■実体化とイメージと、どちらの方が怖さが優ったのだろうか
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■オススメ度
猟奇系スリラーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.4.9(T・JOY京都)
■映画情報
情報:2023年、日本、105分、R15+
ジャンル:新居に越してきた家族が、元住人の奇妙な少女に襲われる様子を描いたスリラー映画
監督:内藤瑛亮
脚本:内藤瑛亮&松久育紀
Amazon Link(前日譚:押見修造)→ https://amzn.to/3JbjJIW
キャスト:(わかった分だけ)
佐津川愛美(深瀬萩乃/辻村萩乃:素行不良な少女に翻弄される母、元衣装デザイナー篤紘の再婚相手)
植原星空(深瀬萌花:篤紘の娘、不登校の中学2先生)
(幼少期:奈良部心紅)
竹財輝之助(深瀬篤紘:萩乃の夫、マーケター)
美馬アンナ(春花:篤紘の前妻)
伊礼姫奈(ちーちゃん:萌花にいたずらする謎の少女)
地曳豪(ちーちゃんの父)
まひろ玲希(ちーちゃんの母)
馬渕英里何(川添皐月:深瀬家のご近所さん)
凛美(川添椿:皐月の娘、ダンスが趣味)
内田慈(磯部薫:萩乃の元同僚)
クノ真季子(山脇秋子:地域課の刑事、巡査部長)
金谷真由美(産婦人科医)
黒岩よし(少年院の看守)
八田大翔(冒頭のカップル)
成宮しずく(冒頭のカップル)
平田空(椿のダンス仲間?)
小林百合香(椿のダンス仲間?)
遠乃おと(篤紘の同僚?)
風月(篤紘の同僚?)
岩井克之(篤紘の同僚?)
戸田悠太(引っ越してくる家族の父?)
真柳美苗(引っ越してくる家族の母?)
奥出陽大(引っ越してくる家族の息子?)
長塚ムーリャン藍花(引っ越してくる家族の娘?)
■映画の舞台
日本のどこか
ロケ地:
神奈川県:横浜市
ホワイトレディースクリニック
https://maps.app.goo.gl/4p5jpsa2JAvy6p7g8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
元衣装デザイナーの萩乃は、マーケターの篤紘と結婚し、彼の連れ子である萌花と三人で暮らすことになった
萩乃が引越の荷物を荷解きしていると、萌花が描いたと思われるデザインのノートを見つけた
萌花は不登校だったが、家できちんと勉強をしていて、篤紘はそんな娘にちゃんとした母親を与えてたいと思っていた
ある日、隣人の川添から「娘・椿のダンスの衣装を作って欲しい」と頼まれる
萩乃は萌花がデザインに興味を持っていることを知っていて、それとなくデザインしてみないかと問いかけた
萌花は「考えておく」と言い、翌日その申し出を受けることになった
萌花がデザインした衣装を一緒に作ることになった萩乃
衣装は完成し、椿に喜ばれ、二人は順調に関係性を築きつつあった
そんな矢先、不気味な少女が家に上がり込み、萌花を襲うのである
テーマ:家族の必要性
裏テーマ:感化される魂
■ひとこと感想
ヤバい娘を持った母親の話だと思い込んでいて、萌花がいつ豹変するのかと身構えていましたが、まさかのゲストがいたのには驚きました
かなりアニメのようなキャラに思えて、その行動もなかなかキテる感じに描かれていました
あの少女が来て「警察に言うな」と言う夫が一番異常で、少女以上にヤバい奴にしか見えませんでした
映画は、キャラ映画と言う感じで、ちーちゃんと呼ばれるキャラをどう活かすかという感じになっています
怨霊とかそう言った類ではなく、その家に住んでいた女の子で両親もわかっていると言うのに警察がほとんど動かないのはシナリオの都合のように思えます
1回目の襲撃で、あの後すぐに夫に電話したのでしょうが、部屋が片付くまで帰ってこないと言うのも妙な感じがしましたね
物語性はさほどなく、奇妙な出来事に巻き込まれる中で、萌花自身が自立していく様子が描かれていました
ちーちゃんの言葉に感化されていくのですが、萩乃の篤紘依存も病的なものがあったように思えます
