■映画のタイトルは「エンツォ」もしくは、配給会社お得意のヤバい副題があった方が良い作品でしたね
Contents
■オススメ度
フェラーリの歴史に興味がある人(★★★)
1957年ミッレミリアの大会に関心を持つ人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.7.5(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:Ferrari
情報:2023年、アメリカ&イギリス&イタリア&サウジアラビア、130分、PG12
ジャンル:1957年のミッレミリアに挑むフェラーリを描いたモータースポーツ映画
監督:マイケル・マン
脚本:トロイ・ケネディ・マーティン
原作:ブロック・イェーツ/Brock Yates『Enzo Ferrari: The Man, the Cars, the Races, the Machine』
Amazon Link(原作英語版)→ https://amzn.to/4cPmCfy
キャスト:
アダム・ドライバー/Adam Driver(エンツォ・フェラーリ/Enzo Ferrari:イタリアの実業家、元レーサー)
ペネロペ・クルス/Penélope Cruz(ラウラ・フェラーリ/Laura Ferrari:エンツォの妻、共同経営者)
Benedetto Benedettini(アルフレッド・ディーノ・フェラーリ/Alfredo “Dino” Ferrari:エンツォとラウラの次男)
(7歳時:Gabriel Noto)
(3歳時:Edoardo Beraldi)
Alfredo Benedettini(アルフレッド・フェラーリ/Alfredo Ferrari:エンツォの父)
Daniela Piperno(アダルジーザ・フェラーリ/Adalgisa Ferrari:エンツォの母)
シャイリーン・ウッドリー/Shailene Woodley(リナ・ラルディ/Lina Lardi:エンツォの愛人)
Giuseppe Festinese(ピエロ・ラルディ/Piero Lardi:リナとエンツォの息子)
【フェラーリーのドライバー関連】
ガブリエル・レオーネ/Gabriel Leone(アルフォンソ・デ・ポルターゴ/Alfonso de Portago:スペインから来たドライバー)
Erik Haugen(ガンナー/エドマンド・ネルソン/Edmund “Gunner” Nelson:アメリカ人ジャーナリスト、デ・ポルターゴのナビゲーター)
サラ・ガドン/Sarah Gadon(リンダ・クリスチャン/Linda Christian:メキシコの女優、デ・ポルターゴの恋人)
ジャック・オコンネル/Jack O’Connell(ピーター・コリンズ/Peter Collins:イギリス人ドライバー)
Alice Zanini(ルイーズ・コリンズ/Louise Collins:ピーターの妻)
パトリック・デンプシー/Patrick Dempsey(ピエロ・タルフィ/Piero Taruffi:イタリア人のドライバー)
Wyatt Carnell(ヴォルフガング・フォン・トリップス/Wolfgang von Trips:ドイツ人レーサー)
Marino Franchitti(エウジェニオ・カステロッティ/Eugenio Castellotti:イタリア人ドライバー)
Valentina Bellè(セシリア・マンジーニ/Cecilia Manzini:カステロッティの恋人、モデルはデリア・スカラ)
Brett Smrz(オリヴィエ・ジャンドビアン/Olivier Gendebien:ベルギー人ドライバー)
【フェラーリ開発&会社関連】
Michele Savoia(カルロ・キティ/Carlo Chiti:エンジン設計者)
Lino Musella(セルジオ・スカルティ/Sergio Scaglietti:自動車設計士)
Giuseppe Bonifati(ジャコモ・クオギ/Giacomo Cuoghi:財務)
Andrea Fiorillo(カルロ:会計士)
Gianfilippo Grasso(マッテオ:エンツォの部下)
Massimo Scola(トマソ:エンツォの部下)
Modesto Menabue(メカニックのチーフ)
Massimo Bottura(デスクのクリーク)
Pietro Corradini(メカニック)
【マセラティ関連】
Domenico Fortunato(アドルフォ・オルシ/Adolfo Orsi:マセラティのオーナー、実業家)
Jacopo Bruno(オマール・オルシ/Omer Orsi:アドルフォの息子)
Ben Collins(スターリング・モス/Stirling Moss:イギリス人のドライバー)
Daniele Carbone(デニス・ジェンクス・ジェンキンソン/Denis ‘Jenks’ Jenkinson:イギリス人ジャーナリスト、モスのナビゲーター)
Derek Hill(ジャン・ベーラ/Jean Behra:新記録を出すフランス人ドライバー)
Samuel Hubinette(マイク・ホーソーン/Mike Hawthorn:イギリス人ドライバー、ピーター・コリンズの友人)
【フィアット関連】
Tommaso Basili(ジャンニ・アニェッリ/Gianni Agnelli:フィアットのオーナー)
【エンツォの交流関係】
Andrea Dolente(ジーノ・ランカーティ/Gino Rancati:スポーツ記者、ヤラセ記事を書かせるエンツォの友人)
Jonathan Burteaux(フセイン:ヨルダンの国王)
Franca Abategiovanni(アルダ:フェラーリ家のメイド)
Luciano Miele(ペッピーノ:エンツォの運転手)
Giuseppe Attanasio(ロモロ・タヴォーニ/Romolo Tavoni:エンツォの秘書)
Javier Cornelio Merida(ルイス・クレマンタスキー/Louis Klemantaski:イギリスのモータースポーツ写真家)
【その他】
Tommaso Paolucci(コセッティ:追い出される記者)
Alessio Cioni(マッシモ:追い出される記者)
Biagio Caruso(フサロ:追い出される記者)
Maurizio Cardillo(ジャーナリスト)
Filippo Marchi(写真家)
Alessandro Cremona(ポーター)
Damiano Neviani(舞台係)
Alessandro D’Elia(美容師)
Andrea Bruschi(司教)
Marco Maccieri(教会の傍観者)
Marc Gené(イエローキャブのドライバー)
Lulu Najafi(オペラ座に来るリナの友人)
Uladzislava Keizereva(オペラ座のソプラノ歌手)
Leonardo Caimi(オペラ座のテノール歌手)
Carlo Fei(マルゾット・ホテルのオーナー)
Robert Steiner(ミッレミリアのレースコメンテーター)
Andrea Volpetti(TVのコメンテーター)
Edoardo Golemi(エドゥアルド:レース観戦する8歳の少年)
Francesco Gorga(エドゥアルドの父親)
Pietro Piccinini(レース観戦する3歳の少年、エドゥアルドの弟)
Agnese Brighittini(エドゥアルドの母親)
■映画の舞台
1957年、
イタリア:モデナ
ロケ地:
イタリア:エミリア=ロマーニャ州
モデナ/Modena
https://maps.app.goo.gl/13vy1sFWLkpK5xZQ8?g_st=ic
ヴィア・ヴィット・ベーリング/Via Vito Bering
https://maps.app.goo.gl/EkFD5NWgF8sJBCEK8?g_st=ic
Via Emilia San Pietro 22
https://maps.app.goo.gl/ZUz5xUxqAtgama1r7?g_st=ic
マンゾーニ広場/Piazza Manzoni
https://maps.app.goo.gl/d6MH5e8WaMHRgL887?g_st=ic
イモラ・サーキット/Imola Cicuit
https://maps.app.goo.gl/K5rFZjx6GSdc81CL9?g_st=ic
グランデ広場/Piazza Grande
https://maps.app.goo.gl/MMFv9LRMfvU9Kpof8?g_st=ic
イタリア:ラクイア
カンポ・インペンラトーテ/Campo Imperatore
https://maps.app.goo.gl/G6VLFNjVZXNqutj59?g_st=ic
イタリア:ロンバルディア
サンカラルド墓地/San Cataldo Cemetery
https://maps.app.goo.gl/WjwKDsewThbysQ986?g_st=ic
イタリア:ピエモンテ
アウトドローモ・デ・モラーノ/Autodromo di Morano Po
https://maps.app.goo.gl/QaV8kZyV7itfyQaw5?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1957年、妻ラウラとともにモータースポーツの会社「フェラーリ」を経営していたエンツォは岐路に立たされていた
