■なんでこのレイティングなのかなと思いながら映画を観ると、意外な発見があったりしますよねえ


■オススメ度

 

奇妙なホラー&スリラー映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.9.19(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:Censor(検閲)

情報:2021年、イギリス、84分、R15+

ジャンル:映画検閲官がある映像を機におかしくなる様子を描いたサイコホラー映画

 

監督:ブラノ・ベイリー=ボント

脚本:ブラノ・ベイリー=ボント&アンソニー・フレッチャー

 

キャスト:

ニアフ・アルガー/Niamh Algar(リトル・ミス・パーフェクト/イーニッド・ベインズ/Enid Baines:英国映画分類員会の検閲官)

   (若年期:Beau Gadsdon)

 

マイケル・スマイリー/Michael Smiley(ダグ・スマート/Doug Smart:ホラー映画のプロデューサー)

 

ビンセント・フランクリン/Vincent Franklin(フレイザー/Fraser:イーニッドの上司)

ニコラス・バーンズ/Nicholas Burns(サンダーソン/Sanderson:イーニッドの同僚、検閲官)

フェリシティ・モンタギュー/Felicity Montagu(ヴァレリー/Valerie:情報管理担当の職員)

ダニー・リー・ウィンター/Danny Lee Wynter(パーキンズ/Perkins:イーニッドに気がある検閲官)

クレア・パーキンズ/Clare Perkins(アン/Anne:妹の誕生日に遅れる検閲官)

Matthew Earley(ゴードン/Gordon:検閲官)

Chris Dale(アルフ/Alf:映写技師)

 

ソフィア・ラ・ポルタ/Sophia La Porta(アリス・リー/Alice Lee:イーニッドの妹に似ている女優)

 

エイドリアン・シラー/Adrian Schiller(フレデリック・ノース/Frederick North:ベテランのホラー映画監督)

Erin Shanagher(デビー/Debbie:メイク係)

Ric Renton(フランク/Frank:撮影クルー?)

Robert Vernon(トム/Tom:俳優)

Jean-Pascal Heynemand(キャビン内の撮影クルー)

Mike Bargh(キャビン内の撮影クルー)

 

クレア・ホルマン/Clare Holman(ジューン/June:イーニッドの母)

アンドリュー・ヘイビル/Andrew Havill(ジョージ/George:イーニッドの父)

Amelie Child Villiers(ニーナ・ベインズ/Nina:イーニッドの妹、幼少期)

 

ギョーム・ドゥロネ/Guillaume Delaunay(チャールズ/ビーストマン/Beastman:フレデリック・ノースの映画の出演者)

 

リチャード・グローバー/Richard Glover(ジェラルド/Gerald:ビデオショップのオーナー)

 

【検閲対象作品の出演者】

Bo Bragason(姉妹と見間違える女の子)

Amelia Craighill(姉妹と見間違える女の子)

Madeleine Hutchins(パニックになる女)

Joanne Gale(いやらしい女)

Albie Marber(タイトル・シークエンスの少年)

Peter Pedrero(「Extreme Coda」の男)

Alice May Eadson(「Extreme Coda」の女)

Steve O’Rourke(「The Day the World Began」の出演者)

Sam Goodland(「The Day the World Began」の出演者)

Prano Bailey-Bond(却下されたビデオの血まみれの女性)

 

【その他】

Clare Noy(レストランのウェイトレス)

Louise Hadley(妹と間違える赤毛の女性)

Lucy Mizen(インタビューに答える隣人)

Sharon Taylor(ビデオショップの女性客)

Sean Buchanan(口論する男)

Emma Eckton(口論する女)

Joe Walker(口論中のカップルの子ども)

John Ward(電車の中で新聞を読んでいる男)

 

Jacob Ward(ジャーナリスト)

Guy Slocombe(ジャーナリスト)

Jonathan Rushby-Taylor(ジャーナリスト)

Garry Molyneux(ジャーナリスト)

 

マーガレット・サッチャー/Margaret Thatcher(本人、アーカイブ)

 


■映画の舞台

 

1985年、

ビデオ・ナスティ論争さなかのイギリス

 

ロケ地:

イギリス:西ヨークシャー

リーズ

26 Lowtown, Pudsey

https://maps.app.goo.gl/u6UgEsFvjVTnkw1JA

 

ブラッドフォード

トン/Tong

Parkwood Off Road Centre

https://maps.app.goo.gl/P3hG7KQJH7LXxsHj8

 

Keighley & Worth Valley Railway

https://maps.app.goo.gl/H4mGC1J6N2G7ukG28

 


■簡単なあらすじ

 

1980年代にイギリスでは、過激で有害とされる映像をチェックする機関があった

そこで検閲官として働いているイーニッドは「リトル・ミス・パーフェクト」と呼ばれるほど優秀な存在だった

彼女には妹のニーナがいたが、彼女は幼少期の時に行方不明になっていて、両親はすでに心を決めていた

だが、イーニッドは妹の死を受け入れられず、よく似た子を見つけては、それを確かめに走っていた

 

ある日、「狂息のえじき」という作品を検閲していたイーニッドは、それを「視聴可能」に分類してしまう

だが、その映画を模倣したとされる殺人事件が勃発し、イーニッドはマスコミの餌食になってしまった

 

ストレスと疲労を抱えたイーニッドは、上司のフレイザーの友人であるダグ・スマートがプロデュースしている作品の検閲にあたることになった

その作品は野獣男と女優のホラー映画だったが、その女優アリスは妹のニーナそっくりで、イーニッドは妹が生きていると思い込む

さらに、彼女が出演している映画の内容から、その関係者が妹を誘拐した犯人ではないかと思い込み始めるのである

 

テーマ:自己検閲の先にあるもの

裏テーマ:虚実境界線の崩壊

 


■ひとこと感想

 

1980年代の映画の検閲をしていた女性が闇堕ちすると言う展開で、行方不明の妹を映像の中で見つけると言う内容になっていました

当時のイギリスでは、自主制作映画などが盛んに作られていて、いわゆる裏ホラー映画のような発禁映像などが跋扈していました

それに規制をかけると言う意味合いで映画検閲が行われていたと言う経緯があります

 

映画は、その職場の中で優秀なスタッフが主人公となっていますが、公私混同のような精神状態になっていて、少しずつおかしくなっていく様子が描かれていきます

そして、自身が試聴OKとした作品が世に出て、その内容を模倣した事件が起きることで、さらに精神的に追い込まれてしまいます

 

そんな中、ある作品の中に妹らしき人物を見つけると言うものなのですが、ホラー映画ではないのだけど、ホラー映画を検閲しているので、グロいシーンがたくさん登場していましたね

最後は本編もホラーになるのですが、古めかしいフィルムの質感からして、90年代ホラーを見ているような気分になりました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

本作は検閲官の女性が仕事の失敗や家族の事情などから疲弊してしまい、その中で正常な判断ができなくなる過程を描いていました

後半には虚実混合状態になっていて、似ている女優を妹と思い込んだり、ホラー映画の中で起こっていることが本当に起こっている事件だと思い込んで反撃に出たりしていました

そんな中で人を殺すに至っていて、そうした一連の出来事が実は映画だった、と言うオチになっていました

 

どこから妄想(作品)になっていったのかは曖昧で、おそらくはこの作品全体が「検閲対象の映画だった」というオチなのだと思います

そう言った目線で見ると面白いのかもしれませんが、結構退屈な映画なのですね

途中から何を見せられているのかわからない感じになっていて、イーニッドの精神状態による幻視が入り混じったりと、起きている状況を整理するのに時間がかかる内容だったように思います

 

映画のパンフレットはビデオテープ型になっていて、一風変わっていますが、めっちゃ読みにくかったですね

内容は充実していたので、記念に買うのはアリかな、と思いました

 


ビデオ・ナスティ論争について

 

映画で描かれる「ビデオ・ナスティ(Video Nasty)」とは、イギリスの全英視聴者協会(NVALA)によって広められた言葉で、「1980年代初頭にビデオカセットなどで配布された低予算ホラー映画やエクスプロイテーション映画など」を意味する言葉となっています

これらの映画は、映画分類法の抜け穴を潜った作品で、審査プロセスを回避できたために、かなり過激な内容が収められていました

猥褻な内容もたくさんあったため、「1959年猥褻出版法(Obsence Publications Act 1959)」に違反していると考えられる72本の映画リストを公開することになりました

さらに82本の映画もリスト化入りすることになり、議会は「1984年ビデオ録画法(Video Recordings Act 1984)」を可決することになりました

 

この法律の施行により、映画館公開作品よりもより厳しい「ビデオ検閲規則」というものが課せられるようになります

大手のスタジオは「ビデオ・ナスティ」の配布を規制する適用範囲に含まれていたため、ビデオ発売に関してはその法律の適用を受けることになります

そのため、その検閲に引っかからないような映像作品が世に出回ることになっていました

 

1984年の法律によって、英国映画検閲委員会は、英国映画分類委員会に改名され、本作の主人公たちはその部署で働く職員ということになっています

1985年の9月1日以降に公開されるすべてのビデオの公開認証を担当することになりました

それによって、カットされるシーンなども増えるのですが、この分類されていないビデオの配布というものは犯罪扱いになってしまいます

有名なところだと『エクソシスト』『わらの犬』などもビデオ認定を拒否されたという歴史があります

 

ちなみに、2009年の8月に発覚した立法上の誤りによって、1984年ビデオ録画法は廃止され、新たに「2010年ビデオ録画法(Video Recordings Act 2010)」というものが制定されていますが、その内容はほとんど同じであるとされています

立法上の誤りとは、欧州委員会に同法の規定が通知されていなかったというもので、その手順を踏まえて、再通知がなされたということになっています

なので、法律の中身が変わったわけでなく、正式に欧州委員会にその法律が規定された、ということになっています

 


ラストをどう考えるか?

 

本作は、映画検閲官のイーニッドが精神的におかしくなる様子を描いていて、それには失踪した妹ニーナの存在がありました

あるビデオの中にニーナそっくりの女優アリスを見つけ、妹が生きていると思い込むようになります

そして、新作映画の撮影現場に行って彼女を救い出すのですが、アリスから見れば自分が誘拐されているというふうに映っています

そして、イーニッドの家に着いて、アリスは家族に助けを求めるという内容になっていました

 

映画は、このシーンの後に「ビデオデッキからテープが出てくる」のですが、そこには「検閲(Censor)」と書かれていました

いわゆる「この映画は検閲対象」という意味になり、審査は通りませんというオチになっていて、この映画全体が「検閲でお蔵入りになった映画」という感じに描かれていました

このオチをどのように捉えるかなのですが、一見すると「夢オチ」近いものがあるのですね

なので、鑑賞後感的にはあまり良いものではなく、捉えどころの無い感想を持ってしまうことになります

 

この映画が検閲対象だとすると、どの部分が過激であると考えられたのでしょう

いわゆる審査に引っかかったという状態なのですが、そこまで法にふれているような内容にも思えません

ここから先は想像の世界になりますが、この映画の制作は1985年頃で、その当時は法律制定直後でもあって、思った以上に規制が厳しかったという可能性もあります

当時を知る人が、あの時代にはこれぐらいの内容で検閲が入ったんだぜ、みたいな感想を持っていて、今では「R15+」という映倫区分(日本では)で閲覧が可能となっているというメタ構造的な検閲審査の変遷を示したかったのかな、と感じました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画に限らず、オフィシャルなものには必ず審査があって、これらは時代性を反映していると思います

日本の映倫区分もそうですが、海外だとレーティングなどの指定によって、年齢区分で鑑賞可能領域というものを設定しています

アメリカでは、性描写や暴力描写に対する規制が厳しく、さらに「FUCK!」というセリフが1回登場しただけで「PG13」というレイティングになり、2回以上だと「R指定」されるのですね

そのために言い換え的なものが登場し、「Farscpe」「Frell」などのような隠語というものも生まれるようになっていました

 

アメリカのレイティングには「G(General Audience)」「PG(Parental Guidance Suggested)」「PG-13(Parents Strongly Cautioned)」「R(Restricted)」というものがあります

「G=全世代OK」「PG=制限なしも保護者の教育方針によって適さないと考えられる」「PG-13=13歳未満の鑑賞に関しては保護者の厳重な注意が必要」「R=17歳未満は保護者の同伴が必要」という感じになっています

日本の場合は映画が始まる前に説明があるので割愛しますが、このレイティングはほぼ世界共通に近いものがあると思います

 

ちなみに韓国では「ALL」「12」「15」「19」「Restricted Screening」という細かな設定がなされています

大体の場所では年齢によって分けられていて、その国ごとに作品を区分に落とし込んでいることになります

日本の場合は、第三者機関である「一般財団法人 映画倫理機構」というところが実施・管理を行なっていて、「映画倫理規定」に基づいて区分分けがなされています

また、映画以外にも、ビデオ作品、ゲームソフトなどにもレイティングシステムが導入されていて、それらは統一が検討されていて、将来的には同じような審査区分が設けられるようになると考えられています

 

個人的にも必要だと思われますが、ネットやSNSが普及している現在では、個人配布のアンダーグランドは手の入れようがないと思います

誰でもどこでもどんな年齢でも無修正ポルノが見られる時代でもあり、検閲という概念そのものが崩れているようにも思います

これらの感性をどのように育てるかは難しい部分があって、今の世の中は「リアルタイムで影響を観察している時期」のようにも見えてしまいます

規制されればされるほど抜け穴を見つけることが商売になるのですが、それを追うリスクの方が影響が大きいので、そう言った危険性を訴えることの方が近道になるのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101807/review/04269915/

 

公式HP:

https://synca.jp/censor/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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