■石田三成を知っているならば、映画の面白さが倍増すると思います(好きな人には悪いけど)
Contents
■オススメ度
韓国オカルト系ホラーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.10.18(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:파묘(パミョ)、英題:Exhuma(掘り起こす)
情報:2024年、韓国、134分、PG12
ジャンル:悪地の墓を巡って奇想天外な出来事に巻き込まれる風水師を描いたホラー映画
監督&脚本:チャン・ジェヒョン
キャスト:
チェ・ミンシク/최민식(キム・サンドク/김상덕:明堂と呼ばれる土地を探す風水師、名前の由来は独立運動家のキム・サンドク)
ユ・ヘジン/유해진(コ・ヨングン/고영근:葬儀師、サンドクの同僚、名前の由来は乙未事変のコ・ヨングン)
キム・ゴウン/김고은(イ・ファリム/이화림:熟練のシャーマン、名前の由来は独立運動家のイ・ファリム)
イ・ドンヒョン/이도현(ユン・ボンギル/윤봉길:ファリムの弟子、シャーマン、名前の由来は医師のユン・ボンギル)
キム・ジェチョル/김재철(パク・ジヨン/박지용:LA在住の裕福な依頼人)
ユン・グラン/이영란(パク・ジョンスン/박종순:ジヨンの父、名前の由来は大韓帝国の政治家パク・チェソン)
イ・ヨンラン/박정자(ジヨンの母)
演者なし(自殺したジヨンの兄)
チョン・ユンハ/정윤하(ジヨンの妻)
パク・ジイル/박지일(ジヨンの会計士、秘書)
パク・ジョンジャ/박정자(ジヨンの叔母、韓国在住)
チェ・ムンギョン/최문경(叔母の娘、韓国在住)
キム・ソンヨン/김선영(オ・グァンシム/오광심:ファリムの先輩のシャーマン、名前の由来は抗日武装闘争の指導者オ・グァンシム)
キム・ジアン/김지안(パク・ジャヘ/박자혜:ファリムの妹分のシャーマン、名前の由来は独立運動家のパク・ジャヘ)
コ・ユンジャ/고춘자(ファリムの祖母)
ホン・ソジュン/홍서준(キム会長/김회장:大企業のCEO)
コ・ヨングン/김서현(安置所の管理所長)
パク・スンチョル/백승철(葬儀場の管理人)
ウンス/은수(キム・ヨンヒ/김연희:サンドクの娘)
キム・テジュン/김태준(チャンミン/창민:墓を掘り起こす労働者)
ロビン・シーエック(外国人労働者)
イ・ジョング/이종구(保国寺の僧侶)
チョン・ジンギ/전진기(パク・グンヒョン/박근현:ジヨンの祖父の精霊、名前の由来は政治家のパク・ヨンヒョ)
演者なし(キム・スンエ/ムラカミジョウジ:グンヒョンを埋葬した陰陽師)
キム・ミンジュン/김민준(将軍の演技)
キム・ビョンオ/김병오(将軍の肉体)
チェ・ナユクン/리키야(将軍の朝鮮語の音声)
小山力也(将軍の日本語の音声)
■映画の舞台
アメリカ:ロサンゼルス郊外
韓国:江原道郊外
ロケ地:
韓国のどこか
■簡単なあらすじ
LA在住の韓国系アメリカ人の富豪唐依頼を受けたシャーマンのファリムとボンデルは、依頼人ジヨンの家系に起きていることは「墓」に原因があることを突き止めた
そこで、風水師のサンドクと葬儀師のヨングンを頼ることになり、彼らの先祖が祀られている韓国の江原道の奥地へと足を踏み入れることになった
その墓にはジヨンの祖父が葬られていて、それを他に移すか、火葬するかを選ぶことになった
祖母は火葬に反対だったが、家系のことを重んじて、それを承諾する
だが、火葬は雨の日には行えず、晴れの日を待つまで、遺体安置所に寝かせておくことになった
一方その頃、墓の掘削作業員の一人チョンミンは、掘り起こした墓の中で奇妙な蛇を見つけて殺してしまう
それによって、何かが目覚めてしまい、安置所の棺の中から得体の知れない何かが蘇ってしまうのである
テーマ:家系を繋ぐ埋葬
裏テーマ:歴史を封印する楔
■ひとこと感想
墓を掘り起こしたらヤバいものが見つかった系かなと思っていたら、悪地には思えない場所に埋葬したのに何かに憑かれてしまっている一族の秘密を探るものになっていました
韓国からアメリカに渡って成功した一族の末裔が奇妙な病に罹っているというもので、それを調べたシャーマンがその謎を解くのですが、それを何とかするには専門家が必要という流れになっていました
ビジネスで繋がっているシャーマンと風水師、そして葬儀師が手を合わせることによって、悪地に埋葬されたものを正しい場所に移す様子が描かれていました
その墓に何があるのかというテイストで進みますが、まさかの展開になっていてびっくりしてしまいましたね
流石にそれはあかんやろというもので、さらにそれが置かれた理由などが描かれていくのですが、そこからの展開はなかなか興味深いものがありました
全部で「6章」から成っていましたが、章立てに関しては、そこまで深い意味があるようには思えませんでした
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作のネタバレは何段階かに分かれていて、一つ目は「重葬」というもので、こんな罰当たりなことをしたらヤバいよねという説得力がありました
さらにその棺の向きにも意味があって、その先には風水の力関係までもが登場していました
そこまで難しい話でもなく、風水のことに詳しくなくても理解できる範囲になっています
映画は、墓を重ねていた理由が語られ、それはその下にあるものを掘り起こさせないためになっていました
ある意味においては封印なのですが、それによって一族が犠牲になっている部分がありました
家系の呪いを解くために謎解きをしていくのですが、彼らが選ばれた理由がちょっと可哀想にも思えてしまいますね
先祖はまだしも、末裔には無関係なものなのですが、経済的に下駄を履かせて貰っている意味合いはあるので、帳尻が合っていると言えるのかも知れません
それでも、不幸になるのは代重ねの長男だけになっていて、次男以降と女性陣には優しい黒幕になっていました
「将軍」は関ヶ原の戦いで負けたという設定になっていたので、石田三成とかが元ネタになるのかも知れません
色々とググっていると、どうやらシャーマンや風水師の名前には由来があって、ジヨンの祖父はモデルにあたる人物がいるようですね
フィクションとは言え、シャーマンの儀式には本物のシャーマンが監修に入っていたりと、かなり本格的な再現度になっていたように思えました
■墓と風水
本作は、お墓にまつわる映画になっていて、一族に悪いことが起こっているので、「破墓」することになっていました
いわゆる、風水的に良い場所にお墓を移そうというものでしたが、実際のその場所は風水的には最高に近い場所で、なぜこのようなことが起こるのかわからない、という流れになっています
そして、実際に墓を掘り起こしてみると、杭になっているような縦向きの大きな棺があり、重葬されていることがわかりました
風水的には、お墓は死のエネルギーがある場所として、近くに住むのは縁起が良くないとか、墓相学によって、良いお墓をつくろうなんてことが起こります
墓相学というのは、お墓の方角(墓石の向き)などにこだわるもので、一般的には「南、南東、東向き」が良いとされていて、その真逆は良くないと言われています
鬼門は北東と南西にあるので、それだけは避けた方が良いとされています
風水では、お墓を「隠宅」、住宅を「陽宅」と呼び、陰陽の観点から真逆の性質があるとされています
なので、反するものをそばに置かないという考え方があって、それゆえにお墓の近くは選ばないという考え方があります
個人的にも、今の家を購入する際に幾つかの候補があったのですが、その一つが家の裏がお墓という場所でした
その分価格が安くはなっていましたが、やはり何かしらのものは感じてしまいますね
霊感があるわけではないのですが、違和感を感じていたこともあって、その物件は避けることにしました
■モデルとなる人物について
本作のキャラは全員架空ではありますが、その名前にはモデルがあるとされています
主人公のサンドクは、キム・サンドク(金尚徳、김상덕)で、大韓民国の独立に寄与した政治家
葬儀師のヨングンは、コ・ヨングン(高永根、고영근)で、朝鮮末期の抗日運動家
シャーマンのファルムは、イ・ファルム(李華林、이화림)で、大韓民国の独立運動家で医師、キャラクターのモデルは実在のシャーマンであるイ・ダヨンで本作の監修に加わっている
ファルムの弟子のボンギルは、ユン・ボンギル(尹奉吉、윤봉길)で、大韓民国の独立活動家で教育者
依頼者ジヨンの父ジョンスンは、パク・ジェスン(朴齊純、박제순)で、大韓民国の政治家にして新日活動家
ジヨンの祖父は、パク・ヨンヒョ(朴泳孝、박영효)で、大韓民国の政治家で新日活動家
ファリムの先輩グァンシムは、オ・グァンシム(呉光心、오광심)で、大韓民国の女性独立運動家
グァンシムの後輩ジャへは、パク・ジャへ(朴慈恵、박자혜)で、義烈団の独立運動家
このように、倒す側は「独立運動家」で、問題を起こしている側は「新日活動家」ときちんと線引きをしているのですね
これは偶然ですよとは言い訳できない感じになっていて、それゆえにある種の界隈で色々と言われている作品ともなっています
映画は、朝鮮半島の龍脈に杭を打った日本人風水師ということで、そのモデルになっているのが「村山智順」と言われています
村山智順は「朝鮮の鬼神」などを書いた民俗学者で、その他にも朝鮮半島の風水に関する書籍をたくさん出版しています
気になる方は下記のリンクでAmazonnラインナップを眺めても良いと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、数段構えの作品になっていて、重葬エピソードが中盤で、そこから日本の過去譚が登場し、最後は怨霊化した将軍と戦うというバトルものになっていました
その都度、主人公が変わる感じになっていて、謎解きは風水師サンドク、悪霊との戦いはシャーマンのファリムとボンギルが活躍していました
葬儀師のヨングンは物語を進める進行役で、依頼者と墓をつなげる役割を担っています
物語の起点が墓の中にいたヌレオンナ(人面蛇)を殺したことになっていて、そこからサンドクが重葬に気づくというシーンになっていて、この時点で物語が大きく動き出していきました
元々はお金のために墓を移動させるはずだった物語でしたが、冒頭のファリムが飛行機の中で日本人に間違われるなどのエピソードがあり、これから描かれる物語に日本の過去が関連していることを印象付けていました
韓国で起こる悪いことは日本が原因だという作品はたくさんありますが、統治時代をどのように捉えるかでそうなるのは自然のことなのですね
でも、本作の場合は「ちょっと遠い過去」を起点にしているのは新しいなあと思いました
それは、統治時代に日本人が行ったことも原因の一つだけど、実際には戦国時代の武将が悪さをしていた、と方向転換を行ったことだと思います
「関ヶ原で負けて処刑された武将」という文言があって、これに該当する武将として思いつくのは石田三成なのですね
彼は文禄の役にて、朝鮮に出兵した人物でもあり、その命令を下したのは豊臣秀吉でした
「キツネが虎の腰を切った」というセリフもあって、石田三成もキツネと呼ばれていたと言われています
朝鮮半島=虎という図式があるので、関ヶ原で負けた石田三成の怨念が朝鮮半島にやってきて、半島の龍脈に杭を打ったということになっていて、それがずっと半島に異変をもたらしていたという流れになっていました
ジヨンの祖父は併合を推進した親日家という設定で、その悪霊と戦うのが抗日活動家という図式になっているのですが、これはとてもわかりやすい構図になっていました
本作の面白いところは、親日活動家自体も過去の武将の怨念に囚われていたというもので、あの併合騒動も呪いの結果だったとしているところなのですね
これによって反日っぽさが少し軽減され、併合自体が悪だったとするいつもの展開にはなっていませんでした
それでも、ピンポイントで反日だ!と叫ぶ人はいるのですが、そう言った声を無視して、映画全体の構造を見ていく必要があるのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102078/review/04381664/
公式HP:
https://pamyo-movie.jp/index.html