スプラッター系ホラーが大丈夫ならOKという感じになっていましたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ネタバレというか「出オチ系」の映画で、萌花の心に土足で踏み込んでいく「ちーちゃん」が描かれていきます
まるで心の中を読んでいるかのような感じになっていて、要所要所で彼女の心を動かす言葉を選んでいたように思います
映画は、キャラが立っている人ばかりが登場し、警察も含めてまともな人がいない感じになっていましたね
普通に見える人が異常者で、唯一まともだったのが主人公・萌花という感じになっていました
とは言え、覚醒するまでに時間がかかり過ぎるキャラで、どうして篤紘を選んだのかはわからなかったですね
大好きな仕事を辞めてまで得られるものがあるように思えません
物語としては、萌花の自立、萩乃の覚醒、母娘の関係性などが同時に描かれていました
メチャクチャな部屋でデザイン画を見つけただけで逆上する夫など、ちーちゃんがいなくてもいつか殺されてたんじゃないかと思わせてくれます
途中からちーちゃんと共闘する流れになっていて、それを面白く感じられるかどうかが評価の分かれ目になるように思えました
■ちーちゃんとは何者なのか
映画に登場するちーちゃんは、元々あの家の住人で、冒頭のカップルが入った部屋(=萌花の部屋)が彼女の部屋だったことがわかります
両親まで登場し謝罪をするのですが、夫の方はその後に「トイレ借ります」と勝手に上がっていくし、妻の方はニヤついて変な顔をしている両親でした
あの感じだと、あの家を何らかの理由で追い出されて、あの家を取り返すまでの間に入ってきた住人を「娘に追い出させる」などの可能性を考えてしまいます
実際にはそんなことはなく、単にあの親あっての毒娘という感じの演出に過ぎないのでしょう
ちーちゃんは執着を持つ人物ですが、映画ではあの部屋にこだわる理由が全く描かれません
普通のホラー映画でも、霊が出るには理由があって、それを深掘りしていくものなのですが、本作では実在する人物なのに、その背景を完全に無視しています
それ故に、もう少し固執の具体的な説明が必要に思えます
おそらくは、良い思い出があるから「取り返したい」のであって、あの部屋には幸せだった頃の自分がいたのだと考えられます
映画では、ちーちゃんの説明はほとんどないので、これ以上考察のしようがありません
映画がそれを放棄したのは、次作でネタバレをするのか、実は何も考えていないかのどちらかだと思うのですね
この内容で続編を考えるのは無茶だと思うので、適当な設定を考えられなかったのかな、とか思ってしまいました
とは言え、答え合わせはできるにようになっていて、それは公開と同時に発売された「前日譚の漫画」になるのだと思います
興味のある人は購読するも良しですが、その価値があるのかは何とも言えませんし、映画は映画で完結してこそなので、設定資料を後で読んでも、あまり意味がないのではないでしょうか
■勝手にスクリプトドクター
本作は、歪な家庭の母と娘の関係が主軸になっていて、そこにあるわだかまりが噴出する内容になっています
映画だけの情報だと、妻にあれこれ求める夫がいて、それによって病んでしまうまで追い詰めるという性質が描かれていました
その過去によって、萌花は「本当にいなくなって欲しいのは父親なんだ」という本音をちーちゃんに見破られてしまいます
萌花目線だと、萩乃が働きに出ることは希望のようなもので、彼女で生計が成り立つなら、父親の存在は皆無に等しくなります
また、実母と同じ過ちを繰り返してほしくないという思いがあり、実母が最後までしなかった抵抗を萩乃に求めている部分がありました
冒頭にて、萌花はデザインノートを探していたのですが、おそらくあれはわざと潜り込ませて、萩乃に見せようとしていたのだと思います
萩乃を味方につけることで、いずれは出てくる父親の本性に対抗しようと考えたのだと思いますが、そこに登場したのがちーちゃんだったということになります
ちーちゃんは萌花の心を見透かす存在なのですが、実体化させなかった方が良かったと思います
怨霊系ホラーにするかどうかはなんとも言えない部分がありますが、萌花だけに見えるイマジナリーでも良かったでしょう
あの部屋はちーちゃんの部屋なので、その端々に彼女が遺しているものが見つかるという展開があれば、萌花の想像力がちーちゃんを具現化することができます
ちーちゃんの囁きは「萌花の心の声」であり、ちーちゃんが持つハサミは「いずれ自分を隠している長髪を切るためのもの」とすれば、あのビジュアルである意味も通ります
部屋にて、ちーちゃんのかけらを見つけた萌花が変化し、それによってより一層、萩乃を味方につけようとする
それは、ちーちゃん自身が母親に見捨てられて、あの部屋で死んでしまったという過去に結びつけることができます
あの不気味な両親に関しては、いろんな登場のさせ方ができるので、ちーちゃんを実体化しなくても、川添が語るエピソードで登場させても問題はありません
萌花の部屋が荒らされて、警察に相談するといわく付きの物件で、川添はそれを知っている、という流れだけで同じようなシーンを作ることができます
映画では、萌花に馬乗りになっているちーちゃんというビジュアルがありますが、これは「萌花にだけ見えている抵抗」というふうに捉えることもできます
一人で苦しんでいる萌花を見た萩乃は、彼女が抱えている闇を感じることになり、そこから「萌花が怯えているもの」への探究が始まっていきます
そうした先にある「萌花と萩乃の共闘」というものが、過去を締め付けてきた父親の排除に向かうという流れになっていきます
二人を自分の言いなりにしようとする父がいて、そこに暴力があって、その犠牲になりそうな萩乃を萌花が助ける、という構図になるでしょう
この時には萌花にはちーちゃんがついていて、彼女はダークなものではなかったと結ぶことで、成仏することができるでしょう
なので、ちーちゃんの実体化がなくても、物語の核を揺らがせることなく着地できるのではないか、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、展開が二転三転して面白くて、キービジュアルもうまく機能していたと思います
でも、バツマークだけは多用し過ぎていて、最後にはギャグのポーズのように見えてしまいました
要所で数回登場すれば良いのですが、あのポーズにも由来というものがあった方が良いと感じました
1番しっくり来る由来は、ちーちゃんの母親の癖で、それを見て育ったちーちゃんが「自分を守るために余計なことを言わない」という意味でのバツポーズを覚えるところから始まります
ちーちゃんの母は口を閉ざすことで夫からの暴力に耐えてきたという歴史があり、声を上げようとするちーちゃんをバツポーズで制止することになります
そのポーズはちーちゃんを守るためのものでありながら、同時に憎悪の対象にもなっていきます
そして、同じように口を閉じようとする萩乃や萌花がいて、今度は「それで良いのか?」を問うためのキーポーズへと変化していきます
最終的に、バツポーズは「萩乃と萌花の秘密」を示すものになり、それによって篤紘の死の真相を覆い隠すものになると思います
篤紘の暴走によって、それを止めるための行動で事故が起きた
篤紘は「萌花のための母親になれない萩乃」に対して失望し、感情的になって暴力を振るう
それを萌花が止めるために、手元にあった衣装バサミで父を刺してしまう
萌花が父を後ろから刺し、そのはずみで後方に倒れ込んだ篤紘の体を衣装バサミが貫くという構図になれば、刺したのか転倒して刺さったのかはわからないでしょう
そうして実際には殺意があって起こった行為も「事故」のように見えるので、それを「秘密」とすることで、二人はより良い生活を受け取ることができるのかな、と思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100694/review/03698894/
公式HP: