■イケメンと美少女のバディものなのに、韓国憑依ホラーと宣伝した戦犯は誰?


■オススメ度

 

退魔系ファンタジーが好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.9.12(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:천박사 퇴마 연구소: 설경의 비밀(チョン博士の退魔研究所:雪景の秘密)、英題:Dr. Cheon and Lost Talisman(チョン博士と失われた設経)

情報:2023年、韓国、98分、G

ジャンル:インチキ祈祷師のもとにガチの除霊案件が舞い込むファンタジー映画

 

監督:キム・ソンシク

脚本:パク・ジュンソプ

原作:キム・ホンテ&フレッシャー『憑依(2014年)』

 

キャスト:

カン・ドンウォン/강동원(チョン・ドンシグ博士:インチキ祈祷師、村を守る当主家の子孫)

   (幼少期:ムン・ソンヒョン/문성현

 

ホ・ジュノ/허준호(梵天:幽霊に支配された法師)

 

イ・ソム/이솜(オ・ユギョン:妹を助けるためにチョン博士を訪ねる村の女性)

パク・ソイ/박소이(ユミン:取り憑かれたユギョンの妹)

ミン・ヒョギュン/민효경(ユギョンの母)

オ・ヒョンソク/오현석(ユギョンの父)

 

イ・ドンフィ/이동휘(インベ/カン・ドンリョン祈祷師:チョン博士の助手、技術担当)

キム・ジョンス/김종수(ファン社長:アンティーク店の店主、チョン博士の友人)

 

ユン・ビョンヒ/윤병희(ホーライ/花蓮:梵天の部下)

チュ・ボビ/주보비(ジャンバチ:梵天の部下、術師)

パク・キョンへ/박경혜(サウォル:梵天の部下)

 

イ・ギュホ/이규호(ケチョン郡の村長)

 

キム・ウォンへ/김원해(チョンの祖父、堂主)

ソ・ユンヒョク/서윤혁(チョン・ドンウ:チョンの弟)

 

ぺ・ヨンラン/배영란(シャーマンのリーダー)

キム・ヨンビン/김영빈(未熟なシャーマン)

パク・ジホン/박지홍(未熟なシャーマン)

キム・ドンリョル/김동률(未熟なシャーマン)

イ・ハンジュ/이한주(未熟なシャーマン)

イ・ヒョンジン/이현진(未熟なシャーマン)

クォン・オチョル/권오철(未熟なシャーマン)

 

イ・ドンチャン/이동찬(村の神を祀る神社の老人)

オ・ハンギョル/오한결(神社の子ども)

 

パク・ジュファン/박주환(デジョイ:?)

 

チャン・ウヨン/장우용(薬剤師)

ソン・スンテク/손승택(薬剤師)

シン・スンホ/신승호(薬剤師)

 

ク・シヨン/구시연(ミスン:操られる村人)

チョン・ソヒョン/전소현(チュンジャ:操られる村人)

アン・ドゥホ/안두호(キョンピョ:操られる村人)

ソン・ギルホ/송길호(ジョンミン:操られる村人)

 

パク・ミョンフン/박명훈(パク氏:変なものを集める父)

イ・ジョンウン/이정은(パク氏の妻、チョン博士の依頼人)

チョ・イヒョン/조이현(素行不良のパクの娘)

 

パク・ジョンミン/박정민(仙女を召喚する能力者)

ジス/지수(チョノン仙女)

 


■映画の舞台

 

韓国のどこか

 

ロケ地:

韓国のどこか

 


■簡単なあらすじ

 

インチキ祈祷師のチョン博士は、技術担当の助手インベと共に、仕組んだ霊的な現象で金儲けをしていた

彼らはその仕事を動画にまとめてサイトアップしていて、回収した骨董品などを古美術商のファン社長に売り捌いていた

 

ある日、彼らの動画を観たユギョンという女性が二人のもとに現れた

彼女が住むのはケチョン郡の山奥にある寂れた村で、彼女の妹ユミンは悪霊に取り憑かれたと言う

インチキ祈祷師のチョン博士は何もできないと思われたが、ファン社長から預かっていた七星の剣と鈴が反応し、それで悪霊を断つことができた

 

その主は梵天と呼ばれる法師で、彼は部下のシャーマンたちと引き連れて、ある計画を企てていた

チョン博士はその目論見と対峙することになり、梵天の真の目的、自身のルーツについて思い返すことになったのである

 

テーマ:能力の開花

裏テーマ:隠された因果

 


■ひとこと感想

 

てっきり韓国ホラーだと思っていましたが、びっくりするぐらい評価が低かったので逆に興味が湧いてしまいました

おそらくはホラーだと思って観に行ったらファンタジーアクションだったと言うことで落胆が多かったのかもしれません

 

映画は、インチキ祈祷師の活動をしていたらガチの案件が舞い込んでしまったと言うもので、この依頼者が視える人だったと言うものでした

チョン博士たちには視えていないので除霊などはできていないはずなのですが、実は能力は開花していないけど、霊的な一族の末裔だったと言うカラクリがありました

 

物語は、何者かに狙われて霊に取り憑かれた妹を助けると言うもので、相手は遠隔で誰にでも入り込める能力者になっていましたね

その力を無効にすることができる剣を持っているのがチョン博士なのですが、彼がそれを持っている理由と、インチキ祈祷師を続けている意味というものが後半になってわかるようになっていました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

本作のネタバレ部分は、チョン博士の過去であり、梵天はかつてチョン博士の弟トンウに憑依して家族を殺したという過去がありました

チョン博士は、その因縁を暴くためにインチキ祈祷師をしていたというのは面白い構成になっていたと思います

 

映画の評価が低いのは、思ったのと違うというところもありますが、とにかく盛り上がりに欠ける内容だったことだと思います

因果が非常にわかりにくくなっていて、何がどうなったのかがスッと入ってこない部分がありました

また、途中で登場した謎の仙女が何者かわからず、単に梵天の場所を聞き出すだけというのは意味不明でしたね

 

なんとなく原作のある作品で、続編があるような感じがしていますが、調べてもそのあたりの情報は出てきません

どうみてもユギョンが加勢してチームになりそうな感じがして、さらなる強敵が出てくる続編が作られそうな気がします

面白いシリーズにはできそうに思うので、きちんとシナリオを書ける人がいたら良いのになあと思いました

 


說經(ソルギョン)について

 

映画に登場する「說經」とは、韓国で古くから伝わる鬼神の撃退法で、災いをもたらす鬼神が嫌いなものを形作って、それを飾ることで退治しようと考えるものとなっています

紙で作られた武具で、「雪位」「雪景」「設位説」などとも呼ばれています

チョン博士は梵天を封じる際に「설경(雪景)」と「칠성검(七星剣)」を用いていましたが、雪景は紙で作られた武器のことを言います

また、七星剣は完全なものではなく、いわゆる半分の力しか持っておらず、今後の展開によっては「失われた片方を探す」という展開になっていくのだと思われます

 

チョン博士は、家系的にそう言ったものが使える家系でしたが、その力は彼の弟の方が強かったため、祖父は弟を後継者に据えていました

でも、梵天に勝つまでの能力は有しておらず、相手の先手を交わすことはできません

なんとか、祖父の力で梵天を封印することはできましたが、その効力というものが薄れていて、さらに村に能力者が生まれたことで、梵天の完全復活への足掛かりというものが生まれることになっています

 

チョン博士もまた、弟と祖父を殺した梵天を追っていて、その為に詐欺まがいの除霊をやってきました

彼は祈祷師でもシャーマンでもなく、心理学者として、依頼者に救う病魔というものに立ち向かっています

その際に祖父から譲り受けた鈴を必ず鳴らしていて、「鈴が鳴れば大丈夫」という目安にしていましたね

これは本当に除霊をしないとダメな案件ではないという指標で、それによって、偽の霊を居るかのように見せかけていました

 

これらの儀式は全部嘘っぱちに見えるのですが、実際には本当の除霊をしていたことになっています

彼らが攻略したのは、依頼者の精神的な負担であり、この家のおかしさの根幹とは何かというものを見つけ出していました

曰く付きっぽい物を排除するというわかりやすい方法で術中に嵌めていくのですが、この嘘を信じさせる能力というのが秀でているように描かれていましたね

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、韓国のウェブ漫画『憑依』が原作となっていて、これは2014年から2015年まで掲載され、全28話となっています

また、全部で3章構成になっていて、2章からは「幽霊が視える少女・ユギョン」がチョン博士と一緒に行動する、となっています

映画もその流れを踏襲していますが、オリジナルのように進むのか、全く別のエピソードが作られるのかはわかりません

 

物語は、どちらかと言うと綺麗に終わっていて、弟を殺した相手を封印したいチョン博士と、妹から悪霊を祓いたいユギョンの思惑が一致し、チョン博士が本当は何者なのか、を紐解く流れになっていました

