■ミステリーからサスペンスに変わる中で、理性は感情に埋もれてしまった


■オススメ度

 

叙述トリック系のミステリーが好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.6.23(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

原題:자백(告白)、英題:Confession(告白)

情報:2022年、韓国、105分、G

ジャンル:ある事故の隠蔽を巡り繰り広げられる騙し合いを描いたミステリー映画

 

監督&脚本:ユン・ジョンソク

原案:オリオル・パウロ監督作『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明(The Invisible Guest、2016年)』

 

キャスト:

ソ・ジソプ/소지섭(ユ・ミンホ:殺人を疑われる社長、D&Tセキュリティの代表取締役)

キム・ユンジン/김윤진(ヤン・シネ:ミンホの弁護士)

 

ナナ/나나(キム・セヒ:ユ・ミンホが殺したとされる不倫相手)

 

チェ・グァンイル/최광일(ハン・ヨンソク:行方不明の息子を探す父親、エンジニア)

ソ・ヨンジュ/서영주(ハン・ソンジェ:行方不明のヨンソンの息子)

 

ホン・ソジュン/홍서준(チャン・テス:ミンホの顧問弁護士)

 

パク・ミヒョン/박미현(ホテルの受付スタッフ)

チョンヨン/전영(ホテルの清掃員)

 

ファン・ソンヒ/황선희(イ・ジヨン:ミンホの妻)

 

ハン・ガブス/한갑수(カン刑事、江原洪川南部警察)

キム・ヨンホ/김용호(キム刑事、江原洪川南部警察)

 

イ・ガンジン/이강진(トラックの運転手)

ウォン・ドンユン/원동연(バスの乗客)

 

チェ・ベクグ/최백구(授賞式のスタッフ)

ホン・ダルピョ/홍달표(受賞者)

パク・シヒョン/박시현(受賞者の妻)

 

チョン・ユナ/정윤하(戦略企画チームのチーフ)

イ・ミンシク/이민식(デパートセールのチーフ)

 

パク・ヒョンスク/박현숙(女性弁護士)

 


■映画の舞台

 

韓国:釜山&江原洪川南部

 

ロケ地:

韓国のどこか

 


■簡単なあらすじ

 

ある女性の殺人嫌疑をかけられているIT系企業の社長のユ・ミンホは、自身の潔白を証明するために、敏腕弁護士とされるヤン・シネを雇うことになった

ヤンはミンホの別荘に出向き、事件について知っていることを問いただす

彼女はこの裁判が勝てるものかを判断するために、様々な情報をミンホに突きつけた

 

ミンホは不倫相手のキム・セヒが殺害されたホテルにいて、完全なる密室の状態で逮捕されていた

彼はその場に誰かがいたというものの、それを裏付けるものは何もない

 

一方その頃、同じ地域ではある青年の行方がわからなくなっていた

家を出た直後に音信不通になったハン・ソンジェは、金融関連の疑惑が浮上したために公開捜査に踏み切られる

それによって、ミンホの事件も少しずつ動き出してしまうのである

 

テーマ:復讐と執念

裏テーマ:秘匿が紡ぐ後悔

 


■ひとこと感想

 

映画は完全ネタバレNGの内容で、容疑者ミンホと弁護士ヤンによる駆け引きがメインになっています

それぞれが語る「真実」と、「真実に向けた誘導」の中で、徐々に事件の全貌が明らかになっていきます

 

勘の鋭い人は「ある人物」の正体に早めに気づく仕掛けになっていて、それゆえに「ある人物の正体」があっさりと明かされていきます

後半では「ある人物」の思惑が明確になり、「事件の全貌解明」へと舵を切る流れになっていて、それぞれが何を隠していたのかが露わになっていきます

 

映画は、ネタバレを喰らっても面白い部分はありますが、やはり初見は「前半の面白さ」の鍵になっているので、韓国版wikiなどを覗くだけでネタバレを喰らうことになります

まっさらな状態で鑑賞して、二段構造になっているミステリーを堪能できたら良いと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

ミンホとセヒが途中で別行動を取ったことで謎が深まり、双方の距離感が徐々に縮まっていきます

ミンホはセヒが取った行動によって窮地に立たされ、逆もまた然りといった感じでしたね

心から信頼しあっていたのではなく、目先の快楽に溺れていた結果なのだと思います

 

ミンホ目線では「すべてがセヒ主導」に見えるのですが、この被害者役を全うするために自分で自分を撃つという行動に出ます

これによってヤン(ヘジュン)も同じく密室殺人犯になってしまうのですが、それでもミンホの勝利宣言が覆ってしまうところは滑稽でもありました

 

個人的には、弁護をする側のヤンが物語を創っているように見えて、何かしらの裏があるのかなと思っていました

まさか○○とまでは思いもしませんでしたが、有能弁護士の話術自体がフェイクになっていたのは面白かったと思います

 


犯人は自白したがっている

 

映画は、被害者の母であるイ・ヘジュンが弁護士ヤン・シネになりすますと言うもので、夫から得た事件の資料を頭に入れて、ミンホから自白を引き出していきます

ヘジュンを弁護士だと信用させるために「情報の取捨選択」を行い、時にはフェイクを混ぜ込んでいました

ミンホの方も信用に足る人物かを見極めるためにフェイクを混ぜていて、この心理戦が前半を覆っています

 

実際にこの手の探り合いが起これば、看過されそうなものですが、どちらも「余裕がない」ので、意外なほどに見逃されていたように思います

ミンホがヘジュンを信用してからは、「仲間になった感」から饒舌になり、ヘジュンが思う以上の情報を引き出せています

このようなことが起こるのは、話したい欲求があって、それが禁忌となっていた精神的抑圧の解放によるものだと考えられます

 

人は何かしら特別な出来事があった時に誰かに話したくなるものですが、今回のケースは誰にも話せない内容でした

「自分の無罪のため」と言う名目ができ、その為に尽力する味方ができたことによって、ミンホの箍がひとつ外れたのですね

でも、半信半疑の部分があって、「自分の利益になる」と思われる部分のみの情報開示に至っています

 

犯人は「犯行現場に戻る」と言う習性があって、それは自分の行動の余波というものを確認したいからだと思います

犯罪に関わらず、自分が生きた世界に残った爪痕というものを確認したがるのですが、犯罪が絡むと「バレたらどうしよう」という心理から、何度も「証拠がないこと」を確認するのですね

その心理が働いて、自分が安全圏にいるとわかると、それの担保を確認するように饒舌になるのではないか、と考えられます

収監されている犯罪者などは、犯行がステータスになっているかのように饒舌に武勇伝を語りますが、それもある意味「安全圏における承認欲求」のようなものが働いているからだと推測されます

 


勝利宣言が敗北宣言に変わる妙

 

後半にて、ヘジュンの正体を見抜いたミンホは、猟銃で自分を撃って彼女を犯人に仕立て上げます

ヘジュンが捕まればミンホの犯罪もバレますが、立証するものはありません

ヘジュンに語ったことを今後の法廷で証言すると罪が増えますので、そこで何があったかを語ることはないでしょう

なので、ミンホは継続中の裁判を覆せないまま投獄されることになると思います

 

ヘジュンがあのまま逮捕されていたら、ヘジュンはミンホの罪について話すでしょうが、彼女は「弁護士を偽って近づいたこと」を話す必要があり、それは捜査妨害にあたります

また、夫が本物のヤン弁護士を拉致しているので、こちらの罪も問われるでしょう

ヤン弁護士が一連の真実を知って、それでも起訴するかはわかりませんが、ミンホの罪の方が明らかに重いので、法曹人としてどうするかというところが問われるように思えました

 

本作では、ミンホとヘジュンの騙し合いが描かれていますが、意外なほど早く、ヘジュンが偽物であることが明かされます

ミステリーからサスペンスにジャンルチェンジを果たし、ヘジュンはミンホの魔の手から逃れられるか、というテイストになっていました

そこからはミンホが優勢になるのですが、中盤あたりからヘジョンの感情がかなり揺れ動いてきていました

それがサインの捏造の失敗につながるのですが、筆跡が違う以前に彼女のサインは手が震えて書いたもの、のようになっていました

もし、同じ筆跡で書いていたとしても、あの緊張では感化された可能性はありましたね

映画では、わかりやすくするために、あえて全く違う筆跡というビジュアルにしていたのだと思います

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、冷静に見ると穴だらけになっていて、それが緊張によって見えなくなっている様子を描いていきます

なので、客観的な見方をすれば、ヘジュンが弁護士ではないということがわかると思います

実際に何が起こったのかということを根掘り葉掘り訊くのですが、この裁判に勝つためという目的なら「事件の詳細」は却って不要な要素になってしまいます

 

ラストでは、ソンジェが湖に沈められていることが判明し、それによってミンホは再逮捕されるのですが、ヘジュン目線でそれを看過できた明確な描写はなかったと思います

冒頭にて、「呼び出された場所が私有地」と字幕でわざわざ表記され、検察が敷地外で見張っている映像がありました

勘の鋭い人だと、この場所に弁護士を呼び出したというシチュエーションは不可思議なものであると感じるでしょう

刑事事件の裁判中の被疑者が、金を積んで保釈されていて、私有地に逃げ込んでいる

そこに来るのが、会社の顧問弁護士から紹介された敏腕弁護士ということで、依頼する側が辺鄙な場所を指定するのには裏があると考えるのが自然です

ヘジュンがこのように考えたかどうかはわからなかったので、少しばかりモヤモヤしてしまいましたね

 

もし、本物のヤン弁護士が同じ状況で呼ばれていたとしたら、彼女はミンホのもう一つの犯罪を看過していたと思います

彼女は有能な弁護士で、ヘジュンの「一言」で、ソンジェの場所を察するほどの洞察力を持っています

ミンホの犯罪をヘジュンよりも客観的かつ論理的に整理し、彼が犯した罪の連鎖を暴いたでしょう

それでもミンホを無罪に持っていけるかはわかりませんが、ソンジェの死体が上がらない限りは、殺人事件にはならないのですね

なので、彼女が本気でミンホを弁護するなら、その死体を何らかの形で永遠に封印する策を講じたと思います

 

死体遺棄の場所が私有地でも、韓国の法律では「本人の許可なく令状も不要」ということが描かれていたので、そのことをヤンは知っているはずなのですね

なので、ヤンはソンジェの遺体を完全に抹消することが難しければ、「密室殺人による有罪」を減刑に持っていく方向に向かうしかないと思います

そうなった場合にどうだったのかはわかりませんが、感覚的には本物が来た方がミンホにとっては地獄だったように思えました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/387049/review/66f3a97f-0a1b-4e5a-a91e-8ddd8684aded/

 

公式HP:

https://synca.jp/kokuhakuaruiwa/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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