなったので楽しかったですね
でも、映画自体がそこまで感銘を受けるものではなかったので、もう少しなんとかならなかったのかな、と思ってしまいました
■ラスタファリについて
映画にて、ボブが常に活動の基礎に置いているのが「ラスタファリ(Rastafari)」というものでした
ラスタファリ運動の実践者をラスタファリアン、ラスタピープルなどと呼びます
ラスタファリアンはこの宗教運動のことを「主義」ではなく、「人生観」であると考えていて、英語では「Rastafari Movement」と表現されます
これらの運動は、1930年代にジャマイカの労働者階級と農民を中心にして発生した「宗教的思想運動」と言われています
ラスタファリ運動は、聖書を聖典としていますが、特定の教祖や開祖というものはいません
教義もなく、宗教というよりは思想運動のように捉えられています
基本的にはアフリカ回帰運動で、エチオピア帝国の最後の皇帝であるハイレ・セラシエ1世を「ジャー=聖書に登場する王、預言者」の化身、もしくはその者であると解釈しています
映画では、何度もボブの夢に登場し、馬に乗った戦士というイメージになっていました
映画内で何度も登場する大麻は、アフリカの土着主義としては薬草として取り扱われてきました
でも、ラスタファリ以降では、バビロン社会への反抗手段という意味を持ち始めます
大麻の吸引によって、精神をより穏やかな状態にする、と考えられてきました
なので、ラスタファリズムにおいては、大麻の使用は正当なものとして考えられています
■勝手にスクリプトドクター
本作は、ボブ・マーリーの伝記映画ではありますが、彼の音楽ルーツを探る音楽映画の一面も持ち合わせています
どのテーマを扱うかは難しいのですが、全部を取り込もうとして、散漫な映画になっているように思えました
伝記映画として何を伝えるかという部分も、妻リタとの馴れ合いから破綻までを描くのか、子どもたちとの関係を紡ぐのかというヒューマンドラマの部分もどっちつかずでした
音楽的な成功を描くとしても、ウェイラーズの創設云々から仲間との別れなど一切なく、ある有名な音楽プロデューサーに認められてレコーディングしていたというだけで、あの若者たちの誰がボブなのかを認識するのは難しいと思います
ザ・ウェイラーズとして活躍し、グループはその後名前を何度も変えますが、最終的にボブ・マーリーとザ・ウェイラーズに至った経緯は不明でしたね
そこから「スマイル・ジャマイカ」を開催するに至る経緯も不明で、ラスタファリ運動の延長線上のことなのか、別の思惑があったのかもわかりません
このあたりを「知っている前提」で映画は作られているので、知らない人が見ても「映画内で知ること」はできないような構成になっていました
音楽映画としての側面も弱く、冒頭の「スマイル・ジャマイカ」の中止、渡英からの帰国という流れがあり、ジャマイカのためにコンサートを開くことになるのですが、そのコンサートを完全再現することもありません
映画のサブタイトルに「ONE LOVE」があるのに映画で楽曲制作があるのは「エクゾダス」だけで、エンディング曲に使用されているだけでしたね
しかも楽曲の歌唱は主演によるものではなく、ほぼオリジナル音源を当てはめるというもので、アテふりしている割にはめっちゃ似ている俳優さんを選んだという感じにもなっていません
なので、この映画を通じて何を表現したかったのかがわかりません
ボブ・マーリーのどの部分を映像にするかは色々と趣旨があると思いますが、個人的に観たかったのは「ラスタファリと音楽性の関連性」「ONE LOVEの完成過程」「ラストコンサートの演者による歌唱と完全再現」でしたね
その一つも満たしていないので、個人的には評価するべきポイントがありませんでした
ドルシネで鑑賞しましたが、その音楽機材で音源を聴いただけに留まっていたように思えます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
ボブ・マーリーはその人生を語り出すととてつもなく膨大になる人物で、短い人生でも波瀾万丈だったと思います
音楽に関してもクオリティが高く、レゲエ音楽を世界に広め、ラスタファリという概念を認知させた人物になっています
バンド活動から初期メンバーの脱退、新加入メンバー、様々な音楽プロデューサーとの出会いと、イギリスの著名な音楽家との邂逅など、どこを切り取っても面白いものになったと思います
その中でも、本作は「リタとの後期の関係」がメインになっていて、コンサートもレコーディングもこれと言ったものがなかったように思います
キャスト欄を作っていると、結構な人物との出会いがあるのですが、映画上で識別できる人がどれだけいるのか謎のように思います
ある程度ボブ・マーリーの人生史に詳しく、交友関係、主義主張、人生観などを事前に知った上でも、どれだけ「新しい発見があるのか」も微妙に思えるのですね
詳しい人が観て面白かったのかどうかは他の人のブログなどを参考にしていただければ良いと思いますが、ざっくりと流し読みをしている感じだと「絶賛」というものは見受けられないように感じます
映画のサウンドトラックも発売されていますが、使用楽曲は全てオリジナル音源で、演者が歌ったものはひとつもないのですね
なので、音楽だけ聴きたい人ならば、サントラを買って聴いた方が良いと思います
ボブ・マーリーを知らない世代が彼を知るきっかけになるのなら良いと思いますが、今は情報過多の時代なので、表に出ていない情報を加味するか、普段は見られない視点を持つことが必要だと思います
本作は息子のジギーがプロデューサーに入っているので、子どもから見た父親というテイストで描けば良かったように思います
この視点だと、ファンも音楽関係者も知らないボブ・マーリーを描けていたと思うのですが、それだと「ONE LOVE」の制作過程は描けないのですね
なので、サブタイトルも含めて、1から考え直す必要があると思います
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/99799/review/03828987/
公式HP:
https://bobmarley-onelove.jp/