資金難から経営状態は危ぶまれ、夫婦仲も冷え切っていて、妻以外は愛人と隠し子の存在もバレている状況
そんな中、ライバル会社は記録を打ち立てて躍進していた
フェラーリには買収の噂が持ち出されるようになり、新車の販売を伸ばすためにはわかりやすい実績が必要になっていた
そこでエンツォはミッレミリアのレースに参加し、車の性能をアピールすることになった
ドライバーのカステロッティが事故死し、代わりにデ・ポルターゴを専属ドライバーに迎え、経験豊富なタルフィ、ピーター、フォン・トリップス、オリヴィエの5人で大会に挑むことになった
そんな折、愛人のリナは、息子ピエロの認知問題を迫り、さらに銀行での取引にて、ラウラは見知らぬ土地に注がれているお金の動きを察知することになった
夫婦仲も絶望的な状態になってしまい、そしてレース当日を迎えることになったのである
テーマ:存続
裏テーマ:傲慢と結実
■ひとこと感想
フェラーリ自体は有名で、知らない人はいないと思うのですが、エンツォの歴史について詳しい人はそこまでいないように思います
劇中で登場する隠し子ピエロは、今では副社長クラスまで上り詰めているのですが、彼がフェラーリ姓を名乗ることができるようになる物語でもあったように思えました
映画は、モータースポーツ映画というよりは、エンツォの不倫騒動と会社の資金繰りなどがメインになっていましたね
技術開発やレースがメインではないので、思ったのと違うと感じた人が多いようにも思えました
物語としては、ミッレミリアが中心なので、このレースのことをどれだけ知っているかが鍵になります
個人的には詳細までは知らなかったので、純粋に驚いてしまいましたね
その再現の高さに驚かされる一方で、そこらへんのホラー映画よりもキツいシーンがあったので、心臓の弱い方は要注意の案件になっているように思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、ミッレミリアに向かうフェラーリが描かれるのですが、イタリアのフェラーリとマセラティが競う展開になるので、どの車がどっちの会社なのかわかりにくいように思います
当時は、車体の色は国別だったので、どちらもが同じ赤を使用する決まりになっていました
実在の人物が物凄く多いのですが、中心として描かれるのはそこまで多くはありません
レースに関しては、フェラーリ側のタルフィ(優勝する白髪のベテラン)、事故死するデ・ポルターゴ(自信家の若者)がわかればOKで、テストで死んでしまうのがカステロッティでした
カステロッティの恋人はデリア・スカラという人物ですが、映画ではセシリア・マンジーニという女性に置き換えられています
資金繰り関連も非常にややこしいのですが、50万ドルと引き換えにラウラの所有権の譲渡が約束され、小切手を切れば破産やむなしという状況になっていました
ラウラは事故の報道を抑え込むために現金化し、それが後に「お咎めなし」へと繋がる布石になっていますが、実際には裁判で無罪になっているので、マスコミに過剰な報道をさせずに、世論を動かさなかった効果があったのだと推測できます
このあたりはさらっと描かれているので、じっくりと調べた方が理解が深まるのではないでしょうか
■フェラーリについて
主人公のエンツォ・フェラーリ(Enzo Ferrari)は、1988年生まれのイタリアの起業家、レーシングドライバーでした
スクーデリア・フェラーリを創設し、自動車部門とスポーツ部門を両立された人物とされています
レーシングドライバーとしては、1919年から1931年までで、41回のレースに出場し、1924年のコッパ・アチェルボで優勝を果たしています
ドライバーとしては大成することはできませんでしたが、1929年11月16日にモデナにて、現在のレース部門の基礎となるスクーデリア・フェラーリを設立しました
1932年まで、スクーデリア・フェラーリはアルファロメオの技術競争部門にありましたが、1933年から半公式のレース部門となります
その後、エンツォは1939年にアウト・アヴィオ・コストルツィオーニを設立させます
フェラーリの名をつけなかったのはアルファロメオとの契約によるもので、1944年まで有効なものとなっていました
しかし、第二次世界大戦の勃発により自動車事業は停止、同社は軍用機の部品の製造を請け負うようになりました
第二次世界大戦後、アルファロメオとの契約が終了すると、1947年3月12日に自身の名前でブランドを設立します
この時の「オート・コストルツィオーニ・フェラーリ」という名前は1957年まで使用されています
1955年頃からフィアットグループがフェラーリに介入し、スクーデリアの開発の資金援助を行います
1954年と1955年のF1で優勝し、1955年くらいにはル・マンの惨事を引き起こすことになります
さらに1957年のグディッーロの悲劇などもあって、イタリアでロードレースが廃止されることになります
これらのレースの廃止によって、フェラーリの経営が厳しくなってしまいます
1963年からはフォードによる買収騒ぎと決裂などが起こります
さらに1969年からはフィアットグループの傘下に入りますが、独自性を保つという継続的な技術協力関係を築くことになりました
1988年にエンツォがなくなると、90%をフィアット、残りを息子のピエロ・ラルディ・フェラーリが受け継ぐことになりました
その後も現在に至るまで色々とありますが、映画からは逸れるので割愛いたします
■1957年ミッレミリアについて
劇中で登場するミッレミリア(Mille Miglia)は1927年から1957年までイタリアで開催されたレースで、合計24回行われていました
プレシアを発着点として、公道を走るスピードレースとして、1600キロメートル(1000マイル)の距離を競うレースでした
このレースは映画でも描かれる「グイディッツォーロの悲劇(Tragedia di Guidizzoli)」の影響を受けて、1957年を最後に中止になっています
1957年、マントヴァ県のグイディッツォーロ近郊のゴイテーゼ川にて、フェラーリー335Sのタイヤがバーストして事故を起こしてしまいます
ドライバーのアルフォンソ・デ・ポルタとナビゲーターのエドモンド・ガーナー、そして5人の子どもを含む9人の観客が亡くなってしまいました
この場所を通りかかった時の速度は250kmとされていて、ロードリミッターによるタイヤバーストを起こしてしまいます
車は横滑りして右側の溝に落ちて跳ね返り、反対側の観客がいた路肩に衝突することになりました
この事故により、エンツォ・フェラーリは起訴されて裁判に向かいます
裁判では、速度とタイヤバーストは無関係で、車は安全基準を満たしていたと証明し無罪となています
事故現場に関しては、現在は県道236号と呼ばれていて、その現場には記念碑が建てられています
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作のタイトルは『フェラーリ』なので、F1などで活躍する車両の開発とか、レースにおける活躍を描くのでは、と思っていました
実際には、エンツォの人生のごく一部を切り取り、その内容は伝記的な内容だったと思います
主に、妻と愛人の関係、他の企業から資金援助を得るためにレースに臨んで失敗したという経緯を描いていました
どの時点で、ドロドロ不倫劇だと気づくかは微妙なところですが、冒頭から「愛人宅から出勤」というあたりで、夫婦関係の微妙な印象を植え付けていたと思います
ミッレミリアに関しては、かなり大きな事故だったので知っている人も多いと思いますが、その前に起きたル・マンの方が事故の規模も大きかったので、そちらの印象の方が大きかったですね
特にモータースポーツファンだとどちらも事故も覚えていると思うので、事故だけの衝撃だとル・マンの方が激しいように思います
とは言え、あそこまで緻密な描写をするとは思いもせず、ドライバーの体が真っ二つになったショットが画面一杯に広がるとは思いませんでした
映画は、エンツォの伝記映画としてなら評価はそこまで下がらないと思いますが、あまりにも内容が重たいように思います
後半のフィアットやフォードの絡みなどはほぼ劇中で説明がない状態で、とにかく資金繰りがヤバいので、フェラーリの権利を一本化しようと画策していきます
妻と権利分担をしていて、さらに愛人問題の表面化などもあって、その条件はかなり厳しいものになっていました
自業自得と言えばそれまでですが、愛人との経緯が映画内では「戦争の時にお世話になった」ぐらいの言及なので、それを肯定するには至らないと言えます
妻と愛人に板挟みになっている状況を描いているのですが、そのジャッジを取るには過去の描写が少ないのですね
愛人とは恋愛関係が実は結婚前から続いていたとか、妻との結婚は会社のためだったとか、いろんな背景があると思うのですが、映画からは「息子を亡くしたこと」で妻との関係が悪化した、みたいな印象を植え付けます
長男ディーノが亡くなったのが1956年ですが、ピエロが生まれたのは1945年なので、この流れも結構エグいものがあります
もっともエンツォ自身が女性との関係に関しては開き直っている(「女性は仕事終わりのご褒美だ」発言など)ので、そういった人物だったことは否定できないのでしょう
そこまでゲスい描き方になっていないのは配慮だと思いますが、それを思うと妻がますます不憫に思えてきますね
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/99918/review/04005094/
公式HP: