■壮大な叙事詩の「起」である本作が最後まで語られる時、現存のエンディングとは違うものに育っていくのかもしれません
Contents
■オススメ度
前作を観た人(★★★)
原作ファンの人(★★★)
ティモシー・シャラメのファンの人(★★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.3.18(MOVIX京都)
■映画情報
原題:Dune: Part Two
情報:2024年、アメリカ、166分、G
ジャンル:生き残った名家の末裔が砂漠の民と共に戦う様子を描いたSFアクション映画
監督:ドゥニ・ヴィルヌーブ
脚本:ドゥニ・ヴィルヌーブ&ジョン・スパイツ
原作:フランク・ハーバート『Dune(1965年)』
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キャスト:
ティモシー・シャラメ/Timothée Chalamet(ポール・アトレイデス/ムアディブ/ムニール:アトレイデス公爵家の後継者)
レベッカ・ファーガソン/Rebecca Ferguson(レディ・ジェシカ:ポールの母、秘密結社ベネ・ゲセリットのメンバー)
(幼少期:Georgia Farlie)
(幼児期:Zoe Kata Kaska)
アーニャ・テイラー=ジョイ/Anya Taylor-Joy(アリア・アトレイデス:ポールの妹)
ゼンデイヤ/Zendaya(チャニ:フレメンの一員でポールの恋人)
ハビエル・バルデム/Javier Bardem(スティルガー:フレメンの部族長)
ジョシュ・ブローリン/Josh Brolin(ガーニイ・ハレック:アトレイデス公爵家の武術指南役)
Jordan Long(密輸業者の運転手、ガーニイの仲間)
Omar A.K.(負傷した密輸業者、ガーニイの仲間)
ステラン・スカルルガルド/Stellan Skarsgård(ウラディミール・ハルコンネン男爵:ハルコンネン家の当主)
オースティン・バトラー/Austin Butler(フェイド=ラウサ・ハルコンネン:ハルコルネン男爵の甥、アラキスの後継者)
デイブ・バウティスタ/Dave Bautista(クロッス・ラッバーン:ハルコンネン男爵の甥)
フローレンス・ピュー/Florence Pugh(イルーラン皇女:皇帝の娘)
クリストファー・ウォーケン/Christopher Walken(パーディシャー皇帝シャッダム4世:コリノ家の皇帝)
【ベネ・ゲセリット】
レア・セドゥ/Léa Seydoux(レディ・マーゴット・フェンリング:ベネ・ゲセリットのメンバー、皇帝に入れ知恵する女)
シャーロット・ランブリング/Charlotte Rampling(ガイウス・ヘレネ・モヒアム:ベネ・ゲセリットの教母)
Kait Tenison(ベネ・ゲセリットのメンバー)
Tara Breathnach(ベネ・ゲセリットのメンバー)
Akiko Hitomi(ベネ・ゲセリットのメンバー)
【フレメン】
スエイラ・ヤコブ/Souheila Yacoub(シシャクリ:フレメンの戦士、チャニの親友)
バブス・オルサンモクン/Babs Olusanmokun(ジャミス:フレメンの戦士、前作にてポールと決闘をした男)
Roger Yuan(ランヴィル中尉:フレメンの戦士)
Giusi Merli(マザー・ラマーロ牧師)
Leon Herbert(最古の長老)
Sima Rostami(女性の長老)
Yvonne Campbell(長老)
Joseph Charles(長老)
Vic Zander(長老)
Alison Halstead(砂虫を管理する衛兵)
Imola Gáspár(水の保有を監督するフレメンの衛兵)
Alison Adnet(フレメンの若き兵士)
Hamza Baissa(フレメンの若き兵士)
Hassan Najib(フレメンの若き兵士)
Jasper Ryan-Cater(フレメンの若き兵士)
Omar Elbooz(フレメンの若き兵士)
Abdelkarim Hussein Seli Mohamed Hassanin(フレメンの若き兵士)
Hopi Grace(フレメンの修道女)
Havin Fathi(フレメンの修道女)
Kincsö Pethö(フレメンの修道女)
Tedroy Newell(フレメンの傍観者)
Oxa Hazel(フレメンの傍観者)
Hajiyeva Pakiza(フレメンの傍観者)
Nicola Brome(負傷したフレメン)
Kathy Owen(負傷したフレメン)
Rand Faris(フレメンの女性兵士)
Fouad Humaidan(フレメンの兵士)
Manaf Irani(フレメンの兵士)
【フェダイキン:ポールの配下の死の特殊部隊】
Joseph Beddelem(フェダイキンのリーダー)
Xavier Alba Royo
Rachid Abbad
Affif Ben Badra
Botond Bota
Abdelaziz Boumane
Abdellah Echahbi
Zouhair Elakkari
Noureddine Hajoujou
Mohamed Mouraoui
Adil Achraf Sayd
Hamza Sayd
【ハルコンネン】
Kajsa Mohammar(フェイド=ラウサの従者)
Sara Bacsfalvi(フェイド=ラウサの従者)
Zsófia Kocsis(フェイド=ラウサの従者)
Anton Valensi(兵士)
Lex Daniel(兵士)
Dominic McHale(兵士)
Paul Boyle(兵士)
Niall White(飛行隊のパイロット)
Tony Cook(スキャナオペレーター)
Gabor Szeman(幹部)
Laszlo Szilagyi(幹部)
Dylan Baldwin(通訳)
Jonathan Gunning(アリーナ儀式のスーパーバイザー)
Alan Mehdizadeh(武器の管理者)
Jimmy Walker(男爵の代理人)
Dora Kápolnai-Schvab(男爵の代理人)
Joelle(男爵の代理人)
Matthew Sim(スパイスの管理者)
【原理主義者:南アラキス】
Luis Alkmim(リーダー)
Huw Novelli(戦士)
Moe Bar-El(戦士)
Serhat Metin(戦士)
Amra Mallassi(戦士)
Adam Phillip Bloom(戦士)
【皇帝の側近】
Italo Amerighi(議員)
Tim Hilborne(議員)
Cecile Sinclair(議員)
Tracy Coogan(議員)
Peter Sztojanov Jr.(皇帝の精鋭)
Alexandra Tóth(帝国の召使)
【その他:所属不明】
Cat Simmons(若い修道女)
Burt Caesar(信者)
Remi Fadare(信者)
Amer El-Erwadi(大柄な兵士)
Marcia Tucker(傷ついた老婦人)
Will Irvine(アリーナのアトレイデスの戦士、フェイド=ラウサの儀式)
Zdenek Dvoracek(アリーナのアトレイデスの戦士、フェイド=ラウサの儀式)
Billy Clements(アリーナのアトレイデスの戦士、フェイド=ラウサの儀式)
Rex Adams(性悪な女)
Molly Mcowan(性悪な女)
Ana Cilas(性悪な女)
Steve Wall(予言を告げる者)
■映画の舞台
惑星デューン:アラキス
ロケ地:
ハンガリー:ブダペスト
ヨルダン:
ワビラム/Wadi Rum
https://maps.app.goo.gl/LRT1AaM38vwRHcA18?g_st=ic
イタリア:
Memoriale Brion
https://maps.app.goo.gl/t1JUxXiv8PqycxuX9?g_st=ic
アラブ首長国連邦:
アブダビ/Abu Dhabi
https://maps.app.goo.gl/MSTg6tAhqfsaeSAaA?g_st=ic
ナミビア:
■簡単なあらすじ
アトレイデス家の後継者ポールは、先の陰謀にて家を壊滅させられ、砂漠の民フレメンと合流することになった
フレメンの部族長スティルガーは、ポールを救世主マフディであると信じていたが、仲間は絵空事だと信じなった
ポールはフレメンの民に認められるための儀式に参加し、彼の母ジェシカは教母を継ぐための儀式へと入っていく
ジェシカは命の水を飲んだことによって教母としての力を受け継ぎ、南の原理主義者たちの助けを借りて、ハルコンネンと戦うことをポールに告げた
だが、ポールは度重なる夢の中で「南に行けばチャニが死ぬ」と感じていて、断固として、母の言葉に従う気はなかった
その後ポールは、無事に儀式を終え、フレメンからの支持を集めることに成功する
一方その頃、ラッバーンがフレメンの動きを封じれないことに苛立ちを見せるウラディミールは、危険な男フェイド=ラウサをラッバーンの代わりに派遣することを決めた
フェイド=ラウサは民の支持を集めるためにアトレイデスの生き残りと戦い、それに勝利したことで信頼を勝ち取った
フェイド=ラウサは大軍を率いてフレメンの砦を爆撃し、それによって多数の死傷者が出てしまう
そこでポールは、母の跡を追って、南の原理主義者たちのもとへと向かうことになったのである
テーマ:信仰の獲得
裏テーマ:救世主の創造
■ひとこと感想
前作の記憶がほとんどないまま突入しかけたのですが、なんとか直前に「英語版Wiki」でさらっと前作の流れだけおさらいできました
アトレイデス家が滅びて、ポールと母が生き残ったようなうっすらとした記憶しかありませんでしたが、「決闘して生き残った」という文言で、「そういえばフレメンと一緒になるとかどうとか」というくだりがあったことを思い出しました
原作は作者が亡くなって未完状態なのを息子か誰かが引き継いで終わらせたという記憶がありますが、長すぎて読んだことはなかったですね
過去の映像化はなぜか家にDVDがありますが、観たかもしれない程度だったように思います
映画は、映像ありきの作品だと思ったので、迷わずにドルビーシネマを選択し、音圧浴びるために最前列のリクライニングシートに行きました
ええ、椅子が揺れましたよ、砂虫の登場のシーンで
さすがに強烈なビジュアルで、とにかく音が凄かったですねえ
物語は、王族と暗躍する人々というもので、救世主だと思われている男が支持を集めていく流れになっていました
信仰を侮るなかれ
いわゆる宗教における結束の誕生を垣間見るような作品になっていたと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画内で前作の回想などは一切なく、いきなり本編から突入する流れになっていましたね
おさらい映像がなく、回想もほとんどない(予知夢みたいなのはたくさんある)ので、前作までの情報がないと厳しいと思います
とは言え、覇権争いで負けた一族の生き残りが「実は救世主なのでは?」という期待をかけられて、神格化していくという流れになっていました
皇帝にとって、武力を持たない下民は脅威とは思っていないようですが、ベネ・ゲセリットは「信仰の脅威を侮るな」と忠告します
何かを信じたことで力を得た気になる怖さというものは昔からあって、戦争の多くが大義名分を自分の中で育てるという怖さがあります
ある意味、戦争の本質を描いているのですが、この信仰へと変わっていく群衆や戦士たちを利用する形でアラキスの奪還を考えようとするポールは、一線を超えたようにも思えます
■信仰という名の暴力
本作では、ポールが救世主として覚悟を持つという物語になっていて、実際に伝説の救世主なのかは現時点ではわかりません
ベネ・ゲセリットの思惑としてクウィサッツ・ハデラック(未来予知ができる救世主)を交配で生み出そうとしますが、それは自分たちの影響力を強めるためで、命の水を飲んでも無事でいられる女性であると考えていました
でも、ジェシカが男の子を産み、ベネ・ゲセリットとしての能力を鍛え、そして命の水を飲んで生き延びたことで、ポールは救世主へと近づいていきます
ポールを復活させたのがチャニの涙であり、これも予言になぞらえるものとなっていました
この流れだと、ポールとチャニの子どもが救世主となると考えられ、ポールは救世主を誕生させる種であると考えられます
聖母はチャニであり、政局的配偶者のイルラーン皇女との間に生まれる子どもではないのでしょう
ここによって、正室と側室的な家系の分岐ができるのですが、おそらくは現時点でチャニはポールの子どもをすでに身籠っていると考えるのが普通なのでしょう
この過渡期であるとしても、信じる者を信じるのが人間というもので、ポールはその人間の特性を理解して、それに応えることで救世主のフリをする、ということになりました
この信仰によって結束力を高め、さらに皇帝との繋がりを得ることで、惑星統治は完了します
今後は、惑星を脅かすものとの戦いとなると思いますが、この結束力がどこまで強固なのかが試される流れになるのでしょう
信仰はそれ自体が暴力装置になり得るのは、人間の歴史を紐解けば十分に理解できるでしょう
かつての人間の戦争は信仰が起こした衝突であり、これを神が遣わしたのなら意図的な操作であるように思えてきます
人類は神を信仰するのですが、この映画では人間が神に成り代わろうとしているのですね
かつて神の世界を目指したバベルの民がそうであったように、神を目指す行為というものは罰せられる結末へと向かいます
