■良心と恩義に報いる旅は、何を犠牲にすることで到達できるというのだろうか?


■オススメ度

 

脱出映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.2.27(TOHOシネマズ二条)


■映画情報

 

原題:Guy Ritchie’s the Covenant(ガイ・リッチーの「契約」)

情報2023年、イギリス&スペイン、123分、G

ジャンル:恩を返すために、現地通訳を救出する軍人を描いた戦争映画

 

監督ガイ・リッチー

脚本ガイ・リッチー&アイバン・アトキンソン&マーン・デイビス

 

キャスト:

ジェイク・ギレンホール/Jake Gyllenhaal(ジョン・キンリー/John Kinley:アメリカ軍の曹長)

ダール・サリム/Dar Salim(アーメッド・サリム/Ahmed:現地の通訳)

 

Sean Sagar(ジジ/チャーリー・クロウ/Charlie Crow:キンリーの部下)

ジェイソン・ウォン/Jason Wong(JJ/ジョシュア・ジュン/Joshua  Jung:キンリーの部下)

Rhys Yates(トムキャット/トム・ハンコック/Tom Hancock:キンリーの部下)

Christian Ochoa Lavernia(チョウチョウ/エドゥアルド・ロペス/Eduardo Lopez:キンリーの部下)

ボビー・スコフィールド/Bobby Schofield(スティーヴ・カーショー/Steve Kersher:キンリーの部下、新規配属)

ジェームズ・ネルソン・ジョイス/James Nelson-Joyce(ジャック・ジャクソン/ジャックジャック/Jack Jackson :キンリーの部下)

Kawa Mawlayee(カワ・マウイラエー:キンリーの部下)

Reza Diako(ハディ:キンリーの部下)

 

エミリー・ビーチャム/Emily Beecham(キャロライン・キンリー/Caroline Kinley:キンリーの妻、カーディーラー)

Savannah Fort(ジェス:キンリー娘?)

Kieran Fort(リル・クリス:キンリーの息子?)

 

ジョニー・リー・ミラー/Jonny Lee Miller(ヴォークス大佐:キンリーの上司)

アレクサンダー・ルドヴィグ/Alexander Ludwig(デクラン・ブレンディ/Declan O’Brady:キンリーの友人、上司)

Gary Anthony Stennette(キンリーにアーメッドを紹介する高官)

 

アントニー・スター/Antony Starr(エディ・パーカー/Eddie Parker:民間軍事組織の責任者)

 

Fariba Sheikhan(バシラ:アーメッドの妻)

Damon Zolfaghari(アリ:アーメッドの弟)

 

Abbas Fasaei(プーヤ:キンリーをアーメッドの元に案内する現地通訳)

Ash Goldeh(ファラジ:情報提供者)

 

【アフガン関連】

Saboor Sahak(アフガンのトラックの男)

Hadi Khanjanpour(エドリス:家探しに入られる男)

Walid Shahalami(カラン:タリバンの現地隊長)

Babrak Akbari(ラシュカール:司令官に報告するスパイ)

Javid Hakim(イスマイル:タリバンの兵士)

Shoaib Lodin(アフガンの炭坑の責任者)

Altamasch Noor(ディダル:タリバン兵)

Marcel Zadé(ジャバル:タリバン兵)

Paeman Arianfar(ファルファディン:アーメッドを追うタリバン)

Mo Ahmadi(サタール:タリバンの司令官)

Fahim Fazli(タリバンの司令官)

 

【その他】

Marcus Glimne(衛生兵)

Javier Ramos(FOB2のパイロット)

Ali Nazarian(アーメッドを助ける丘の男)

Swen Temmel(ジョー:パーカーの仲間?)

Cyrus Khodaveisi(ワヒド:パーカーの仲間?)

Sina Parvaneh(ザマン:アーメッドを助ける男?)

Abdullah Noori-Nooristani Sunara(グヴ:?)

Ahmad Zaki Watandost(アフガンの地元民)

Matthew Hawksley(アメリカ兵)

Jonathan Hunt(アメリカ兵)

Sergio Martí(ミゲル:?)

Paula Leiva(看護師)

Timothy Siddall(カロ:一等航海士)

Luis Fernández de Eribe(軍医)

 


■映画の舞台

 

2018年、

アフガニスタン:

ラシュカルガ/ Lashkargah

https://maps.app.goo.gl/LZG5accxsCP7yacB9?g_st=ic

 

パルヴァーン州バグラム空軍基地

https://maps.app.goo.gl/xcf3WcWaMtYn43cR6?g_st=ic

 

ターリン・コート

https://maps.app.goo.gl/T7zcLQogzUHsQ61BA?g_st=ic

 

クンデューズ空軍基地

https://maps.app.goo.gl/mHkesZbREajq57FP9?g_st=ic

 

アメリカ:カリフィルニア州ロサンゼルス

サンタ・クラリタ

https://maps.app.goo.gl/fMFhw3rAPKgjK6vH7?g_st=ic

 

ロケ地:

スペイン:

アリカンテ/Alicante

https://maps.app.goo.gl/YJE7Bqq8uALeW93q9?g_st=ic

 

ペトレール/Petrer

https://maps.app.goo.gl/d52BRdsMPyAUCPkG8?g_st=ic

 

サックス/Sax

https://maps.app.goo.gl/dJfdD6YSmPuR9TKz8?g_st=ic

 

アルト・ビナロポ/Alt Vinalopó / Alto Vinalopó

https://maps.app.goo.gl/GWfcHfA6qGRg7z7u6?g_st=ic

 

ビジャホヨサ/Villajoyosa

https://maps.app.goo.gl/Q52bPbPJjdLc94Sp7?g_st=ic

 

サラゴサ/Zaragoza

https://maps.app.goo.gl/uNs4XApMo9Yy9uYg6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

2018年、アフガニスタンでは、長期化する紛争の中で、タリバンが持つ破壊兵器を探し出すため、いくつかの分隊が現地に滞在していた

その中のひとつラシュカルガに駐屯しているジョン・キンリーは、武器を探すために情報をひとつずつしらみつぶしに当たるという無謀な作戦を展開していた

 

ある日、新しい通訳としてアーメッドという男が配属された

妻子がいて、アメリカへの移住を夢見ていた

当時は、アメリカがそれを保障する形で雇っていて、それによって、危険を覚悟でアメリカ軍の手伝いをしていた

 

ファラジという男から情報を得たキンリーは、隊を率いて基地から130キロも離れた丘の上にある工場へと踏み込む

だが、それは罠で、キンリーの小隊は待ち伏せしていたタリバンと交戦状態になった

隊は全滅し、キンリーとアーメッドだけが生き残ったのだが、キンリーは瀕死の重症で、アーメッドは危険を承知で彼を基地に帰そうと奮闘するのである

 

テーマ:契約と友情

裏テーマ:生き残る意思

 


■ひとこと感想

 

史実っぽい感じになっていますが、エンドロールの本人映像を見てしまうと、かなり盛りまくっているんだなあと思わざるを得ません

とは言え、基本はフィクションなので、実はこんな話があったんです、ぐらいのノリになっていました

 

現地民通訳とのバディものとして見ればOKですが、通訳がそこらへんの兵士よりも強すぎましたね

かなりの距離を手押し車で移動していましたが、あの体力があれば、何だってできそうな気がしますね

 

物語はあってないようなもので、最後の爽快感を味わう映画のような感じになっていたように思えます

脱出が意外なほどノープランになっていましたが、民間軍事組織の登場シーンは胸熱展開になっていました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

エンドロールに本人映像が出てくるので、おおまかには史実ベースなのだと思います

とは言え、ヒョロい感じの通訳が映画では屈強な軍人になっていたので、いくら何でも盛りすぎだろうと苦笑してしまいました

 

映画は、アーメッドの献身とそれに応えるキンリーの葛藤を描いていて、このあたりの「動かなかった国」というところがリアルなのかなと思います

タリバンのことをそこまで知らなくても大丈夫ですが、バイデン政権に変わってからのことを考えると、彼はかなりラッキーな人間だったことがわかります

 

物語は、男同士の友情というもので、契約というものの重さが描かれています

いわゆる、餌で釣って使い捨てをしてきた政府を批判している内容なので、そのあたりの皮肉を効かせた物語になっていたように思えました

実際には、もっと酷い状況なのだと推測できます

 


歴史的背景について

 

事の起こりは2001年9月11日に起きた「アメリカ同時多発テロ事件」で、この事件によってタリバン、アルカイダなどの武装勢力とアメリカを筆頭としたアフガニスタン・イスラム共和国新政府との「アフガニスタン紛争」というものが始まります

その後、テロを企てたとされるアルカイダのウサマ・ビンランディンが米軍によって発見され、殺害されたことで、民主化が起こり、新政府が樹立するに至っています

それでも、アフガニスタンの治安は悪化し、タリバンによる攻撃が続きます

最終的には、アメリカとタリバンの和平合意として「ドーハ合意」が行われますが、その後タリバンはカブールを陥落させ、政権を掌握してしまいました

映画は、2018年を描いているので、傀儡政権樹立となる「ドーハ協定(2020年)の直前にあたる時期となります

 

