■プロレスの面白さを映画に落とし込んだ、最適解としての凄みがあると思う


■オススメ度

 

マブリーファンの人(★★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.11.8(TOHOシネマズ二条)


■映画情報

 

原題:범죄도시2、英題:Crim City2

情報:2022年、韓国、106分、PG12

ジャンル:体一つで難事件を解決する肉体は刑事を描いたアクション映画

 

監督:イ・サンヨン

脚本:キム・ミンソン&イ・サンヨン&イ・ヨンジュン&マ・ドンソク

 

前作『犯罪都市(2017年)』↓

https://amzn.to/3Eg1Yqz

 

キャスト:

マ・ドンソク/마동석(マ・ソクト:ベトナムに出張で来ている刑事、衿川警察署強力班の副班長を務める刑事)

ソン・ソック/손석구(カン・ヘサン:チェ・ヨンギ誘拐事件の実行犯、ベトナムで暗躍する犯罪者)

 

チェ・グィファ/최귀화(チョン・イルマン:マ・ソクトの上司、衿川警察署強力班の班長)

パク・チファン/박지환(チャン・イス:元イス派のボス、ベトナムで不法滞在しながら詐欺を働いているアウトロー)

 

ホ・ドンウォン/허동원(オ・ドンギョン:衿川警察署強力班の刺される刑事)

ハジュン/하준(カン・ホンソク:衿川警察署強力班の調べ物が得意な刑事)

チョン・ジェグァン/정재광(キム・サンフン:衿川警察署強力班の最年少刑事)

チョン・インギ/정인기(衿川警察署長)

 

ナム・ムンチョル/남문철(チェ・チュンベク:チェ・ヨンギの父、韓国の実業家)

チャ・ウジン/차우진(チェ・ヨンギ:誘拐される青年実業家、カン・ヘサンに拉致され殺害されたチェ・チュンベクの息子)

パク・ジヨン/박지영(キム・インスク:チェ・ヨンギの母でチェ・チュンベクの妻)

 

イ・ジュウォン/이주원(パク・ヨンサ:ホーチミン市の韓国総領事館の役員)

 

ウム・ムンスク/음문석(チャン・ギチョ:カン・ヘサンの部下の双子、チャン・スンチョルの弟)

キム・チャンヒョン/김찬형(チャン・スンチョル:カン・ヘサンの部下の双子、チャン・ギチョルの弟)

 

チョン・ジンオ/전진오(ユ・ジョンフン:ベトナム領事館に自首した犯罪者)

イ・ダイル/이다일(イ・ジョンドウ:ジョンフンを狙う男)

 

ウー・カンミン/우강민(ラク:裏カジノの男)

ハン・ウヨル/한우열(独眼:イスの高跳びを助ける男)

ユン・ビョンヒ/윤병희(食料油)

 

ソン・ヨセプ/송요셉(トハン:ブチ切れるベトナム人刑事)

ハン・サンギョン/한상경(ベトナムの刑事)

 

クォン・ヒョクボム/권혁범(チャング:スーパー立てこもり犯)

パク・ウヌ/박은우(スーパーで人質になる女子大生)

イ・ドンエン/이도은(スーパーで人質になるオーナー)

ハン・サンチョル/한상철(スーパーのベトナム人男性店員)

 

キム・スンファン/김승환(中華料理屋の配達員)

 


■映画の舞台

 

韓国:クムチョン(衿川)

https://maps.app.goo.gl/sGnMmPzCMTaeq3z17?g_st=ic

 

ベトナム:ホーチミン

https://maps.app.goo.gl/HW8Dx2VoxBkAA6zXA?g_st=ic

 

ロケ地:

ベトナム:ホーチミン

 


■簡単なあらすじ

 

前作にて、「加里峰洞の抗争」を鎮めたソウルのクムチョン警察のソクトたちは、街中で起きたスーパーマーケット立てこもり事件の捜査にあたっていた

武器を振り回すチャングと名乗る男に対して手を出せずにいたが、そこに颯爽とソクトがやってきた

 

ソクトは仲間達とアイコンタクトをして裏手に回る

隙をついて犯人を確保しようと思ったものの、巨漢が棚に激突してあっさり見つかってしまう

だが、そこからがソクトの真骨頂で、武器を持つ犯人に対して、拳一つで立ちはだかるのであった

 

その事件はマスコミにも大きく報道されたが、あまり好意的な意見は見られなかった

 

そんな折、強力班の元に「ベトナム領事館に指名手配中の犯人が自首してきた」という連絡が入る

 

そこで「英語ができる班長(チェ・グイファ)」とソクトが自首した男の強制送還に付き合うことになったのである

 

テーマ:降車ボタンの押し方

裏テーマ:高麗人参酒の飲み方

 


■ひとこと感想

 

マブリーことマ・ドンソクさんが大暴れするシリーズの第二弾で、本作も狭いところでゴツいがたいが大暴れしていました

バスの中とか、トイレの中とか、相手の逃げ場のないところで殴り合いが始まるのですが、どうやって撮ったんんだろうと思うような至近距離のショットが多かったですね

 

物語はかなりベタな流れになっていて、「なぜか自首をした犯人」を移送するだけのはずが大ごとに巻き込まれるといったものになっています

前作でも大活躍だったイスが登場し、コメディ要素がふんだんに盛り込まれていました

 

映画は迫力重視で、音響効果が抜群に良かったですね

こればかりは映画館でないと伝わらないかもしれません

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

観光がてらベトナムに行ったら犯罪の尻尾を踏んでしまった、という物語で、そこから「犯人に一歩及ばない」という展開が続いていきます

次々に死体が見つかり、敵がマジモンのヤバい奴だと判明するくだりはなかなか背筋が凍る演出になっています

 

冒頭の「業者に見えるか?」から始まり、「死にそうになったら降車ボタンを押せ」だったり、「殺人犯を追うのに理由がいるのか?」だったり、たくさんの名セリフが連発していました

 

ソクトが相手をノックダウンした時に降車ボタンに突っ込んでいたら最高でしたが、ガラスを突き破ってぶっ飛ばすという絵が必要不可欠なので、回収できないのは仕方ないですかね

実は降り損ねた乗客が隠れていて、その人物が降車ボタンを押すというのもありだったかもしれません

 


前作のおさらい

 

前作『犯罪都市』は2017年に公開された映画で、監督&脚本はカン・ユンソンが担っています

貸した金の回収に中国からチャン・ユエン(ユン・ゲサン)、ウェイ・ソンラク(チン・ソンギュ)、ヤン・テ(キム・ソンギュ)がソウルを訪れます

二人は金の返済で揉めて、毒蛇組の組長を殺害し、組を乗っ取りました

三人はチャイナタウンで勢力を拡大させ、イス組(本作でベトナムに逃げている組長)と抗争を繰り広げていきます

 

そのチャイナタウンを管轄するマ・ソクト(マ・ドンソク)率いる強力班が中韓の暴力団の鎮圧に向かいます

強力班のメンバーは新人のキム・サンフン以外は同じですね

前作の英題は『The Outlaw』でした

英題が『Crime City』じゃないのに、続編が『Crime City2』というのはなんでなのか分かりません

 

ちなみに、インドにてヒンディー語版の映画として『Radhe:Your Most Wanted Bhai』というタイトルでリメイクされています

サルマル・カーン主演で、美女に囲まれるようなシーンもあって、かなり毛色が違う印象がありますね

日本でもLDHにて日本語版のリメイクも作られるようですが、『HIGH & LOW』みたいな血みどろな感じになるんでしょうか

ソクト役を誰がするのかは気になりますが、みんな怖そうだけど「拳一つで鎮圧」というリアリティを醸し出せる人はいない気がしますねえ

見た目が悪役っぽくなくて、フィジカルで圧倒的で、コミカルにも振り幅があるという俳優さんってなかなかいないのかなと思ってしまいます

 


アクションシーンのリアリティ

 

アクション映画で常に物議を醸すのが、アクションシーンにおける「リアリティ」の部分だと言えます

実際に人同士が殴り合ったとして、相手が吹っ飛ぶというようなパンチを繰り出せる人はほとんどいません

プロの格闘家の試合を見ても、強烈な一撃が入ってロープまで飛ぶのはプロレスぐらいなもので、大体はズシンと入った後にその場に崩れるというのが普通に起こることだと思います

 