そして、神への羨望と冒涜を含めた上で、それらの行動に対する落とし前をつけるところまでがセットになっているのが神の計画なので、ポールはその思惑に挑む者として、デューンの人々の先頭に立つ、ということになっていくのだと考えられます
■伝播する信心
当初はスティルガーだけが信じていた救世主伝説も、予言が少しずつ成就されることによって、人心を掴んでいきます
いわゆる「奇跡」というものが救世主であることを担保し、それに沿った行動が道標になっている側面も否めません
映画は、スティルガーが信じる予言の通りになっていくのですが、ある意味でスティルガーの予言の解釈も混じってくるように思えてきます
実際の信仰においても、神様の言葉なり、予言書なりを人々に伝える預言者という存在がいて、いわゆる宗教家がそれにあたります
彼らは「神様の言葉を自己解釈して伝える存在」であり、そこに不純な混じってくると、途端に胡散臭いものになっていきます
今回の場合は、スティルガーが純粋に信じているので解釈が混じる余地がないように感じますが、実際には彼が思い描く理想の世界というものがあって、それが「ポールが救世主であってほしい」という願望になっています
誰でも救世主に仕立て上げることができるとは思いますが、その中でポールを選んでいるのは、奇跡のみならず、彼の人格に期待している部分があるのかな、と感じました
信心というものは、価値観の押し付けに見える時もあれば、純粋にその考えを広めたいという思いもあると思います
それでも、これまでの宗教の歴史を考えると、信仰を伝播し、信心を植え付けることが必ずしも世界平和へと向かっていないのですね
そこには「自分が信じるもの以外は偽物」のような絶対的なものが存在し、それを排除するか、上書きするかということに躍起になってきたからです
それぞれの価値観を蔑ろにして、自分の思うものは正しいと思う
この連鎖がやがて暴力的な手段を生み出してきたのが、人類の宗教戦争そのものであると言えます
映画では、これらの宗教戦争の起こりというものを見ている感覚になっていて、信心が信仰になって、それが伝播する過程を描いていきます
これがポール自身が起こしたものではないというところが肝心な部分で、たとえば聖書にはキリストの言葉が書かれていますが、彼自身が執筆したものではないのですね
キリストがポールだとするならば、彼の言葉や起こした奇跡を記す者として、スティルガーたちがいることになり、それがいつの日か聖典となって、教義へと進化するのでしょう
そして、これらの信仰は「信じる者の死」によって完結するので、その時が物語の終わりになるのか、真の始まりのなるのか、という側面があるのだと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、壮大なスペースオペラの導入の物語であり、惑星デューンの物語を介して、人類の宗教の歴史を紐解いているように思えます
特に本作では、救世主登場みたいな流れになっていて、人類の思惑を超えた出来事が起こっていきます
そんな中、周囲の人間に祭り上げられた人間が「救世主のフリをする」という覚悟を持つのですが、この不純性が人類っぽさであるように感じられます
本作で、救世主を一番信じていないのがチャニというところが面白くて、彼女は聖母的な存在であっても、それを否定することになるでしょう
自分の子どもが救世主として祭り上げられることを嫌うでしょうし、それによって対立が起こってくると考えられます
聖母は救世主を拐った者として扱われ、それが邪悪な存在として認知されることになります
聖母は子どもから引き離され、そして非業の死を遂げるという世界線が存在し、それが「愚かな人間の象徴」のようなものになっていくでしょう
このような愚かな人類に鉄槌を下す存在というものが生まれ、それがポールであるという流れになる可能性があります
そして、ポールを倒すものとして、彼の子どもが立ちはだかり、それを成すことによって救世主となっていく
親殺しと悪魔殺しが同時に行われる運命を背負い、それは物語になっていくように思えます
原作未読でどうなるのかは全く知りませんが、Part2を観た感じだと、こんな展開になるんじゃないかなあと予測してみました
合っていても、合っていなくても、Part3を楽しみに待てるので、次作が完成されて公開されることを祈りたいと思います
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/96015/review/03619787/
公式HP:
https://wwws.warnerbros.co.jp/dune-movie/