■皆既月食の奇跡は、神様のいたずらでも、気まぐれでもなかったのかもしれません


■オススメ度

 

SFチックなロマンス映画が好きな人(★★★)

リメイク元との時代設定の違いを楽しみたい人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.2.28(シネマート心斎橋)


■映画情報

 

原題:동감(同感)、英題:Ditto(同上)

情報:2022年、韓国、114分、G

ジャンル:1999年と2022年に生きる大学生を描いた恋愛映画

 

監督&脚本:ソ・ウニョン

原案:『リメンバー・ミー(2000年、韓国)』

Amazon Link(リメイク元 字幕)→ https://amzn.to/3uQAbeg

Amazon Link(日本版リメイク)→ https://amzn.to/3SXxYpd

 

キャスト:

ヨ・ジング/여진구(キム・ヨン:1999年に生きる韓国大学の機械工学科の学生)

チョ・イヒョン/조이현(キム・ムニ:2022年に生きるヨンの無線機の話し相手)

 

【1999年パート】

キム・ヘユン/김혜윤(ソ・ハンソル:ヨンが一目惚れする新入生)

ペ・インヒョク/배인혁(キム・ウンソク:ヨンが怪我させてしまった親友)

 

ノ・ジェウォン/노재원(チュ・グンテ:ヨンの友人)

ナム・ミヌ/남민우(パク・ナムヘ:ヨンの友人)

シン・ジュヒョプ/신주협(パク・マンス:ヨンの同級生)

ヨ・ジュハ/신주협(イ・ユジン:ヨンの同級生)

キム・スヒョク/김수혁(終末を叫ぶ学生)

ハ・ドンジュン/하동준(機械学の教授)

ムン・チャンジュン/문창준(観測部部長)

 

【2022年パート】

ナ・インウ/나인우(オ・ヨンジ:ムニの親友の男子大学生)

 

イム・ユビン/김보윤(イ・ソンジュ:ムニの友人)

キム・ボユン/김보윤(ハン・ヨルム:ムニの友人)

 

パク・ジアン/박지안(発表する学生)

パク・ハソン/박하선(社会学の教授)

 

【両方に登場】

ウンソル/은솔(高麗大学の放送アナウンサー/Siriの声)

ユ・ジェミョン/유재명(警備員)

 


■映画の舞台

 

1999年&2022

韓国:ソウル

 

ロケ地:

韓国:ソウル

ソウル市立大学

https://maps.app.goo.gl/nodjBMmptymeyeYa9?g_st=ic

 

江原大学春川キャンパス

https://maps.app.goo.gl/8Wn3YuZCREmC8LN76?g_st=ic

 

檀国大学竹田キャンパス

https://maps.app.goo.gl/WsVsWNqounf3jUEy9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

1999年にソウル大学に通っているキム・ヨンは、ある日新入生のソ・ハンソルと出会い、一目惚れをしてしまう

彼女は機械学の新入生の主席を取るほどの成績で、アマチュア無線に興味を持っていた

そこでヨンは親友のウンソクから無線を借りて、彼女に教えられるような存在になろうと考え始めていた

 

ある日、その無線から声が聞こえてきて、ヨンは無線の向こうにいる女学生ムニと親しくなっていく

恋愛のアドバイスを聞きたいと思ったヨンはムニと会うことになったが、約束の場所には誰もこなかった

だが、ムニは大雨の中、ヨンを待ち続けていて、お互いが相手を罵倒し始めてしまう

 

そんな会話を紡ぐ中、二人はおかしさに気づいていく

そして、お互いの時間を確認し合うと、ヨンは1999年にいて、ムニは2022年にいることがわかる

何かの悪戯なのかと思いながらも、二人は交信を続け、やがてそれぞれの想い人との関係も変化していくことになった

 

だが、ある出来事によって、ヨンはムニの正体に気づいてしまう

それは残酷な神様の悪戯の始まりを告げる言葉だったのである

 

テーマ:想いを伝え合うこと

裏テーマ:好きな人が幸せでいることの価値

 


■ひとこと感想

 

さすがにリメイク元を観たことはないのですが、リメイク元の未来=本作の過去となっている作品で、この時代の移り変わりというものが楽しめる作品になっています

残念ながら、リメイク元の配信を探すのは難しい感じになっていて、中古の死ぬほど高いDVDがアマゾンで見つかるぐらいでしたね

 

物語は、あるきっかけからアマチュア無線を始める二人を描いていて、その何気ないすれ違いから始まって、最終的にこの通信が運命だったことを悟ります

男性陣はヨンに心を重ねてしまうと思いますが、この居た堪れなさと憔悴に至るまでの心理変化というものがリアルすぎて辛い映画になっていました

また、ムニとしてもヨンが誰なのかを知った段階の重圧は半端なく、通信が途切れてしまってからの不安というものは絶大だったように思いました

 

難点があるとしたら、ハンソルがかなり酷い女に描かれていたことでしょうか

あの状況のまま流れていくのが大学生と言えばそれまでではありますが、ハンソルの行動を許せない男性は多いように思えてなりません

なので、彼女にもエクスキューズというものがあった方が、もっとスッキリしたように思えました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

時代を超えた通信によって、それぞれの恋愛が進んでいくのですが、二人の関係性が暴露された時、その未来が確定していることが現実を押しつぶしてしまいました

ヨンは自分の恋愛が成就しないばかりか、友人に取られてしまうことが確定してしまうし、ムニは自分の存在がヨンを奈落に突き落としてしまっていることが理解できます

 

この運命はどうにも変えられず、そんな中で次のステップに向けてどう割り切るかということが命題になっていましたね

そんな中、ヨンは機械学の道を捨てて小説家になるのですが、その作品を仕上げて世に出すまでに20年近くの時間を要していたのは心が抉られる感じがします

 

彼に文才があったとしても、この物語を紡げるようになるまでには相当な葛藤があったはずで、その描かれない葛藤というものをムニとの出会いの瞬間に表現するというのは難易度が高いのですね

でも、ムニがヨンを見つけた時の表情ひとつで、この瞬間に到達するまでの苦難というものが顔に刻まれている、というふうに見えるところがすごいことだなあと感じました

 


リメイク元について

 

リメイク元の『동감』は本作と同じタイトルですが、邦題は違っています

リメイク元が『リメンバー・ミー』で、リメイクが『同感〜時が交差する初恋』となっていて、時代設定も違えば、主人公の性別も逆転しています

 

『リメンバー・ミー』は、1979年と2000年が交信するという内容で、過去にいるのが女性で、未来にいるのが男性となっています

1979年に住んでいるユン・ソウン(キム・ハヌル)は、先輩トンヒ(パク・ヨンウ)に恋をしていて、ホ・ソンミ(キム・ミンジュ)という仲良し友人がいる大学生でした

ある日、彼女の元に古い無線機がやってきて、皆既月食の時に不思議な交信音が聞こえてくる、という導入になっています

その声の主は同じ大学の学生イン(ユ・ジテ)で、二人は学校の時計塔の前で会う約束をします

 

インには恋人のソンジ(ハ・ジウォン)がいますが、彼に気遣うことなく無線の世界に入り浸っていました

1979年は大学でデモが続いている時で、ソウンはまだ工事中の時計台の前で待つことになります

2時間を越えてもインは現れないのですが、同じようにインもまた完成した時計台の前で待ち続けていました

その夜、お互いに怒りをぶつけ合いますが、そこで会話の中から二人には21年の時代の違いがあることがわかります

 

ちなみにこれ以上のネタバレは避けますが、とはいってもリメイク作品なので大きな違いはありません

未来にいる側が過去に生きている人の恋愛の結末を知っているので、その役割と反応が変わっているのですね

この失恋というものの受け止め方が男女の違いによって変わっていると言えます

 

配信などで観られれば良いのですが、Amazonは中古ソフトしか売っていませんでしたね

この機会に公開映画館でもリバイバル上映をすれば良いのに、と思ってしまいました

 


初恋(傷)を書き起こすということ

 

本作は、文学の道に進みたかったヨンが、経済的な背景のために「やりたくもない機械学を学んでいる」という設定がありました

最終的に、失恋が彼を突き動かしますが、彼の最新作に至るまでに随分と長い時間が経過していることがわかります

ヨンがどのような経緯で作家になれて、そして「初恋を小説にすることができたのか」まではわかりません

でも、この「初恋本」が処女作ではないというところに、展開のアヤというものがあったように思えます

 

小説家は「自身の体験」を創造したキャラクターに落とし込むことができますが、それに至るまでの時間というものは、人それぞれに違うと言えます

すぐにキャラクターに落とし込める人もいれば、なかなか傷口を広げる気にはなれない人もいます

書いてしまえば楽になると思える人もいれば、書くことでさらに辛くなるのではと考える人もいます

これらの葛藤がヨンには20年必要だった、ということになるのだと言えるのでしょう

 

作家の私生活の小説への落とし込みは色んな方法がありますが、ヨンが書いた本を読んで「無線機の相手だとわかる」というのは、おそらくは「そのまま」書いているのだと思います

「これ、お前らじゃね?」的なノリでヨンジが見つけるものが、まさにこの瞬間に売られている本である、というのは「やりすぎ感」は否めないのですが、運命的でロマンチックに思えてきます

これらの偶然は皆既月食が起こした奇跡のようなもので、ムニが通信できるようになってから、運命が動き出したようにも思えます

ムニの父ウンソクの無線をヨンも使っていたことがわかるのですが、その隅っこに「ヨンとハンソルのプリクラが貼られていた」というエピソードはなかなか強烈なものがありました

そのシールの話が出た時には「まだ貼られていない」のですが、ヨンが自分の未来を知った後に貼られるという流れが残酷すぎて震えてしまいます

 

これらのエピソードの順序というものも、ヨンの執筆に影響を与えていて、運命の残酷さを呪いながらも、自分の書くべきものを与えられたという感覚は否めません

本来ならば、彼の心の中でだけ何度も再生される物語のはずでしたが、彼はそれを言葉にするに至りました

それは、彼自身の中でその恋に踏ん切りがついたということなのですが、それが「20年の時間差と同じ20年の経過」というところに意味があるのでしょう

ちなみに1999年から2022年までに皆既月食はおよそ25回程度あったのですが、そのような周期(書き始めた頃に20回目の皆既月食が来ているとか)というものも、ヨンの心を動かす要因になったのかもしれません

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、自分の恋愛の行方を知ったことによる失恋を描いていて、彼女の気持ちを確かめることもなく、自分で勝手にその舞台から降りているという物語になっていました

ヨンが失恋への道を閉ざそうとすると、ムニがこの世に存在しないことになるのですが、その未来は必然なのか、別のパラレルワールドを作るのかはわからなかったりします

今回は「彼氏が急に消息不明になった」ということで、ハンソル自身も失恋したことになっているのですね

その傷心にウンソクが寄り添うことになって、二人が付き合うことになったのだと思います

 

ウンソク自身はヨンがハンソルを好きだということを知っているので、友人の彼女に手を出すということにハードルはあったと思います

でも、それ以上に「ヨンに捨てられたハンソルの不安定さ」というものは、ヨンが思う以上にキツいものだったと思うのですね

ヨンはムニのためと思って行動をしているように見えても、実際には「ハンソルと終わること」を怖がっていて、その瞬間に立ち向かえないことをすり替えているようにも思えます

二人がどのように終わったのかはわからないのですが、運命決定論的な感じで捉えると、無線が繋がって、ヨンが未来を知ることも必然だったということになるように思います

 

この映画のように「未来と通信する」ということは基本的には起こらないことですが、未来に対する予感を感じることはあると思います

運命とは残酷なもので、お互いの好意以上に強く結びつける要素があって、それがハンソルとウンソクにはあって、ハンソルとヨンにはなかったということになります

物語の時系列で言えば、ハンソルが新入生として入ってきたのが先で、彼女が無線に興味があるとしてヨンがウンソクから借りるという流れになっていました

この無線機を借りるという行為が、最終的にハンソルとウンソクを結びつける起点になっているのですね

 

これを俯瞰してみると、ヨンにはハンソルに対する強烈な想いがあったけど、この時点ではハンソルにはそれがないことになります

その後、ヨンの猛烈な好意が持続し、ハンソルはそれに応えることになるのですが、ヨンとハンソルのお互いを想う熱量はこの時点では大きな差があることになります

そして、その熱量の差は埋まることなく、ヨンはその想いの強さによって、自分自身を焼き尽くしていることになります

なので、この熱量に差があるままだと、未来を知らなくても、どこかで頓挫したようにも思えるのですね

それは神様しか知らないことなのかもしれませんが、皆既月食による奇跡は神様が起こしたものでもあるので、ヨンにキツい言い方をするならば、「軌道修正をした」ということになるのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/100814/review/03542443/

 

公式HP:

https://doukan-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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