■ソトクVS日本刀に至る過程を、一直線で描いた方が盛り上がったかもしれません
Contents
■オススメ度
シリーズのファンの人(★★★)
マ・ドンソクが暴れる映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.2.27(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
原題:범죄도시3(犯罪都市3)、英題:The Roundup: No Way Out(検挙:出口はない)
情報:2023年、韓国、105分、PG12
ジャンル:新型麻薬の摘発騒動に巻き込まれる広域捜査隊を描いたアクション映画
監督:イ・サンヨン
脚本:キム・ミンソン&イ・サンヨン&マ・ドンソク&イェ・ドンウ
キャスト:
マ・ドンソク/마동석(マ・ソクト:ソウル広域捜査隊の刑事)
イ・ジュニョク/이준혁(チュ・ソンチョル:九龍警察の麻薬取締犯のチーム長)
青木崇高(リキ:日本のヤクザ組織「一条会」から派遣された殺し屋)
【ソウル広域捜査隊】
イ・ボムス/이범수(チャン・テス:チーム長)
キム・ミンジェ/김민재(キム・マンジュ:捜査員)
イ・ジフン/이지훈(ヤン・ジョンス:捜査員)
キム・ドゴン/김도건(デビッド・チョン:新人捜査員)
【白鮫組】
コ・ギュピル/고규필(チョロン:中古車ディーラー&闇クラブ「サイバー」のオーナー)
ペ・ヌリ/배누리(ミミ:チョロンの恋人)
イ・チュング/이충구(ボッタクられかける客)
パク・ヘヨン/박혜영(客の妻)
カン・ヒジェ/강희제(サイバーのバウンサー)
ユン・サンドン/윤상돈(カージャンク工場のオーナー)
【一条会:ソウル支部】
ジュン・ソクホ/전석호(キム・ヤンホ:副部長)
アン・セホ/안세호(トモ:横流しをする構成員)
カン・ユン/강윤(ヒロシ:構成員)
イ・テギョ/이태규(マサ:構成員)
ホン・ジュニョン/홍준영(マハ:構成員)
【一条会:日本本部】
國村隼(一条会長)
シム・ハヌン/심하느리(会長の通訳)
【九龍警察麻薬取締課】
ハン・ギュウォン/한규원(キム・ヨングク:ソンチョルの部下)
チェ・ウジュン/최우준(イ・ガンホ:ソンチョルの部下)
【ソウル北部警察麻薬取締課】
チェ・ドング/최동구(ファン・ドング:刑事)
イ・セホ/이세호(コン・テイル:刑事)
リュ・ソンヒョン/류성현(チョン・ギョンシク:行方不明になるチーム長)
チョン・アヒ/전아희(法医学者)
【クラブ・オレンジ】
チェ・グァンジェ/최광제(イ・サンチョル:オーナー)
ホン・イジェ/홍이주(イ・サンチョルの彼女)
ペ・ソヨン/배소영(イ・サンチョルの手下)
イ・ジェソン/이재성(用心棒)
コ・グンハン/고건한(スピード:店員)
ユ・インヒョク/유인혁(キャンディ:店員)
チャ・ジェヒョン/차재현(イエローヘアー:店員)
シン・ヒョンヨン/신현용(自動ドア:ソクトを招き入れる案内人)
ソン・ジヨン/손지영(コ・ソンヒ:転落死したオレンジの客)
【中国関連】
シム・ヨンウン/심영은(チン会長:ドラッグの引受元)
ペク・ギホ/김기호(ペク社長:チン会長の腰巾着)
チャン・ヨンヒ/장용희(チン会長の通訳)
【江南バー】
ソン・イン/송이우(チョン・ソクホ:江南バーの女社長)
【その他】
パク・ジファン/박지환(チャン・イヌ:エンドロール後に登場)
■映画の舞台
韓国:ソウル
ロケ地:
韓国各地
■簡単なあらすじ
ソウル広域捜査隊に抜擢されたソクトは、出勤途中にイザコザをあっさりと解決するほどの凄腕だったが、超法規的な措置をチーム長のテスは頭を抱えていた
ある日、クラブ・オレンジにて、女性の変死体が発見される
女はドラッグを服用していて、殺された後に投げ捨てられたと推測された
麻薬捜査班の管轄だったが、ソクトは何かきな臭いものを感じて、独自で捜査を始めてしまう
一方その頃、日本で作られた合成ドラックの受け渡しのために、日本のヤクザ組織・一条会のソウル支部が暴走を始めていた
ブツを横流しし、それを売り捌いていたのだが、それは本国にも看過されつつあった
一条会長はソウル支部の造反を見逃さず、殺し屋のリキを派遣した
ソクトが事件を調べていくうちに、ソウル北部の麻薬捜査班のチーム長が行方不明になっているという情報が入る
北部班はソクトと合流する形で行動を開始していくうちに、九龍警察の麻薬捜査班と絡むことになった
ソクトは高圧的で挑戦的なチーム長ソンチョルに何かを感じ、裏取り捜査を始めていく
そんな折、10キロもの合成ドラッグが行方不明になり、動きが慌ただしくなってしまうのである
テーマ:鉄拳制裁
裏テーマ:落とし前の付け方
■ひとこと感想
シリーズ3作目ということで、前作までの内容が完全に記憶から抜け落ちた状態で参戦
マ・ドンソク兄貴が暴れまくるだけの映画という記憶はあったので、今回もその暴れっぷりを堪能することになりました
それにしても、音が痛い
映画は、日本のヤクザとそのソウル支部の暗躍、警察との癒着、対立構造などが入り乱れることになっていて、結果としてソクトの登場が少なくなっています
ソクトが直接拳を交える相手は限られていて、外野で起こっている事件の方が多い印象になっていて、そこは縦列駐車して、ソクトに次々殴られるシナリオになった方が良かったように思います
順番的に言えば、ソウル支部→日本支部→韓国警察という感じに敵が切り替わっていく方がスッキリしたでしょうね
そこで変化球を加えるなら、もう一回日本支部(リキ)が巻き返してくるという流れの方が盛り上がったように思えました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
銃器があるはずなのにほとんど出てこないシリーズで、フィジカルを全面に押し出す展開になっていました
リキは日本刀を使うのですが、飛び道具的なものに頼らないところだけは一貫していましたね
とにかく「殴る」一辺倒で、「蹴り」もほとんど出てこない感じに仕上がっていました
物語としては、警察が絡んでくるというわかりやすいテンプレになっていますが、そこまで驚きのどんでん返しではなかったですね
キャラとしてはオレンジの用心棒のやられ方がツボで、自動ドアの有能さに笑ってしまいます
味方側にあまり印象に残るキャラがいないのは残念ですが、それぐらいソトクを中心に描くことに特化しているのでしょう
とにかく登場人物が多い作品なので、あっちこっちに行ってしまうシナリオを追いかけていくうちに「こいつ誰?」となってしまうのは仕方ないのかもしれません
それゆえに「縦列駐車」の方がもっとわかりやすく仕上げられたのではないかと感じました
■これまでのシリーズについて
本作は、シリーズ3作目で、これまでの流れはそこまで必要としない作品でした
とは言え、ソクトがどんな人物かを紐解く上で、ざっくりとおさらいしたいと思います
1作目は『犯罪都市(原題:범죄도시、英題:The Outlaws)』で2017年に韓国にて公開されました
監督はカン・ヤンスン
舞台は2004年の韓国ソウルで、ソクトはチャイナタウンを管轄する衿川警察署の強行犯係となっています
街では、韓国人マフィアと朝鮮族チャイニーズの衝突が起こっていて、それらのイザコザを鎮圧する、という流れになっています
ソクトたちは、度重なる抗争と衝突を繰り返していることを鑑み、これらの一斉検挙を計画することになりました
中国系マフィアの犯罪者チャン・チェン役にユン・ゲサン、韓国人マフィアのファン・チュンシク役にチェ・ジェユン、そして、ソトクの行動に頭を悩ませる強力班のチョン・イルマン班長役にチェ・グィファが配されていました
2作目は『犯罪都市 THE ROUND UP(原題:범죄도시2、英題:The Roundup)で、2022年に公開されました
監督は本作と同じイ・サンヨン
前作から4年後を舞台にして、所属は衿川警察署の強行犯係のままになっています
班長のチョン・イルマンとソクトは国外逃亡した犯罪者の引き取りのためにベトナムに向かいますが、そこで韓国領事館に自首をしたジョンフンを尋問することになります
彼はイ・ジョンドゥの恋人に手を出してしまい、殺されそうだから自首しにきたと言います
ソクトたちは、そこで凶悪犯カン・ヘサンの暗躍に遭遇し、その騒動に巻き込まれる中で、犯罪グループを鎮圧する、という流れになっていました
カン・ヘサン役にソン・ソックが配されています
本作では、2作目の功績が認められて「ソウル広域捜査隊」に昇進しているという流れになり、前作までの班長が登場しないのが寂しかったですね
ちなみに、映画の最後に登場したパク・ジファン演じるチャン・イスが2作目に登場しています
前作では「旅行代理店で働いている元暴力団イス組のボス」として登場し、前々作では朝鮮マフィアと抗争している相手として登場していました
なので、次作では、過去2作の因果と絡むという感じになっていて、正当な続編のように思えてしまいますね
本作と次作がどのように絡むのかはわかりませんが、スピンオフ的な立ち位置にならないことを祈るばかりですね
■勝手にスクリプトドクター
本作は、単体で観るとそこそこ面白いのですが、いきなり広域捜査隊に入っていて上司が変わっていたりするのが残念で、しかも対立する組織同士の抗争に巻き込まれるという流れは同じでも、今回は「一条組の内紛」「汚職刑事」などの構造になっていて、いわゆる「三すくみ状態」になっていたのが物語の牽引力を削いでいます
ソトクが戦う相手が「一条組ソウル支部」「一条組本部から派遣された殺し屋」「九龍警察」という流れになっていますが、一条組の内紛は無関係な場所で起こり、さらに中国マフィアと汚職刑事が絡んでいるというシークエンスもあって、余計にややこしい構図になっています
ドラッグがどのように流れたのかはわかりにくく、感覚的には「一条組本部→ソウル支部→ソウル支部による横流し(白鮫組?)→それを途中で強奪する九龍警察麻薬捜査班→中国マフィア」みたいな流れだったと理解しています
自分の所有物を勝手に横流しされていたことで怒った一条会長が殺し屋を派遣して、ソウル支部にお灸を据えて、そのブツを奪還するというパートがあり、そのブツを巡って「中国マフィアに売るために強奪する汚職刑事」がいて、その在処を血眼になって探すリミットがありました
それらの流れをよくわからないまま追走しているのがソクトたちで、主人公がどのような敵組織たちの暗躍を追求できていないまま進んでいるような感覚がありました
それでいて、どうやらドラッグを奪い合っているらしい、みたいなところから、ヨットハーバーにて先に見つけるという流れになっています
これらの複雑すぎる物語と、各パートで「お仕置き」があるのですが、そのアクションがとても短調なのですね
クラブ・オレンジの顧客死亡事件から捜査が始まり、用心棒を倒すとか、ソウル支部と戦うとか、日本支部の刺客と戦うなどがありますが、そのどれもが「パワーで殴り倒す」というものになっていました
そのアクションがずっと小出しになっていて、ソクト自身のピンチっぽさがそこまでないので、後半に畳み掛けるような流れになっていないのですね
ひとつの戦いがあって休息パートという感じに繰り返されていて、またラスボスが「九龍警察とリキのどちらなのか」というのがわからないまま進んでいるのは難点でした
個人的な感覚だと、リキが早々にソウル支部を鎮圧、その場でソクトと九龍が遭遇、縄張り争いでソクト撤退の序盤を経て、そこから「リキと九龍のどちらをラスボスにするか」を先に明示した方が良いのですね
ソウル支部の殺害事件では「ソウル広域捜査隊の方が捜査権限が上になる」と思うので、その捜査の先に「なぜか九龍の麻薬捜査班がくる」という流れの中で、ソクトは「この抗争に麻薬が絡んでいること」を知ります
それでも、九龍警察の捜査が超法規的に見えるために、彼らにも疑いをかけていくことになります
チーム長が行方不明になっているソウル北部の捜査員たちがソクトの指示で九龍たちを追い、ソクトはリキとの対決に集中していく
1度目の対決で引き分けて、2度目の対決までの間に「真相を究明したソウル北部と合流し、九龍警察と対峙する」ことになり、そこで彼らを鉄拳制裁で鎮圧します
そこでドラッグの行方を突き止めるソクトたちですが、警察が押収したものでも関係なくリキたちが奪還に向かうのですね
この狂気性とソクトが対峙することになり、国際問題がどうしたと言わんばかりの立ち回りをしていくことになります
ソトクはこれらを鎮圧することになるのですが、一条組本体から要請されてきた武装集団と戦う中で疲弊し、2度目の戦いはリキが有利な状態で迎えることになる
そして、日本刀VS拳という不利な状況の中で、ソクトの拳が日本刀を叩き割るという「わかりやすい勝利」で締めるのが良いと思います
本作は韓国映画なので、日本刀を叩き折られたことで怯んだリキが命からがら逃走するというエピソードだと受けそうですし、リキとの戦いは闇に葬られるので、国際問題にも発展しないというオチになります
エンドロール後あたりに一条会長が登場し、「面白い奴がおるなあ」ぐらいのニヤリ顔を見せれば、今後「本腰を入れて韓国制圧を目論む一条組」という構図が出来上がるのかな、と思いました
以上、素人が考えた「さいつよ脚本」でした
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、圧倒的な強さを誇るソクトが無双するのを楽しむ映画で、相手がどのような強さなのかがメインとなっています
基本的な物語の骨子は「何かの抗争の間に入る」というもので、街で起こっているイザコザを仲裁する役割を担っていました
今回の場合も、仲裁の役割を担ってはいますが、一条組の内紛、汚職刑事といったように、これまでの仲裁すべき「抗争」とは違ったものになっていました
仲裁される側とすれば、「勝手に話に割り込んでくるんじゃねえ」という感じになりますが、今回の場合は「脛に傷をもつ警察」とあって、スッキリとしたものにはなっていません
汚職刑事の悪巧みを突き詰めるという流れはとても地味なもので、その過程で暴力が登場する場面はあまりありません
それでも、なんとかソクトの見せ場を作るために、小出しに鎮圧シーンを作るのですが、これが思って以上に多くて、しかもアクションが同じような感じになっているので、あまりアガッて来ない印象がありました
なので、鉄拳制裁を喰らわせるなら、それまでに「なかなか殴り倒せない」という状況があった方が良かったように思います
汚職刑事はなかなか殴れませんが、彼らの目論見が全てバレた後なら可能だったかもしれないですね
とは言え、後で大変なことになるので、同職を敵に回すとアクションとしては弱くなってしまいます
そこで、今回は日本からの刺客が登場するのですが、ラスボスをリキとするならば、九龍がドラッグを確保したのちに、リキたちが九龍警察を滅多刺しにして奪い取るという流れの方が、リキへのヘイトは溜まっていきます
これを踏まえてリキと対峙するソクトには「俺がボッコボコにしたかったのに」という感情と、「警察をボコりやがって」という二つの感情が湧き起こります
この状態でリキとの最終決戦を描ければ、もっと盛り上がったのかな、と感じました
敵討ちをしているように見えて、実は「立場を越えれない嫉妬」があるという感じで、リキとの戦いの中で「避けられるのに汚職刑事たちを踏みつける」というのもコミカルで良いかと思います
映画は、アクションシーンにもコミカルさを入れてくる作品なので、そのあたりで「ソクトのボケ、リキのツッコミ」が入るなら、もっと楽しめたのかな、と思いました(ギャグが日本の漫才のノリなので、韓国でウケるかどうかはわかりませんが)
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100450/review/03538513/
公式HP:
https://hanzaitoshi3.com/