また、戦う人の体格によって、相手の受けたダメージとか衝撃というものは変わってきます

マ・ドンソクさんのパンチなら、イメージとしての重さがあって、敵の体格によっては吹っ飛ぶという演出も納得できるものがあるでしょう

班長が同じように相手を殴ってヒットしても、バスの外に吹っ飛んでいくというのは無理があるし、そもそも彼のキャラなら相手に翻弄されて逃げまくるという流れになり、相手の自滅で助かるというアクションシーンになると思います

マーベルのヒーローみたいな超人設定ならありですが、警察が犯罪者と絡むという映画では、爽快さとリアリティのギリギリのラインを攻めることになると言えるでしょう

 

また、格闘において、その際に受けた傷などの描写がとても重要で、血に汗、服の汚れ具合から、髪の毛の乱れ方など、カッコ良さや美しさで売っている俳優でも、とことんまで演じるかという問題が付随します

これが一つでも嘘っぽいと全体的におかしくなってしまうので、作品の方向性に合わない俳優さんは起用すべきではないでしょう

ダメージを受けて逃げるとか、そういった無様に描かれるシーンでも「無様である」と見せることができるかが重要で、普段の売りの落差があることが俳優としての技量に直結します

でも、この表現の落差を嫌がる事務所(本人かどうかわからないけど)とかもあって、途端に学芸会みたいなメイクでその場しのぎになっていることがあったりもします

 

プロレスなどを見てもわかるように、這いつくばってボロボロになった方が、逆転した時の爽快感が凄まじいのですね

なので、「これは無理やろ」というところまでボロボロになるというのは意外と効果的に思えます

この映画では「めっちゃ強い人がその強さを見せつける系」なので、ソトクがボロボロになるシーンは不要ですが、相手側の執着として「何度倒しても立ち上がる」という怖さや凄みは必要になってきます

敵役を誰がするか分かりませんが、カン・ヘサンの凄みを演じられる人というのも日本ではあまりいないイメージがありますね

カッコ良さで売っているLDHがどこまで踏み込めるのかで、今後の邦画界のマインドも変わってくるのかもしれません

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作の特徴は「アクションシーン以外はほとんどコメディパートになっている」という点で、物凄くゆるーい展開が随所にハマっています

ソクトが戦っているシーンでも、傍にいる班長とかのやりとりはコメディがベースで、アクションとコメディがほぼ同時進行になっていました

これは結構難しい演出で、どっちかに振るのは簡単でも同居させるのは難易度が高くなると思います

効果的に「戦いの周囲」を俯瞰映像で映しつつ、そこで起こることは「真面目なコント」だったりするのですね

この匙加減が本作は絶妙だったと思います

 

映画において、脇を固めるキャストは主人公を照らす鏡なのですが、今回は班長が物語の主導をきちんとこなしていました

ソクトを連れていく決断をし、深入りするソクトを止め、でも最終的には警察としての誇りを持って覚悟を決める

彼の心の移り変わりというものと、ソクトの変わらない信念が交錯していくのですね

それによって、物語の緩急が生まれ、班長も前のめりになった途端、今度は班長の役どころを領事館のパクが担うという流れに移行していきました

 

物語の方向性を決める前半と、ソクトの強さを際立たせるための後半は、対比になっていますが班長自体のコミカルさというもの(真剣なのに真面目に見えないゆるさ)は一貫していました

そして、ソクトの引き立て役になっているはずの班長が、最後に「高麗人参酒」で見事に持っていくのですね

ラストシーンの打ち上げで、この班長だからソクトは自由にやれるんだと思えますし、その信頼関係の太さというものが描かれていました

 

打ち上げのある映画にハズレはないと言いますが、本作もあのシーンのほっこりさによって、さらに映画全体が締まったものになっていると感じました

ドラマなどでも、事件が解決した後にお茶をする右京さんみたいなシーンが必ずありますが、この打ち上げにも同じような効能があって、「こいつらをずっと見ていたい」と思わせてくれる最高の結びとして、とても大事なシーンなんだと思いました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/383997/review/097c5756-6869-4c45-92a9-b248f37aa44f/

 

公式HP:

https://hanzaitoshi.jp/

アバター

投稿者 Hiroshi_Takata

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA