■個人的な好みだけど、○○落下に対する罰は必要だったように思う
Contents
■オススメ度
ワンシチュエーションスリラーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.2.8(T・JOY京都)
■映画情報
原題:Fall
情報:2022年、アメリカ、107分、G
ジャンル:最愛の夫を失った妻が、親友とともに600mの電波塔に登るワンシチュエーション・スリラー
監督:スコット・マン
脚本:スコット・マン&ジョナサン・フランク
キャスト:
Grace Caroline Currey(ベッキー・コナー:ロッククライミングで夫を失う妻、ロッククライマー)
Virginia Gardner(ハンター/デンジャーD:ベッキーの友人、立ち直るためのきっかけを提供するロッククライマー、Youtubeにて登塔を配信)
Mason Gooding(ダン・コナー:ロック・クライミングで転落死するベッキーの夫)
Jeffrey Dean Morgan(ジェームズ・コナー:ベッキーを心配する父)
Jasper Cole(スティーヴ:タワー近くで犬の散歩をする男)
Darrell Dennis(ランディ:スティーヴのパートナー)
Julia Pace Mitchell(タワー近くのダイナーのウェイトレス)
Nick Lynes(トラックに何かぶつかって困惑する運転手)
■映画の舞台
アメリカ:カリフォルニア州
B67 TVタワー
ロケ地:
KXTV/KOVRタワー(タワー外観のモデル)
https://maps.app.goo.gl/72EBUfD2XHLd1m1C8?g_st=ic
モハーベ砂漠
https://maps.app.goo.gl/vzKwDrBz8RkpU3r29?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ロッククライミング中に夫ダンを亡くしたベッキーは、酒に溺れた日々を過ごしていた
1年が経った頃、ダンの死亡時に一緒にクライミングをしていた親友のハンターから電話が入る
それは、お互いにダンの死を乗り越えるために、B76のTVタワーに昇ろうという企画だった
最初は固辞していたものの、父の言葉「ダンならどうしていると思う?」を思い出したベッキーは、ハンターの企画に乗ることになった
現地に着いて怖気付くものの、タワーの梯子を昇っていく二人は、途中で休憩を挟みながら頂上に辿り着く
頂上に着いて無謀な配信を終えた頃、ハンターはダンと決別のために彼の遺灰を空に撒く
順調に企画を終えられると思った二人だったが、降りようとする際に老朽化した外付けの梯子が外れ、その際にハンターが背負っていたバックパックが落下し、途中のアンテナの上に落ちてしまう
なんとか落ちかけたベッキーを引き上げるものの、降りる手段を失った二人は、携帯も繋がらない600m上のタワーの上に取り残されてしまうのであった
テーマ:人生は誰のため
裏テーマ:生き残るために犠牲にするもの
■ひとこと感想
高所恐怖症なのですが、体感型ムービーだと脳が識別できるのを信じて参戦
せっかくなので一番怖いと感じる「最前列」にて鑑賞することに決めました
見事なワンシチュエーションで、どうなるのかが読める前半と、どうなるかわからない後半という絶妙なバランスがありました
また、落ちた梯子や足の怪我などの認知が少し経ってから起こるところもリアルでしたね
高所恐怖症だと、タワーの上に立ったり座ったりしてるシーンを見るだけで怖いのですが、二人が熟練のロッククライマーという設定になっていて、高さに対する恐怖がほとんどなかったですね
高さに喚いたりというシーンがほとんどなく、すぐに冷静になるあたりは熟練さを感じます
その上で、彼女らでも難しいんじゃないかと思えるミッションを持ってくるところは絶妙だったと思います
後半で問題のシーンがありますが、あれはあれで良かったのかなと、個人的には思っていますが、かなりのフェイクだなとは思いますね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
スリラーというよりはホラーに近く、それは例のシーンのせいなのかなと思います
そこに至るシーンは、バックパックをとハンターを同時に引き上げるシーンで、ベッキーが一人に宙吊りになったハンターを引き上げていました
さすがにこの流れにリアリティがなく、例のシーンに繋がっている感じになっていました
夫の喪失と不倫が絡む中で、女同士の泥試合になるかと思いましたが、それがほとんどなかったのは良かったですね
また、伏線としての充電の裏技なども活かされていて、使う伏線と使わない伏線というものがうまく機能していました
ベッキーが自分の結婚式の映像を見ている中、彼女が自分たちをじっと見ているハンターに気づくシーンがあるのですが、個人的にはそこが一番怖いシーンでした
コンドルに襲われるシーンも伏線が効いていましたが、生の鳥を喰らってエネルギー充填は無茶かなあと思わざるを得ません
■タワーに取り残されたらどうする?
映画を観ていると、主人公たちがどう動くかを観るだけではなく、自分だったらどうするかというのを考えると思います
地上600mの地点では、酸素濃度は地上に比べて93%、気温は4度ほど下がります
なので、あの服装だと結構寒くて、夜になれば凍えてしまうと思います
この状況を考えると、体力のある内にどうやって降りるかを模索する流れになります
色んなところでツッコミのある「ドローンにスマホを載せる」というパターンですが、録画&通信専用のドローンだと積載量の関係とか、そもそもどうやって括り付けるのかという問題はあったのかもしれません
手元にあるのはロープ一本とスマホ2台、ドローンとフレアガン、双眼鏡だけ
梯子がないところが約100mで、途中にはアンテナが二つついている
アンテナから下のゾーンもかなり距離があるので、降りるという選択肢を取れば、アンテナのところからどうするかということになるかと思います
あのTVタワーは老朽化が進んでいて、取り壊し寸前だったので、頂上にある信号を取り外しても異常警報などは鳴らないでしょう
ちなみにあの塔はテレビ塔ですが、てっぺんに備え付けられているライトは「航空障害灯」と言われるものです
日本国内だと「航空法第51条」に記載されていて、「60メートル以上の建造物」には設置が義務付けられています
ちなみに「航空障害灯」が機能を損なった場合は連絡する必要があります
日本の場合だと「24時間故障連絡の受付をしている」のですが、アメリカのあの場所だとどこまで管理されているのかはわかりません
仮に「管理が徹底されている」とするならば、「航空障害灯」を「故障の状態に持っていく」ことで通報がなされる可能性があります
取り壊し寸前でも「航空障害灯」の機能が停止していると問題があるので、充電も含めて「ライトを外して気づくのを待つ」ということになります
夜になる前にライトを外し、その中身を分解して使えそうなものを使う
可能であるならば「通電しているコードを待機場所まで伸ばす」ことですが、これらは知識がないと感電して転落になるのであまりオススメはできません
救助と耐久戦を考えるなら、航空非常灯を外して、充電しやすいようにロープを頂上付近のどこかに結んで固定、ロープを上りやすいように等間隔で結び目をつけて、足場を作るというやり方になります
技術があればドローンの外装を一旦外して、スマホを積載するということになりますね
そこからドローンにスマホを乗せて操縦して、ダイナーに突っ込ませるという方法になります
積載オーバーになる可能性が高いので、フル充電のドローンを上昇させながら向かい、その惰性でダイナーを目指すことになるでしょう
今回のように低く飛ぶのは通常のコントロールができる場合に限るので、過積載状態で人が多い時間帯に墜落させるのが見つかる可能性が高いのではないでしょうか
実際にできるかどうかはわかりませんが、降りることを考えるよりは現実的(数日間、航空障害灯が消えていれば気づくと思う)なのかなと思いました
■例のシーンの是非について
映画では、ハンターがドローンを取りに行って、そこでバックパックの回収だけ成功するというシーンがありました
飛び移ろうとした時に飛び移れなかったのか、飛び移った後にベッキーが耐えれずに落ちたシーンで、ハンターはそのままアンテナの上に落下して死んだという感じになっています
この後のシーンでは、ハンターを自力で引き上げるベッキーがいて、抱擁シーンへと繋がるのですが、それがマルッと「妄想だった」ということになっていました
まるで、イマジナリーフレンドのようにベッキーの都合の良いハンターが描かれていて、違和感を感じた人は多かったと思います
このシーンの是非が賛否両論の的になっていて、本国でも「否定派が多い」という感じになっていますね
リアル視点だとベッキーがハンターを引き上げることの方がファンタジーなので、そりゃそうでしょとは思うものの、妄想シーンが長すぎたことで反感を食らっています
妄想だとしても、「明確に引き上げているシーン」はいらなくて、「必死にベッキーがロープを引き上げている」ことがわかればOKでしょう
そこから気力を使い果たして意識を失いそうになる
このシーンから「ハンターがベッキーを起こす」というシーンに繋がって、それが妄想だったと結ぶ方が良心的だったように思えました
極限下において妄想が入り混じるのは常で、それ自体は悪いことではありませんが、本作では「現実シーンとして認識させる」という方向性があり、それが批判の的になっています
騙されていたとしても、騙す側の性根みたいなものが見え隠れしていて、今回は「事実誤認を生ませる」という意図が少なからずあったようにも思えました
なので、それに過剰反応した人々がキレているのかなと思います
個人的には「そう来たか」で面白かったですが、その感覚はどうやらマイノリティだったように思えますね
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は究極のワンシチュエーションスリラーになっていて、塔の上でよくぞここまで話を展開したなあと感心してしまいます
地上での出来事が伏線となっていて、それが塔の上でうまく回収されていました
個人的に不満だったのは、救助シーンがないことで、大作並みの予算があれば「大掛かりな救助シーン」を描けたと思います
でも、それだと凡庸な救出シーンになってしまいます
これを打破するには、「救出にヘリが向かう」というシーンを作って、ヘリが近づいたあたりで「地上の固定」が揺らいで「ひょっとしたら外れるかも」というところで終わらせる「後味悪い系」になるのかなと思います
なので、このパターンだと「地上での父との再会」はなく、パトカー密集しているところに向かう、で終わることになります
どっちに振るかは好みに分かれますが、バッドエンドならば、
信号を受け取る父、どこかに電話をかけている
次々と出発するパトカー、追ってヘリ&レスキューが動く
現場に近づくヘリ、ホバリングで旋回中にワイヤーがしなる
地上の固定部分がガタガタと揺れ出す
父、現場に到着する
というところでエンドでしょうね
ハッピーエンドパターンだと、
その続きとして、ワイヤーが一つ外れて地上のパトカーなどに被害が出る
他のワイヤーも切れそうになり、切れる前に助けられるかというミッションの中、即時にレスキューが降下
寸前でバッキーを確保する
そこに到着する父
他のワイヤーも外れて、倒壊の危機になる
慌ててパトカーなどが逃げ、タワーは倒壊する
土煙の中、父の車の無事がわかる
地上に降りるベッキーと父が抱擁する
という、ハリウッドの大作みたいな感じになりますね
どっちが好きかは好みが分かれますが、個人的には「バッドエンド」でしょうねえ
ダンと浮気をしていたとしても、死体を落としたらいかんと思うので、それに対する罰のようなものが降りかかってしまうというのがベターなのかなと思いました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385830/review/52ef6ae7-614f-4984-8deb-ef46e4752379/
公式HP:
https://klockworx-v.com/fall/