■事故の隠蔽によって、多大な被害を被った韓国海軍ですが、リアルだとこのタイミングでテポドン飛んで来そうだなあと思ってしまいました


■オススメ度

 

緊迫した爆弾映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.11.16(T・JOY京都)


■映画情報

 

原題:데시벨(デシベル)、英題:Decibel

情報2022年、韓国、110分、G

ジャンル:ある事件を機に狙われる元潜水艦副艦長を描くスリラー映画

 

監督ファン・イノ

脚本ファン・イノ&イ・ジンフン

 

キャスト:

キム・レウォン/ 김래원(カン・ドヨン:元海軍潜水艦副長、中佐)

イ・ジョンソク/이종석(チョン・テソン:元海軍潜水艦武装長)

チョン・サンフン/정상훈(オ・デオ:CBC社会部の記者)

 

パク・ビョンウン/박병은(チャ・ヨンハン:軍事治安支援司令部の部長)

チョ・ヨンウ/조연우(イ・デウ:ヨンハンの部下)

 

イ・サンヒ/이상희(チャン・ユジョン:海軍E.O.D.分隊長、爆発物処理班の曹長、ドヨンの妻)

シン・ユンジュ/신윤주(カン・スンヨン:ドヨンの娘)

 

チョ・ダルファン/조달환(ノ・ジョンセプ:海軍潜水艦ソナー係、アルコール依存症)

イ・ミンギ/이민기(ファン・ヨンホ:海軍潜水艦の艦長)

チャ・ウヌ/차은우(チョ・テリョン:海軍潜水艦、音響探知下士官)

ノ・ソンウン/노성은(調理担当)

キム・ドンヨン/김동연(潜水艦員)

カン・ギョンホン/강경헌(主任)

 

キム・スルギ/김슬기(ハン・ミニョ:オ・デオの妻、警察官)

イ・ジェジュン/이재준(オ・ビョング:オ・デオの息子)

 

ウ・ジヒョン /우지현(キム・ユテク:潜水艦乗組員、少佐、第一犠牲者)

チェ・ヒョンジュ/최현주(ユテクの妻)

キム・ユル/김율(ユテクの息子)

 

【韓国政府&軍部上層部】

パク・ソンフン/박성훈(リ常務)

イ・スンホン/이승훈(キム中尉)

パク・ジンス/박진수(国防部長官)

ハン・ミンヨプ/한민엽(キム少尉)

クォン・ドンホ/권동호(チャ中尉)

イ・スンジュン/이승준(韓国海軍司令官)

チョン・ウヒョク/정우혁(海軍参謀総長)

ハン・チャンヒョン/한창현(防衛開発庁長官)

 

【サッカースタジアム】

ペ・ソンジュ/배성재 (サッカー番組のキャスター)

チャン・ジヒョン/장지현 (サッカー番組の解説者)

ユン・ジヒ/윤지희(VIPルームの子どもの母)

キム・ソジュン/김서준(VIPルームの子ども)

ソ・ヨンジン/서영진(サッカー協会の会長)

ユン・ヒョンギル/윤현길(会長夫人)

ソン・グァンイク/손광익(釜山の市長)

パク・チョルホン/박철홍(文化大臣)

 

【その他】

ハン・サンギョン/한상경(ヨンマン:ウォーターパークの安全警備員)

チェ・ユンビン/최윤빈(爆発物処理班)

ナム・テフン/남태훈(ソヨン:レポーター)

ユン・ギチャン/윤기창(窓を開けようとする男)

 


■映画の舞台

 

韓国:釜山

釜山アシアード競技場(サッカー場)

チョンサ・アパート(公園)

大型ウォーターパーク

MISO(ラウンジ)

 

ロケ地:

韓国:釜山

アシアド競技場

https://maps.app.goo.gl/mmrbRnMwoj6m9fnX8?g_st=ic

 

近海ロッテウォーターパーク

https://maps.app.goo.gl/ygUyHSHWw3ZSGaNaA?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

潜水艦副長のカン・ドヨンは、あるミッションの際に艦長代理として極めて難しい判断を強いられることになった

正体不明の魚雷が潜水艦を襲い、その回避行動の末に海底で座礁してしまう

救助を待っても嵐の到来にて、救助できるのは酸素が尽きる数日後だった

そこでドヨンはある決断を強いられてしまう

 

それから1年後、生還したドヨンは特別講師として士官候補生たちに体験談を話すなどの活動を始めていた

そんなある日、所要で講演会に出かけていたドヨンの携帯に謎の男からの電話が入る

それは公園と潜水艦の生き残りのキム少佐の家に爆弾を仕掛けたというもので、どちらかを選べというものだった

 

その頃、公園にて不審物が発見され、警察が出動する

その不審物の中には爆発物処理班のチャン・ユジョンを指名するメモが貼られていた

彼女は爆発物の処理に向かうもの、ロボットを出す猶予はなく、防護服を着て作業に取り掛かることになった

そして、ドヨンはキム少佐の家に向かうものの、爆発物に仕掛けられた音響感知装置が音に反応し、爆発を起こしてしまう

 

そんなドヨンの元に軍司治安司令部のチャ・ヨンハンから電話が入る

事件の詳細を知っていたことを不思議に思ったヨンハンは、彼を第一容疑者として追いかけることになる

そして、次なる爆弾の場所はドヨンに示される

その場所はサッカーのスタジアムで、100デシベルを超えるごとに、残り時間が半減するように設定されていたのである

 

テーマ:復讐と制裁

裏テーマ:隠蔽と英雄

 


■ひとこと感想

 

音量に反応して爆発する爆弾を使ったテロの話かなと思っていましたが、オープニングはガッツリと潜水艦バトルだったことに驚きました

そこから、連続爆弾魔が暗躍し、潜水艦の副長だったデヨンが狙われるという展開になっていきます

 

デヨンが巻き込まれる理由が徐々にわかり、それが冒頭の潜水艦で起こったことが原因なのですが、それよりも事件を隠蔽して口を閉ざしていることが理由にしていましたね

犠牲者への配慮のなさによって怒りが増幅するのですが、最終的にどうすべきかは難しいポイントだったと思います

 

映画は、いつ爆発するかわからない緊迫感と、子どもでも容赦ないところがえげつなくもあります

巻き込まれる記者も悲惨な目に遭っていきますが、彼が最後にかける言葉は印象的だったと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

潜水艦の中で起きた出来事が隠蔽され、それに怒りを抱えていた元乗組員が犯行に及ぶのですが、映画ではそのあたりは隠すつもりがない感じになっていて、犯人が序盤の段階でわかる構造になっていました

軍部は死人に口無しを目論み、ドヨンを切り捨てる方向にいくのですが、爆弾が会場に来たことがわかるとさっさと逃げていくのは凄かったですね

でも、犯人はそれを見越して「位置が離れたら爆発するベスト」を仕込んでいて、それが爆発する瞬間はある意味爽快な感じになっていました

 

物語は、潜水艦の仲間たちは家族であるということを強調し、名誉の死を軽く扱われていることに怒りを感じていました

第一犠牲者のキム少佐は「事件のことなど忘れて悠々と暮らす」という意味合いになり、デヨンは生還を武器に昇進していることが怒りの根源になっていました

「お前の罪を自白しろ」状態ではありますが、映画の質は比べようがないほどに格上に仕上がっていましたね

 

韓国軍の魚雷によって座礁に追い込まれ、その事実を隠蔽するために事故すらなかったことにされている

二重の責苦がテソンを苦しめてきたのですが、それは亡き弟への想いと、ラストシーンで示されるように、デヨンも家族だと思っていたことへの裏切りだったと言えるのではないでしょうか

 


音響感知爆弾について

 

本作の爆弾は、音量によって反応するもので、デシベル測定器(騒音計)というものが組み込まれていました

100デシベルになると「タイマーが半減する」という設定になっていて、この100デシベルは「電車が通る時のガード下にいる時に感じる音量」ということになります

スタジアムなどで大声で歌ったりするのが90デシベルで、それが興奮してマックスになると作動するというものになっていました

なので、後半の「喫茶店のおばちゃんトーク」の時点では、起爆デシベルを調整していたことになりますが、これには音圧の減衰効果が関連していると考えられます

 

映画では、スタジアムの大音量と喫茶店のおばちゃんの奇声が同じになっていたので笑ってしまったのですが、これは音圧減衰のことを考慮して、誇張している部分があるのだと思います

70デシベル(dB)の騒音があった場合、50cmのところで68.7dBに減衰し、2mでは54.4デシベルまで減衰します

約23%の減衰があるのですが、これは2mのところで70dBだったものが、距離ゼロの真横までくると23%増の86.1dBになることを意味します

 

なので、おばちゃんの会話が10m先で70dBだと仮定すると、増幅後のdBが100になってしまう距離があの距離だったということになります

このあたりはかなり複雑な計算になりますが、Amazonで売っている騒音計を買って、騒いでいる人の近くで測ってみたら真実がわかるかもしれません

 

話は逸れますが、当直時間は基本的に1人なのですが、稀に職員が残っている場合があります

大体は「1人で集中して仕事したい人が残る」のですが、稀に「おしゃべりで残っている(普段言えない愚痴を言い合う)」みたいな場面に遭遇することがあります

非常にうるさく感じて「はよ帰れ」と思ってしまうのですが、業務用の金属棚越しでも結構響くので、それやってしまってるわという人は注意したほうが良いと思いますよ

喧騒が無い分、非常にクリアに会話の内容が入ってくるので、それは誰かに聞かれているものだと思った方が無難だと言えるでしょう

 

昨日、たまたま居残り職員が上司の話に絡まれていましたが、上司が2時間くらい喋っていたので大変だったと思います

帰る間際の彼女の表情が全て物語っていましたが、喋っている方は騒音と感じていないので厄介だなあと思ってしまいました

 


私怨を産む隠蔽

 

本作では、犯人であるテソンが「潜水艦事故を隠蔽したこと」に怒りを覚え、それを公表させるように仕向ける事件を引き起こしています

いわゆる「お前の罪を自白しろ」状態なのですが、韓国海軍が不都合な真実を隠そうとしたために、その余波が多くの人員を巻き込むことになっていました

韓国の魚雷(おそらく北朝鮮用)が近くを通った韓国潜水艦をターゲットにしたことで事故が起こるのですが、そこに魚雷があったことこそが国家機密レベルだったのですね

事故を公表することは国際的な緊張を生むので公言できないのですが、潜水艦の中で死んだ隊員をそのままにしておく政府というのも酷い話だと思います

 

テソンの弟テリョンを含む22名が海の底に沈んでいるのですが、韓国政府が彼らを引き上げない理由は分かりません

物理的に不可能なのかもしれませんが、引き上げ計画すら上げなかったことが遺恨を生んでいます

事故の理由は公言できませんが、潜水艦の中で何らかの異常があり、乗組員半分だけは助かったということにしておけば良かったとは思うのですが、それすらしないというのは無茶だと思うのですね

でも、それを強行し、その後も影響なく生きている人の存在を知ることで、彼の怒りは増幅することになりました

 

国家的な隠蔽工作は今に始まったことではなく、私たちが知らないことはたくさんあります

日本の海域で起こったことのみならず、軍事的なものは事故を含めてほとんど報道されず、続報もほとんどありません

軍事的な機密事項は取り扱いは難しいと思いますが、それでもケアを含めた対策は必要だと思います

今回の場合は、私怨の相手が明確で、ドヨンが退職し、海軍司令官などの上層部が事故を発表して辞任していれば起きなかったようにも思えてきます

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、タイムリミット爆弾もののような予告になっていますが、映画の前半は潜水艦映画になっていました

音が非常に重要な環境で、その静かな海と対比した形で爆弾があるのですが、後半のベスト爆弾あたりは「音関係ねえ」という感じになっていました

距離が離れると爆発するというものでしたが、要人全員に着せるためのベストを仕込むというのは無茶なように思えます

 

このあたりのファンタジー感は勢いに任せている感じになっていましたが、爆発映画としては類を見ないリアリティになっていましたね

監督のこだわりで爆破シーンにCGを使わず、音響がリアルになっているのも特徴となっています

俳優さんたちも身近なところで本当に爆発が起こっているので生きた心地がしなかったと思いますが、これだけの撮影で事故が起こっていないというのは凄いことだと思います

 

映画は、ある程度韓国の軍部の関連性などを知っておいた方がスムーズに理解できますが、潜水艦内で艦長ではないのに指揮を執っていたのは不思議に思いましたね

デヨンは階級的には中佐で潜水艦部長というポジションのようで、日本だと潜水艦隊司令官みたいなポジションになるのだと思います

このあたりはググっても出てこないのですが、韓国の潜水艦部隊は海軍作戦司令部直轄の潜水艦司令部の配置になっているので、その役職が秘密裏の作戦に同行していたのかなと考えています

 

映画は、そのあたりの細かいことを言い出すとキリがないのですが、艦長経験のある司令部所属の偉いさんというのは普通にいると思うので、そのあたりを想像で補うという感じになります

ちなみに、デヨンは艦に乗っていた時は中佐でしたが、事故後に大佐に昇格していました

この昇格は無言を貫くための足枷のようなものですが、テソンから見れば、仲間の死体の上に昇進したという見方になるので、なおのことケアが必要だったのではないかと感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

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公式HP:

https://klockworx-asia.com/decibel/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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