テロップでも簡単に表示されるように、2001年のアメリカ同時多発テロに対する報復として、1300人のアメリカ兵をアフガニスタンに派遣、2011年には総数9万8000人にまで膨らんでいきます

この際にアメリカ軍に雇われたアフガン人通訳はアメリカへの移住ビザを約束されていましたが、そのほとんどが実行に移されないまま、和平協議を経て撤退することになっています

タリバンが政権を奪還した際に、300人以上の通訳に関わった者が殺され、今もなお数千人が身を隠していると言います

本作におけるアーメッドの救出作戦は、今もなお無視し続けるアメリカ政府への激烈なメッセージというスタンスになっていると思われます

 


契約の重さとは何か

 

アメリカは契約社会と言われますが、それが明確に機能する範囲は狭いように思えます

今回の通訳者にビザを所得させるというものも、書面で交わしていたとしても、国際情勢を理由にして、一方的に破棄をしているように思えます

タイトルの「Covenant」には「絆、誓い、約束」という意味がありますが、これは単なる契約よりも暖かみが必要となる言葉でしたね

キンリーとアーメッドの間に生まれた絆は友情にも似ていて、命の恩人がタリバンに怯えて暮らしていることを、キンリーは黙って見過ごすわけにはいかなかったのだと思います

 

実際に、同じように救出されても、差別意識を持った人間ならば彼のように動いたかはわかりません

それでも、自分の差別意識と良心の呵責というものは天秤にかけられないので、アフガニスタンでアメリカ軍に加担した人の処刑などのニュースを直視はできないでしょう

契約というのは、相手を信用できない段階で結ばれるもので、それらを文章化することで、お互いの退路を断つという意味合いが含まれます

今回の場合も、信用度が低いのはアメリカ軍の方で、それによって通訳者はきちんとした契約書を交わす必要がありましたが、この内容を書面に起こせたかは微妙な感じがします

それゆえに、口約束程度で濁しつつ、今では有耶無耶にしているのかな、と感じました

 

通訳者は「特別移民ビザ(SIV)プログラムを利用する事になっていて、2021年9月の段階で、約9万7000人がSIVを所得しています

それでも、国防省がビザを発給するペースが遅く、全く追いついていない状況で、法律上は申請から9ヶ月以内の処理を明言していますが、実際には数年かかっているという状況になっています

中には、SIV申請が却下されている人もいて、2023年の第2四半期の3,241人の申請が却下された、というニュースもありました

ちなみに、2023年4月の時点で「本人及び家族の申請者の合計84万人以上がアフガニスタンに残っている」と国務省監察官が報告書をあげていました

 

これらの実情が気になる人は「What happened to the Afghan interpreter?」とGoogleで検索してみると、様々な記事がヒットするので、Google翻訳など使って読んでみることをオススメいたします

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、史実をベースにした「たられば」系のフィクションになっていて、その目的は「反故にされている約束にどう立ち向かうか?」というメッセージになっています

多くのアフガニスタン人協力者がアメリカに来られているとは言え、その申請から承認までの時間の長さが相当で、劇中でもキンリーが「Fワード連発」で相手をドン引きさせていました

最終的には軍部にクレームが到達するというところまで来ていて、それによって「自分で探しに行く」という大胆な行動に出ます

無論、キンリーがヴォークス大佐を助けた恩義があったとしても、実際には爆撃機が爆撃するなんてことができるはずもありません

 

映画の舞台は2018年で、まだアメリカ軍が駐留していた時期なので、軍隊を派遣することができましたが、現在では完全に撤退しているので、同じような救出作戦は不可能に近いと言えます

民間軍事組織を頼って、助けるところまで行けても、あのような擁護は無理なのですね

なので、現時点で同じことをしても、生きて帰られる保証はほとんどありません

 

映画は、ほぼ空想の物語になっていて、アフガニスタン人通訳があそこまで過酷な道のりを超えて、アメリカ兵を助けたかどうかはなんとも言えないところがあります

パンフのインタビューによると「盛った」と公言しているので、あそこまで過酷な状況ではなく、いろんな通訳経験者の逸話をひとつにまとめてあるものだとされています

どこまでが史実かというのはどうでも良い感じで、「ここまでのことをしないとダメなのではないか?」という問いかけなのだと思うのですね

今回は一等軍曹を救出したゆえに、軍部を少しだけ動かすに至りましたが、それでもこれが限度というリアリティがあります

それを考えると、実際に取り残されている人々に対してできることというのは、SIVを早期に発給する以外にはないのでしょう

救出劇がクローズアップされていますが、国防省のたらい回しを描いたシーンが、本作のメインなのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/99197/review/03538512/

 

公式HP:

https://www.grtc-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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