このプロット自体は悪くないのですが、本作の足を引っ張っているのは「ホラー映画」だと宣伝したことのように思います

インチキ霊媒師がガチの案件にハマると言うプロットもホラーっぽさがあるのですが、ホラー要素に対する逆襲は「魔法ものっぽい」と言うものがありました

雪景をどのようにビジュアル化するかというところがキーポイントでしたが、この内容ならば、陰陽師路線で宣伝した方が良かったように思えます

 

とは言え、ストーリーがグダグダな面も多くて、それはあまりにも次回に引き延ばした謎が多いことだと思います

チョン博士の背景はほぼ登場しますが、彼がインチキ祈祷師を行なって、梵天に辿り着いた流れがかなりご都合主義的なところがありました

また、見えるユギョンがなぜインチキ祈祷師を頼ることになったのか、と言うところも不明瞭で、ユギョン視点だと「彼の周りに悪霊がいるけど近づけていない」というところに、彼の能力を感じていたことになります

それがYoutubeの動画越しに見えるのは不思議で、実際にチョン博士の仕事を目撃したことで違和感を持ったと言う感じのほうが説得力が増すように思えました

 

見える人と祓える人と言う組み合わせは、このタイプの物語だと真新しさは皆無で、その関係性に何かしらの新しいものが必要になってきます

映画だと、ムードメーカーのインベがユギョンLOVEみたいな感じになっていますが、霊が見える女性に恋心を抱くと言うのは、彼自身に祓える能力がないとしんどい関係のように思えます

また、能力の補完と言うものが起こる場合、その欠落に至った理由というものが必要になります

このパターンのわかりやすい展開は、「ユギョンの見える能力は元々チョン博士が持っていたもの」というものになり、実は「チョン博士とユギョンは生き別れた双子だった」みたいなパターンになってしまうように思えます

 

このような展開でつなげていくものかはわかりませんが、チョン博士の持つ剣が半分だけということを考えると、今後の展開では「片割れ」というものが必ず登場すると考えられます

そうなった時に「安直は双子説」に行くのか、変化球を交えて「前世で夫婦だった」みたいになるのかはわかりませんが、何かしらの共通項を探るという展開になるのだと思います

もっと言えば、実はユギョンがチョン博士の母親で、生まれ落ちる時に見える能力だけを隠した、というものもあると思います

危険を察知した母親が、チョン博士を産む際に「この世界から切り離そうと考える」という流れは無きにしもあらずですが、このパターンの場合は「母親的存在であるユギョンが死んで能力を受け継いで完全体として生まれ変わる」というものになるのでしょう

色々とネタを考えてみましたが、もし続編が作られて、日本公開になった場合には、この辺りを確かめてみたいなあと思いました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、霊感バディもののプロローグのような作品で、本作単体で語るのは難しい部分があります

いわゆるチョン博士とユギョンの出会いの物語で、今回はそれぞれの背景と能力を披露する場となっています

ムードメーカーとしてのインベの役回りと、チョン博士の背景を知りつつ、敵に底通しているのが古美術商ジョンスでした

この4人が今後、色んな事件に関わりながら、チョン博士は「片割れ」を探し、ユギョンは自身の出自を知り、という流れになっていくと思います

 

韓国での興収はそこそこなのに日本ではほとんどウケなかったのですが、それはやはり韓国のおどろおどろしいホラーを期待していった層が「なんか違うもの見たー」みたいな反応になったからだと思います

ホラー的な様子がないわけではありませんが、本作の本質はファンタジックマジックアクションなので、日本だと『陰陽師』、欧米だと『ハリーポッター』シリーズの系譜になると思います

この映画をどうしてホラー路線で宣伝したのかわかりませんが、敗因があるとしたらそこだと思います

 

映画のプロモーションは非常に難しいところがあって、この映画をファンタジーマジックアクションだとわかっていて、それで宣伝したらどうだったか?というのはわかりません

でも、タイトルの『憑依』が相手の能力というズレもあるし、原題は『チョン博士と雪景(説経)の秘密』なので、はじめから色々と間違っているように思います

雪景のシーンはネタバレになるのでどこまで出すかは難しいと思いますが、バディものをもう少し強調して、本来のバディはこっちだよという感じで劇中内で本当のバディが生まれる瞬間を見せても良かったように思います

今後、シリーズがどうなるかわかりませんが、本来ならテレビドラマでじっくりと色んな話を展開していくタイプの物語なので、色んな意味で間違っていたのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101943/review/04239907/

 

公式HP:

https://www.hyoui.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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